4 / 4
枯れぬ者
しおりを挟む
9月 双子の姉に間違われた。私よりも出来の良い姉に間違われるのは複雑で仕方がない。今日も劣等感が積もって、歩き始めた足がまた重くなる。
10月 ある日突然議員である父に呼ばれた。事務所に入ると先に姉が部屋の中に居た。私を見るなり笑顔で手を控えめに振った。会釈を返して姿を現した父に視線を移す。
11月 定期的に送られてきていた姉からの連絡が途絶えた。呆れられでもしたのだろうか、それならそれで私にとっては好都合だった。
12月 大学の友だちと遊んだ帰りに父の事務所に寄った、机の上に置かれた注射器を眺めていると、父は不自然なほど注射器を机にしまって私をすぐに家に返した。
1月 大学の教授から姉からの連絡が途絶えたと言われた。提出するレポートやテストも今までは完璧だったため、何かあったのではないかと聞かれた。そんな事を聞かれても知らないし、私は劣等感こそあれど、関心なんて無かった。
2月 父が私を再び事務所に呼んだ。注射器を見た日から不信感が拭えずに行くか悩んだが、特に深く考えずに父の元に行った。
3月 事務所の地下に機械に繋がれた姉が居た。父は世界を救う唯一の方法だと言う。父は通称デストルドーと呼ばれた姉の前に膝を着き、私に言った。人類が欲動を取り戻すための鍵になる。
4月 私は姉になり、代わりに私の葬式が行われた。母は酷く泣き崩れ、日に日に目の下のクマと疲労を濃くして数日後に入院した。私は死んだ。
5月 私とよく遊んでいた友だちが教室で静かに座っていた。ここに居ると漏らしかけた言葉を飲み込む。対称的な性格の優等生な姉になるのはまだ時間が掛かりそう。
6月 生徒会にも馴染んで少しずつ友だちも元気を取り戻しつつある。自分の席に間違えて座りそうなこともなくなり始めた。少しだけ髪が伸びてきて邪魔になってきた。
7月 姉の部屋で本を見つけた。父の異変と計画の内容が殴り書きで書かれていた。姉の字とは思えないそれは途中で途切れていた。違和感が少しずつ大きくなってきた。それと頭痛も。
8月 計画通り地下室に呼ばれた。父に打たれた注射のせいか、体が鉛のように重く固くなった。視界だけが残った意識の中で、椅子から姉が立ち上がったのが見えた。
世界が光に包まれた。
9月 「は? おっかしー。これで3人目、君たち空気読んでよね」倒れた父と妹の隣で猫目の少女が不機嫌な顔で私を見上げていた。
「あっ、ぁぁぁぁ! どうして、どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして」
「妹が死んで壊れちゃったんだ、残念だけど僕にはどうしようもない。どうせ世界は終わるんだから、ちょっと我慢してれば済むわ」
10月 ガラクタでいっぱいの山にぼんやりとした赤い光が灯った。
10月 ある日突然議員である父に呼ばれた。事務所に入ると先に姉が部屋の中に居た。私を見るなり笑顔で手を控えめに振った。会釈を返して姿を現した父に視線を移す。
11月 定期的に送られてきていた姉からの連絡が途絶えた。呆れられでもしたのだろうか、それならそれで私にとっては好都合だった。
12月 大学の友だちと遊んだ帰りに父の事務所に寄った、机の上に置かれた注射器を眺めていると、父は不自然なほど注射器を机にしまって私をすぐに家に返した。
1月 大学の教授から姉からの連絡が途絶えたと言われた。提出するレポートやテストも今までは完璧だったため、何かあったのではないかと聞かれた。そんな事を聞かれても知らないし、私は劣等感こそあれど、関心なんて無かった。
2月 父が私を再び事務所に呼んだ。注射器を見た日から不信感が拭えずに行くか悩んだが、特に深く考えずに父の元に行った。
3月 事務所の地下に機械に繋がれた姉が居た。父は世界を救う唯一の方法だと言う。父は通称デストルドーと呼ばれた姉の前に膝を着き、私に言った。人類が欲動を取り戻すための鍵になる。
4月 私は姉になり、代わりに私の葬式が行われた。母は酷く泣き崩れ、日に日に目の下のクマと疲労を濃くして数日後に入院した。私は死んだ。
5月 私とよく遊んでいた友だちが教室で静かに座っていた。ここに居ると漏らしかけた言葉を飲み込む。対称的な性格の優等生な姉になるのはまだ時間が掛かりそう。
6月 生徒会にも馴染んで少しずつ友だちも元気を取り戻しつつある。自分の席に間違えて座りそうなこともなくなり始めた。少しだけ髪が伸びてきて邪魔になってきた。
7月 姉の部屋で本を見つけた。父の異変と計画の内容が殴り書きで書かれていた。姉の字とは思えないそれは途中で途切れていた。違和感が少しずつ大きくなってきた。それと頭痛も。
8月 計画通り地下室に呼ばれた。父に打たれた注射のせいか、体が鉛のように重く固くなった。視界だけが残った意識の中で、椅子から姉が立ち上がったのが見えた。
世界が光に包まれた。
9月 「は? おっかしー。これで3人目、君たち空気読んでよね」倒れた父と妹の隣で猫目の少女が不機嫌な顔で私を見上げていた。
「あっ、ぁぁぁぁ! どうして、どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして」
「妹が死んで壊れちゃったんだ、残念だけど僕にはどうしようもない。どうせ世界は終わるんだから、ちょっと我慢してれば済むわ」
10月 ガラクタでいっぱいの山にぼんやりとした赤い光が灯った。
0
お気に入りに追加
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
【完結】神様に嫌われた神官でしたが、高位神に愛されました
土広真丘
ファンタジー
神と交信する力を持つ者が生まれる国、ミレニアム帝国。
神官としての力が弱いアマーリエは、両親から疎まれていた。
追い討ちをかけるように神にも拒絶され、両親は妹のみを溺愛し、妹の婚約者には無能と罵倒される日々。
居場所も立場もない中、アマーリエが出会ったのは、紅蓮の炎を操る青年だった。
小説家になろう、カクヨムでも公開していますが、一部内容が異なります。
義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方
ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。
注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。
悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。
三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。
何度も断罪を回避しようとしたのに!
では、こんな国など出ていきます!
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
どうも、死んだはずの悪役令嬢です。
西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。
皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。
アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。
「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」
こっそり呟いた瞬間、
《願いを聞き届けてあげるよ!》
何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。
「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」
義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。
今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで…
ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。
はたしてアシュレイは元に戻れるのか?
剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。
ざまあが書きたかった。それだけです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる