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【12】
「決戦編に向けて――」②
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MANSUKE―BEの舞台となっていた山々の麓。
立ち並ぶたくさんの店はこの時期、MANSUKE―BEの観戦者やテレビ撮影班など、大勢の客でにぎわっている。
比較的、客数が少ない喫茶店。
がらがらに空いているテラス席に座り、ネラリはバターたっぷりの10段ホットケーキをむさぼっていた。
ネラリのマスクは真ん中が開閉する仕組みになっており、飲食の際にはマスクを外さずとも口だけが出せるようになっている。
汚れた時の洗い替えマスクも常備している周到さだ。
「ビックラおったまげましたぜぇ。
テレビ視聴してっと、偶然にもセンジってのが崖から競技者を助けてるのが映りやしてね。
そんで慌てて駆けつけてみりゃ、アルヴェンソのだんなとセンジってのがサシで勝負おっぱじめる始末でさぁ~」
「うっせえな。静かに食えよっ」
煎路はタンクトップ姿でベンチに仰け臥し、冷たいタオルを額に当てすっかり伸びてしまっている。
「病院行かなくて大丈夫かい? こんな格好で寒いだろう?
屋内に入りなってば」
ベクセナは店から借りた救急箱をイスに置き、モコモコの小さな手で煎路の頬や腕の切り傷を消毒するなど、せっせと介抱していた。
クッペの手では、ところどころ切られてしまった煎路の上衣を繕う事はできないが、
母として、これまでしてやれなかった事を可能な限りしてやりたかったのだ。
「寒い方が気持ちいいんだよ。だいたい、こんな傷くれえで病院なんて大げさだろ。
クッソォ~! 傷口がヒリヒリするぜぇ~ こんな切り刻まれるなんて最悪だぁ~ 全身もだりぃ~
あのオラオラ野郎めぇ……!」
「この程度ですんだのは奇跡だよ。
正義感強いのはいいけどさ。煎路、アンタ無謀すぎるんだよ。結局はスタッフのみんなも巻きこんじまったろう?
反省してんのかい? 一時はどおなることかと肝を冷やしたんだからねっ」
「あっしに感謝してもらいて~ですぜ?
あのままだったらアルヴェンソのだんなを本気にさせちまうとこでしたよ」
「……アイツ、やっぱまだまだ本気じゃなかったんかよ」
「当ったりめえですわ。だんなが本気出しゃあ、こんくらいでは到底すまされませんでしたぜ?
ですが……センジっての。オタクも予想以上のパワーをお持ちのようで。正直ぶったまげましたぜ」
「ネラリっつったな。おめえ、いつから見てたんだよ」
「オタクがだんなにケンカ売った時からずっと見てましたぜ?
訳あって、すぐには止めずしばらくオタクの戦いっぷりを観察させてもらいやしたがね。
あるお方がオタクに興味を持たれてるんでさ」
「あるお方だぁ? ネラリ、いったいどおゆうワケがあるんだよ。
マリちゃんとグルになって俺を騙したのも関係あんのかよ」
喫茶店へ来る道中、煎路はネラリから、ローズマリーはビスクドールではないという衝撃の事実を明かされていた。
「マリちゃん? ああ、お姫三……じゃねえ、お嬢さんのことですかい? いやいや、そいつぁ全くの無関係でさっ。
お嬢さんはオタクの変質者っぷりに恐れをなして、そんで騙して逃げ出しただけでさっ」
「はあっ? ふざけんじゃないよっ! 煎路は変質者なんかじゃないからねっ!!」
最愛の息子を変質者呼ばわりされ、ベクセナは憤慨した。
ネラリの顔まで飛んでいき、ガーゼをつまんでいたピンセットをサングラスに突きつける。
「あわわわわっ。危ねぇっての!!
オタクはセンジってののなんなんでえ!?」
「私は母……! ハ、ハハッ。愉快な仲間だよっ」
母とは名乗れず、ベクセナは一転、笑ってごまかしつつピンセットをしぶしぶ下ろした。
「まあ……マリちゃんが魔女の呪いにかかってなかったんなら、それはそれで良かったけどよ」
額にタオルを押し当てたまま、煎路はむっくりと身を起こした。
「センジっての。オタク、人形にされちまってたそうですが、
そおなった時の記憶はあるんですかい?」
ネラリもまた、道中、ついこないだまで煎路が人形だったという衝撃的な事実を聞かされていた。
「記憶? ああ……うろ覚えだけどよ。
カジノでボロ勝ちした後やたらがたいのいいオッサン二人が声かけてきやがってよ。
二人が魔女退治に行くってんで俺も一緒にブアイスディンテン山までついてったんだ。
俺はただ、マリちゃんを助けたくてな……」
(そこまでお姫三のことを……騙してすまねえ……)
「山を登れば登るほど嫌な空気になってきて、でっけえほら穴を発見してよ。
はっせんもオッサンらの魔馬もおびえちまって……ああ、はっせんてのは俺の魔馬だ。
ほら穴……そう、ほら穴から突然すんげえ光が出てきて吸いこまれたんだよ。
そっから先は……人形になった俺は拾われて人形屋に連れてかれてよ。
あんま可愛いもんだから店のいち推しでショーウィンドウに飾られてたってワケだ」
うろ覚えのわりには、煎路は細かく自分の身に起こった一部始終を説明した。
「声をかけてきたオッサン二人ってのは……?」
「さあな。あの後二人がどおなったのかは不明だけどよ。名前は確か……
『コーンフレーク』『ジャガイモの煮っころがし』って呼び合ってたっけなぁ~」
(バ、バカな……! 絶対そんな名前じゃねえはずだ……!
ん……? でも、待てよ?)
煎路が口にしたあり得ない名前から、ネラリはふと、知人である二人の名を連想した。
「ひょ、ひょっとしてその二人、ブレイクとジャガーって名じゃなかったですかい?」
「だからそお言ってんじゃねえかよっ」
「言ってねえですぜ! オタクが言ったんは食いもんの名称で人名じゃねえ!」
「どっちだっていいだろ?
それよりネラリ。あのオッサン二人、有名なのかよ?」
「へ? ま、まあ……」
「今度はそっちが答える番だぜ?
あのアルデベソってオラオラ野郎は何者なんだよ」
「そっちかーい!!」
話の流れ的にてっきりブレイクとジャガーの事をきかれるのかと思いきや、煎路が知りたがったのはアルヴェンソの事だった。
「煎路……アルデベソじゃなくてアルヴェンソだよ」
ベクセナはあきれ顔で、パタパタと煎路の隣りへ移動する。
「似たようなもんじゃねえか。
ギリタンベロといい虎次郎といい、魔界は舌噛みそうな名前が多くていけねえや。
で? アルのあんちゃんが自己紹介してやがった戦闘部隊ミドルってのは何だ?
リボヒターやマンスケスタッフらが言ってた『ウィード』ってやつなのか?」
「煎路。さっきも言ったけど、アッロマーヌの戦闘部隊は文字通り、戦闘のプロ集団なんだよ」
「その通り。部隊は上からトップ、ミドル、ベースに分かれてやしてね。
特にアルヴェンソのだんな率いるミドル部隊はイカれた連中の集まりで誰もうかつに近寄れやしねえ。
次のベース部隊がこれまた狂った連中の集まりで。
ただこのベース部隊、階級こそ一番下なんですが軍隊の土台となる重要な役どころでさぁ。
それだけに年配者が多く、ブレイクのだんなとジャガーのだんなが所属してるのがそこなんですわ」
「あのオッサンらも戦闘士だったのかよ!?
どおりで、普通のオッサンじゃねえと思ったぜ。
にしてもよ。下の二部隊がそんなんじゃあ一番上のトップ部隊が思いやられるよなぁ~」
「それが意外にも、トップだけは割と正当な典型的な軍人さんの集まりでして。
ミドルは超攻撃型、ベースも攻撃型なんですがトップは基本防御型なんですわ。
下の二部隊と違って純粋なアッロマーヌ人しか入れねえし、直属の上司も違うんでさぁ。
ぶっちゃけ、トップは普段はお飾りみてえなもんでして。
『ウィード』と呼ばれるのも下の二部隊だけですぜ。
トップの上司は軍の司令官でパジュイ王の近習、イワン将軍。
そんでもってミドル、ベースの上司はラベダワ王女の武術指南役でもあるベッケージュ陣督。
こちらのお二人がなんともまあ、バッチバチの関係でさぁ~
つうか、イワン将軍が何かにつけベッケージュ陣督をやっかんでるだけなんですけどねぇ」
「アッロマーヌはアッロマーヌでややっこしいんだな。
『超攻撃型』か。じゃねえとあんなおっかねえ凶器出せやしねえよなっっ。殺人部隊じゃねえかよっっ」
煎路はもっぱら、アルヴェンソの事で頭がいっぱいだ。
「だけどあのアルヴェンソって子、どうしてMANSUKE―BEに出場したんだろうねぇ」
「ストレス発散じゃねえですか?
ミドルとベースは今、ある訳柄があって派手には動けねーようですからねぇ」
「派手に動いてんじゃねえかよ。よその国で一般人相手に暴れるなんてよ」
「それから気になってたんだけどね。
ウィルソンて三男坊、ガフェルズ王家無討団の討士なのかい? 電話を受けて急いで出かけてったろう?
あの兄弟、ドリンガデス人なのかアッロマーヌ人なのかいったいどっちなんだい?」
「アルヴェンソのだんなと次男のジブノッカはドリンガデス人ですがね。
ちっとばかり複雑な家庭らしいですわ。
あっしも詳細は分かりませんが……
ただ、ウィルソンとジブノッカはベクッペさんのおっしゃる通り無討団ですぜ。
このジブノッカってのがまたまたヤバい奴でさぁ~
センジっての、いいですかい? 万が一どっかで会ったとしても関わらないのが身のためですぜ?」
サングラスの下から目を光らせ、ネラリは煎路に釘を刺した。
「あ……! そりゃそおと、センジっての。
『表の顔は秋の涼風だが、裏の顔は風ひとつ吹かない真夏に汗だくでベタベタベッタリべトリンコ』ってぇ、どなたの事で?
それにオタク、鉄鍋とやらをかぶっていたそおで。何が目的なんでさぁ?」
「……ネラリ、てめえ。
戦闘部隊やアルのあんちゃんやオッサンらのことやけに詳しいけどよ。
なんだって俺のことまでそんな詳しいんだ!!
てめえ、もしかしてギリタンベロの……いや、アニキの回し者じゃねーのか!?
煎路は勢いよく立てり、ネラリの肩につかみかかった。
「白状しねえとその妙なマスクとサングラス、はぎ取っちまうぞ!!」
「ぬわぬわ、ぬわ~にするんでさっっ!!
マスクだけは勘弁してくだせえっっ!! 鼻水クシャミが止まらなくなっちまう!!
ギリタンベロだのアニキだのっっ、回し者ってなんなんでいっっ!!」
「アニキはアニキ! 俺のアニキだよっ!
だんまりエロアニキの実態調査を闇商人に依頼したこと、なんでお前が知ってやがるんだ!?」
「待ちな、煎路っ! 自分の兄ちゃんだろう!? なんて言い草だい!?
調査って……アンタまさか、兄ちゃんのこと疑ってんのかい!?」
これにはベクセナも聞き捨てならず、思わず煎路の頭へ飛び乗り髪の毛をグイグイと引っぱった。
「疑ってるのはアニキの方だぜっ。
普段から俺を『悩みの種だ』っつって、全然信用してねえんだからなっ。
痛えなっ、ベクッペ! 離れろよっ!!」
煎路はネラリから手を離すと、今度はベクセナの体をつかみ取ってベンチに置き、その横にストンと腰を落とした。
「昔っからそおなんだ。なんかあってもいっつも涼しげな顔でいやがってよ。
俺にはろくに相談もしてくれねえし……そのくせ俺をトラブル製造機扱いでネチネチ監視しやがってよ。
とにかく、俺とは正反対すぎて腹ん中どうなってんのか理解したくてもできやしねーんだよ」
「……煎路……」
「センジっての、お、お兄さんがいるんでやすかっ。それはそれは、正反対で良かった良かった!!」
煎路が落ち着いている間にと、ネラリは食べ途中のホットケーキにがっついた。
「あのさぁ、煎路。
焙……お兄さんは、アンタを信用してないワケじゃないんだよ。
アンタがさっきみたいな無茶やらかすもんだから、心配でたまらないんじゃないのかな。
アンタに相談しないのだって、不安にさせたくないだけなんだよ、きっと。
ほら、アンタ自身が語ってたじゃないか。アルヴェンソとおんなじで、責任とか一人で背負いこんじまう長男気質だってさ」
「お、おんなじじゃねえよっっ!!
アニキは愛想は悪いがアルデベソみてえに人を脅したり襲ったりなんかしねえっっ!!
いくらなんでもあんなクソ野郎と俺のアニキをおんなじにするんじゃねえよ、べクッペ!!」
焙義とアルヴェンソを同類にした自分の台詞も、焙義に対する不満を漏らした今の自分もすっかり忘れ去り、
煎路は声を荒げてベクセナに目をむいた。
だが、そんな煎路を見てベクセナはホッとした。
(……ホント、アンタって子は勝手なんだから。
でも安心したよ。焙義のためにこんなムキになるなんて、アンタやっぱり焙義が大好きなんだよね。
兄弟仲良くしてくれてるんだね……)
母であるベクセナにとっては、煎路に会えた事以上の喜びだった。
「センジっての。そりゃ仕方のねえことですぜ。
てんで自覚がねえようですが、オタク、けっこう周りに猛威をふるってますからねぇ。
オタクと絡んじまうと最後、良くも悪くもみんな心にオタクの爪痕が強烈に残るんでさぁ。
オタクのお兄さんのハラハラ具合、お察ししますぜ」
ホットケーキを全段無事にたいらげ、歯と歯の隙間を楊枝でいじりつつネラリは言った。
「決めやした。あっしはこれまでの経緯を包み隠さずお話いたしやす。
あっしにセンジってのを調べるよう命じたお方のこともお話いたしやす。
オタクら、なんとなく信頼できる方々のようですしね」
「な、なんだよ。信頼って……唐突だな。なんか魂胆でもあんのかよ」
「特に根拠はねえですが、人を信じるのに理由なんざいりやせん。
そのかわり、センジってのもあっしを信じてくださるなら、これまでのこと洗いざらい話してくだせえ」
サングラスの奥の、ネラリの真剣なまなざしを透かし見た煎路は、
ネラリを信頼しても問題はないだろうと本能で感じとっていた。
少なくとも、悪人ではないのだと。
「信じるのに根拠も理由もいらねえか……
時間もな。
いいぜ? おめえを信じてやるよ」
「ヘヘッ。ありがてえこって」
ネラリは腰を上げ、楊枝をくわえたまま片手を伸ばし、煎路に手の甲を向けた。
煎路も片手を上げてネラリに手の甲を向ける。
二人は今日が初対面でありながら、互いの手の甲を合わせて絆を確かめ合った。
「話し合った後はトレーニング開始しねえとな。
アルのあんちゃんと戦って実感したぜ。自分がどんだけ弱えかってよ……
でっけえ武器を出したところで、あんちゃんみてえに軽く魔力でコントロールできるようにならねえと、この魔界では絶対に勝てねえ……!」
「煎路……」
「ベクッペ。お前は多分“その道”に精通してるんだろ?」
「え……!?」
「黙ってたってバレバレなんだよ。おめえの身のこなし、ただ者じゃねーからな。
戦闘士だの無討団だの、ネラリみたくよく知ってるしよ。
癒しの魔族の姿になってるのも、よっぽどの事情があるんだろ?
魔女の仕業じゃあねえよな?」
「……」
思いがけない煎路の問いかけにベクセナはひと言も答えられず、小さくうなずくよりほかなかった。
「ベクッペ! そこで頼みがある! 俺に……俺に教えてくれ!」
「お……教える……?
煎路、アンタ……」
負けず嫌いな煎路の事だ。
アルヴェンソの完璧な強さと、己の完全な敗北は我慢ならないほど悔しかったはず。
おそらく、魔界の剛の者らと戦う術を教授してくれと、ベクセナに懇願するのだろう。
と、思いきや……
「教えてくれ、ベクッペ! あ、ネラリでもいいや。
一番安く手っ取り早く、アッロマーヌへ行く方法をよっっ」
「ア、アッロマーヌへ!?」
煎路が放ったのは、意表を突く、まるで想定外の言葉だった。
「アッロマーヌって……アンタ、アルヴェンソに再戦申し込むつもりなのかい!?」
「こてんぱんにやられたばっかりですぜ?
次こそ命の保証はねえっっ」
「そおじゃねえよ。すぐに行くワケじゃねえし仕返しするワケでもねえ。
今のまんまの俺なら、なんべん挑んだところでこっぴどく負けちまうんだろーしな。
じゃなくて、俺はアルのあんちゃんに学びてえんだ。
プロの戦い方をな!!」
「はあ~~っっ??」「アルヴェンソのだんなにっっ!?」
「煎路っっ。アンタ『クソ野郎』とか怒ってたくせに!!」
「弟子入り志願するつもりですかい!?
んなムチャクチャなっ!
よしんばなれたとしても、こ、殺されちまいますぜっっ。
だんなは弟子にだって情け容赦なんかねえっ!
付いてけねえ者はへっちゃらで見殺しですぜ!!」
「だからだよ。
だから俺はあんちゃんに習いてえんだ。
本物の戦闘を習うのに情け容赦なんかあるだけジャマだ……!!」
「せ、煎……」
息子、煎路のいつにないシリアスな目色。
全身からは、我が子ながらゾッとする程の異様な闘志がにじみ出ている。
ベクセナは声を失っていた。
「ま、そおゆうことだからよ。
リボヒター見舞ったら、アッロマーヌへ発つ前にアニキ達やシモーネに会いにいったんブアイスディーへ戻るぜ」
――どこまでも、煎路の発想は突拍子もなくとことんズレている。
だが、こうと決めたら猪突猛進あるのみの煎路を制止するなど、
『凍ってるの魔塔』を制覇するよりも難しい。
そして、ベクセナは、息子の体内に巡る血の騒ぎを思う時、その胸中は穏やかではいられなかった。
煎路にも、もう一人の息子、焙義にも、確実に引き継がれているのだ。
魔族と人間の間に生まれた混血の限界を根底から覆す、
脈々たる争闘の血が――
立ち並ぶたくさんの店はこの時期、MANSUKE―BEの観戦者やテレビ撮影班など、大勢の客でにぎわっている。
比較的、客数が少ない喫茶店。
がらがらに空いているテラス席に座り、ネラリはバターたっぷりの10段ホットケーキをむさぼっていた。
ネラリのマスクは真ん中が開閉する仕組みになっており、飲食の際にはマスクを外さずとも口だけが出せるようになっている。
汚れた時の洗い替えマスクも常備している周到さだ。
「ビックラおったまげましたぜぇ。
テレビ視聴してっと、偶然にもセンジってのが崖から競技者を助けてるのが映りやしてね。
そんで慌てて駆けつけてみりゃ、アルヴェンソのだんなとセンジってのがサシで勝負おっぱじめる始末でさぁ~」
「うっせえな。静かに食えよっ」
煎路はタンクトップ姿でベンチに仰け臥し、冷たいタオルを額に当てすっかり伸びてしまっている。
「病院行かなくて大丈夫かい? こんな格好で寒いだろう?
屋内に入りなってば」
ベクセナは店から借りた救急箱をイスに置き、モコモコの小さな手で煎路の頬や腕の切り傷を消毒するなど、せっせと介抱していた。
クッペの手では、ところどころ切られてしまった煎路の上衣を繕う事はできないが、
母として、これまでしてやれなかった事を可能な限りしてやりたかったのだ。
「寒い方が気持ちいいんだよ。だいたい、こんな傷くれえで病院なんて大げさだろ。
クッソォ~! 傷口がヒリヒリするぜぇ~ こんな切り刻まれるなんて最悪だぁ~ 全身もだりぃ~
あのオラオラ野郎めぇ……!」
「この程度ですんだのは奇跡だよ。
正義感強いのはいいけどさ。煎路、アンタ無謀すぎるんだよ。結局はスタッフのみんなも巻きこんじまったろう?
反省してんのかい? 一時はどおなることかと肝を冷やしたんだからねっ」
「あっしに感謝してもらいて~ですぜ?
あのままだったらアルヴェンソのだんなを本気にさせちまうとこでしたよ」
「……アイツ、やっぱまだまだ本気じゃなかったんかよ」
「当ったりめえですわ。だんなが本気出しゃあ、こんくらいでは到底すまされませんでしたぜ?
ですが……センジっての。オタクも予想以上のパワーをお持ちのようで。正直ぶったまげましたぜ」
「ネラリっつったな。おめえ、いつから見てたんだよ」
「オタクがだんなにケンカ売った時からずっと見てましたぜ?
訳あって、すぐには止めずしばらくオタクの戦いっぷりを観察させてもらいやしたがね。
あるお方がオタクに興味を持たれてるんでさ」
「あるお方だぁ? ネラリ、いったいどおゆうワケがあるんだよ。
マリちゃんとグルになって俺を騙したのも関係あんのかよ」
喫茶店へ来る道中、煎路はネラリから、ローズマリーはビスクドールではないという衝撃の事実を明かされていた。
「マリちゃん? ああ、お姫三……じゃねえ、お嬢さんのことですかい? いやいや、そいつぁ全くの無関係でさっ。
お嬢さんはオタクの変質者っぷりに恐れをなして、そんで騙して逃げ出しただけでさっ」
「はあっ? ふざけんじゃないよっ! 煎路は変質者なんかじゃないからねっ!!」
最愛の息子を変質者呼ばわりされ、ベクセナは憤慨した。
ネラリの顔まで飛んでいき、ガーゼをつまんでいたピンセットをサングラスに突きつける。
「あわわわわっ。危ねぇっての!!
オタクはセンジってののなんなんでえ!?」
「私は母……! ハ、ハハッ。愉快な仲間だよっ」
母とは名乗れず、ベクセナは一転、笑ってごまかしつつピンセットをしぶしぶ下ろした。
「まあ……マリちゃんが魔女の呪いにかかってなかったんなら、それはそれで良かったけどよ」
額にタオルを押し当てたまま、煎路はむっくりと身を起こした。
「センジっての。オタク、人形にされちまってたそうですが、
そおなった時の記憶はあるんですかい?」
ネラリもまた、道中、ついこないだまで煎路が人形だったという衝撃的な事実を聞かされていた。
「記憶? ああ……うろ覚えだけどよ。
カジノでボロ勝ちした後やたらがたいのいいオッサン二人が声かけてきやがってよ。
二人が魔女退治に行くってんで俺も一緒にブアイスディンテン山までついてったんだ。
俺はただ、マリちゃんを助けたくてな……」
(そこまでお姫三のことを……騙してすまねえ……)
「山を登れば登るほど嫌な空気になってきて、でっけえほら穴を発見してよ。
はっせんもオッサンらの魔馬もおびえちまって……ああ、はっせんてのは俺の魔馬だ。
ほら穴……そう、ほら穴から突然すんげえ光が出てきて吸いこまれたんだよ。
そっから先は……人形になった俺は拾われて人形屋に連れてかれてよ。
あんま可愛いもんだから店のいち推しでショーウィンドウに飾られてたってワケだ」
うろ覚えのわりには、煎路は細かく自分の身に起こった一部始終を説明した。
「声をかけてきたオッサン二人ってのは……?」
「さあな。あの後二人がどおなったのかは不明だけどよ。名前は確か……
『コーンフレーク』『ジャガイモの煮っころがし』って呼び合ってたっけなぁ~」
(バ、バカな……! 絶対そんな名前じゃねえはずだ……!
ん……? でも、待てよ?)
煎路が口にしたあり得ない名前から、ネラリはふと、知人である二人の名を連想した。
「ひょ、ひょっとしてその二人、ブレイクとジャガーって名じゃなかったですかい?」
「だからそお言ってんじゃねえかよっ」
「言ってねえですぜ! オタクが言ったんは食いもんの名称で人名じゃねえ!」
「どっちだっていいだろ?
それよりネラリ。あのオッサン二人、有名なのかよ?」
「へ? ま、まあ……」
「今度はそっちが答える番だぜ?
あのアルデベソってオラオラ野郎は何者なんだよ」
「そっちかーい!!」
話の流れ的にてっきりブレイクとジャガーの事をきかれるのかと思いきや、煎路が知りたがったのはアルヴェンソの事だった。
「煎路……アルデベソじゃなくてアルヴェンソだよ」
ベクセナはあきれ顔で、パタパタと煎路の隣りへ移動する。
「似たようなもんじゃねえか。
ギリタンベロといい虎次郎といい、魔界は舌噛みそうな名前が多くていけねえや。
で? アルのあんちゃんが自己紹介してやがった戦闘部隊ミドルってのは何だ?
リボヒターやマンスケスタッフらが言ってた『ウィード』ってやつなのか?」
「煎路。さっきも言ったけど、アッロマーヌの戦闘部隊は文字通り、戦闘のプロ集団なんだよ」
「その通り。部隊は上からトップ、ミドル、ベースに分かれてやしてね。
特にアルヴェンソのだんな率いるミドル部隊はイカれた連中の集まりで誰もうかつに近寄れやしねえ。
次のベース部隊がこれまた狂った連中の集まりで。
ただこのベース部隊、階級こそ一番下なんですが軍隊の土台となる重要な役どころでさぁ。
それだけに年配者が多く、ブレイクのだんなとジャガーのだんなが所属してるのがそこなんですわ」
「あのオッサンらも戦闘士だったのかよ!?
どおりで、普通のオッサンじゃねえと思ったぜ。
にしてもよ。下の二部隊がそんなんじゃあ一番上のトップ部隊が思いやられるよなぁ~」
「それが意外にも、トップだけは割と正当な典型的な軍人さんの集まりでして。
ミドルは超攻撃型、ベースも攻撃型なんですがトップは基本防御型なんですわ。
下の二部隊と違って純粋なアッロマーヌ人しか入れねえし、直属の上司も違うんでさぁ。
ぶっちゃけ、トップは普段はお飾りみてえなもんでして。
『ウィード』と呼ばれるのも下の二部隊だけですぜ。
トップの上司は軍の司令官でパジュイ王の近習、イワン将軍。
そんでもってミドル、ベースの上司はラベダワ王女の武術指南役でもあるベッケージュ陣督。
こちらのお二人がなんともまあ、バッチバチの関係でさぁ~
つうか、イワン将軍が何かにつけベッケージュ陣督をやっかんでるだけなんですけどねぇ」
「アッロマーヌはアッロマーヌでややっこしいんだな。
『超攻撃型』か。じゃねえとあんなおっかねえ凶器出せやしねえよなっっ。殺人部隊じゃねえかよっっ」
煎路はもっぱら、アルヴェンソの事で頭がいっぱいだ。
「だけどあのアルヴェンソって子、どうしてMANSUKE―BEに出場したんだろうねぇ」
「ストレス発散じゃねえですか?
ミドルとベースは今、ある訳柄があって派手には動けねーようですからねぇ」
「派手に動いてんじゃねえかよ。よその国で一般人相手に暴れるなんてよ」
「それから気になってたんだけどね。
ウィルソンて三男坊、ガフェルズ王家無討団の討士なのかい? 電話を受けて急いで出かけてったろう?
あの兄弟、ドリンガデス人なのかアッロマーヌ人なのかいったいどっちなんだい?」
「アルヴェンソのだんなと次男のジブノッカはドリンガデス人ですがね。
ちっとばかり複雑な家庭らしいですわ。
あっしも詳細は分かりませんが……
ただ、ウィルソンとジブノッカはベクッペさんのおっしゃる通り無討団ですぜ。
このジブノッカってのがまたまたヤバい奴でさぁ~
センジっての、いいですかい? 万が一どっかで会ったとしても関わらないのが身のためですぜ?」
サングラスの下から目を光らせ、ネラリは煎路に釘を刺した。
「あ……! そりゃそおと、センジっての。
『表の顔は秋の涼風だが、裏の顔は風ひとつ吹かない真夏に汗だくでベタベタベッタリべトリンコ』ってぇ、どなたの事で?
それにオタク、鉄鍋とやらをかぶっていたそおで。何が目的なんでさぁ?」
「……ネラリ、てめえ。
戦闘部隊やアルのあんちゃんやオッサンらのことやけに詳しいけどよ。
なんだって俺のことまでそんな詳しいんだ!!
てめえ、もしかしてギリタンベロの……いや、アニキの回し者じゃねーのか!?
煎路は勢いよく立てり、ネラリの肩につかみかかった。
「白状しねえとその妙なマスクとサングラス、はぎ取っちまうぞ!!」
「ぬわぬわ、ぬわ~にするんでさっっ!!
マスクだけは勘弁してくだせえっっ!! 鼻水クシャミが止まらなくなっちまう!!
ギリタンベロだのアニキだのっっ、回し者ってなんなんでいっっ!!」
「アニキはアニキ! 俺のアニキだよっ!
だんまりエロアニキの実態調査を闇商人に依頼したこと、なんでお前が知ってやがるんだ!?」
「待ちな、煎路っ! 自分の兄ちゃんだろう!? なんて言い草だい!?
調査って……アンタまさか、兄ちゃんのこと疑ってんのかい!?」
これにはベクセナも聞き捨てならず、思わず煎路の頭へ飛び乗り髪の毛をグイグイと引っぱった。
「疑ってるのはアニキの方だぜっ。
普段から俺を『悩みの種だ』っつって、全然信用してねえんだからなっ。
痛えなっ、ベクッペ! 離れろよっ!!」
煎路はネラリから手を離すと、今度はベクセナの体をつかみ取ってベンチに置き、その横にストンと腰を落とした。
「昔っからそおなんだ。なんかあってもいっつも涼しげな顔でいやがってよ。
俺にはろくに相談もしてくれねえし……そのくせ俺をトラブル製造機扱いでネチネチ監視しやがってよ。
とにかく、俺とは正反対すぎて腹ん中どうなってんのか理解したくてもできやしねーんだよ」
「……煎路……」
「センジっての、お、お兄さんがいるんでやすかっ。それはそれは、正反対で良かった良かった!!」
煎路が落ち着いている間にと、ネラリは食べ途中のホットケーキにがっついた。
「あのさぁ、煎路。
焙……お兄さんは、アンタを信用してないワケじゃないんだよ。
アンタがさっきみたいな無茶やらかすもんだから、心配でたまらないんじゃないのかな。
アンタに相談しないのだって、不安にさせたくないだけなんだよ、きっと。
ほら、アンタ自身が語ってたじゃないか。アルヴェンソとおんなじで、責任とか一人で背負いこんじまう長男気質だってさ」
「お、おんなじじゃねえよっっ!!
アニキは愛想は悪いがアルデベソみてえに人を脅したり襲ったりなんかしねえっっ!!
いくらなんでもあんなクソ野郎と俺のアニキをおんなじにするんじゃねえよ、べクッペ!!」
焙義とアルヴェンソを同類にした自分の台詞も、焙義に対する不満を漏らした今の自分もすっかり忘れ去り、
煎路は声を荒げてベクセナに目をむいた。
だが、そんな煎路を見てベクセナはホッとした。
(……ホント、アンタって子は勝手なんだから。
でも安心したよ。焙義のためにこんなムキになるなんて、アンタやっぱり焙義が大好きなんだよね。
兄弟仲良くしてくれてるんだね……)
母であるベクセナにとっては、煎路に会えた事以上の喜びだった。
「センジっての。そりゃ仕方のねえことですぜ。
てんで自覚がねえようですが、オタク、けっこう周りに猛威をふるってますからねぇ。
オタクと絡んじまうと最後、良くも悪くもみんな心にオタクの爪痕が強烈に残るんでさぁ。
オタクのお兄さんのハラハラ具合、お察ししますぜ」
ホットケーキを全段無事にたいらげ、歯と歯の隙間を楊枝でいじりつつネラリは言った。
「決めやした。あっしはこれまでの経緯を包み隠さずお話いたしやす。
あっしにセンジってのを調べるよう命じたお方のこともお話いたしやす。
オタクら、なんとなく信頼できる方々のようですしね」
「な、なんだよ。信頼って……唐突だな。なんか魂胆でもあんのかよ」
「特に根拠はねえですが、人を信じるのに理由なんざいりやせん。
そのかわり、センジってのもあっしを信じてくださるなら、これまでのこと洗いざらい話してくだせえ」
サングラスの奥の、ネラリの真剣なまなざしを透かし見た煎路は、
ネラリを信頼しても問題はないだろうと本能で感じとっていた。
少なくとも、悪人ではないのだと。
「信じるのに根拠も理由もいらねえか……
時間もな。
いいぜ? おめえを信じてやるよ」
「ヘヘッ。ありがてえこって」
ネラリは腰を上げ、楊枝をくわえたまま片手を伸ばし、煎路に手の甲を向けた。
煎路も片手を上げてネラリに手の甲を向ける。
二人は今日が初対面でありながら、互いの手の甲を合わせて絆を確かめ合った。
「話し合った後はトレーニング開始しねえとな。
アルのあんちゃんと戦って実感したぜ。自分がどんだけ弱えかってよ……
でっけえ武器を出したところで、あんちゃんみてえに軽く魔力でコントロールできるようにならねえと、この魔界では絶対に勝てねえ……!」
「煎路……」
「ベクッペ。お前は多分“その道”に精通してるんだろ?」
「え……!?」
「黙ってたってバレバレなんだよ。おめえの身のこなし、ただ者じゃねーからな。
戦闘士だの無討団だの、ネラリみたくよく知ってるしよ。
癒しの魔族の姿になってるのも、よっぽどの事情があるんだろ?
魔女の仕業じゃあねえよな?」
「……」
思いがけない煎路の問いかけにベクセナはひと言も答えられず、小さくうなずくよりほかなかった。
「ベクッペ! そこで頼みがある! 俺に……俺に教えてくれ!」
「お……教える……?
煎路、アンタ……」
負けず嫌いな煎路の事だ。
アルヴェンソの完璧な強さと、己の完全な敗北は我慢ならないほど悔しかったはず。
おそらく、魔界の剛の者らと戦う術を教授してくれと、ベクセナに懇願するのだろう。
と、思いきや……
「教えてくれ、ベクッペ! あ、ネラリでもいいや。
一番安く手っ取り早く、アッロマーヌへ行く方法をよっっ」
「ア、アッロマーヌへ!?」
煎路が放ったのは、意表を突く、まるで想定外の言葉だった。
「アッロマーヌって……アンタ、アルヴェンソに再戦申し込むつもりなのかい!?」
「こてんぱんにやられたばっかりですぜ?
次こそ命の保証はねえっっ」
「そおじゃねえよ。すぐに行くワケじゃねえし仕返しするワケでもねえ。
今のまんまの俺なら、なんべん挑んだところでこっぴどく負けちまうんだろーしな。
じゃなくて、俺はアルのあんちゃんに学びてえんだ。
プロの戦い方をな!!」
「はあ~~っっ??」「アルヴェンソのだんなにっっ!?」
「煎路っっ。アンタ『クソ野郎』とか怒ってたくせに!!」
「弟子入り志願するつもりですかい!?
んなムチャクチャなっ!
よしんばなれたとしても、こ、殺されちまいますぜっっ。
だんなは弟子にだって情け容赦なんかねえっ!
付いてけねえ者はへっちゃらで見殺しですぜ!!」
「だからだよ。
だから俺はあんちゃんに習いてえんだ。
本物の戦闘を習うのに情け容赦なんかあるだけジャマだ……!!」
「せ、煎……」
息子、煎路のいつにないシリアスな目色。
全身からは、我が子ながらゾッとする程の異様な闘志がにじみ出ている。
ベクセナは声を失っていた。
「ま、そおゆうことだからよ。
リボヒター見舞ったら、アッロマーヌへ発つ前にアニキ達やシモーネに会いにいったんブアイスディーへ戻るぜ」
――どこまでも、煎路の発想は突拍子もなくとことんズレている。
だが、こうと決めたら猪突猛進あるのみの煎路を制止するなど、
『凍ってるの魔塔』を制覇するよりも難しい。
そして、ベクセナは、息子の体内に巡る血の騒ぎを思う時、その胸中は穏やかではいられなかった。
煎路にも、もう一人の息子、焙義にも、確実に引き継がれているのだ。
魔族と人間の間に生まれた混血の限界を根底から覆す、
脈々たる争闘の血が――
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