日本大戦〜日本が大変な事になりました〜

湯崎noa

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第4章・郡山市の戦い 編

097:鬼人

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097:鬼人
 結局のところ戦場で夜戦があったのは、田野丘軍の饒平名軍のところだけであった。
 最上が立ち去った後、饒平名軍も直ぐに立ち去ったが田野丘軍が受けた被害は甚大だった。
 すると直ぐにやってきた生山軍に、残党兵たちは拾われる形となったのである。
 月虎隊はそれらの軍とは逸れたが、伍長14人含む計50人で再起を目指そうとしていた。
 いや香さんが連れてきた5人も合わせて56人でだ。

 半分以下になった俺らは、傷が塞がる前に武器を手に取って歩みを始めるのである。
 すると少し行ったところの丘に、北星王国の旗が掲げられているのを発見した。
 あれはバラバラになった兵士たちを集めているのだと思って、そこを目指して出発する。
 しかし俺たちを待っていたのは日中軍だった。


「塩丈さま、北星軍の雑兵が現れました」

「かかかかっ! さっそく引っかかったか、北星の田舎猿どもが………殲滅せよ!」

『はっ!!!』


 塩丈は北星王国の旗を掲げて、そこに釣られてやってきた北星兵たちを皆殺しにする算段だった。
 それに引っかかった俺たちは、怪我をしている人間たちを中心に騎馬が登って来れない崖の上に登る。
 そして軽傷の人間たちが時間を稼ぐのだ。

 すると地面が揺れて地響きしている事に気がつく。
 どうなっているのかと思ったら、歩兵の1人が後方を指差して騎馬隊の大群が来たという。
 これも日中軍かと恐怖する。
 しかし現れたのは牛丸元帥率いる牛丸軍だった。


「北星軍の騎馬だっ! 来るぞぉ!」

「陣形を早く組め! 一騎も討ち漏らす事なく、全てを返り討ちにするんだ!」


 日中軍の騎馬隊たちは急いで隊列を組もうとする。
 そして塩丈の側近の男は「塩丈さま……まさか」と言って元帥の登場に驚愕するのである。


「う 牛丸元帥だっ!」

「へへ! すげぇ事になって来たぞ………ついに俺たちの総大将が出陣したんだ!」


 牛丸軍は塩丈軍と激しくぶつかり合う。
 元帥は旗を使って敵兵を騙すのは、塩丈ら辺だと思っていたらしいが、まさしく正解だった。


「第4軍を壊滅状態までやったのは、あの塩丈じゃないみたいだが仕方ないな。我々が受けた悲しみ………とりあえずは塩丈に支払ってもらおうか」


 元帥は塩丈の群の状態から見ても、昨日の夜に夜襲をかけたのは塩丈軍では無いと分かった。
 だがそれでも目の前にいるのは塩丈軍なので、昨日の惨劇の代償は塩丈に払ってもらうと言うのである。

 そんな元帥に対して塩丈は「ププププッ!」と笑って余裕をかましている。
 塩丈は自分の目の前に総大将である元帥が、首を差し出して来たと思っていて、さらにはそれは老いであり悲しいものだと嘲笑う。
 そして元帥自身が、どれだけ危険な状態に陥っているのかも理解していないと塩丈は言う。

 俺たちは崖の上から戦いを見ているのだが、元帥の軍隊が強いのは当然なのだが、塩丈軍の兵士たちも引くどころか前に出ていくのである。
 同じ日中軍でも倉智とはものが違うと感じる。
 しかもその中で異質な人間がいる。
 それが塩丈である。


「なんなんだ、あの大男はっ! 1人で何人も殺しまくってるぞ!」

「あの強さ……柳本中将並みだぞ!」


 俺たちは塩丈の強さに驚きを隠せない。
 強さだけならば柳本中将以上なのでは無いかと、思ってしまうくらいに暴れ回っている。
 しかし元帥の軍はアタフタしていない。
 塩丈が向かってくるのが分かると、直ぐに中央を固めるように側近の男たちが指示を出す。

 この時、副官である有寿中将は少し前の事を頭の中で再生していたのである。
 それは第3軍の軍団長である兼田少将の事だ。
 ここに出陣する前、有寿中将は兼田少将に呼び止められていたのである。


「殿をお守りする、お前たちに丁度いい話をしようと思ってな………塩丈は危険だ。1度やり合ったが討ち取るどころか、自分の身を守るので精一杯だった」

「な なに!? 貴殿がか?」

「奴の周囲も猛者たちで固められている………いいか? この先もしも塩丈に遭遇したとしても、奴を殿に近づけてはダメだ。奴の武力に関しては底がしれない」


 そう兼田少将は前に戦った際、討ち取るどころか自分の命を守るのに必死だったと言う。
 だからこそ塩丈の武力は底が知れず、そんな男を元帥に近づかせるのは危険だと忠告したのだ。
 その忠告通り塩丈は止まる事を知らないと言わんばかりに、牛丸軍の兵士たちを討ち取っていく。

 そこで元帥は後ろを振り向かずに、後ろで待機している有寿中将に「有寿……」と声をかける。
 そしてニヤッと大きく口角を上げて「行くぞ」と自分たちで突撃するのだと言うのである。
 有寿中将も大きい声で返事をして突撃を開始する。


「塩丈さま! こちらに向かって牛丸が突撃して来ますぞ!」


 この瞬間、塩丈もニヤッと笑う。
 この手で五大天魔将の1人で鬼人の異名を持つ元帥を迎え撃つ日を待っていた。
 もはや伝説となりつつある五大武将の実力は疑う余地は無いが、その時代に自分は居なかったと自信満々だ。
 ここにいる人間たちの前で元帥を討ち取って、元帥を超える怪物は自分であると示したいのだ。


「(牛丸よ、お前は過去の遺物だっ! これからは、この私が大和全土の戦場に君臨するんだ!)」


 そう思いながら塩丈は矛を振り上げる。
 しかし塩丈は絶句した。
 初めて元帥と対峙した瞬間、とてつもない大きさを実感したのだ。
 これは身長の大きい小さいでは無い。
 威圧感の話である。
 塩丈は自分の武力なんて、この目の前にいる鬼人・牛丸元帥の足元には及ばないのだと気がついた。
 そのまま元帥は自分の長巻を振り抜いた。
 そしてたった1発で塩丈を真っ二つにした。


「(兼田も塩丈も勘違いしている。強さの底が知れないのは………我らが殿の方だ)」


 どうして有寿中将が元帥の突撃を止めなかったのかというと、それは強さの底が知れないのは塩丈ではなく元帥の方だと言うのである。
 それが目の前で結果として出ている。
 元帥は無傷で、塩丈は真っ二つとなって地面に倒れて息絶えているという。

 塩丈が討たれた塩丈軍の兵士たちは、マズイと思って撤退していくのである。
 それを牛丸軍の人間たちは深追いせず、その場であしらってから怪我人の集めて治療を受けさせる。
 俺たちは元帥の前に整列して敬礼をする。
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