日本大戦〜日本が大変な事になりました〜

湯崎noa

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第4章・郡山市の戦い 編

069:武神

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069:武神
 花菱が使っている剣術は、何百年前に神に捧げる舞として考案されたもので、実戦よりも目で見る美しさを優先していたものだったと言う。
 しかし永興時代末期に、その形が変わったらしい。
 暴動の先頭に立っていた人間が、この舞を発見して実践向けに改良したのが起源だと話す。


「これが大和桃源教に伝わる剣術の真実だ」

「お前だけ狡く無いか!? なんか神さまを味方にしてるって感じでよぉ………」

「何も狡くは無いぞ。武将の中には、我々のように似た事をしている人もいる………まぁその人間は無意識でやってる人が多いんだろうがな」


 花菱たちが使っている技の真理を知った俺は、何とも神を仲間にしている感じで羨ましい。
 すると花菱は自分と同じように、無意識でやっている人もいると言うのである。
 そんな人がいるのかと若干引いている。

 俺たちが前線で、こんな風に苦労している事は王都である北都県に伝えられる事は無かった。
 しかし王都にある情報が伝えられる。
 それは合衆国軍側の総大将である。


「報告します! ようやく合衆国軍の総大将が分かりました!」

「誰じゃ申せ!」

「最上という者です!」


 伝令兵が伝えた名前は最上という名前だった。
 その名前を聞いて、ここにいる駒井外務卿・照内司令部長や文官たちがキョトンとしている。
 最上なんていう武将は聞いた事が無いからだ。
 しかし1人だけ反応がおかしかった。
 それは伊永内務卿である。
 この異変に気がついた駒井外務卿は、伊永内務卿に何かあったのかと聞いた。

 しかしそんな事が耳に入らないくらい驚いている。
 どうして最上が総大将なのか。
 あの時……9年前に最上は牛丸に殺されたはずだ。
 そんな事を考えていると、文官たちに心配されたので最上とは誰なのかを説明した。


「なにっ!? 五大天魔将の五膳は、最上に討たれただと!?」


 この話を聞いて驚かない人間はいないだろう。
 文官たちは、そんな話は聞いた事が無いや五膳が討たれたという事もである。
 そんな文官たちが質問攻めにしている中で、今度は駒井外務卿が質問をする。


「五大武将・五膳は病に臥して亡くなったと聞いていたが………違ったのか?」

「病死というのは牛丸とワシで作った話だ………五膳は最上に殺された、それが事実だ」


 五膳は病の果てに亡くなったと、元帥と伊永内務卿は報告していたが、実は最上に討たれたと真実を話す。
 それを聞いた文官たちは「それは紛れもなく隠蔽だ」や「立派な国家反逆罪だぞ」などと、色々な言葉で伊永内務卿を攻め立てるのである。
 しかし伊永内務卿は責められている事に怯えているのではなく、最上という人間が現れた事に怯えている。


「戦争中だったという事もある。だが認めるわけにはいかなかった………おの五膳が突然現れた無名の男に敗れたなどと。だから事実を隠し五膳は病死に、最上という男は居なかった事にした」


 伊永内務卿は今まで隠していた真実を話すのである。
 それを聞いている文官や駒井外務卿たちは、黙って話を聞くしか無かった。
 伊永内務卿の話が終わったところで、駒井外務卿は沙汰に関しては後で伝えるという。


「今は五大武将・五膳を破ったという男………此度の合衆国軍を率いる最上とは、どんな武将なのか聞かせてもらおうじゃ無いか」


 今は伊永内務卿を裁くよりも、五膳を討ち取った武将である最上とは、どんな武将なのかと聞いて来た。
 それに対し伊永内務卿が、1番最初に口にした言葉とは「武将では無い」だった。
 その言葉に、ここにいる人間たちが驚いた。


「あの男の事は、ほとんど分かっていないが、これだけは言える………あれは武将のように、人を率いるような類の人間では決してない!」


 その言葉を聞いて文官たちの頭には、さらに?マークが出ているのである。
 武将では無いのならば、何なのかと思った。


「あの男は完全な個。いや、あれはもっと………あれは悍ましいほどに純粋な武の結晶だ」


 話は9年前に遡る。
 あの男は王国軍15万の真ん中に1人で現れた。
 当時王国軍は、合衆国の領土であった〈郡山城〉を取り囲んでいたのである。
 最上が現れたのは2000人の精鋭兵が円陣で守っている、総大将・五膳の宿営地であった。


「止まれ! ここは大将軍の宿営であるぞ!」

「そこで止まり所属を名乗れ! 弓隊、構えぇ!」


 最上は矛を持ったまま無言で近寄ってくる。
 最初は警告から入って、それでも無視を貫いているので弓隊に準備をさせるのである。
 それを最上は弓を放たせる前に距離を潰し、たったの一振りで十数人を真っ二つにした。
 こんな光景を間近に見た人間は、精鋭とは言えども混乱を招いてしまった。

 しかし鉄壁と知られている五膳大将直属の衛兵は、迅速な対応を見せるのである。
 槍を上手く使う陣形で最上を取り囲む。
 だが最上の前には全てが無に還された。

 この話を聞かされた文官たちは、何も言えずに黙ってしまうのである。
 そりゃあ当たり前の話だ。
 こんな話は嘘だと思っても仕方ない。


「その者は、たった1人で総大将を守る布陣を突破したというのか?」

「あってはならない! 何万にものぼる敵と戦う為に、こちらも何万も集めて高度な戦術を持って、陣形・隊形を組む………それを1人で討ち破るという事は、軍そのものを否定する事に等しい。それはあってはならん事であり………起こり得ぬ事だ」

「だが実際に起こった事だ。最上は1人で円陣を突破して迎え撃った五膳を討ち取った」


 照内司令部長が信じられないのも無理はない。
 こんな話を信じてしまったら、これまで戦略だの陣形だの言っていた事が馬鹿らしくなってしまう。
 あるわけないというよりも、あってはならないという言葉の方が正しいのかもしれない。
 しかし実際に起こってしまった事なのだ。
 これは変える事のできない事実だ。


「その後、最上は?」

「騒ぎを聞きつけた牛丸に斬られた。あそこまで激情に駆られた牛丸を見たのは初めてだ………」


 騒ぎを聞きつけてやって来た元帥は、激情に駆られたまま最上に剣を振り下ろしたのである。
 すると最上は顎から胸にかけて大きな切り傷を負う。


「牛丸が最上を斬った………だが死んだと思われた最上は生きていて、かつ今その2人が両軍の総大将となって相見えようとしている………少々出来すぎでは?」

「おそらく牛丸は初めから知っていたのだろう。だから王国総大将を引き受けた………この戦いは9年前から深く刻まれている戦いになる」


 この戦いは牛丸元帥にとって、何よりも勝たなければいけない戦いだと言える。
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