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第1章・一族没落、国外亡命

008:エルフの女の子

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 逃げていった男の子たちに向かって唾を吐く。
 そして虐められていた女の子に駆け寄る。
 女の子は綺麗な金髪で顔は隠れているが、目に見える部分から色白色の綺麗な肌をしているのが分かる。
 きっと可愛いんだろうなと思いながら「大丈夫?」と優しく声をかけてみる。


「………」


 女の子は僕の言葉に反応しない。
 ただグスンッと鼻を啜るだけであった。

 まぁ毎日のように虐められてるんだな。
 それに助けはしたけど、僕も男だし嫌なイメージがあるんだろうなぁ………。
 ここは変に声をかけない方が良さそうだ。


「それじゃあ僕は行くから気をつけてね」


 僕はそういうと女の子に背を向けてメイドたちのところに戻ろうとした。
 しかし女の子が立ち上がり「待って!」という。
 そう言われたら止まらないわけにはいかないので、足を止めて振り返った。
 そこには綺麗な美人の女の子が立っていた。
 確かに幼いが大人になったら、これはかなりの美女になると分かるくらい全ての顔のパーツが整っている。

 おいおい。
 こんな美少女は前世にもいないぞ!
 これは成長したら《広瀬◯ず》《橋本環◯》《今◯美桜》とかも比にならないくらいの美女になるだろ!
 落ち着け落ち着け………。
 この子に興奮してるとロリコンだって思われるな。
 でも、ちょっと待てよ………今の僕って子供だから可愛いって思っても良いんじゃ無いか?

 そんな葛藤をしていると、さすがに話しかけて来ない僕に女の子の方から「あのぉ……」と声をかける。
 それでハッとしてアワアワしながら口を開く。


「ど どうかしたの?」

「助けていただきありがとうございます!」

「いやいや! 困ってる人がいて助けるのは当たり前の事だよ。それで君は………」


 女の子は素直に感謝を伝えてくれた。
 僕としては困っている人がいて助けただけなので、別に感謝されるような事じゃないと返す。
 そして女の子について話を聞きたいが、名前が分からないので「話を聞いて良い?」という雰囲気を作る。


「私の名前は《エルサ=リドホルム》です!」

「エルサさんね! それでアイツらが言っていた亜人種っていうのは? あっ答えたくなければ答えなくても良いからね!」

「いえ別に大丈夫です。言葉で話すよりも見て貰った方が早い感じですね」


 彼女は名前を教えてくれた。
 これからはエルサと呼ぼう。
 名前を知れたところで、僕はエルサに亜人種というのはどういう事なのかを聞く。
 見た目的には亜人種には見えない。
 するとエルサは見て貰った方が早いと言って、綺麗なブロンド髪を耳にかける。
 隠れていた耳が見えると僕は驚く。
 その耳は横に長くて尖っている。
 これはまさしくエルフの耳だ。


「おぉ! 生で初めて見た! 凄いなぁ………やっぱりエルフって可愛いんだな!」


 あっ。
 やってしまった。
 初めてのエルフを見てテンション上がってしまった。
 ほらほらエルサも、あまりの気持ちの悪さに引いてるじゃないか………。
 これはどうしたものか。

 僕がエルフに興奮してしまった。
 そのテンションにやられたエルサは、言葉を失って固まってしまっている。
 アワアワしながら取り成そうとする。
 しかしエルサはプハッと笑いましたのである。


「この町で、そういう反応をされたのは初めてだったのでつい………気を悪くしませんでしたか?」

「それにしても、いつもこんな風に虐められてるの?」

「そうです。この国では亜人種が珍しいみたいで、どうにも気味悪がられるんです………」


 亜人種が珍しいからと虐められているらしい。
 という事は家族も迫害されているのだろうか。
 そういうところも僕は聞きたいが、エルサからしたら嫌な事の可能性があって聞くに聞けない。


「それに私には家族がいないので、そういうところも含めて虐められているんじゃないでしょうか………」

「えっ!? それじゃあどうやって暮らしてるの?」

「ホームレスのような暮らしをしてます………」


 こんなに小さな子がホームレスのような暮らしをしているだと!?
 そんな世界って何なんだよ………。
 可愛いエルフの子がホームレスをしてるなんて、とてもじゃないが危険なんじゃないか?
 身売りされる可能性だってゼロじゃないだろうに。

 エルサがホームレスをやっている事に、とてもじゃないが僕は驚きを隠せない。
 こんなに小さくて可愛いエルフの女の子が、ホームレスをやっていたら身売りとか危険な事が多いんじゃ無いかと思ってしまう。
 すると僕はある事を思いついた。


「もし良ければ何だけどさ。僕の屋敷で僕の付き人をやらないか?」

「えっ!? 良いんですか! こんなエルフを雇って貰っても良いんですか?」

「こちらこそ良いの?」

「はい! 住むところに少しの食事を頂けるのなら有り難くやらせて頂きます!」


 僕は気がついたらエルサを勧誘していた。
 同い年くらいの人も欲しかったというのもある。
 ダメ元で頼んでみたら、想像していたよりも遥かに前に向きに引き受けてくれたのである。
 もちろん食事や住むところは僕の名において、どうにかオロフ大将軍に頼んでみせる。


「あっちなみに聞きたいんだけどさ………」

「はい? どんな事でも聞いて下さい!」

「エルサって魔法が使えたりする?」

「魔法ですか? 光・風・木属性の初歩魔法でしたら、少しだけ使えますよ?」


 おぉ!
 さすがはエルフと言ったところだろうか。
 ラノベで読んだみたいにエルフ族は魔力量が、他の種族よりも多いのだろうか?
 まぁとにかくメイドに加えて魔法使いの優秀な人材を確保してしまった!
 これは幸先が良いな!

 僕は優秀な人材を確保した事を喜びながら付人のメイドと執事たちに、エルサの事を紹介する。
 かなり真面目な性格なのか、エルサはメイドたちにペコペコと頭を下げている。
 そんなエルサを見たメイドたちは、きっと悪い子じゃないと思って歓迎する。
 あとはオロフ大将軍に了解を得るだけだ。
 
 どうだろう。
 もしかしたらオロフ大将軍にダメだと言うかも。
 でも、これは僕にとっては戦いだ!
 引き下がるわけにはいかない!


「え? 別に良いんじゃないか?」

「なっ!? そんな軽い感じで………」

「アインザック家の次期当主なんだから専属のメイドくらい居た方が良いだろ? しかしなんだぁ………可愛い子を連れてくるじゃねぇか」

「ちょ ちょっと! そんな言い方しなくても………」


 想定していたよりも遥かに軽くオッケーが出た。
 と言うよりも面白そうだから許可したんじゃないか。
 まぁとりあえず許可を貰えたから良かった。
 その話をしにエルサのいる部屋に向かう。


「オロフ将軍から許可が…で……た」


 部屋の扉を開くとエルサはメイド服を着ていた。
 可愛さに思わず、言葉を失ってしまう。
 エルサも頬を赤めて照れている。


「どうですか? 似合ってますか?」

「えっ? あっあぁ……とても似合ってるよ」

「良かったです………」


 こんなに照れるものなのか。
 異世界って良いなぁ。
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