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第3章・残念なドラゴンニュートの女の子

085:無関心な奴

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 俺たちは国王軍を倒し仕切り直して出発しようとしていたところに、新たに軍隊がやってきた。
 それが共和傭兵団の人間たちだと分かると、逃がしてくれるとは思わなかったので戦う覚悟を決める。


「さてと、どんな化け物が相手になるのかなぁ………」


 俺はエッタさんたちに雑魚狩りを任せて、俺は師団長クラスの人間に集中する。
 俺が集中したタイミングで騎馬隊が到着し、互いの間が10メートルくらいのところで止まった。


「お前らが、サブマスターを殺した冒険者だと解釈しているが、それで間違いはないだろうな?」

「あぁ何の間違いもないけど、アンタらは?」

「俺たちは共和傭兵団・第5師団………そして俺が師団長の《ノール=マイン=ファルバールド》だ」


 この師団長の目は苦手だ。
 何を見ているのだろうかと思う程に、俺を見ているが俺を見ていない感じがする。
 目は正気がなく飲み込まれてしまうのではないかと感じて、生唾をゴクッと飲むほどである。


「国王。いや、カホアール教団・教祖であるオリヴァー様の名において………お前たちを処刑する」

「そうかよ。そう簡単に、はいそうですねってなると思ったか? それ相応の対応はさせてもらうぞ!!」

「良いさ。結局は、この世から魂を放出する事になる………神スミカ様を崇めない人間は等しく地獄だ」

「とんだ神様を信じてるみたいだな………その目を命と引き換えに覚させてやるよ」


 やはり言う事は同じだった。
 この人間たちからすれば、俺たちは神の意志に反する人間で邪魔な存在なんだろう。
 しかし俺たちからすれば人を集め国を奪い、神の名を使って多くの人間たちを不幸にしている。
 そんな人間を許すわけにはいかない。
 ここで俺たちが共和傭兵団を打ち負かすしか、全ての人間に平穏を与える方法は存在しない。


「さてと早速だが始めようか………異端審問をなっ!!」

・スキル:高速移動魔法Level2
・スキル:斬撃魔法Level2
――――残像の太刀アフタリミッジ・スラッシュ――――

「残念だったな。手応えは良かっただろうが、この僕に魔法なんてチャチなものは通用しないよ………こっちの番だ」

―刀脚―

「うっ!? フランターヤが使ってた……マーシャルアーツって奴だったか?」


 俺は開幕早々に攻撃を当てたのであるが、ノール師団長は傷1つ無いどころか、無表情で涼しい顔をしていた。
 そのまま俺に対してマーシャルアーツの1つである《刀脚》を打って反撃してきた。
 それは何とか剣で防いだが、生身の足が剣に触れただけと言うのに剣と剣がぶつかった時の生々しい音がする。
 ここにきてマーシャルアーツの凄さを痛感する。


「魔法が通用しないだと? 何らかのバリアを出すオリジナルスキルとか………そういうわけじゃなさそうだな」

「考えはまとまったか? 今度は、こっちから行くぞ………」

―鉄拳―

「くっそ!! このパンチが重いんだよ………マーシャルアーツが面倒すぎるな!!」


 俺の頭の中は考えでグルグルッと回っている。
 しかしノールに魔法が効かない理由が思いつかない。
 そんな事を考えている時に、ノールが攻めてきて鉄拳で俺の腹を殴り飛ばす。
 なんとか鳩尾を防いで戦闘不能にはならなかったが、魔法が効かない理由を解明しなければ勝利は難しい。


「そんなに考えても分からないのか? スミカ様の素晴らしさも分からなければ、知能も大して高くないのか………これは神すらも手の施しようが無いな」

「止めるんじゃねぇよ!!」

・炎魔法Level1《ファイヤーボール》
・風魔法Level1《ウィンドボール》
・斬撃魔法Level3
―――獄炎の竜巻きヘルフレイム・ストーム―――

「だから何度、言ったら理解するんだ? 僕に魔法は通用しないと言っているだろ………そろそろイライラしてくるぞ」


 どうして俺の魔法が通用しないんだ。
 いや。俺の魔法が通用していないわけじゃ無い。
 誰の魔法であろうと、このノールという男の前では無効化されているのだろう。
 そうなれば魔法が、ノールに効かない理由というのは1つしか導き出されない。


「まさか魔法完全無効化のオリジナルスキルか………」

「やっと正解したのか。その通り……僕の持っているオリジナルスキルは《魔法無効化キャンセル》だよ」


 まさかまさかの魔法完全無効なのかよ。
 そりゃあ俺の魔法が通用するわけがない。
 この世界において魔法完全無効は、これ以上ない程に最強格のオリジナルスキルだろう。
 そこで俺には1つの疑問が頭の中に浮かぶのだが、その疑問とは本人は魔法を使えるのだろうかという事だ。


「1つ聞きたい事がある」

「なんだ? まぁ冥土の土産には、ちょうど良いかもな。1つだけ答えてやっても良いぞ」

「そうか。それは感謝しなきゃな………お前の魔法完全無効化は自分にも効くんじゃないのか?」

「へぇ。頭が悪いと思ったけど、そこには早く気がつくんだ……確かに僕も魔法を使用する事はできない。でも、それを補う程の体術を身につけたんだよ」


 そういう事か。
 マーシャルアーツを上手く使ってくると思ったが、相手の魔法を無効化する代わりに自分も使用できないというハンデを、マイナスに考えずプラスに変換させた。
 そこに関しては敵ながらに天晴れと言えて、体術だけならば俺よりも強いのかもしれない。
 しかし俺はノールが自分も魔法を使えないという事以外に、ある弱点があるのでは無いかと思っている。


「お前、もしかして身体強化系の魔法は防げないんじゃないか」

「ほぉ。そこに気がついたのは、お前が初めてだよ………思ったよりかはIQが高いのかもしれないね」


 やっぱりそうだ。
 ノールは体の外に放出される魔法は防げて、身体強化とかの魔法系は防げない事が分かった。
 その方法で戦うのも手段の1つではあるが、色々なオリジナルスキルを持っている俺とは相性が悪いみたいだ。


「さてと剣が綱体で防がれるのが分かっているんだから、今回は愛剣は封印させてもらうか………」

「魔法を使わなくても僕に勝てると? 何の根拠もない自信というのは滑稽に見えるぞ?」

「何の根拠も無いだって? そっちの目が節穴なのか、それとも俺がホラ吹き野郎なのか………勝負が終わってみたら分かる事なんだよ」

「相当な自信があるみたいだな。それなら見せてみてよ………君のいう勝ち筋っていうのをさ」


 やっぱり俺の想像通りだ。
 ここを早く突破して王都に向かいたいので、最初からフルで戦ってやると俺は指と首の骨を鳴らす。


「最初からフルで行かせてもらうが、面白いものを見せてやる」

・オリジナルスキル『牛変化バイソン

「変化系のオリジナルスキルなのか………確かに面白い。だけど、それが僕に勝てる理由?」


 俺が牛変化バイソンに変化すると、少しハッとした顔をしたノールだが、直ぐにスッと真顔に戻った。
 これが自分に勝つ理由なのかと、ノールは冷めた声でオリジナルスキルについて下に見る発言をされた。
 そんなのに怒る程、俺も子供じゃないので実践して見せようとバイソンで突進する。


「そんな牛になったからって、僕の綱体に敵うわけない」

「受けてみたら分かるさ!!」


 俺の牛パンチがノールの腹に直撃した。
 しかしノールの腹は鋼鉄の様に硬く、ノール自身も効いていないと自慢げな顔をする。
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