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第1章・大阪百鬼会の若い衆 編
036:男の美学
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036:男の美学を
俺たちは徳島のドンである《心福会々長》の〈小野咲 善治〉を仲間に吸収するべく、徳島県内にある心福会系組織に幹部を向かわせる。
そして俺は和馬・宮木・小日向・小野を連れて、心福会の本部に足を運ぶのである。この心福会というのは、本宮会や純友会などの巨大組織が四国に介入してきても一本独鈷でやってきた老舗だ。
「そんなところが簡単に落ちるわけねぇよな。小野咲会長ってのは、どんな人なんだ?」
「小野咲会長ですか? 直接喋ったわけやないんやけど………周りの話や見た感じでええですか?」
「おうっ!! どんな話だって良い!!」
今まで一本独鈷でやってきた人間が、そう簡単に落ちるとは思えないので小日向に聞いてみる。
どんな人なのかと思ったら、昔ながらのヤクザ屋さんといった人間らしく義理人情に厚く、弱い人を見捨てる事ができない性格だという。
そりゃあ巨大組織が圧力をかけてきても屈せずに、この徳島県を守ってきたわけだ。さすがは徳島のドンと呼ばれるだけの事はある。
「こりゃあ脅すってのはダメそうだな。どれだけ周りを囲んでも心福会だけは落ちないな」
「そうじゃなあ。そう簡単に落ちるとは思えんし、何か策を考えないけんです」
「いや 逆に策なんて考えちゃダメなんじゃないか?」
「え? と言うと?」
小日向組織統括長は作戦を考えた方が良いというのだが、俺としては作戦を考えて行った方が裏目に出る可能性が高いと思っている。
すると小日向組織統括長たちはキョトンとした顔で、それはどうしてなのかと聞いてくるが、俺はニヤッと笑って「教えねぇよ」という。
そのまま俺たち5人は心福会の事務所を訪れる。
5階建て雑居ビルの3階以降が、全て心福会の事務所となっているのである。
「アンタらは誰だっ!! ここは心福会だぞ!!」
「そんなもん知ってるわ!! じゃなきゃ俺たちが、わざわざ足を運ぶわけないだろ!!」
チンピラたちが俺たちを止めにくるので、小日向組織統括長などに任せて動きを止めさせる。
そして俺は事務所の扉を開けて事務所内に入る。
1番奥の社長机のところに心福会の会長であろう人がいて、ギロッと扉が開いた瞬間に目が合った。全身にグッと力が入るような感覚になった。
「貴方が心福会の小野咲会長ですよね? いきなりの訪問で申し訳ないです」
「お前らは誰や? 徳島じゃあ見た事ないな」
「さすがは徳島のドンだな。県内の事を知り尽くしているらしいな」
「当たり前だろ。この徳島県で、わしらの事務所に無断で入る奴なんておらんけんな」
そういう事か。
良くも悪くも心福会に無礼を働く組織なんてない。
つまりは俺たちが、四国外からきた人間なんだと小野咲会長は理解しているみたいだ。
それなら話は早いと俺は、事務所のソファに座って会長と話を行なうのである。
「まぁアンタと腹の探り合いをしても仕方ない。単刀直入で言わせてもらうが、アンタは登吉会長から盃を受ける気は無いか? もちろん下の者も面倒はみる」
「ほぉ? わしが代紋にビビッて傘下に入るとでも思うてんのか? ねぶられたもんじゃねえか。喧嘩ならなんぼでも買うたるぞ?」
さすがは小野咲会長と言ったところだろうか。
ドスの効いた声で、全身からヤバいと本能で分からせてくるジジイだ。
しかし根底にはヤクザ組織としての信念があり、弱きを助け強きを挫くというのがあるのだろう。
この少しの会話だけでも小野咲会長が、自分の命を賭して正義を貫こうとしているのがわかる。きっと地元を抗争の渦中に置きたく無いのだろう。
「徳島のドンは伊達じゃないな。もう少し若かったら、喧嘩でも負けてたかもしれねぇな」
「その言い方だと、わしに勝てるって言うとるように聞こえるんやけんど?」
「え? そう聞こえなかったのか? 随分と耳が遠くなってるんだな?」
「かっかっかっ!! おもっしょい小僧じゃねえか。お前の名前はなんて言うんや?」
「俺か? 俺は百鬼会広瀬組で若頭をやっている華龍會々長の〈花菱 龍憲〉だ………また今度、同じ事を聞きにくるわ」
どうやら小野咲会長は、百鬼会の勧誘を言語道断だと言って拒否するのである。
俺は思わず、フッと笑ってしまった。
ソファから立ち上がると、また今度同じ事を聞きに来るからと言って表で喧嘩している小野たちを回収する。
「早いですね? 小野咲会長はどうでした?」
「ん? どうもこうもねぇよ。アレはクソジジイだ」
「という事は失敗したんですか?」
「そりゃあどうかな………とりあえず今日のところは帰るぞ。クソジジイでも難敵は難敵だからな」
今日のところは楔は刺しておいたからと、俺たちは車に乗り込んで旅館に戻る為に出発する。
俺は外の風景を見ながら旅館に戻っていると、橋を渡るタイミングで、あるモノを見つけて「止めろ!!」と小野にいうと急停車する。
「ど どうかしましたか?」
「ちょっと待っててくれや」
俺はそう言って車を降りると、橋の真ん中で5対1で虐めている中学生の集団のところに行く。
「おいっ!! 随分と女々しい事してんじゃねぇか。それでも徳島の男か?」
「なっ!? だ 誰じょ!!」
「誰でも良いだろうがよ。喧嘩するってんなら1対1で男らしくやれよ!!」
中学生にしては体格の良い生徒が、俺の方にビビりながら近づいてきて文句を言ってくる。
そんな中学生に俺は、喧嘩をするなら1対1で男らしく喧嘩をしろと助言すると中学生たちは逃げていく。
「なぁ? 大丈夫か?」
「だ 大丈夫です………」
「大丈夫って、お前なぁ………フラフラじゃねぇか。とにかく病院に行くぞ」
「本当に大丈夫ですから!!」
ボコボコにやられてフラフラな状態の虐められっ子を病院に連れて行こうとしたら、本当に大丈夫だからと言って走って行ってしまった。
何だったんだろうと思いながら、俺は頭を掻いてから車に戻るのである。
「虐められっ子ですか?」
「だろうな、やり返せないんだろ? 虐められっ子ってのは、大概は2つに分かれるんだよ………」
「2つですか? それって一体………」
「1つは俺たちのようにグレて道を逸れる事だ。ヤクザにまでなれれば良いが、半グレってのが1番面倒な連中だからな………2つ目は一生日陰の道を歩く事だ」
小野は虐められっ子だったらしく、さっきの子に同情する事ができるという。
この場にいる人間に虐められっ子について話す。
そんな話をしたもんだから車内は暗くなってしまう。
まぁヤクザになる奴なんて気持ちの吐口を、どこかに捨てたような人間がなるもんだ。
「まぁとにかくだ。あんな風に男の価値を下げるような人間は、無理してでも止めなきゃダメだ」
「そういうもんなんですかねぇ………」
「そういうもんさ。真にそこを突き詰めたのが、あの小野咲会長だって事だ」
男としての価値を上げる為に、無理してでも集団でのイジメとかは止めろと助言した。
それと合わさって小野咲会長は、そんな男の美学を突き詰めている人間なんだと話した。
俺たちは徳島のドンである《心福会々長》の〈小野咲 善治〉を仲間に吸収するべく、徳島県内にある心福会系組織に幹部を向かわせる。
そして俺は和馬・宮木・小日向・小野を連れて、心福会の本部に足を運ぶのである。この心福会というのは、本宮会や純友会などの巨大組織が四国に介入してきても一本独鈷でやってきた老舗だ。
「そんなところが簡単に落ちるわけねぇよな。小野咲会長ってのは、どんな人なんだ?」
「小野咲会長ですか? 直接喋ったわけやないんやけど………周りの話や見た感じでええですか?」
「おうっ!! どんな話だって良い!!」
今まで一本独鈷でやってきた人間が、そう簡単に落ちるとは思えないので小日向に聞いてみる。
どんな人なのかと思ったら、昔ながらのヤクザ屋さんといった人間らしく義理人情に厚く、弱い人を見捨てる事ができない性格だという。
そりゃあ巨大組織が圧力をかけてきても屈せずに、この徳島県を守ってきたわけだ。さすがは徳島のドンと呼ばれるだけの事はある。
「こりゃあ脅すってのはダメそうだな。どれだけ周りを囲んでも心福会だけは落ちないな」
「そうじゃなあ。そう簡単に落ちるとは思えんし、何か策を考えないけんです」
「いや 逆に策なんて考えちゃダメなんじゃないか?」
「え? と言うと?」
小日向組織統括長は作戦を考えた方が良いというのだが、俺としては作戦を考えて行った方が裏目に出る可能性が高いと思っている。
すると小日向組織統括長たちはキョトンとした顔で、それはどうしてなのかと聞いてくるが、俺はニヤッと笑って「教えねぇよ」という。
そのまま俺たち5人は心福会の事務所を訪れる。
5階建て雑居ビルの3階以降が、全て心福会の事務所となっているのである。
「アンタらは誰だっ!! ここは心福会だぞ!!」
「そんなもん知ってるわ!! じゃなきゃ俺たちが、わざわざ足を運ぶわけないだろ!!」
チンピラたちが俺たちを止めにくるので、小日向組織統括長などに任せて動きを止めさせる。
そして俺は事務所の扉を開けて事務所内に入る。
1番奥の社長机のところに心福会の会長であろう人がいて、ギロッと扉が開いた瞬間に目が合った。全身にグッと力が入るような感覚になった。
「貴方が心福会の小野咲会長ですよね? いきなりの訪問で申し訳ないです」
「お前らは誰や? 徳島じゃあ見た事ないな」
「さすがは徳島のドンだな。県内の事を知り尽くしているらしいな」
「当たり前だろ。この徳島県で、わしらの事務所に無断で入る奴なんておらんけんな」
そういう事か。
良くも悪くも心福会に無礼を働く組織なんてない。
つまりは俺たちが、四国外からきた人間なんだと小野咲会長は理解しているみたいだ。
それなら話は早いと俺は、事務所のソファに座って会長と話を行なうのである。
「まぁアンタと腹の探り合いをしても仕方ない。単刀直入で言わせてもらうが、アンタは登吉会長から盃を受ける気は無いか? もちろん下の者も面倒はみる」
「ほぉ? わしが代紋にビビッて傘下に入るとでも思うてんのか? ねぶられたもんじゃねえか。喧嘩ならなんぼでも買うたるぞ?」
さすがは小野咲会長と言ったところだろうか。
ドスの効いた声で、全身からヤバいと本能で分からせてくるジジイだ。
しかし根底にはヤクザ組織としての信念があり、弱きを助け強きを挫くというのがあるのだろう。
この少しの会話だけでも小野咲会長が、自分の命を賭して正義を貫こうとしているのがわかる。きっと地元を抗争の渦中に置きたく無いのだろう。
「徳島のドンは伊達じゃないな。もう少し若かったら、喧嘩でも負けてたかもしれねぇな」
「その言い方だと、わしに勝てるって言うとるように聞こえるんやけんど?」
「え? そう聞こえなかったのか? 随分と耳が遠くなってるんだな?」
「かっかっかっ!! おもっしょい小僧じゃねえか。お前の名前はなんて言うんや?」
「俺か? 俺は百鬼会広瀬組で若頭をやっている華龍會々長の〈花菱 龍憲〉だ………また今度、同じ事を聞きにくるわ」
どうやら小野咲会長は、百鬼会の勧誘を言語道断だと言って拒否するのである。
俺は思わず、フッと笑ってしまった。
ソファから立ち上がると、また今度同じ事を聞きに来るからと言って表で喧嘩している小野たちを回収する。
「早いですね? 小野咲会長はどうでした?」
「ん? どうもこうもねぇよ。アレはクソジジイだ」
「という事は失敗したんですか?」
「そりゃあどうかな………とりあえず今日のところは帰るぞ。クソジジイでも難敵は難敵だからな」
今日のところは楔は刺しておいたからと、俺たちは車に乗り込んで旅館に戻る為に出発する。
俺は外の風景を見ながら旅館に戻っていると、橋を渡るタイミングで、あるモノを見つけて「止めろ!!」と小野にいうと急停車する。
「ど どうかしましたか?」
「ちょっと待っててくれや」
俺はそう言って車を降りると、橋の真ん中で5対1で虐めている中学生の集団のところに行く。
「おいっ!! 随分と女々しい事してんじゃねぇか。それでも徳島の男か?」
「なっ!? だ 誰じょ!!」
「誰でも良いだろうがよ。喧嘩するってんなら1対1で男らしくやれよ!!」
中学生にしては体格の良い生徒が、俺の方にビビりながら近づいてきて文句を言ってくる。
そんな中学生に俺は、喧嘩をするなら1対1で男らしく喧嘩をしろと助言すると中学生たちは逃げていく。
「なぁ? 大丈夫か?」
「だ 大丈夫です………」
「大丈夫って、お前なぁ………フラフラじゃねぇか。とにかく病院に行くぞ」
「本当に大丈夫ですから!!」
ボコボコにやられてフラフラな状態の虐められっ子を病院に連れて行こうとしたら、本当に大丈夫だからと言って走って行ってしまった。
何だったんだろうと思いながら、俺は頭を掻いてから車に戻るのである。
「虐められっ子ですか?」
「だろうな、やり返せないんだろ? 虐められっ子ってのは、大概は2つに分かれるんだよ………」
「2つですか? それって一体………」
「1つは俺たちのようにグレて道を逸れる事だ。ヤクザにまでなれれば良いが、半グレってのが1番面倒な連中だからな………2つ目は一生日陰の道を歩く事だ」
小野は虐められっ子だったらしく、さっきの子に同情する事ができるという。
この場にいる人間に虐められっ子について話す。
そんな話をしたもんだから車内は暗くなってしまう。
まぁヤクザになる奴なんて気持ちの吐口を、どこかに捨てたような人間がなるもんだ。
「まぁとにかくだ。あんな風に男の価値を下げるような人間は、無理してでも止めなきゃダメだ」
「そういうもんなんですかねぇ………」
「そういうもんさ。真にそこを突き詰めたのが、あの小野咲会長だって事だ」
男としての価値を上げる為に、無理してでも集団でのイジメとかは止めろと助言した。
それと合わさって小野咲会長は、そんな男の美学を突き詰めている人間なんだと話した。
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