32 / 36
第1章・大阪百鬼会の若い衆 編
032:加害者のような被害者
しおりを挟む
032:加害者のような被害者
俺たちが徳島県に到着した翌日に、山﨑のオジキ・オヤジ・兄貴の3人が徳島県警に足を運んだ。
3人が徳島県警に到着すると、本宮会の井口副会長と栗原組の栗原の2人が到着していた。周りの警察官の目に付かないように会議室に移動して、百鬼会と本宮会は向かい合う形で座って、その中間にマル暴が座る。
「それで俺たちを呼んだ理由ってのは、和解の話し合いをしたいからって事なんだよな? 俺たちが徳島に来たのは昨日の今日なんだぞ?」
「そら分かっとりますよ。そいでも本宮会としては百鬼会とやり合いたいとは思とらんのです………ですから、どうか手打ちにして貰えまへんか?」
「それが人に頼む態度なのか? こっちは手打ちした後の組長が、お前たちのところにハジからて今にも死にそうなところを行き来してるんだぞ?」
オジキは到着したからと言って、今のタイミングで和解がしたいなんてあり得ないだろと素直にいう。
それに対して井口副会長は、こちらは俺たちと抗争なんてしたく無いと全身全霊で訴えてくる。それでもそう簡単に引くわけにはいかないし、何よりもオジキは反省しているような風には見えないと怒りを露わにする。
そんな事を言われた井口副会長は、確かにマズイと思って立ち上がって直ぐに頭を下げて謝罪をする。ヤクザの世界で筋を違えると致命傷になるからだ。
「今回の件に関して、お3人方に話しとかないかん事がありまして………お伝えしてもよろしいだろうか?」
「ん? 何をいうのか知らないが、言い訳なんかしてみろよ………ここでクンロク入れてやるからな」
井口副会長は昨日の事を全て詳しく伝える。
実行犯である栗原組の若い衆は、ハーフで大柄の〈鈴木=アルベール=翔〉という男に空気をいられた事を伝えるのである。
この瞬間に兄貴は、自分が考えていた通りに絵を描いていた人間の存在を確認する。それにこれで新谷組長襲撃の理由を知る事ができた。
しかしオジキは長机を、ガンッと蹴って井口副会長の目をジッと見て睨んでいる。これはまさしく蛇に睨まれたカエルと言わんばりに井口副会長は動けない。
「おいっ!! 確かに若い衆に空気を入れた野郎がいるのは分かった。それにしてもだから何だ? そいつがいるからって行為に至ったのは、お前のところの若い衆じゃねぇのか? 俺は言い訳するなよっていったよな?」
完全にオヤジはブチギレている。
井口副会長はゾッとして全身から血の気が引く感じがして、このままだったら殺されると本能で感じた。
その次の瞬間、井口副会長は地面に座ると深々と頭を下げて土下座で謝罪するのである。そんな井口副会長の姿を見て、栗原組長もハッとして同じく土下座する。
マル暴の警察も緊張した空気感に、ダラーッと汗が額から頬に流れてオジキのオーラに怯えている。
そんな風に地獄のような空気が流れている中で、いきなり井口副会長のスマホが「ピロロロロロッ!! ピロロロロロッ!!」と鳴り響く。普段だったら、静かなくらいの着信音も、この場においては地獄のように聞こえてきて「終わった……」と井口副会長は感じた。
「なぁ本気で俺たちを怒らせたいんだろ? 本当は挑発して抗争をやりたいんだろ? 俺たちは、いつでも相手にしてやれるからよ。さっさとドスでもチャカでも持ってきて殺してみろや!!」
「も 申し訳おまへん!! そういうわけとちゃうんです。この電話は………会長からです!!」
「会長って〈本宮 仁〉会長か?」
「はいっ!! 会長も百鬼会に謝りたいからと、この時間に電話してくる予定やったんです!!」
ガチギレしているオジキに対して、井口副会長たちは何度も頭を地面にぶつけて謝罪する。こんなにも頭を下げる必要はあるのかと思われガチだが、これだけでも少ないくらいで「もっと謝罪しなきゃ」と考えている。
電話の相手が本宮会の会長である事を聞いてオジキは「ちょうど良いから電話に出ろ」という。
「仁会長とも話をしておかなきゃと思ってたところだ。さっさと電話に出てやらないと、年寄りには体に響くんじゃないか?」
「えぇはい。ほんなら電話に出さして貰って、会長は無作法なので許して下さい!!」
井口副会長は、仁会長はパーソナルゾーンが馬鹿みたいに大きくて、誰とでも慣れ合うので今回も電話で無作法のような事をしてしまうかもしれないと、まだ起こってもいない事に念の為と断りをいれている。
「あっもしもし。仁会長ですか?」
『そや。井口は徳島県警のとこにおるんやな? 百鬼会の人たちは、どうなっとる?』
「はい。百鬼会の頭補佐が、会長と話がしたいらしいので………代わってもええですか?」
『もちろんだ。直接会うての謝罪とちゃうが、なんもせんままでは会長としての威厳に関わるやろ』
本宮会の本宮会長は直接会って謝罪したいところなのだが、このまま謝罪をしなければ威厳に関わると井口副会長に言って兄貴たちに電話を代わる。
『もしもし本宮会の〈本宮 仁〉だ。まずは直接の謝罪を行えん事について申し訳あらへん………今回の件に関して、もちろん本宮会の100%の過失であるのを認めた上で、百鬼会と本格的に事を構えとうはあらへん』
「随分と素直に事を話すじゃないですか。話を聞いて素直な感想では、確かに本宮会も被害者なんじゃないかというくらいにややこしい事件だった………しかし!! 手打ちにするとしても、我々が五分の手打ちにする理由が全くもってない!!」
『ほぉ~。ちゅう事は、こちらがなんかを差し出したら手打ちにしていただけるちゅう事やろか? もちろん叶えられる範囲の事やったら、何でも致しましょう』
本宮会長は自分たちが100%悪いと認めた上で、それでも無理を言うのなら百鬼会と抗争はしたくないと、素直な気持ちをオジキたちに伝える。
それを聞いたオジキは、素直に謝罪しているのを見る事で、少しは本宮会も同情するに値する事件だったと言って和解の方向へ舵を切った。
そして少し踏み込んだ話として、オジキは和解をするにしても五分の手打ちでは納得できないと言った。
それは本宮会長も言ったが、何かを差し出した場合には例外であると言う事だ。本宮会としての問題として、何を要求してくるのだろうかと身構える。
だが何かを与えて抗争を避けられるのならば、それに越した事は無いと本宮会長が判断して、叶えられる範囲なら快く了承すると言うのである。
「我々が求めるモノは2つあります。まずは1つ奴についてなのですが、今回の事件に大きく関わっていると思われるアルベールと名乗る男の捜索は、我々に任せて欲しいと言う事です」
『ちゅう事は手打ちをした場合、今回の件でフィクサー思われる人間に関わるなちゅう事ですか? そんな事でええんですか?』
「それだけじゃなく男を見つけたとか、そういう話を我々に流して欲しい。その男へのケジメは、百鬼会が務めさせてもらいたい!!」
『分かった。なんか情報を掴んだり、見つけた場合は手ぇ下さんで百鬼会さんに渡す………それで2つ目の方は何やろか?』
オジキが出した条件の1つ目は、フィクサーと思われるアルベールとかいう男の処分については、この百鬼会に一任して情報や捕まえた場合の引き渡しを約束してもらうと条件を出すのである。
その条件を聞いて、それが筋だろうと本宮会長は、1つ目の条件を快諾する。正直なところ厄介ごとであるフィクサーの件から離れられるならラッキーだと思った。
「それじゃあ2つ目だが、兵庫県内に百鬼会系列の組織を発足する事について許可して欲しい!!」
オジキが2つ目に出した条件は、本宮会の本拠地でありシマ内である兵庫県内に、百鬼会系組織の発足を許可して欲しいというモノだった。
俺たちが徳島県に到着した翌日に、山﨑のオジキ・オヤジ・兄貴の3人が徳島県警に足を運んだ。
3人が徳島県警に到着すると、本宮会の井口副会長と栗原組の栗原の2人が到着していた。周りの警察官の目に付かないように会議室に移動して、百鬼会と本宮会は向かい合う形で座って、その中間にマル暴が座る。
「それで俺たちを呼んだ理由ってのは、和解の話し合いをしたいからって事なんだよな? 俺たちが徳島に来たのは昨日の今日なんだぞ?」
「そら分かっとりますよ。そいでも本宮会としては百鬼会とやり合いたいとは思とらんのです………ですから、どうか手打ちにして貰えまへんか?」
「それが人に頼む態度なのか? こっちは手打ちした後の組長が、お前たちのところにハジからて今にも死にそうなところを行き来してるんだぞ?」
オジキは到着したからと言って、今のタイミングで和解がしたいなんてあり得ないだろと素直にいう。
それに対して井口副会長は、こちらは俺たちと抗争なんてしたく無いと全身全霊で訴えてくる。それでもそう簡単に引くわけにはいかないし、何よりもオジキは反省しているような風には見えないと怒りを露わにする。
そんな事を言われた井口副会長は、確かにマズイと思って立ち上がって直ぐに頭を下げて謝罪をする。ヤクザの世界で筋を違えると致命傷になるからだ。
「今回の件に関して、お3人方に話しとかないかん事がありまして………お伝えしてもよろしいだろうか?」
「ん? 何をいうのか知らないが、言い訳なんかしてみろよ………ここでクンロク入れてやるからな」
井口副会長は昨日の事を全て詳しく伝える。
実行犯である栗原組の若い衆は、ハーフで大柄の〈鈴木=アルベール=翔〉という男に空気をいられた事を伝えるのである。
この瞬間に兄貴は、自分が考えていた通りに絵を描いていた人間の存在を確認する。それにこれで新谷組長襲撃の理由を知る事ができた。
しかしオジキは長机を、ガンッと蹴って井口副会長の目をジッと見て睨んでいる。これはまさしく蛇に睨まれたカエルと言わんばりに井口副会長は動けない。
「おいっ!! 確かに若い衆に空気を入れた野郎がいるのは分かった。それにしてもだから何だ? そいつがいるからって行為に至ったのは、お前のところの若い衆じゃねぇのか? 俺は言い訳するなよっていったよな?」
完全にオヤジはブチギレている。
井口副会長はゾッとして全身から血の気が引く感じがして、このままだったら殺されると本能で感じた。
その次の瞬間、井口副会長は地面に座ると深々と頭を下げて土下座で謝罪するのである。そんな井口副会長の姿を見て、栗原組長もハッとして同じく土下座する。
マル暴の警察も緊張した空気感に、ダラーッと汗が額から頬に流れてオジキのオーラに怯えている。
そんな風に地獄のような空気が流れている中で、いきなり井口副会長のスマホが「ピロロロロロッ!! ピロロロロロッ!!」と鳴り響く。普段だったら、静かなくらいの着信音も、この場においては地獄のように聞こえてきて「終わった……」と井口副会長は感じた。
「なぁ本気で俺たちを怒らせたいんだろ? 本当は挑発して抗争をやりたいんだろ? 俺たちは、いつでも相手にしてやれるからよ。さっさとドスでもチャカでも持ってきて殺してみろや!!」
「も 申し訳おまへん!! そういうわけとちゃうんです。この電話は………会長からです!!」
「会長って〈本宮 仁〉会長か?」
「はいっ!! 会長も百鬼会に謝りたいからと、この時間に電話してくる予定やったんです!!」
ガチギレしているオジキに対して、井口副会長たちは何度も頭を地面にぶつけて謝罪する。こんなにも頭を下げる必要はあるのかと思われガチだが、これだけでも少ないくらいで「もっと謝罪しなきゃ」と考えている。
電話の相手が本宮会の会長である事を聞いてオジキは「ちょうど良いから電話に出ろ」という。
「仁会長とも話をしておかなきゃと思ってたところだ。さっさと電話に出てやらないと、年寄りには体に響くんじゃないか?」
「えぇはい。ほんなら電話に出さして貰って、会長は無作法なので許して下さい!!」
井口副会長は、仁会長はパーソナルゾーンが馬鹿みたいに大きくて、誰とでも慣れ合うので今回も電話で無作法のような事をしてしまうかもしれないと、まだ起こってもいない事に念の為と断りをいれている。
「あっもしもし。仁会長ですか?」
『そや。井口は徳島県警のとこにおるんやな? 百鬼会の人たちは、どうなっとる?』
「はい。百鬼会の頭補佐が、会長と話がしたいらしいので………代わってもええですか?」
『もちろんだ。直接会うての謝罪とちゃうが、なんもせんままでは会長としての威厳に関わるやろ』
本宮会の本宮会長は直接会って謝罪したいところなのだが、このまま謝罪をしなければ威厳に関わると井口副会長に言って兄貴たちに電話を代わる。
『もしもし本宮会の〈本宮 仁〉だ。まずは直接の謝罪を行えん事について申し訳あらへん………今回の件に関して、もちろん本宮会の100%の過失であるのを認めた上で、百鬼会と本格的に事を構えとうはあらへん』
「随分と素直に事を話すじゃないですか。話を聞いて素直な感想では、確かに本宮会も被害者なんじゃないかというくらいにややこしい事件だった………しかし!! 手打ちにするとしても、我々が五分の手打ちにする理由が全くもってない!!」
『ほぉ~。ちゅう事は、こちらがなんかを差し出したら手打ちにしていただけるちゅう事やろか? もちろん叶えられる範囲の事やったら、何でも致しましょう』
本宮会長は自分たちが100%悪いと認めた上で、それでも無理を言うのなら百鬼会と抗争はしたくないと、素直な気持ちをオジキたちに伝える。
それを聞いたオジキは、素直に謝罪しているのを見る事で、少しは本宮会も同情するに値する事件だったと言って和解の方向へ舵を切った。
そして少し踏み込んだ話として、オジキは和解をするにしても五分の手打ちでは納得できないと言った。
それは本宮会長も言ったが、何かを差し出した場合には例外であると言う事だ。本宮会としての問題として、何を要求してくるのだろうかと身構える。
だが何かを与えて抗争を避けられるのならば、それに越した事は無いと本宮会長が判断して、叶えられる範囲なら快く了承すると言うのである。
「我々が求めるモノは2つあります。まずは1つ奴についてなのですが、今回の事件に大きく関わっていると思われるアルベールと名乗る男の捜索は、我々に任せて欲しいと言う事です」
『ちゅう事は手打ちをした場合、今回の件でフィクサー思われる人間に関わるなちゅう事ですか? そんな事でええんですか?』
「それだけじゃなく男を見つけたとか、そういう話を我々に流して欲しい。その男へのケジメは、百鬼会が務めさせてもらいたい!!」
『分かった。なんか情報を掴んだり、見つけた場合は手ぇ下さんで百鬼会さんに渡す………それで2つ目の方は何やろか?』
オジキが出した条件の1つ目は、フィクサーと思われるアルベールとかいう男の処分については、この百鬼会に一任して情報や捕まえた場合の引き渡しを約束してもらうと条件を出すのである。
その条件を聞いて、それが筋だろうと本宮会長は、1つ目の条件を快諾する。正直なところ厄介ごとであるフィクサーの件から離れられるならラッキーだと思った。
「それじゃあ2つ目だが、兵庫県内に百鬼会系列の組織を発足する事について許可して欲しい!!」
オジキが2つ目に出した条件は、本宮会の本拠地でありシマ内である兵庫県内に、百鬼会系組織の発足を許可して欲しいというモノだった。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~
桂
ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。
そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。
そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる