キングダム〜任侠に生きる男たち〜

湯崎noa

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第1章・大阪百鬼会の若い衆 編

027:四国の苦労人

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027:四国の苦労人
 正月気分が中々に抜けない中で、激動の1月が終わった事で俺のスイッチが切り替わりやる気満々である。
 その証拠として俺は毎日のように奈良県に行って百鬼会傘下に入る事に不満を持ち、その組織を抜けた組への制裁に尽力している。


「今日のところは、こんなもんにしとくか!! ここからは青坂と菅に任せるわ」

「了解しました!! あとは俺たちがやっとくんで……お疲れ様っした!!」

「オヤジは、これから大阪に戻るんですか?」

「ん? あぁオヤジのところに行って今日の報告してから事務所に戻るかな」

「そうなんでんなぁ。まだ恨んでる連中もおるんで、十分気をつけてくださいね」


 後処理を青坂と菅に任せて俺は大阪に戻る。
 色々とオヤジに報告する事があるので、とりあえず小野の運転で広瀬組の事務所に足を運ぶ。
 オヤジも百鬼会の若頭補佐になって空席になっている若頭の座を狙っているので、俺もオヤジの為に延いては百鬼会の為に奮闘している。
 そんな事を思いながら広瀬組の事務所に入ると、そこには山﨑のオジキと兄貴が来ていた。オヤジとオジキが仲が良いのを知っているので、そこまで驚かなかったが久しぶりに、兄貴が事務所にいるのをみる。


「オジキはアレですけど、兄貴が事務所にいるの久しぶりじゃないっすか?」

「なんだよ、いつも俺がサボってるみたいじゃねぇか」

「い いえ!! そんなつもりで言ったわけじゃありませんよ!!」

「まぁそんな事は分かってるわ(笑) 本部の集会で気になる事があったから集まって話してるんだわ」


 オジキにイジられながら、どうしているのかを聞いてみると、本部の集会で気になる話があるのだという。
 その話の続きをする為、久しぶりに広瀬組に足を運んで話しているらしい。


「そういう事だったんすね。それで皆さんが気になる話題って何なんですか? まさか俠泉会が、また何かをしたってわけじゃないですよね?」

「今回は俠泉会絡みちゃうねん。どっちか言うたら百鬼会にとって利益が大きい話って言うても過言ちゃうで」

「それなら何で深刻そうな顔をしてたんですか? そんな顔をしながらする利益的な話って気になりますね」


 事務所に入った時、3人は深刻そうな顔をしていたので俠泉会の件で、ウチにも面倒事が回って来たのでは無いのかと思ったが、どうやら話を聞く限りでは百鬼会にとってプラスな話だという。
 じゃあさっきの親交そうな顔は何だったのだろうかと気になり度合いが上がる。
 するとオヤジの方から説明をしてくれた。


「まぁ分かりやすう言うたら、オヤジの舎弟が四国で抗争をしたんやて。一時は手打ちにしたらしいけど、その後に相手組織から攻撃を受けたんやて」

「手打ちにした後、手を出したんすか!? そりゃあ任侠道の筋違いって奴じゃないっすか!!」

「その通りや。オヤジが手打ちにした後に、手ぇ出すんはちゃうやろうと怒ってるみたいや。そやさかい俺たち3人に四国に行って来いってわけや」

「ま マジすか!? もしも3つの組が総動員されるってなったら………100人を超えますよね!?」


 聞いてみたら想定していたよりも大きな事だった。
 登吉会長は手打ちをした後に、手を出してくるなんて話にならないと激怒している。舎弟がやられたという上に、任侠道から反している事にも怒っている。
 そして何よりも話を深く聞いてみると、手打ちをした後に襲われたのが例の舎弟の人だった。命は落としていないものの重傷で、今も入院しているらしい。


「だいたい状況は理解できたんですけど、登吉会長は何で徳島の組長と舎弟関係になってるんですか?」

「それなら聞いたぞ。オヤジのカタギ時代に、自分の会社の関係で四国に行った時に飲み屋で知り合って意気投合したって言ってたな」

「そういう事だったんすか」


 舎弟との関係も知れたところで、話は戻って四国に100人近くの兵隊を連れて報復しに行くのかと、俺は再度聞いてみると兄貴たちは小さく頷いた。


「そもそも最初にも言ったが、これは百鬼会にとってはチャンスなんだぞ? これを足掛かりに、四国を取ってやろうってもんだ」

「そういう事ですか!! つまりは舎弟さんを助けるというのは表向きで、本当の理由は四国制覇ですね!!」

「なぁ兄弟、これはそう簡単な話ちゃうと思うねん。四国には西日本親和会にも加入してる四国最大規模の《四舎連盟》があんねんで?」

「広瀬の兄弟の言う事も分かるけど、そんな事を言ってたら、いつまで経っても日本統一なんて不可能だぞぉ」


 オジキがいうように、確かに百鬼会が日本統一を掲げている中で、四国に手を出す理由が出て来た事を喜ぶべきだろと説明してくれた。
 それに対してオヤジは簡単な話じゃ無いだろと、オジキに注意をして気を引き締めるようにいうが、そんなに警戒ばかりをしていたら、日本統一なんて何百年経っても不可能だと強気な事をいう。
 それを聞いてオヤジは、腕を組んで少し考えたところで「それもそうか」という結論に至って意気投合して2人は大笑いしている。
 そんな2人を見て兄貴は苦笑いをしてみている。


「それでや。花菱には戦闘組のリーダーとして活躍してもらうからな!! 出発の日まで、メンバーを選抜して選りすぐりの奴を準備せんかい!!」

「了解しました!! 今直ぐにでも華龍會に戻って、メンバーを選抜して来ます!!」


 俺はオヤジに言われた通りに、華龍會から選りすぐりのメンバーを決める為に事務所に急いで戻る。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 場所は変わって徳島県小松島市和田島町にある《本宮会系門田会傘下3代目林会》の事務所になる。
 林会こそが会長の舎弟と揉めている張本人の組織であり、3代目林会を継いだ《石井 孝彦》会長は、緊急の事態に焦りに焦っている。


「なんでわしらの喧嘩に、しかも終わった喧嘩に栗原組の連中が割って入ってくるんだでよ!!」

「オヤジっ!! 落ち着いてつかい。アイツらも松竜組の人間に、イラついとったんじょ!!」


 石井は手打ちに納得していて終わった事だと完璧に割り切っていたが、石井の五分の兄弟分で栗原組の組長である《栗原 孝太郎》の子分が勝手に、登吉会長の舎弟を的にかけたというのである。
 こんな事をされて、これから百鬼会が本格的に動くという話が耳に入るので、どうしてこんな事になったのかと焦りに焦って、物に当たりまくっている。


「本宮会長も動いて下さっとるけん、ここはドシッとしていましょうでよ!! それに不安なら四舎連盟に、仲介人でも頼みましょうよ………オヤジ、とりあえず落ち着いてつかい!!」

「四舎連盟か……まぁそれはアリやな。とにかく本家と百鬼会の動きから目ぇ離さんといて!!」

「わ 分かりました!! 注意しておきます!!」


 なんとか林会の若い衆が落ち着くように促して、石井は少し落ち着いてソファに座ると、若い衆が言っていた四舎連盟に頼るのもアリだなと思った。
 それなら若い衆に、本家である本宮会と百鬼会から目を離すなと忠告しておくのである。
 何とか少しは楽になかったが、胃がキリキリするのは治っていないので、引退しようかと考え始めている。
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