キングダム〜任侠に生きる男たち〜

湯崎noa

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第1章・大阪百鬼会の若い衆 編

025:新年早々

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025:新年早々
 激動だった2024年が終わって、新たな年である2025年を大阪で迎えるなんて思っていなかった。
 一門の長となって生活が充実しているのだが、やはり気合を入れたくても正月はやる気にならない。そんな俺は事務所兼自宅でのんびりしている。


「ふぅ~。やっぱり正月くらいは、こんな風にグダグダしないとなぁ………あれ? 最近青坂たちを見ないんだけど何か知らないか?」

「青坂たちですか? どうやら広瀬組の方に呼ばれてるらしいですよ。それよりもオヤジさん、副会長がどこにいるか知りませんか?」

「和馬か? そういえば和馬も最近見ないよな。副会長の仕事を放り出してサボってんだな………次にあったらボコボコにして気合を入れさせなきゃダメだな」


 若い衆が働いている事に、少し申し訳なさを感じながら「まぁ良いか………」と思ってしまった。
 そんな俺に仕事をしている小野は、副会長の和馬を見ていないかと聞いてきて、そういえば俺も見ていないのでサボっているのかと2人で怒りを沸々させる。
 すると噂をしていればと言わんばかりに、何故か焦っている和馬が事務所に入ってきた。さすがの俺も立ち上がって和馬に飛びかかり、サボっているのかとボコボコにしてみると「違うんです!!」と言ってきた。


「何が違うっていうんだ? テメェは副会長の仕事を、放り出してサボってたんだろ?」

「いや、それがですよ!! とっておきの情報を仕入れてきたんですよ!!」

「とっておきの情報だと? お前なんかに仕入れられるのか? これでつまんない話だったら………お前を大阪湾に沈めてやるからな」

「は はいぃ!? ま まぁとりあえず聞いてみて下さいよ、それなりに驚くと思いますよ!!」


 どうやらボコボコにするのを止めてくれたら、とっておきの話を教えてくれるという。そういわれながらも少し蹴るのを続けると、本当に凄い話なんだという。
 昔からの付き合いなので和馬の目を見て、嘘じゃない事を確信すると溜息を吐きながら話を聞いてみる事にしたのである。しかし面白くなかったら、この続きをやって大阪湾に沈めてやるという。
 落ち着いて話を聞く為に俺はソファに座って、和馬は地面に正座で仕入れた話について話し始める。


「それでは僭越ながら話させていただきます。これは北海道の友人から聞いた話です………」

「なに? 今から怖い話でもすんの? シーズンが早いと思うんだけど?」

「あっ! いえいえ怖い話じゃないですよ………いや、待てよ。ある意味怖い話ではあるのか?」

「まぁとにかく続きを話してみろよ」


 明らかに喋り出しが怖い話をするような流れだったので、キャラ違いではあるが突っ込んでしまった。
 突っ込まれた和馬だったが、どうやら怖い話でもあるような雰囲気を出しているので、とにかく続きを聞いてみる事にしたのである。
 仕切り直して咳払いをしてから続きを話し始める。


「北海道の北見市って知ってますかね? そこで稲荷連合傘下の組織と、俠泉会の傘下組織が抗争を始めたみたいなんですよ!!」

「え? 稲荷連合って、ウチや純友会に負けず劣らずの組織のか?」

「その稲荷連合です!!」


 稲荷連合は純友会と同じなく東京都に本拠地を置く任侠団体で、百鬼会や純友会に劣らない巨大組織だ。
 そんな組織の傘下と、俠泉会の傘下組織が北海道で衝突するなんて思っても見なかった。
 その先の話が気になるので、興味深いから続きを話してくれやというが、和馬は「んー」と言葉を失って冷や汗をダラダラ流して様子がおかしかった。


「おい、どうして続きを話そうとしないんだ? お前、もしかして………その先の事を知らないんじゃないか」


 絶対知らないと分かっていながら聞いてみると、ビクッと明らかに動揺しているのが分かる。
 サボって友人と話してるなら、もう少し詳しい話を聞いて来いやと和馬を蹴り飛ばした。


「そこまで聞いちまったら、その続きが気になるだろうがよ!! 最悪だよ………あっ!! そうだ。こんな奴が知ってるんだから兄貴のところにいけば、きっと詳しい話が聞けるぞ!!」

「オヤジっ!? 今、こんなのって言いましたか!!」

「よし。小野、車を回してくれ」

「了解しました!!」

「オヤジっ!! 最近、俺に冷たくないっすか!!」


 小野で知っているのだから兄貴なら詳しく知っていると思いついて、小野に車を回してきてもらって誠明会の事務所を訪れるのである。


「まぁ話は分かったけどやで………なんで、そいつ泣いてんねん?」

「気にしないで下さい!! それよりも兄貴は、北見での揉め事について知ってるんですか?」

「まぁそれなりには知ってるけどやで。そんな気になるんか? 別に知ったところで大した事あれへんねんで」

「それでも良いんですよ!! この馬鹿のせいで、気持ち悪いところで話が切れたんすよ!!」


 やっぱり兄貴は事件について知っていたが、そんなに知りたいのかと聞かれたので、俺は首が取れるんじゃ無いかってくらいに頭を振って答える。
 そこまでいうのならと兄貴は、北見で起こっている事について話してくれるのである。


「元々の揉め事は《稲荷連合稲荷一家鈴木組内星宮組》の組員が、《俠泉会加守田組金田組系竹下組》の事務所に散弾銃を打ち込んだ事から始まってん」

「え? 散弾銃を撃ち込んだんですか。そんなイカれた野郎もいるもんなんですね」

「この時は死者も怪我人もおれへんかったから、互いに突発的な喧嘩って事で済まされてん。せやけど1ヶ月後に、北見市内のスナックで星宮と金田が会うてん」

「うわぁ。なんとも言えない空気だったんでしょうね」


 話の途中だが散弾銃を撃ち込むなんて正気の沙汰じゃ無いし、互いに間が悪いのでは無いかと思った。


「そこで金田が星宮に対して、少し前に妻の浮気で起こしたとされてる裁判の事を批判して喧嘩や」

「やっぱり喧嘩の始まりなんてショボいですね。まぁ金田も言わなくても良い事を言ったんだろうな」

「本題はここからなんだよ。そのスナックでの事は酒が入っての喧嘩って事で済まされたんだが、喧嘩をした2日後にスーパーで買い物中の金田と奥さんを若い衆が襲撃したんだよ」

「はっ!? 奥さんがいるところを襲ったんですか。星宮組の方も筋ってのが分かってねぇな………」


 まさかのショボい喧嘩の理由から、残酷な襲撃事件へと変貌していくのである。
 襲撃された金田組長は胸に銃弾を喰らって病院に運ばれたのちに死亡し、奥さんの方は若い衆が庇って擦り傷だけで済まされたらしい。


「それで加守田は部下を送って、稲荷連合も幹部を送るっちゅう睨み合いが続いてるな」

「それは北見の人も怖いだろうな………」

「まぁ色々とあるやろうが、俺たちが動く為には稲荷連合と俠泉会の動きを注視せなあかん」

「そうっすね!! 注意してみておきましょう!!」


 まだ始まったに過ぎないので、俺たちも俠泉会と稲荷連合を中止し続けなければいけないと兄貴は言う。
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