キングダム〜任侠に生きる男たち〜

湯崎noa

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第1章・大阪百鬼会の若い衆 編

022:俠泉会

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022:俠泉会
 菅原組長たちは百鬼会を脱退した後、和歌山の老舗組織たちを吸収して、新たな任侠団体《俠泉会》の設立を大々的に宣言したのである。
 この俠泉会は百鬼会で最高顧問の地位についた〈山口 泉〉親分をトップに据えた組織であるが、山口親分は俠泉会への入会を拒否したので、会長代理として菅原組長がトップに就いている。


「今日づー日さ集まってもらって感謝します。本日より《俠泉会》発足させでいだだぎます」

「わしん方から俠泉会ん人事についち発表させちいただきます………」

『俠泉会』
会長代理 :菅原 文夫
理事長  :加守田 重光(加守田組)
幹事長  :竹中 真澄(竹中組)
本部長  :市川 拳(市拳組)
風紀委員長:原口 賢治(3代目紀伊國連合会)
運営委員長:刻時 晴好(4代目春刻組)
組織委員長:平井 康二(2代目菅原組)


 各自役職の後に名前が呼ばれて、パチパチと乾いた拍手が響いて淡々と進行が進む。
 そして終わったところで、俠泉会の集まったメンバー数を発表するが想定するよりも多い数だった。


「こごさいる全員知ってるどは思うが、百鬼会がら絶縁状叩ぎづげられで!! このチラシは、これがら全国さ撒がれで正式さ独立組織になる!! 覚悟はあるが?」

『はいっ!!!!』

「百鬼会の人間だぢは任侠団体名乗ってるにもががわらず、あいなにも不義理な決断したのは許される事でねぁーのは明白!! おらだづが大阪取り戻し、世界さ誇る任侠団体の設立目指す!!」

『はいっ!!!!』


 俠泉会を立ち上げた理由として、百鬼会は日本の極道会を背負っていく立場のはずなのに、今回のような不義理を起こして良いのかという意思の下に集まっている。
 そして百鬼会を大阪から追い出して、自分たちが百鬼会に代わる組織となり、日本が誇る任侠団体に成り上がってやるという目的なのである。
 それでも周りから見れば、明らかに内部分裂で揉めて出てきたように見えて、冷ややかな感じで見られているが、もはや止まるわけにもいかない。


「代理。それで詳しくは何から始めるんですか? いきなり百鬼会と、ぶつかるわけじゃないですよね?」

「それなんだが、おらの考えでは奈良県がら切り崩してえぐべど思ってる。まだ百鬼会になって日浅ぐ、百鬼会の事恨んでる人間も多いべ?」


 市拳組の市川は具体的に、どんな風に切り崩していくのかと聞いたところ菅原会長は、百鬼会のシマになったばかりの奈良県から切り崩していこうと考えていた。
 その考えに他の執行部の人間たちも納得して、奈良県から切り崩していく運びになったのである。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 兄貴の直参が正式的に決まって広瀬組を引退した。
 最後の最後まで自分の組を作るのを渋っていたが、最終的には《誠明会》という組織に落ち着いた。
 広瀬組を辞めたら会えなくなると思ったが、俺は毎日のように兄貴の事務所に顔を出している。


「どうですか? 俺のところとオヤジのところから選りすぐりの若い衆たちは?」

「めっちゃ使える奴らやで………っちゅうか、なんで毎日のように来てるんや? 自分らは暇なのか?」

「暇じゃないですよ!! 半グレまとめてグチャグチャになったところの整理とかで忙しいっすよ」

「いや、暇そうやさかい仕事をやる。俺も事務所立ち上げや直参になって仕事が増えてな。手ぇ回れへんかったとこやさかい仕事をやるで」


 兄貴には暇かと言われるが、大阪中の半グレを華龍會に入れた事で、運営していた違法風俗やら麻薬売買やらの整理で忙しくしている。
 そんな風に忙しいにも関わらず、兄貴は俺たちに仕事をやると言ってきた。
 俺は遠慮したかったが、兄貴の命令を断るわけにもいかないので素直にソファを立ち上がって、兄貴の前まで足取り重く歩いていくのである。


「どんな仕事なんすか? 肉体労働とかじゃなきゃ良いっすけど、最近疲れやすいんすよ」

「10代が何言うてんねん。ちゅうか、喧嘩をバリバリやっとって疲れやすいやら冗談にもなれへんやろう」

「まぁまぁそれで仕事内容は何すか? 兄貴に言われた事なら何でもやりますけどね」

「実はカタギの友人から頼まれた事やねん。金に困って事らしいんだけど借ったところが闇金なんやて」


 俺の冗談に兄貴は笑いながら冗談を返してくれて、一通り笑ったところで仕事の話をする。
 その仕事というのが、兄貴のカタギの知り合いの人に頼まれたらしい。皆んなカタギの人の問題事を持ってくるんだなと心の中で思った。
 そんなカタギの友人は金貸しから金を借りたらしく、そこが暴利な闇金だったらしい。そして金が返せなくなって家族や仕事場にまで、金を取り立てられているというオチなのである。


「申し訳ないっすけど、それって俺たちのやる事なんすかね? 弁護士のところにでも行ったら、対応してもらえると思うんですけど」

「確かに闇金で金を借って首が回れへんくなったってだけの話やったら、友人でも弁護士のとこに行けっちゅうけどやで」

「まさか百鬼会のシマで、他の組が金貸しをしてるって事っすか? それなら納得できますわ」

「その通りや。系列で言うたら俠泉会の傘下に入った組織やな。そんなねぶった事をされちゃあ百鬼会のプライドもあれへんからな」


 確かに百鬼会のシマで、暴利な金貸しなんてされてちゃ百鬼会の評価にも関わる。そんな悪手を逃しておくのはあり得ないと兄貴が言うので、その金融屋と組を潰すついでに助けて欲しいと頭を下げる。


「頭を上げてくださいよ!! 元から俺は、兄貴に何を言われても断るつもりはないんで!! 俺たちに任せて下さいよ!!」

「おおきにな。ほな金融屋の住所は、この名刺に乗ってるから頼むねん」

「了解しました!! それじゃあ早速取り掛からせていただきます!!」


 金貸屋の住所が書かれた名刺を受け取ると、俺は小野の運転で兄貴の事務所を後にして華龍會に戻る。
 華龍會執行部のメンバーが大半集まっていたので、とりあえず席に座らせて兄貴から聞いた話をした。すると和馬たちは、自分たちの見せ場だと燃えている。
 そこで俺は一通りの話をした後で、これから誰が何をするのかと指示をするのである。


「良いかっ!! この闇金屋のケツモチをやってる組を手分けして調べてこい。最近入った《青坂一家》《ハンソングループ》《アトラス》《エンジェルナイツ》のリーダーだった奴は、俺について来い」

「えっ!? オヤジ、俺たちじゃダメなんすか!!」

「和馬、お前は何言ってんだ? そんな事ばっかりしてたら、舌が育たないだろうがよ。お前たち古参は、組について調べてこい………分かったか!!」

『はいっ!!!!』


 役割分担として和馬たちのようは古株に、ケツモチをしている組について調べてくるようにいう。
 そして俺は最近になって入った半グレ集団のリーダーたちを引き連れて、金貸屋ののところに出向くと伝えるのであるが、和馬は納得していないらしい。
 ここまで親離れをしていないなんて、そんな事を思いながら外を育てる為だと言って、和馬たちを説得すると解散して各自の持ち場に向かうのである。
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