キングダム〜任侠に生きる男たち〜

湯崎noa

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第1章・大阪百鬼会の若い衆 編

017:準備が整った

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017:準備が整った
 俺たちが大和組のチンピラをボコボコしてから、2日が経って本格的に大和組と百鬼会の抗争が始まる。
 元々大和組のシマ内に事務所を構えた事で、今にも噴火しそうな火山の如くピリピリしていた。それがチンピラをボコボコにした事で拮抗状態が崩れた。


「やっぱり大和組の連中は耐えられませんでしたね。それにしてもカタギに手を出したのって、本当に田中の差し金だったんですかね?」

「いや、アイツは知れへんかった思うねん。部下が勝手にやった事なんやろな」

「やっぱりそうなんすね。知らない事を自分の責任にされるのも大変なんすねぇ」

「上に立つって事は、それだけ頭を下げる回数が増える事と道理なんやで。まぁそんな奴に同情するっちゅうんは、理解できる事ではあるが………俺たちの世界は筋を1度違うたら、相手に付け込まれるだけや」

「難しい世界っすね」


 やはり任侠の世界というのは、とことん筋が大切なんだと分からされるのである。
 そんな事を思っていると奈良事務所の扉が開いて、スーツの男たちが入ってくる。


「そうか、今日が兵隊くる日か。オヤジは、ええとこを送ってくれたな」

「コイツらって見た事ないんですけど、誰なんですか? 兄貴の言い方だと同じ広瀬組だとは分かりますけど」

「なんや花菱は知れへんのか? コイツらは広瀬組の中では、花菱に負けず劣らずの武闘派連中や」

「俺に負けず劣らずですか………なんか男として燃える言葉っすね」


 どうやら俺たちが入ってくるまで、広瀬組の武闘派を担っていた男たちらしい。
 負けず劣らずと聞いた途端に、全身にヒシヒシと興奮する感覚を感じたのである。


「絶対に内輪揉めなんてせんといてや? ほな紹介するけど、コイツが広瀬組直参で《中村武闘会》の会長をしてる〈中村 琢朗〉だ」

「中村? 確かに身長も俺より大きくて、ガッシリしてるよな………雰囲気的には、俺よりも強そうだ」


 紹介された中村は、身長が180センチくらいの大きさでガッシリしている。そして若葉色の髪の毛にウェーブがかかっていて、黒目がちなアーモンド型の目だ。
 明らかに身長が大きいから雰囲気があるという感じではなく、全身から経験してきましたっていうオーラが醸し出されているのである。


「頭。ちょっと気になる情報を聞いたんですけど」

「気になる情報やて? なんや、言うてみぃ」

「はい。オヤジが直参になったわけじゃないですか? 実は跡目争いの話があるらしいんですよ」

「跡目争いやと? それって百鬼会の会長の座を争うてやんな?」

「そうです。現在の最有力候補は山泉組の山口組長ですが、会長が2代目に推薦しているのが実子の〈百瀬 登吉ももせ とうきち〉親分です」


 中村が現れたと思ったら、とんでもない情報が飛び出してきたのである。
 オヤジが直参に上がったのは良いが、まさか執行部では跡目争いが水面下で行われているらしい。
 その争いとは時期会長候補である若頭の山口組長と、初代会長の実子である〈百瀬 登吉〉の2人で、登吉に関しては会長の推薦である。


「それで張本人の山口のオジキは、どんな姿勢を溜まってるんや? わしが2代目かて先頭切ってるんか?」

「いえ会長が言うのであれば、2代目は実子の登吉さんで文句ないと大人の対応をしています。でも何が厄介かと言いますと、菅原のオジキたちが筆頭なんです」


 山口のオジキ本人は、会長が言うのなら2代目は登吉だと言って落ち着いているらしい。
 しかし山口のオジキを2代目にしようと、菅原組・加守田組・竹中組の若頭補佐三人衆が、山泉組の若頭である〈市川 拳〉を支持している。


「菅原のオジキが? 確かに筋で言うたら山口の頭が、次の会長ではあるが………そやかて百瀬会長が指名したんが、登吉さんやったら飲み込んで認めるしかあれへんのにな」

「オヤジも、このタイミングで直参になれて良かったんじゃ無いすか? これで菅原のオジキと一緒に、反乱分子にならずに済むんですよね?」

「そういうわけにはいけへんやろ。もしかしたら内輪揉めになる可能性が十分過ぎるくらいある。そうなったら、日本統一なんて言うてられへんくなんねん」


 やはりどの世界でも跡目争いというのは、中々に強烈な問題なんだなと俺たちは再確認する。
 しかし今は気にしてもいられないので、奈良県の問題を先に片付けようと話した。


「自分らには、本格的に大和組と抗争してもらう。大和組の幹部連中に襲撃かけて、ドンドン大和組を追い込んでいかんかい」

「はいっ!! それじゃあ早速、華龍會の人間も投入して潰してきます!!」


 俺たちは大和組を潰す為に、華龍會のメンバーを多く導入してドンパチを始める。
 そしてそれは兄貴が広瀬組から呼んだ、中村武闘会も本格的に動き出すのである。


「なぁアンタらって表向きの人間か? オヤジの事務所で見た事ねぇんだけど?」

「確かに俺たちの存在は隠されてるからな。本家の人たちも俺たちの存在は知らない」

「つまりは暗殺者って事だな? はぁ。この世界には、いろんな奴がいるんだなぁ」

「ちなみに言っておくと、俺たちを紹介するって事は信頼されてる証だぞ。広瀬組の幹部の中でも、俺たちの存在を知らない人間はいるんだからな」

「へぇなんかレアが当たったって感じだな。とにかく強いってんならお手並み拝見だな」


 半グレ時代には知らなかった、世の中の闇の部分を体現しているのが中村武闘会なのだろう。
 表舞台に出ないというのならば、どれだけ強いのかをお手並み拝見というこうじゃないか。これで大した事が無かったら、俺がSNSで暴露してやる。
 そんな気持ちでいながら華龍會と中村武闘会は、バラバラになって街の中に散らばっていく。


「良いか!! 俺と小野、和馬と野中、宮木と黒江に分かれて各事務所を襲うぞ!! もう火蓋は切られてんだから手を抜く必要はねぇぞ。拳銃の弾も確認して、無理だけは絶対にするな!!」

『はいっ!!!』

「絶対に結果を残して来い!! それじゃあ解散!!」


 俺がメンバーを振り分けして、絶対に結果を残すように言ってから解散するのである。
 俺は小野を連れて奈良事務所から少し離れたところにある大和組系の任侠団体の事務所に狙いを定める。
 そして歩いて向かっている時に、俺は小野に襲撃する際への注意事項を再確認させる。それは襲う組織のチンピラは撃ち殺しても良いが、その組の組長と頭だけはできるだけ殺さずに生け捕りにするという事だ。


「このまま大和組を潰したら、田中を引退させて残りを上手く継がせるんだ。そうしたら2代目以降が、腐らずに百鬼会の為になるってわけだな」

「そういうもんなんですね。なるべく撃たないようにしますが、もしもの時は撃ちますよ?」

「まぁなるべく殺すなって話だ。自分の命が危なくなったら、無理せずに撃ってもいい。というか油断している連中は、反撃なんてして来ないだろうから問題ないとは思うが、まぁそういう事だ」


 2人で考えを擦り合わせたところで、ちょうどよく俺たちが潰す事務所の前までやってきたのである。
 いきなり突撃するのではなく拳銃の弾が、十分に補充されているのを確認して、小野の心の準備が整ったところで作戦を開始する。
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