キングダム〜任侠に生きる男たち〜

湯崎noa

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第1章・大阪百鬼会の若い衆 編

003:半グレの大将③

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003:半グレの大将③
 その部屋に入って来た男は、関会長と会談をしていた若い男だった。


「何をカタギのガキたちに、チャカなんて向けとんねや? それに聞ぃたぞ、カタギのガキのタマを取ったんだって?」

「あぁん? テメェは誰だ………なっ!? 関会長と話していた、大阪の奴か!?」

「とりあえずチャカを下げろ。関会長と話して、ワイが仲裁を行なってチャラになってんで」

「そ それは本当な……んですか? コイツらは純友会をコケにしたんですよ!! このまま舐められたままじゃあたまったもんじゃないんですよ!!」


 どうやら若い男は、今回の華龍會の件を独自に動いて関会長に手打ちするように頼んでくれたらしい。
 俺からしたら見知らぬ他人がいきなり現れて、手打ちにしてやったと言ってきたんだ。どうなっているのかと困惑していて、上谷は納得していない様子だった。


「何が舐められたままじゃあや。話を聞いたら、最初はテメェらがカタギのガキを家族の前で袋にしたって話やんけ。しかも関係の無い妹にまで、犯すとか言うたらしいな」

「いや、確かにそれはそうですけど………こっちはメンツの話をしてるんですよ!!」

「せやさかい、そのメンツは既に丸潰れなんだって言うてんやろ!! これ以上、純友会の看板に泥を塗るんやあれへん。それにテメェらは死者が出て無いらしいが、コイツらには出たんやで?」

「まぁ会長の命令と言うのならば仕方ありません………今回は引きますが、2度目は無いと思って下さい」

「その心配はせんでええと思うぞ。今日この日を持ちぃ、この花菱は俺の舎弟するからな」


 上谷が言いたい事を全て潰していき、最終的には拳銃を下ろして下がる事を約束した。
 その際に若い男は、俺を舎弟にすると言って来た。
 その場にいた人間たちは、どういう事なのかと理解ができずに「えっ!?」と声が揃った。


「そんな話、俺聞いてねぇぞ!! それに俺は、誰の盃も貰わねぇんだよ!!」

「噂通り威勢のええガキやな。このままじゃあテメェらは死ぬんやで?」

「知ったこっちゃねぇよ!! まずはテメェが、どこの誰なのかを名乗りやがれ!!」

「そっかそっか。俺は勝手に調べてるけど、あんたらは俺を知らへんのか………ほなら名乗らせて貰う。俺は《大阪百鬼会系菅原組内広瀬組・若頭》の〈青山 誠司〉や」

「えっ!? 大阪百鬼会って純友会と並ぶくらい大きな組織じゃねぇか………座布団は、そこまで高くは無いけど、もう考えても大物だな」


 若い男は、まさかの大阪百鬼会の人間だった。
 大阪百鬼会は日本のヤクザ組織の中で、3本の指には入るくらいの大組織なのである。
 その組織の人間から舎弟盃を貰えるなんて断ったら、とてもじゃないが想像もできない。
 この盃の誘いは、断る以外の選択肢は俺の中で存在していない。つまりは今日から青山さんの舎弟になるというわけなのである。


「俺が青山さんと兄弟の盃を交わしたら、華龍會は解散するって事っすか? もちろん百鬼会から盃がもらえるなんて、とても嬉しい事っすけど、華龍會のメンバーは家族みたいなもので………」

「まぁ百鬼会からっちゅうよりは、ワイが個人でやるってだけの話なんやけどな。お前と盃を交わした際には、華龍會も丸々受け持つつもりや」

「それは望んでもいなかった事です。何卒、華龍會をよろしくお願いします………」

「それこっちのセリフや。俺は人との駆け引きは得意なんやけど、腕っぷしってなると………自信があれへんねんな。せやさかい俺が頭脳で、花菱が俺の腕として暴れてくれや。ほしたら大阪百鬼会の悲願である極道会の統一を目指せる」

「全力でやらさせていただきます!!」


 俺は普段ならば人の下に着くなんて考えられない事ではあるが、何故なのか青山さんの目を見たら、吸い込まれるように下に着きたいと思ってしまった。
 それに純友会の会長とも交渉をして、俺たちを救い出してくれるなんて素晴らしい才能だ。
 青山さんは腕に自信がないと言うが、俺は頭脳には自信がないので、俺でも青山さんや大阪百鬼会に貢献する事ができるかもしれない。


「上谷さん。これで終わりって事で問題ないやんなぁ? これ以上の干渉に関しては、大阪百鬼会への挑発と取りまっせ?」

「分かった。このまま俺たちは引くが、さっき聞き捨てならない事を聞いたんだが? 百鬼会が極道会を統一するっていう風に聞こえたが、それは事実か?」

「あぁそれで間違いは無いさ。ワイら百鬼会は、極道会の統一を目指しとるんだってな」

「それは会長の耳にも入れさせてもらう!! 2度とテメェらの顔なんて見たくねぇ!!」


 上谷は捨て台詞を吐きながら部下たちと共に、華龍會のアジトを後にするのである。
 残ったのは俺と和馬に、青山さんと少し気まずい空間になってしまった。


「それで舎弟盃っていうのは、どんな風にするもんなんすか? 俺たちは本職の方の事は、そこまで詳しくはないもんで申し訳ないっす」

「せやったら酒とカップはあるか? それで簡易的でも花菱は、俺の舎弟になる。これから花菱たち華龍會の本部を大阪に移して、オヤジの盃を下ろして貰うからな」

「兄貴のオヤジから盃が貰えるんですか!?」

「当たり前だろうよ。これから百鬼会の人間として、尽力してもらうんやからな」


 俺と青山さんは簡易的とはいえども舎弟と兄貴分という関係性になったのである。
 そして何よりも俺が百鬼会の人間になったという方が大きいかもしれない。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 俺は青山さんと舎弟盃を交わした後に、本拠地を大阪へ移す為の仕事に追われていた。
 各組織の人間たちに組を抜けるのか、それとも大阪に着いて来て百鬼会組員としてヤクザの人生を生きていくのかの2択を聞いて回った。
 本物のヤクザになるなんて躊躇われる事だし、なんなら大阪の百鬼會に入るという事は不自由を強いられるという事でもあるので、かなりの数に萎んでしまうと俺は予想していたのである。
 しかし俺の予想は、良い意味で裏切られるのである。


「会長っ!! 華龍會に残って大阪に行く人数が、大体決まりましたので報告しに参りました!!」

「やっと決まったのか。ここ3日は寝ずに、色々と走り回ったから疲れたな………それで何人が着いてくる事になったんだ? 最大は300人まで膨れたのが、どこまで減ったのか見ものだな」

「花菱会長に着いて行き、大阪百鬼会の組員になるのを決めた人数は約180名です!! 300人時代からは半分近くまで減ってしまいました」

「全くもって減ってねぇじゃねぇかよ。確かに300人の時からしたら120人近くが減ってはいるが、それでも大型組織じゃんかよ」


 俺が想定しているよりも遥かに人数が減っていなく、本当に自分の考えで着いてこようとしているのかと気になってしまうくらいの人数である。
 人数だけを見るとするのならば、直ぐに指定暴力団に指定されたっておかしくは無い数だ、
 何やらもっと多くの人数を呼び止められると思っていた和馬は、悔しがって俺に頭を下げる。そんな事をされても困るのだが、とりあえずは張り切っているので良しとする事にしたのである。


「これで大阪に行けるってわけだな。俺と幹部連中は新幹線で大阪に行くが、他のメンバーは各自で大阪まで来るようにと伝えておけ」

「了解しました!! 会長。これで正式に百鬼会の一員になるってわけですよね!!」

「馬鹿か。俺たちは、まだ百鬼會の人間を名乗れるような人間じゃねぇよ。まずは三次団体で、功績を残して兄貴を、百鬼会のトップまで連れていくんだ」


 俺たちは準備が整ったので、大阪に向かうべく東京駅まで向かうのであるが、その道中で和馬が百鬼会の一員である事を言葉に軽々しく出しているので、そんな簡単に組の名前を出すなと注意した。
 しかし俺たちが百鬼会の一員として、青山の兄貴をトップまで連れて行きたいという気持ちを持っている為、他の組員たちとは比べ物にならないくらいに燃えているのである。
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