キングダム〜任侠に生きる男たち〜

湯崎noa

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第1章・大阪百鬼会の若い衆 編

002:半グレの大将②

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002:半グレの大将②
 上谷組の上部団体である純友会の本部に、純友会・9代目会長〈関 春吉せき はるよし〉がいる。
 そして関会長の向かいの席に、割りかし若そうな人間が座っているが、着ているスーツは明らかに高級ブランドの激高なモノである。


「ここまで来て貰って悪かったな。なんせ歳で、体調が優れないんでな」

「こちらこそ会長自ら、わざわざ会うとっただき感謝します。昨日今日までやっとった抗争に関しては、これで決着としたいんですがどないでしょう?」

「あぁウチとしても構わないさ。元は我々が手を出して始めた抗争だ………これ以上の悪あがきは、まさしく筋違いになってしまうからな」

「関会長の寛大なる懐に感謝いたします」


 どうやら若いヤクザの男は大阪から来たらしく、東京のトップの人間と会っているのに落ち着いている。
 その姿もあって関会長は、中々に見どころがある人間だと思っていながら和解の話を進めていく。
 そんな時に扉がノックされて扉が開いた。
 すると純友会のチンピラに案内される上谷の姿があったのである。


「なんだ、今は客人が来ているんだぞ」

「も 申し訳ありませんでした!! 八王子のガキの件で馳せ参じたんですが………」

「あぁその件があったな。お前たちは、そのガキに上手くやられてるみたいじゃねぇか」

「その話を伺ってもよろしいでっか? 何せ気になってしもたもんで」


 上谷は俺たちの件を、関会長に相談しに来たのだ。
 その話を聞いて若い男は、何があったのかを聞きたいと関会長に言うのである。
 すると関会長は「うーん……」と迷っている。それはそうだ、昨日までは敵対していた組織に、自分たちがガキに良いようにされているなんて言いづらい。
 しかし三次団体の揉め事なので、こことは直接的では無いと判断して話し始める。


「恥ずかしながら、直参のところの頭がカタギの半グレと揉めてな。向こうも華龍會っていう組織を作って、全面戦争になってるんだ」

「半グレのガキと喧嘩ですか? 三次団体とは言えども純友会さんは、関東でトップレベルの組織じゃ無いんやろか?」

「そこが恥ずかしいところだ。ウチは本職ではあるが、向こうのトップも東京でトップレベルの喧嘩師だ」

「半グレのガキが東京で1番の腕なんでっか!? そら驚きや………ちょっと、そのガキたちに興味が湧きましたで。ええ話が聞けたところで、今日は失礼させてもらいます」

「あぁわざわざ遠いところから足を運んで貰って悪かったな。そっちの会長にも、よろしく伝えておいてくれ」


 若い男は面白い話を聞けたと言って、今日のところは帰るかと席を立ち上がって本部を後にする。
 そして外で待機させていた車に乗り込む。
 すると側近の男が、関会長との会談は、どんな感じだったのかと聞くのである。


「関会長の目の前で話すのは、半端なく緊張してえずきそうになるぞ」

「そないに覇気がある人なんでっか。兄貴も俺からしたら、関会長に負けず劣らずの覇気があると思います」

「まぁ俺からしたら、関会長に会うた事よりもええ収穫があったで。ほんであんたらに調べて欲しい事がある」

「えぇ良いですが、何を調べたらええんでっか?」

「華龍會っちゅうカタギのガキたちが作った組織らしい。なにやら純友会の三次団体組織が手を焼いてるみたいやで」


 俺たち華龍會の存在について詳しく調べるようにと伝えるのである。
 男は俺たちを調べろと言った時に、子供がオモチャを与えられた時みたいな笑みを浮かべている。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 華龍會は徹底的に上谷組に対しての報復行為を行ないながら、東京中の半グレ組織を吸収していった。
 気がつくと華龍會は300人からの大所帯となっていたのである。


「まさか300人まで増えるなんてな………そこら辺のヤクザ組織なんて比べ物にならないぞ」

「それもこれも龍憲さんの人望と喧嘩の腕があってこその大所帯ですよ!!」

「それなら良いが、そろそろ報復行為は終わらせよう。そうじゃなきゃ八王子以上の悲劇が起きる」

「悲劇ですか? このまま行ったら龍憲さんは、この東京でNo.1の親分になれますよ!!」

「副会長のいう事に賛同するのは少し癪だが、俺たちも同意見だ。このまま突っ走って、龍憲さんを日本で1番の親分にするんだ!!」


 俺は本職の人間たちによる、本格的な抗争に発展する事を恐れている。もちろんここで八王子の件での報復行為を止めれば、上谷組と純友会からの攻撃が無くなるかもしれない。
 しかし和馬や他の幹部連中が、俺の事を東京のみならず日本で1番の親分にしてやりたいと考えてるらしい。
 そんな期待をかけられてしまったら、小さい時から期待なんてされて来なかった俺からしたら、とてもじゃないが断れる気がしない。


「分かったよ、このまま続けろ。だけどカタギの人間に手を出したり、女子供に手を出すとか筋違いな事だけは絶対にするんじゃない!!」

『はいっ!!!』


 俺はカタギの人間と、女子供に手を出すなという条件を出して、組員たちの行動を縛る事はしなかった。
 それが最悪な事態を招く事になるのである。
 俺たち華龍會と上谷組との抗争は、戦後最大の半グレ集団とヤクザ組織と新聞やニュースで取り上げられた。
 まぁ結果から言ってしまえば、十分な装備を整えられない半グレ集団の俺たちは、本職のヤクザ組織によって壊滅的な被害を受けた。


「龍憲さんっ!! このままでは、本格的に俺たちが潰されてしまいますよ!!」

「やっぱり止めておけば良かった。幹部連中は、どれだけ動けているんだ?」

「本部長は各地の動きを指揮していますが、理事長は部下を守る為にタマを取られました………」

「なんだと? 福山は死んだのか………俺が福山の代わりに指揮を取る。その準備をしておいてくれ」


 ほぼ幹部の1人も死亡して、明らかに窮地に立たされている俺は、理事長の福山に代わって指揮を取る為に動き出そうとした。
 その時、アジトの扉が勢いよく開いて銃を持った上谷組の若い衆がゾロゾロと入ってきた。もう既に、ここまで追い込まれているのかと俺は眉を歪めて椅子に座り項垂れる。
 すると若い衆の後、ポケットに手を突っ込んだままの上谷が入ってくるのである。


「お前が〈花菱 龍園〉だな? ここまで半グレをまとめて戦ってきた事は、俺が認めてやるよ」

「テメェなんかに認められたくねぇんだよ!! こっちは仲間のカタギが巻き込まれてんだ………その報復をしたって事に文句があるのか!!」

「文句なんてねぇよ。なんせ俺たちの勝ちで、この抗争は幕を下ろすんだからな。まぁガキ相手に、ここまで本気出したのかって言われるかもしれねぇが、俺たちはテメェらをカタギなんて思っちゃいねぇよ」


 やはり俺たちは本職の人間たち相手に、少しやりすぎたのかもしれない。
 どれだけ半グレを集めたところで、相手は日本の中でも指折りな純友会だ。本気を出されたら、こっちはひとたまりも無かった。
 それを判断しきれなかったのは、俺のミスであり福山理事長を死なせたのも自分のせいだと分かっている。
 ならばここは潔く上谷にタマを取らせて、男として最高な幕を下ろしてやろうと覚悟を決めた。
 しかし俺と上谷の前に、和馬が割って入る。


「アンタら何かに親分は殺させねぇよ!! アンタらはカタギに手を出すようなクズだが、ウチの親分は命をかけて半グレたちを救ってきたんだよ!!」

「それがどうしたってんだ? お前たちの前にいるのは純友会なんだぞ?」

「お前が純友会なわけじゃねぇ!! アンタの親父が凄いだけで、アンタが凄いわけじゃねぇよ!!」

「言ってくれるじゃねぇか。それじゃあテメェらの首を持って会長のところに行ってやるよ!!」


 和馬は俺を助けようとするのであるが、それが逆効果で上谷に銃を構えさせて、今にも撃たれそうな空気感になってしまったのである。
 和馬を殺させるわけにはいかないので、覆い被さるようにして守ろうとした瞬間、手をパチパチと叩きながら新しい男が入ってきた。
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