転生したらどんな武器にも変化できる最強の本だった件。─幼女とのんびりゆるふわ紀行─

桜樹人(おきと)

文字の大きさ
上 下
27 / 27
Ⅶ章 黄昏と夜の狭間にて

page25 分かれ道な件

しおりを挟む
完全に突き放された男は加奈子を追いかけた。

そして思い切って加奈子に尋ねた。
お、俺も戦闘できるように、戦えるように仲間にしてくれませんか?」

加奈子は振り返り、しばし男を見つめた。

『あなたに聞くけど、今の世が変わった事は理解できましたか?』
『そして、これからどう生きていきたいか教えて下さいな』

どうって・・・ 流れに乗りたい?みたいな感じかな?」

『・・・』
『お調子者さんかな?』

だ、駄目ですか?」

加奈子はチラリと小学校の向こう、中学校の校庭を見た。
かなりの人間が校庭で何かをしているのが見える。

多分、戸弩力組が頑張っているんだろう。





『あそこで皆さん、レベルを付けた方ばかりで訓練しているのでそこへ行かれたらよろしいかと』

見ず知らずの男性を仲間にするほど、加奈子の偽善心は高くない。
それよりも、どんな人間性かもわからないのに、仲間にして問題が起きる方が嫌である。

えっ?ここじゃ無理なんですか?」

『・・・』
『出来ない事は無いけれど、私たちはこれからやる事もありますので』

お、俺も手伝いますので、ここで鍛えてもらえませんか?」

加奈子は少しうんざりとしてきた。
基本的に、あんまり男が好きじゃないのかも知れない。
戸弩力や徳太郎は特別なんだろう。

麗菜加奈子さ~ん、どうしたんですか~?」

なかなか来ない加奈子を心配して麗菜と明日桜が近寄ってきた。

『この方がこのパーティに入れて欲しいと言うので、お断りをしている所です』

男に聞こえる様にハッキリと意思表示をしてみる。
明日桜おじさん一人くらい増えた所であんま問題は無いんじゃ~ないっすか?」

麗菜は男の顔をジッと見て尋ねる。
麗菜あなたは何が出来ますか?今のあなた自身の特技を聞かせて下さいな」
お、俺はゲームくらいしか取り柄は無いけど・・・」

『・・・』
面倒くさいので断るつもりが、何やら眷属たちは容認しようとしているようだ。


麗菜どんなゲームがお得意ですか?」
き、基本はRPGやけど、SLGも好きかな」

麗菜課金勢?無課金やり込み勢?それともガチ勢ですか?」
どっちかと言えば、ガチ勢かな~」

麗菜結婚はされてます?ご家族は?」
バ、バツイチで家族は神戸には居ません」

麗菜これからやるとしたら、どんな職業ジョブを目指しますか?」
俺は・・・ 鉾か槍か戦斧か長柄の殴棒メイスかなぁ」

麗菜刀や剣は?体術とか?」
いや、中距離で力任せに戦う方が得意かな?」

(((女3人その身体で?)))

明日桜い、今、身長と体重はどんくらい?」

見るからに細身で力も無さそうなのに、力任せが得意とか?理解出来ない明日桜が聞いた。

えっと~ 178㎝で55㎏くらいかな?」
麗菜ほっそっ!」
だから市販の服やズボンはサイズが合わなくてw」

服もズボンもかなり大きめのサイズを着ているのは、細身を隠すためだと思っていた。
だが、身体廻りを合わせれば、服もズボンも丈が短すぎるようだ。
丈を合わせればブカブカな感じになってしまう。

麗菜加奈子さん、この人をレベル付きにしませんか?」
『ん~まぁいいですけど・・・』

加奈子からの言質を取ったので麗菜はその男を引き連れてマンションの1階エントランスに向かう。
明日桜はジンガの頭を撫でながら加奈子に物申す。

明日桜加奈子さん、あの人を仲間にするのが嫌そうだったけど?」
『ん~まぁ何て言うのか、私って男性不審なのかも知れないですね』

明日桜でも、こんな所で出会うって縁ですよね」
『縁・・・ 縁なのかなぁ?』

明日桜昨日、戸弩力さんと話してるのを聞いちゃってたんだけど、加奈子さんは強い"運"を持ってるって話だったんですよね。
だったらこんな所で偶然出会う縁ってのも、その運に導かれたもんじゃないかなって思う」

『・・・』
明日桜麗菜さんとちょっと前に話してたんです。
自分たちが今ここに居るのも、加奈子さんの運に導かれて集まった人達なんだろうねって」

『・・・』
明日桜だからあんなヒョロポンな男でも何かしら有意義な存在なのかも知れない?かな?」

『わかったわ、でも仲間にするのなら火の地獄を味わってもらわないとねw』
明日桜あはは、あれはなかなか地獄ですw」





レベルが付いた男に、最低限のスキルと、最高の火熱耐性を覚えさせた。
ハァハァハァ・・・ 2度も死ぬ思いをするなんて・・・」
麗菜今、生きてるって事でしょw」



マンションの1階には100や200ではきかないくらいのゴブリンが居た。
老人ホームの方にも数えきれないくらいのゴブリンが居るので、そっちに男と麗菜を引き連れて加奈子は颯爽と臨んでいった。

建物内で火絨毯は拡げられないので、小さめの火弾を撃ち込み殲滅していく。
麗菜は二股の槍で軽くゴブリンをほふって行く。
身長がさらに伸び、やっとそこらの格闘家並みの筋肉が付いたが、撫で肩の為、そんなにガッチリは見えない男は、先言通りにフロアモップの先の房糸部分を取り除いた、さすまたの様な長柄武器で戦っている。
あまり殺傷力は高くないが、麗菜とペア狩りしているため特に問題は無いようである。

加奈子は同じフロアだが、少し離れてソロ狩り状態である。
(ふふふ、また何かドロップしたわ)

ちょこちょこゴブリンからは綺麗な瓶に入った薬を落としていたが、フロアボスだったかも知れない大きくて、明らかに他よりも強いゴブリンを倒した時、オレンジの宝珠を落として逝った。
 (出会った時のよりも何倍も強いこのゴブリンを雑魚みたいにアッサリと倒せた…)
 (今ならあいつとやっても勝てるんじゃないだろうか?…)
 (いや、ヤツがあのままのはずは無いし、慢心は封印しないと…)

加奈子のステータスは、武闘でも魔法でもこんなフロアボスクラスなら敵対も出来ないくらい差が付いてしまっている。
キャリヤと差が付いているのかは、今の所不明である。



加奈子の眷属のオオカミ、フィルは子供達と同じ、マンション部分の1階に居た。
子供達の主である、明日桜と緑と共に戦う。
3匹と2人は、素早さと攻撃力に長けている為、戦い方は必然的に近接戦闘になってしまう。

すぐそばでは、雲国親娘がゴブリンから奪った中刀で迫力のある戦いを繰り広げている。


老人ホームの1階を殲滅した加奈子たちは、2階3階と上がってみたが上にはゴブリンは居なかった。
また1階に降りて、エントランスとは反対側からマンション1階に入りゴブリンを殲滅していく。


加奈子は1階廊下に火の絨毯を拡げながら先行で進んで行った。
麗菜と細男が後始末をしながら進んで行く。

『麗菜さん、ドロップを見かけたら拾って来てくださいな』
麗菜はいっわかりました」
お任せください」



この短時間でこんなにレベルが上がって、なんか夢を見てるようです」
麗菜私も実は、あなたがレベルを付けるほんの少し前にレベル付きになったんですよw」

最初の3~4匹は気持ち悪かったけど、もうゴブリンを殺す事に何も思わなくなりました」
麗菜人としてはどうかと思うけど、こんな世界で生きて行くには慣れていかないとね」


二人共あっという間にレベルも10を超えて余裕も出て来て、話をしながら敵を狩って行く。
だが、何度も加奈子に言われた言葉を思い出し、麗菜は男に告げる。

麗菜常々心に止めておいて欲しいんだけど、慢心だけはしないでね」
慢心ですか・・・」

麗菜あの加奈子さんですら、その慢心で死に掛けたって言ってたからね」
はぁ・・・ やっぱりやられたら死ぬんですよね・・・」

麗菜それはそうと、職業はもう選択したの?」
いえっ、出てるのは【棒術士】【棍術士】【鉾術師】の3つあるんですが、なかなかどれにするか決めきれなくて」

麗菜焦らなくても、また違う職業も発生するしね」



加奈子がグングン先に進んで行くと、もう目の前にフィル達が見えた。
前方に火の絨毯を展開し、暫く戦闘を眺めている。

(みんな、ほんと危なげなくゴブリンくらいなら倒せてるね)

おおよそ1階のゴブリンを掃除し、加奈子はフィルを連れて2階に上がってみたが、やはりそこにはゴブリンの姿は無かった。

(ん~ ゴブリンって1階にしか居ないのかな?)


目に見える範囲にゴブリンが居なくなったので、天使軍はゾロゾロと外に出て行った。

男が一人増えている事に雲国母娘が少し訝し気な雰囲気を見せているので、加奈子が自己紹介をするように男に促した。

今日からパーティに入れて頂いた 棒妻ぼうつま 洋路ひろみちと言います」
以後、宜しくお願いします」

軽く自己紹介が終わり、9番街と8番街の間に座って今の戦闘の感想を言い合う。
明日桜や緑も率先して話の輪に入っている。



とても楽しそうに話す皆の姿を見て、加奈子の心に嬉しい気持ちが溢れて来る。


しおりを挟む
感想 3

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(3件)

2022.04.06 ユーザー名の登録がありません

退会済ユーザのコメントです

桜樹人(おきと)
2022.04.07 桜樹人(おきと)

あの2人は割りと好きなサブキャラなので今後もバンバン出てきますよ。

解除
2022.04.01 ユーザー名の登録がありません

退会済ユーザのコメントです

桜樹人(おきと)
2022.04.01 桜樹人(おきと)

アリスは世界最強の種族である龍と人のハーフなので人の中では最強です。
半分でアリスレベルの強さになるので龍の強さはもっと強いです。

解除
2022.03.31 ユーザー名の登録がありません

退会済ユーザのコメントです

桜樹人(おきと)
2022.03.31 桜樹人(おきと)

ありがとうございます!
アリスは天然気味&常識知らずな感じです。
武器もまだまだ沢山出てきますし剣以外も沢山使うのでご期待ください(無駄なハードル上げ)

解除

あなたにおすすめの小説

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました

taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件 『穢らわしい娼婦の子供』 『ロクに魔法も使えない出来損ない』 『皇帝になれない無能皇子』 皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。 だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。 毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき…… 『なんだあの威力の魔法は…?』 『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』 『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』 『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』 そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。

姫騎士様と二人旅、何も起きないはずもなく……

踊りまんぼう
ファンタジー
主人公であるセイは異世界転生者であるが、地味な生活を送っていた。 そんな中、昔パーティを組んだことのある仲間に誘われてとある依頼に参加したのだが……。 *表題の二人旅は第09話からです (カクヨム、小説家になろうでも公開中です)

悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!

ペトラ
恋愛
   ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。  戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。  前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。  悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。  他サイトに連載中の話の改訂版になります。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~

雪月夜狐
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】 『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】

初期スキルが便利すぎて異世界生活が楽しすぎる!

霜月雹花
ファンタジー
 神の悪戯により死んでしまった主人公は、別の神の手により3つの便利なスキルを貰い異世界に転生する事になった。転生し、普通の人生を歩む筈が、又しても神の悪戯によってトラブルが起こり目が覚めると異世界で10歳の〝家無し名無し〟の状態になっていた。転生を勧めてくれた神からの手紙に代償として、希少な力を受け取った。  神によって人生を狂わされた主人公は、異世界で便利なスキルを使って生きて行くそんな物語。 書籍8巻11月24日発売します。 漫画版2巻まで発売中。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。