転生したらどんな武器にも変化できる最強の本だった件。─幼女とのんびりゆるふわ紀行─

桜樹人(おきと)

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Ⅴ章 ネクロマンサーと飛空艇

page17 旅のネクロマンサーと出会った件

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俺とアリスが街へ戻るとロロナとリリィが出迎えてくれた。
2人ともアリスが居ない間アリスの代わりにAランククエストを受けてくれていたらしい。
そのお陰か、ロロナとリリィもAランク冒険者として正式に認められ、今ではグランシェードにAランク冒険者が4人となり、王都よりも多くなったとレオハルトさんも鼻高々に言っていた。

「それでは、私はミロードの受けていたベヒモスの討伐に行って参ります。
ミロードはお疲れでしょうからゆっくりと休まれるとよろしいかと。
ベヒモスであれば私1人でも討伐は可能で御座います。」

リリィが言った。
一応リリィはアリスの従者と言う位置付けなのだがアリスがそう言うのを好まないからと基本的に自由行動としている。
リリィもそれが楽しいみたいで1人でクエストを受けたりと自由に生活している。

リリィを見送った俺達はレオハルトさんから言われたとおり今日は休むことにしてペントハウスへと向かった。
ロロナも昨日アラハバキ討伐があり疲れたから今日は一日休みなのだとか。

「あの、すみません。」

1人の少女が話しかけてきた。
身長は118cm程で前髪は左目が隠れる程長く、後ろ髪も地に着く程長い黒髪ロングで癖毛なのか寝癖なのか、少しボサボサだ。
白い肌に眠たそうな眼に紫色の瞳。
幼い顔立ちで口には犬歯がのぞいている。
服装は袖口がフリルになっている黒いノースリーブのワンピースでスカートの裾はフリルがあしらわれ、胸元には紫色の大きなリボン。
黒いタイツに黒いエナメルパンプスをはいておりその上に黒い長袖のローブを羽織っている。
ローブにはフードもついており、丈も地面ギリギリで少女の体全体を包み込める大きさだ。
首からは銀色の十字架のネックレスをしており左手首には包帯を巻いている。

「どうかしましたか?」

「こんにちは。
私はミーシャって言うの。お姉さん、このあたりでシャルルを見なかった?」

ミーシャが言った。
シャルル?なんだろうか?

「いや、知らないです。
ロロナちゃんは?」

「シャルル・・・ですか。
残念ながら。
それが種族名で無い事しか分かりませんね。
この世界にシャルルと言う名前の種族は存在しませんから。
恐らく個体名かと。
そうなると種族がわからない限りは探すのも困難かと。」

ロロナが言った。
そういや、ロロナはユグドラシルドライアドだったな。
世界樹にはこの世界のあらゆる情報が集まるらしく、ロロナはその情報を保存しているユグドラシル・メモリアルストレージにアクセスする権限を持っているらしい。
ちなみに、このユグドラシル・メモリアルストレージは現実世界とは別の並行世界にある物らしく、ユグドラシルドライアドのみがその世界への鍵を開けるのだとか。

「そっかぁ・・・」

「あの、シャルルの種族はわからないのですか?」

「ごめんなさい。
ミーシャに分かるのは名前だけなの。
あのね、ミーシャ、シャルルについての記憶が無いんだ。
けどね、ミーシャは記憶を無くす前からシャルルを探しているのは覚えてるよ。
けど、覚えているのはシャルルと言う名前だけなの。
だから、世界各地を旅しながらこうしてシャルルの事を聞いて回っているんだ。」

ミーシャが言った。
記憶喪失か。
もしかしたら、そのシャルルと言うのは家族の名前なのかも知れないな。
そうなるとペット的な動物でなく人間の可能性も出てくるのか。

「確かシャルルと言う名前は古代アシリア語で忠誠と言う意味だったかと。
もし、そのシャルルと言う言葉をとって名付けられたとすれば、名付けた方は古代アシリア語を知っている・・・考古学者かヴァンパイア、ドライアド、マーメイド、セイレーン辺りになりますかね。」

ロロナが言った。
古代語か。
そうなると俺も分からんな。

「そっかぁ。
名前を付けたのはパパかママだと思うな。
どっちが付けたのかはわからないけどパパはヴァンパイアで考古学者だからパパだと思うな。」

ミーシャが言った。
それならそのお父さんに聞くのが早いが・・・
聞ければとっくにしているよな。
恐らく、聞けない事情があるのでは無いだろうか?

「そうですか。
名前しか分からずそれでも探していると言うことはご両親に聞くことは難しいのですね。」

「うん。パパもママも死んじゃったの。
けど、寂しくないよ。
ミーシャにはヴァイスとシュヴァルツがいるから。」

ミーシャが言った。
周りに姿は見えないのだが別行動なのだろうか?

「その、ヴァイスとシュヴァルツって言うのはどこにいるの?」

「ここにいるよ?
あ、そっか、今は見えないよね。
2人とも出てきて良いよ。」

ミーシャが言うとミーシャの後ろに体躯5m程のフルアーマーの騎士が2人現れた。
1人は真っ白い純白の鎧で繋ぎ目には青い光が流れていて右手には白い四角い大盾を構えている。
もう1人は真っ黒い漆黒の鎧で繋ぎ目には赤い光が流れていて右手には黒い両刃の大剣を構えている。
人では無いな。
モンスターか?
いや、核が無いから違うな。
だとするとリリィの様なオートマタ?
だが、こんな大きなオートマタなんて作れるとは思えないし・・・

「白い方がヴァイス、黒い方がシュバルツだよ。」

ミーシャが言うと2人ともが片膝をついて頷いた。

「おっきな人だねぇ。」

「あはは、人じゃ無いんだ。
この子達はね、アンデッドなの。」

「リビングアーマーか。
だが、にしては動きが人に近いな。
リビングアーマーは鎧の寄せ集めだろ?
こんなちゃんと動けるのか?」

俺が言うとミーシャは少し驚いた顔をする。

「少し違うよ。
リビングアーマーをスケルトンが着てるの。
ネクロマンシーの1つでね、2つのアンデッドを融合させて強力なアンデッドにしてるんだ。」

ミーシャが言った。
確かそれってかなり難易度の高い死霊術だよな。
それだけ高度な死霊術を扱える死霊術師は数少ないだろう。

「誰が融合してくれたの?」

「え?ミーシャだよ?
この子達はミーシャが作ったんだ。」

ミーシャが言った。
ミーシャはどう見ても8歳位の女の子だ。
死霊術師だったとしてもこんな高度な死霊術を扱える程修行する時間はないはずだ。
それとも、それが出来るだけの才能があったと言うのか。
魔術と言うのは修行も必要だが才能がある者は修行をする前から高い能力を持っている事があるらしい。

「死霊術って凄いんだねぇ。」

アリスがそう言って2体の騎士を見上げる。

「2人とも戻って。」

ミーシャが言うと2体の騎士はその場から消える。

「それで、シャルルを探しているんだったよな?
この街にはどうして?
何かヒントでもあったのか?」

「あ、うん!
ヒントって訳じゃ無いんだけどね。
この街の近くに古代遺物アーティファクトの飛空艇があるって聞いてね。
それを手に入れれば簡単に旅が出来るからそれを探しているの。」

飛空艇か。
そんな物があるなんて聞いたことが無いが・・・
それもアーティファクトとなればなおさらだな。

「うーん、知らないなぁ。
ロロナは?」

「そうですね。
1つだけ、心当たりが。」

ロロナがそう言って空を見上げる。

「リリィの棺が空から落ちてきたのは2人も見ていますよね?
あの棺なのですが、心当たりがあるんです。
かつて、天才と呼ばれた錬金術師、ジェーン・アルケミストと呼ばれる人物。
彼女は錬金術によるオートマタやホムンクルスの作成が出来たとか。
そして、そんな彼女が拠点としていたのが空飛ぶ拠点、飛空艇アルスマグナ。
飛空艇その物がアーティファクトとされるジェーン・アルケミストの最高傑作。
そして、その飛空艇には操縦や身の回りの世話を一手に引き受けるメイドの様なオートマタがいたとか。
名前までは分かりませんがそのオートマタは黒い棺型の充電ポットで眠るとそれだけは伝わっています。
もし、リリィがそのオートマタならこの近くに飛空艇があるのも頷けます。
リリィは何らかの理由で棺で充電中に飛空艇から落ちた。
そして、その衝撃で一部記憶が欠損している。
そ卯考えるのが自然でしょう。」

ロロナが言った。
だとしたらリリィに聞いてみれば何か分かるかも知れないな。

「リリィは確か明日戻るんだったよな?
明日、リリィに聞いてみようか。」

「それが良いと思います。
けど、2人は明日、レオハルトさんに呼ばれていますよね?」

俺が言うとロロナがそう言って唸る。
そうか、そういやそうだな。

「なら、レオハルトさんに話を聞いてついでにその事も話してみよう。
この街のギルドマスターだし何か知ってるかも知れないしな」

俺が言うとロロナが頷く。

「それじゃあ、今日は解散だね。
ミーシャちゃんもまた明日冒険者ギルドでって事で良いかな?」

「協力してくれるの?
ありがとう!
明日、明日ね。
わかった!冒険者ギルドに行くね!」

ミーシャは嬉しそうに微笑むとそう言って宿へと向かった。
俺達も家に戻り休むのだった。
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