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私はあの時あった出来事をダニエルに話した。
警察沙汰になり、病院で色々な検査や事情聴取のようなものを受け、そして元いた孤児院に戻されたのだ。
「そのクソ野郎の名前は覚えてるか?」
ダニエルが低い声でそう呟く。
「ふふふ、知ってどうするの?何かしたいのなら残念だけど、もう死んでるわ。ぶち込まれた刑務所の中で殴り殺されたんですって。」
あの男は私以外にも近所の子供達に性的暴行を繰り返していたということが分かり、実刑判決が出た。
子供への性的暴行は刑務所の中で一番嫌われる。
まぁ、自業自得というやつだ。
惜しむのはあの男の妻が夫の罪が明るみに出た時にショックで自殺してしまったということ。
仮初の母親だったけれど、優しくて良い人だったので、彼女の死を後から知った時は残念に思った。
世の中の不条理とはまさにこの事だ。
「クソ野郎には似合いの死に方だな。」
「そうね。まぁ、生きていたとしても自慢の息子は半分私に食いちぎられていたから、それなりに地獄だったんじゃないかしら?」
私がそう言うとダニエルは少し驚いて、そして笑い声を上げた。
「お前は本当に最高だな。食いちぎったのか、そうか。さぞ見ものだったろうなぁ。」
「今まで抵抗らしい抵抗をされた事が無かったみたいでずっと、何でだ!って叫んでたわ。」
「ハハハ!何でもクソも無いだろう。」
私達はひとしきり笑い合った。
そして、笑い終わるとダニエルは私の首筋を撫でながら言った。
「お前が急に来なくなって俺はてっきり飽きたか、嫌われたと思って柄にもなく落ち込んだ。近所に聞いて回ったが誰も知らないと言うから探しようもなくてな。」
「あぁ、あそこは里親が通わせてたダンスの教室が入っていた建物だったから。」
「そうか、どうりで見つからないわけだな。」
「ねぇ、落ち込んだって本当?」
首筋を撫でる彼の手を取り、そう尋ねるとダニエルは私にキスをした。
「あぁ、後にも先にも俺を振って黙って消えた女なんてお前だけだ。」
「あら、振ってないわよ。ただ、ちょっと事情があっただけ。」
「まぁいい。今、お前が俺の目の前にいるだけで満たされる。」
泣く子も黙るフォリーノファミリーの幹部、ダニエル・カーターが私の前では随分と骨抜きになっている。
たまに飼い主にじゃれつくライオンの動画が動画サイトに流れてくるが、あれと大して変わらないような気がする。
「いいの?そんなに手放しで私を信用して。」
「俺を裏切るのか?」
「いいえ、貴方のためなら死ねるっていうのは本心よ。」
「それなら構わないだろ?それにお前になら寝首をかかれるのも悪くない。」
ああ、王者の余裕だ。
自分の意思決定に対する絶対の信頼、実力があるからこその余裕の振る舞い。
こういう人間は中々いない。
Mr.フォリーノが重宝し、同時に厄介だと言うのが分かる気がした。
「何を考えてる?」
「貴方を分析してるの。実に非合法の世界で生きていくのに長けた人ね。」
「父親はMr.フォリーノの部下で母親は元娼婦、筋金入りだ。だが、お前だって非合法の世界で生きていくのに長けた人間だろ?」
「さあ、どうかしら?」
私がふざけてそういうと、ダニエルが私の顎を掴んだ。
「もう二度と俺の目の前から黙っていなくなるなよ。次やったら必ず見つけ出して殺すからな。」
「女一人に物騒ね。」
「頭が良い、仕事も出来る、体も良い、そんな女を手放したい男いるわけないだろ。」
そう言いながら、腰に手を回して自分の方に引き寄せる。
私は彼の上にのしかかるような体制になった。
重なった部分から彼の熱を感じて、たまらない気持ちになる。
「ねぇ、予定があるんじゃないの?」
「あぁ、もうすぐまた行かなきゃならない。」
「無理をしたんでしょう。」
私がそう尋ねるとダニエルが私のお尻を両手で掴んだ。
「お前がいなくなってると思ったからな。気が気じゃなかったんだ。」
「そんなの駄目よ。貴方の弱みになりたくない。」
「お前はそんなタマか?」
「んー、少なくとも貴方の足手纏いにはならない程度の実力はあるかしら?」
「だろう?あるとしたらお前が自分から離れる時だけだ。」
大丈夫よ、と呟いて私は彼の上から下りた。
「さ、時間も無いのでしょう?さっさと仕事に戻って。」
そう言ってドアを指差すとダニエルはやれやれと言いながら立ち上がった。
「仕方ない、行ってくる。」
「良い子で待ってるって約束するわ。」
微笑みながら彼の背中を見送った。
警察沙汰になり、病院で色々な検査や事情聴取のようなものを受け、そして元いた孤児院に戻されたのだ。
「そのクソ野郎の名前は覚えてるか?」
ダニエルが低い声でそう呟く。
「ふふふ、知ってどうするの?何かしたいのなら残念だけど、もう死んでるわ。ぶち込まれた刑務所の中で殴り殺されたんですって。」
あの男は私以外にも近所の子供達に性的暴行を繰り返していたということが分かり、実刑判決が出た。
子供への性的暴行は刑務所の中で一番嫌われる。
まぁ、自業自得というやつだ。
惜しむのはあの男の妻が夫の罪が明るみに出た時にショックで自殺してしまったということ。
仮初の母親だったけれど、優しくて良い人だったので、彼女の死を後から知った時は残念に思った。
世の中の不条理とはまさにこの事だ。
「クソ野郎には似合いの死に方だな。」
「そうね。まぁ、生きていたとしても自慢の息子は半分私に食いちぎられていたから、それなりに地獄だったんじゃないかしら?」
私がそう言うとダニエルは少し驚いて、そして笑い声を上げた。
「お前は本当に最高だな。食いちぎったのか、そうか。さぞ見ものだったろうなぁ。」
「今まで抵抗らしい抵抗をされた事が無かったみたいでずっと、何でだ!って叫んでたわ。」
「ハハハ!何でもクソも無いだろう。」
私達はひとしきり笑い合った。
そして、笑い終わるとダニエルは私の首筋を撫でながら言った。
「お前が急に来なくなって俺はてっきり飽きたか、嫌われたと思って柄にもなく落ち込んだ。近所に聞いて回ったが誰も知らないと言うから探しようもなくてな。」
「あぁ、あそこは里親が通わせてたダンスの教室が入っていた建物だったから。」
「そうか、どうりで見つからないわけだな。」
「ねぇ、落ち込んだって本当?」
首筋を撫でる彼の手を取り、そう尋ねるとダニエルは私にキスをした。
「あぁ、後にも先にも俺を振って黙って消えた女なんてお前だけだ。」
「あら、振ってないわよ。ただ、ちょっと事情があっただけ。」
「まぁいい。今、お前が俺の目の前にいるだけで満たされる。」
泣く子も黙るフォリーノファミリーの幹部、ダニエル・カーターが私の前では随分と骨抜きになっている。
たまに飼い主にじゃれつくライオンの動画が動画サイトに流れてくるが、あれと大して変わらないような気がする。
「いいの?そんなに手放しで私を信用して。」
「俺を裏切るのか?」
「いいえ、貴方のためなら死ねるっていうのは本心よ。」
「それなら構わないだろ?それにお前になら寝首をかかれるのも悪くない。」
ああ、王者の余裕だ。
自分の意思決定に対する絶対の信頼、実力があるからこその余裕の振る舞い。
こういう人間は中々いない。
Mr.フォリーノが重宝し、同時に厄介だと言うのが分かる気がした。
「何を考えてる?」
「貴方を分析してるの。実に非合法の世界で生きていくのに長けた人ね。」
「父親はMr.フォリーノの部下で母親は元娼婦、筋金入りだ。だが、お前だって非合法の世界で生きていくのに長けた人間だろ?」
「さあ、どうかしら?」
私がふざけてそういうと、ダニエルが私の顎を掴んだ。
「もう二度と俺の目の前から黙っていなくなるなよ。次やったら必ず見つけ出して殺すからな。」
「女一人に物騒ね。」
「頭が良い、仕事も出来る、体も良い、そんな女を手放したい男いるわけないだろ。」
そう言いながら、腰に手を回して自分の方に引き寄せる。
私は彼の上にのしかかるような体制になった。
重なった部分から彼の熱を感じて、たまらない気持ちになる。
「ねぇ、予定があるんじゃないの?」
「あぁ、もうすぐまた行かなきゃならない。」
「無理をしたんでしょう。」
私がそう尋ねるとダニエルが私のお尻を両手で掴んだ。
「お前がいなくなってると思ったからな。気が気じゃなかったんだ。」
「そんなの駄目よ。貴方の弱みになりたくない。」
「お前はそんなタマか?」
「んー、少なくとも貴方の足手纏いにはならない程度の実力はあるかしら?」
「だろう?あるとしたらお前が自分から離れる時だけだ。」
大丈夫よ、と呟いて私は彼の上から下りた。
「さ、時間も無いのでしょう?さっさと仕事に戻って。」
そう言ってドアを指差すとダニエルはやれやれと言いながら立ち上がった。
「仕方ない、行ってくる。」
「良い子で待ってるって約束するわ。」
微笑みながら彼の背中を見送った。
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