上 下
30 / 48
全盲のお嬢様 フォルブルク家の災難

貴族達のパーティー その後

しおりを挟む
「と言う訳で、ユウーザ男爵どもは、犯罪者として捕まえたのだ。」

 サフマン様が話を終えた。

 僕は屋敷に呼ばれサフマン様に、説明を受けていた。以前食事をしたホールにサフマン様とアリス様、そしてサーシャさんがいて、テーブルに紅茶とケーキが並んでいる。

 なるほど。ユウーザ男爵って人に、毒を盛られて、死にかけたみたいだ。サフマン様を殺して、上の貴族の椅子を開けようとしたみたいだ。

 何も自分の屋敷で狙う必要も無かったのにと、僕は思う。普通は、移動中だろうな。


「今回は、このネックレスのお陰で私は助かったのだ、ありがとう。」
 サフマン様が頭を下げる。 

「いえいえ、頭を上げてください。たまたまですよ。」
 当主が頭を下げるのは、止めて欲しいな。確か余り良い事ではなかったはず。

 騎士隊達も頭を僕に下げている。


「なるほど。私の命は、たまたま拾ってもらったのか。はっはっは!」

 嫌な言い方だな。僕はそう思った。

「また褒美をやらないといけないな!それよりエルジュよ。私に天職のスキルを教えてくれないか?」
 サフマン様が真剣な眼を向けてくる。確かにこの人は信用できる。でも僕自身がまだ弱い。

「私はエルジュに助けられた。裏切る様な事は絶対しない。」

 うん。信用はできるが。
 僕は、聞いてみる。

「サフマン様。あなたの目標は何ですか?」

 サフマン様が考えている。

「私の目標は、私の領地で生活をして、良かったと言ってくれることだ!今この街ハリソンは、とても良い環境になっている。しかし!私はここだけでは満足できない!他の街を見て思ったのだ!なぜここの貴族は、こんな街で満足している!自分が良ければそれで、良いのか!と」
 貴族様が街を統治しているが、街の人達を助ける事は余りない。そのため、貧困が進み、貧富の差が開いてしまい、犯罪者が増えるのだ。サフマン様は、そんな街をいくつも見ているのだろう。

「私にもっと力があれば!そして、信用できる仲間がいれば!とずっと思っているのだ。そんな害悪しかない貴族達を一掃するのが私の夢だ!」

 うん。こんな事を言ったらあれだが、貴族なのに貴族を一掃とか普通言ってはダメだろうな。宣戦布告じゃないか。騎士団達は、目頭が熱くなっているが、お前達はそれで良いのか?

 サフマン様は、言ってやったぞとばりに胸を張っている。

 でもそんな人は、嫌いじゃ無いんだよな。

「分かりました。いずれ分かる事なので教えます。でも話す人は限定します。」
 騎士達やメイドや執事達全員に教えるのは、怖いのだ。

 サフマン様は、わかったと答えてくれた。

「サフマン様とアリス様。サーシャさんとイドリスさんの4人には、教えます。」
 僕が言うと、騎士やメイド、執事達は、ホールから消えて行った。反対の声はない。

「それでは話します。他の人には絶対言わないでください。僕の天職は【アクセサリーショップ】です。」
 これは皆知っている。
「アクセサリーを作るためのスキルがありますが、特別な事はありません。教える必要があるのはこれです。」

 僕は、ゴブリンリーダーの魔物石を4つテーブルに出した。

 ゴブリンリーダーの魔物石
 レベル20
 効果 剛力Lv1
 筋力を30%上げる。

「これに僕の魔力を込めると、魔鉱石になります。効果は、剛力Lv1です。でも普通の魔鉱石みたいには使えません。」

 僕は魔力を込めて魔鉱石にする。

 魔鉱石
 効果 剛力Lv1
 筋力を30%上げる。
 効果時間 10分

 サフマン様が魔鉱石を眺めて、魔力を込めるが使えない。イドリスさんも試すがダメだった。

「これに針金を着けてキーホルダーにします。」
 キーホルダーにして、サフマン様に握ってもらう。

「おお!なるほど。」
 サフマン様は、筋力が上がったのを感じたみたいだ。他の3人も試している。

「そのキーホルダーの凄い所は、魔力を使わないで発動します。」

 サフマン様が何!と叫びキーホルダーを握って確認している。納得してくれたみたいだ。効果時間があることも説明する。

「今の僕の素材合成スキルが3なので、このようにすると、レベル3の魔鉱石になります。」
 僕は魔鉱石を合成して、一つのキーホルダーにする。

 皆納得してくれたみたいだ。魔物石のスキルを僕は、キーホルダーにすることで使う事ができるのだ。

「なるほど、サーシャの眼を治したのが、一部再生のお陰なのか。でも義眼の魔法道具は、エルジュの力だろ?」

 はいと肯定する。

「なるほどな。それで全てか?」

「褒美として貰った魔鉱石を使ってブレスレットを作りました。そうしたら、効果時間がなくなり、魔力消費もありませんでした。」

 左腕に着けていた、紫色のブレスレットを見せる。魔力回復Lv1のブレスレットだ。

 サフマン様が着けて見ると魔力の回復を感じる事ができたみたいだ。

「あとは、炎魔法が使えます。今はレベル3です。」

 サフマン様とイドリスさんが驚いている。火魔法の上位魔法の炎魔法が使える魔法使いは、なかなかいないのだ。

「以上ですね。どうですか?」
 僕の話は、終わりだ。

 誰も何も言わない。

 僕は、テーブルに魔物石を並べ、思い付いた物を作っていく。

「そうか。ありがとう、エルジュ。予想以上で驚いているが、隠したくなる意味がわかったよ。」
 そうだ。こんな事を知ったら、僕を捕まえる人が出てもおかしくない。

「私、サフマン・フォルブルクが責任を持ってエルジュを守る事を誓おう。」

 うん。ありがたいな。

「ありがとうございます。僕から皆さんへプレゼントです。」

 ブレスレット
 効果 毒無効Lv3
 効果時間 30分

 指輪
 効果 剛力Lv3
 効果時間 30分
  
 アンクレット
 効果 擬態Lv3
 効果 20分

 この二人を皆に渡しておく。これがあれば、ひとまず安心だろう。擬態があれば、隠れることもできるだろう。

 あと、サーシャさんのネックレスの効果時間を回復させておく。もし使ったら、僕に言ってくれれば、効果時間を回復させると伝えている。

「確認ですが、サフマン様を狙ったのは、ユウーザ男爵だけでは無いですよね?」
 僕が言うと、イドリスさんがうなずく。

「うむ。恐らくだが、ユウーザ男爵に指示をした者がいるだろう。」
 サフマン様が答える。

「私は伯爵の爵位を貰っているが、王国への上納金が他の伯爵よりも、少ないのだ。それは稼ぎが無いのでは無く、ハリソンの街では適切な金額だからだ。領民に無理はさせたくないからな。」

 他の貴族は、重税をしてでも王国へ上納金を多く納めているらしい。上納金が多いと他の領地も任されるのだ。そして、その領地でも重税で苦しむ民が増えると、サフマン様が教えてくれる。

「私が亡くなればハリソンの街も、重税で苦しむ街になるだろう。ダンジョンがある街は、どの貴族も欲しいからな。」

 街にダンジョンがある街は、少なくない。ダンジョンで発展すると同時に、ダンジョンの災害で破滅する街もあるのだ。

「いま現状では、この街を守るだけしか出来ない!しかしエルジュの力があれば、他の貴族も仲間に引き入れてより良い街が増えるだろう。」

 なるほど、サフマン様は、仲間の貴族も少しはいるが、敵はたくさんいそうだな。

「安心してくれ。エルジュは、表立って働くよりも、影でサポートしてくれるとありがたい。あとは、街の人達を危険から守ってくれ。」

 僕は、勇者じゃないんだけどな。守るなら戦闘職の人達に任せてよ。

「はい。僕もこの街が好きなので、できる事はします。」
 この街は、とても好きだ。活気に溢れ、人が他人に優しくできる余裕を持った街はなかなか無いだろう。

「ありがとう」


 こうして話も終わり、僕は家に帰った。








しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

転生した体のスペックがチート

モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。 目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい このサイトでは10話まで投稿しています。 続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

勇者パーティーを追放された俺は辺境の地で魔王に拾われて後継者として育てられる~魔王から教わった美学でメロメロにしてスローライフを満喫する~

一ノ瀬 彩音
ファンタジー
主人公は、勇者パーティーを追放されて辺境の地へと追放される。 そこで出会った魔族の少女と仲良くなり、彼女と共にスローライフを送ることになる。 しかし、ある日突然現れた魔王によって、俺は後継者として育てられることになる。 そして、俺の元には次々と美少女達が集まってくるのだった……。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

最弱職テイマーに転生したけど、規格外なのはお約束だよね?

ノデミチ
ファンタジー
ゲームをしていたと思われる者達が数十名変死を遂げ、そのゲームは運営諸共消滅する。 彼等は、そのゲーム世界に召喚或いは転生していた。 ゲームの中でもトップ級の実力を持つ騎団『地上の星』。 勇者マーズ。 盾騎士プルート。 魔法戦士ジュピター。 義賊マーキュリー。 大賢者サターン。 精霊使いガイア。 聖女ビーナス。 何者かに勇者召喚の形で、パーティ毎ベルン王国に転送される筈だった。 だが、何か違和感を感じたジュピターは召喚を拒み転生を選択する。 ゲーム内で最弱となっていたテイマー。 魔物が戦う事もあって自身のステータスは転職後軒並みダウンする不遇の存在。 ジュピターはロディと名乗り敢えてテイマーに転職して転生する。最弱職となったロディが連れていたのは、愛玩用と言っても良い魔物=ピクシー。 冒険者ギルドでも嘲笑され、パーティも組めないロディ。その彼がクエストをこなしていく事をギルドは訝しむ。 ロディには秘密がある。 転生者というだけでは無く…。 テイマー物第2弾。 ファンタジーカップ参加の為の新作。 応募に間に合いませんでしたが…。 今迄の作品と似た様な名前や同じ名前がありますが、根本的に違う世界の物語です。 カクヨムでも公開しました。

ただひたすら剣を振る、そして俺は剣聖を継ぐ

ゲンシチ
ファンタジー
剣の魅力に取り憑かれたギルバート・アーサーは、物心ついた時から剣の素振りを始めた。 雨の日も風の日も、幼馴染――『ケイ・ファウストゥス』からの遊びの誘いも断って、剣を振り続けた。 そして十五歳になった頃には、魔力付与なしで大岩を斬れるようになっていた。 翌年、特待生として王立ルヴリーゼ騎士学院に入学したギルバートだったが、試験の結果を受けて《Eクラス》に振り分けられた。成績的には一番下のクラスである。 剣の実力は申し分なかったが、魔法の才能と学力が平均を大きく下回っていたからだ。 しかし、ギルバートの受難はそれだけではなかった。 入学早々、剣の名門ローズブラッド家の天才剣士にして学年首席の金髪縦ロール――『リリアン・ローズブラッド』に決闘を申し込まれたり。 生徒会長にして三大貴族筆頭シルバーゴート家ご令嬢の銀髪ショートボブ――『リディエ・シルバーゴート』にストーキングされたり。 帝国の魔剣士学園から留学生としてやってきた炎髪ポニーテール――『フレア・イグニスハート』に因縁をつけられたり。 三年間の目まぐるしい学院生活で、数え切れぬほどの面倒ごとに見舞われることになる。 だが、それでもギルバートは剣を振り続け、学院を卒業すると同時に剣の師匠ハウゼンから【剣聖】の名を継いだ―― ※カクヨム様でも連載してます。

起きるとそこは、森の中。可愛いトラさんが涎を垂らして、こっちをチラ見!もふもふ生活開始の気配(原題.真説・森の獣

ゆうた
ファンタジー
 起きると、そこは森の中。パニックになって、 周りを見渡すと暗くてなんも見えない。  特殊能力も付与されず、原生林でどうするの。 誰か助けて。 遠くから、獣の遠吠えが聞こえてくる。 これって、やばいんじゃない。

処理中です...