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第2話 本物の美人
しおりを挟む「──ねえ、私と一緒に出歩くの嫌だったりする?」
私はコンビニで買ったサンドイッチを頬張りながら、円香に尋ねた。
同部署の同期どうしというだけあって、彼女とはたまに一緒にお昼を食べる仲なのだ。
「はい? なんで?」
円香は怪訝な顔をしている。そりゃあそうだ。何の脈絡もなくそんな話を振ったのだから。
私は先日、休憩室の前で立ち聞きした内容を説明する。
「……って話を聞いちゃったのよ」
すると円香は思い切り眉間にしわを寄せた。
「何そればかばかしい。隣に連れて歩く人の見た目で自分の価値が変わるなんて、そんなの自分に自信のない残念な人間の発想よ。気にする価値もないわ」
さすが、すがすがしいほどの一刀両断だ。
「……とは言ったけど」
そう言って円香は私の顔をのぞき込む。
「そんなこと言われっぱなしなのムカつかない?」
どうやら私の代わりに怒ってくれているらしい。
美人は性格が悪いなんて、いったい誰が言ったんだろう。
「え? うーん……なんか入社以来そんな感じだったし……」
ものすごい美人とちょっと残念な感じの新入社員女子二人──最初からずっとそんな扱いだった。
本当のことなので怒るという発想がなかったけれど。
「つっきーは、おしゃれとか興味はない感じ? もしあるんだったら、一発見返してやろうよ」
円香がいたずらっぽい顔で言った。
「ないわけじゃないけど……」
眉毛は濃いのに目は細く、そのうえ肌が弱くて肌荒れも吹き出物も日常茶飯事。
キレイだとかカワイイだなんて、お世辞ですら言われたことがない。
「そんな、私沢居ちゃんみたいな美人じゃないし……肌だってきれいじゃないし……」
今更、どうにかなるとも思えないし、どうすればいいのかもわからない。
「だったら、今からなるだけでしょ」
円香は力強く言った。
なんというか、美人には美人であることに由来する何らかのパワーがある気がする。
そんなことを思っていると、円香は私にスマホの画面を向けた。
(──ん? これは、化粧品……?)
画面から顔を上げると円香はどこか不敵な笑みを浮かべていた。
「そうと決まれば、今日は意地でも定時で上がるわよ!」
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メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
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