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第1話 失礼な噂話
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(──ん?)
偶然通りかかった休憩室の前でふと立ち止まる。
今、中から自分の名前が聞こえたような……。
「いや、俺ずっと思ってたのよ──完全な引き立て役じゃんって。けど最近どうも違うような気がしてさ」
「はあ」
どうやら中で話しているのは先輩社員二人のようだ。もう年単位で同じ職場にいるのだから声でわかる。
ペラペラと喋っているのが、個人的になんとなくチャラさを感じる秋川さんで、聞き役にまわり適当な相槌を打っているのは……誰だろう?
「いやだからさ、築山さんは沢居さんの引き立て役じゃなくって、むしろ足引っ張ってると思うんだよ」
(──!!)
なんとなく予感はしていたけれど、やっぱりだ。
同じ部署で働く同期どうしの沢居円香と私は、何かと比べられる。
円香は確かに、私が今までに出会った中でもダントツの美人だった。
秋川さんに限らず外野は私のことをよく「引き立て役」と言うけれど、正直円香には引き立て役なんて必要ない。
引き立て役がいようといまいと変わらないくらいの絶対的な美人なのだ。
「ふうん」
もう一人は相変わらず気のない返事をしている。
きっと心の底からどうでもいいと思っているんだろうな。
でもそんな反応には慣れているのか、秋川さんは気にしたようすもなく喋り続けている。
「やっぱ沢居さんみたいな美人ってのはさ、美人とつるんでこそなわけよ。美の相乗効果、的な?」
ああ、なるほどね。
これはあれだ、せっかくなら美人には着飾っていてほしいというみたいなやつだ。
「……お前、めちゃくちゃ失礼なこと言ってる自覚ある?」
(──!)
それまで適当な相槌しか聞いていなかったせいでわからなかったけど、秋山さんが話しかけていた相手は柏本さんだった。
男女を問わず慕われる、私の目から見てもなかなかにステキな人だ。
「これくらい。どうせ女子だって俺らのいないとこで好き勝手言ってるに決まってんだから」
秋川さんは取り合わない。まあ彼の言っていることは、ある程度は本当なのだけど。
ちなみに、秋川さんは「うちのイケメン枠」とか「目の保養」なんて言われている。
そういえば、否定的な評判は聞かない。
と、中でどちらかが立ち上がったような音がした。
気づかれる前にさっさと退散しよう。
偶然通りかかった休憩室の前でふと立ち止まる。
今、中から自分の名前が聞こえたような……。
「いや、俺ずっと思ってたのよ──完全な引き立て役じゃんって。けど最近どうも違うような気がしてさ」
「はあ」
どうやら中で話しているのは先輩社員二人のようだ。もう年単位で同じ職場にいるのだから声でわかる。
ペラペラと喋っているのが、個人的になんとなくチャラさを感じる秋川さんで、聞き役にまわり適当な相槌を打っているのは……誰だろう?
「いやだからさ、築山さんは沢居さんの引き立て役じゃなくって、むしろ足引っ張ってると思うんだよ」
(──!!)
なんとなく予感はしていたけれど、やっぱりだ。
同じ部署で働く同期どうしの沢居円香と私は、何かと比べられる。
円香は確かに、私が今までに出会った中でもダントツの美人だった。
秋川さんに限らず外野は私のことをよく「引き立て役」と言うけれど、正直円香には引き立て役なんて必要ない。
引き立て役がいようといまいと変わらないくらいの絶対的な美人なのだ。
「ふうん」
もう一人は相変わらず気のない返事をしている。
きっと心の底からどうでもいいと思っているんだろうな。
でもそんな反応には慣れているのか、秋川さんは気にしたようすもなく喋り続けている。
「やっぱ沢居さんみたいな美人ってのはさ、美人とつるんでこそなわけよ。美の相乗効果、的な?」
ああ、なるほどね。
これはあれだ、せっかくなら美人には着飾っていてほしいというみたいなやつだ。
「……お前、めちゃくちゃ失礼なこと言ってる自覚ある?」
(──!)
それまで適当な相槌しか聞いていなかったせいでわからなかったけど、秋山さんが話しかけていた相手は柏本さんだった。
男女を問わず慕われる、私の目から見てもなかなかにステキな人だ。
「これくらい。どうせ女子だって俺らのいないとこで好き勝手言ってるに決まってんだから」
秋川さんは取り合わない。まあ彼の言っていることは、ある程度は本当なのだけど。
ちなみに、秋川さんは「うちのイケメン枠」とか「目の保養」なんて言われている。
そういえば、否定的な評判は聞かない。
と、中でどちらかが立ち上がったような音がした。
気づかれる前にさっさと退散しよう。
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