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第1章
4-R かすかな不安
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何度か練習するうちに、わりあい自然にふたえが作れるようになってきた。
まずはふたえのラインを決め、それに沿って液体ののりを塗る。
しばらく待ってからふたえのラインでまぶたを折りたたむと、その上下のまぶたどうしがのりでくっついてふたえまぶたが完成するのだ。
しばらくは違和感があるけれど、数分もすればそれも忘れてしまう。
それから、祐輝に言われて購入したブラウンのアイライナーを取り出した。
といっても、いろいろと不安だったので色が薄めでお湯で落とせるものにしたけれど。
教わった通り、黒目の幅にだけ、まつげの隙間を埋めるようにラインを引く。
すると、やっぱり何もしていないときよりも黒目が大きく見えた。
そして仕上げに、オレンジの色付きリップを塗る。
何度も重ね塗りすると艶が出すぎることが分かったので、さっと一塗りで済ませた。
(これは……やっぱり変わるなあ……)
鏡に映る自分の顔を見つめながら、玲奈はふっと息をついた。
(……いや、ちょっと待って!)
確かに祐輝の言う通り、これは「化粧」には入らないのかもしれない──もともとふたえまぶたの人にとってはこれがデフォルトなのだから。
リップに関しても、多少色がついていたところで主目的は保湿だし問題ないと思う。
アイラインはほとんど見えないけれど、心配ならやめておけばいい。
けれど、それでも「顔が変わった」とは思われてしまうだろう。
(ああー、絶対陰で「何あれ? なんか急に色気づいちゃって」とかって笑われるやつだ……)
もちろん、誰かに色目を使おうなんて思っていない。
けれど人は、自分の見たいように世界を見る。そのためなら多少の歪曲もいとわない。
「はあ……」
かわいくなれることは嬉しいはずなのに、どうしてもため息が漏れてしまうのだった。
まずはふたえのラインを決め、それに沿って液体ののりを塗る。
しばらく待ってからふたえのラインでまぶたを折りたたむと、その上下のまぶたどうしがのりでくっついてふたえまぶたが完成するのだ。
しばらくは違和感があるけれど、数分もすればそれも忘れてしまう。
それから、祐輝に言われて購入したブラウンのアイライナーを取り出した。
といっても、いろいろと不安だったので色が薄めでお湯で落とせるものにしたけれど。
教わった通り、黒目の幅にだけ、まつげの隙間を埋めるようにラインを引く。
すると、やっぱり何もしていないときよりも黒目が大きく見えた。
そして仕上げに、オレンジの色付きリップを塗る。
何度も重ね塗りすると艶が出すぎることが分かったので、さっと一塗りで済ませた。
(これは……やっぱり変わるなあ……)
鏡に映る自分の顔を見つめながら、玲奈はふっと息をついた。
(……いや、ちょっと待って!)
確かに祐輝の言う通り、これは「化粧」には入らないのかもしれない──もともとふたえまぶたの人にとってはこれがデフォルトなのだから。
リップに関しても、多少色がついていたところで主目的は保湿だし問題ないと思う。
アイラインはほとんど見えないけれど、心配ならやめておけばいい。
けれど、それでも「顔が変わった」とは思われてしまうだろう。
(ああー、絶対陰で「何あれ? なんか急に色気づいちゃって」とかって笑われるやつだ……)
もちろん、誰かに色目を使おうなんて思っていない。
けれど人は、自分の見たいように世界を見る。そのためなら多少の歪曲もいとわない。
「はあ……」
かわいくなれることは嬉しいはずなのに、どうしてもため息が漏れてしまうのだった。
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