この夢が醒めるまで──図書室から始まる恋の物語

蒼村 咲

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第14話 いじわる

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「佐伯先輩は、土日は何してるんですか?」

 図書室閉室後の帰り道、思い切って聞いてみる。と、ちょっと声が上ずってしまった。

「……勉強かな。一応、これでも受験生だから」

 佐伯先輩はきっと、私が本当に聞きたかったことをわかってしまっているに違いない。くすりと笑って答えた。

「勉強、かあ……」

 佐伯先輩と二人で勉強会なんていうのには、正直憧れる。でも入学したての私が先輩に教えられることなんてないだろうし、私が教わるばかりじゃ先輩の邪魔になってしまう。

「やっぱり、図書館とかに行くんですか?」

 ここで即次の話題に移るのはさすがにあからさまな気がして、私は続けて聞いた。

「うーん、基本は予備校の自習室かな。受講生向けに、わりと早い時間から解放されてるから」

「なるほど……」

 予備校の自習室となると、きっと部外者の私は入れない。心の中でがっくりとうなだれていると、佐伯先輩が思いがけない言葉を口にした。

「一緒にする? 勉強」

「えっ?」

 いつもの自習室で、というわけにはいかないはずだ。

「うちに来てくれてもいいよ」

 佐伯先輩はにっこり笑ってそんなことを言った。

「──! えっと……」

 佐伯先輩のお家──それは正直ものすごく興味がある。あるけれど、異性の自宅に気軽に遊びに行ける年齢ではなくなってしまったこともうすうすわかっていた。決して、佐伯先輩のことを信用していないわけじゃない。でも──。
 どう答えようかと迷っていると、ふいに佐伯先輩が吹き出した。

「ごめんごめん。うん、女の子はそれくらい警戒心持ってた方がいいと思う」

 やっぱり、私の思考は全て筒抜けなんじゃないだろうか。

「いえっ、警戒してるわけじゃ……」

 慌てて首を振る。それは本当で、ただびっくりして迷ってしまっただけなのだ。幸いなことに、佐伯先輩に気を悪くしたようすは見られない。

「まあ、変なことは何もしないけどね」

 そう言って笑っている。が、それより。

「へ、変なこと……?」

 いったい何を想定して言っているのだろう。気にはなるものの、聞くのはなんだか怖い。

「……されてみたい?」

 見上げた先で、佐伯先輩の目がいたずらっぽく光る。

「ちょっ……からかわないでください!」

 あたふたする私の隣で、佐伯先輩は相変わらず笑っている。もしかしたら──いや、もしかしなくても、佐伯先輩って意外といじわるだったりするのかもしれない。
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