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第6話 それでも

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 佐伯先輩が彼氏になった。いや、彼氏になってくれた? それとも私が佐伯先輩に、彼氏になってもらってしまった?
 的確な言い回しが見つからずに頭の中をぐるぐるまわっている。でも告白して、OKをもらったのは事実なのだ。だって──。

(──!!)

 カウンターの中から佐伯先輩が微笑んだ。例によって窓際の特等席から見つめていたら、目が合ってしまったのだ。嬉しさと驚きで無駄に動揺してしまう。

(ん? でもこんなにすぐに気づいてくれるってことは……)

 もしかしたら前々から、見つめられていることに気づいていたんじゃないだろうかという気がする。
 それとも、私が「彼女」になったから、こうして見てくれるようになったのだろうか。いずれにしても、心臓がもたない。心臓と、真顔が保てない。
 なのに佐伯先輩は、こちらが悔しくなってくるくらいに落ち着いている。さっきみたいに目が合っても、かすかに微笑むだけで慌てた様子なんて微塵も見せない。というか、絶対に慌てていない。
 やっぱり、佐伯先輩の言っていたとおり高校生にとっての二年、いや四年というのは大きな差なのだろうか。
 私ですら最初は、ものすごく年上のように感じたのだ──そのあと必死に打ち消しただけで。それってつまり、佐伯先輩からは私がものすごくお子様に見えているかもしれないということなのでは?

 でも、そんなあれやこれやも、佐伯先輩の笑顔をまともに見てしまったが最後、どうでもよくなってしまうのだった。
 佐伯先輩にとっては、半分くらい子守りみたいな感覚かもしれない。卒業までの暇つぶしかもしれない──受験生につぶしたい暇があるとは思えないけど。
 でもそれでもよかった。佐伯先輩にとってはそれこそ遊びだったって、私は後悔しないと思う。それくらい好きになってしまったから。
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