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第1話 ひとめぼれ
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「──!」
まるで時間が止まってしまったみたいだった。
入学して十日目。この図書室に通い詰めるようになって五日目。
そんな今日、私はついに出会ってしまったのだ。
「……ああ、今日は佐伯くんだったわよね。これから一時間くらい職員会議なんだけど、あとお願いできる?」
司書の辻先生のささやき声が聞こえて、私はふと読んでいた本から顔を上げた。
見ればちょうど、辻先生と入れ替わるようにしてカウンターに入っていく生徒がいる。二年生か、それとも三年生か──雰囲気からして先輩なのは間違いない。カウンターに入っていけるということは図書委員なのだろう。
「はい、ちゃんとやっておくので大丈夫です」
カウンターの入り口をぱたりと閉めると、辻先生に「佐伯くん」と呼ばれた彼はにこやかに言った。
今どき珍しいくらいにきちんと品よく着こなされた制服。細面によく似合った、癖のないサラサラの髪。今日初めて見たはずのその姿から、私は目が離せなくなってしまった。まるで私ひとりの時間が止まってしまったみたいに。
(すごい……素敵な人だ……)
最初の衝撃から立ち直ると、私は自分を落ち着かせるためにいったん本へと視線を戻した。でも内容が全然入ってこない。学年一の読書好きで通っていたはずの私が、なんということ。
辻先生が出て行く音がして、図書室は再び静けさに包まれる。
(うわあ……どうしよう……)
鼓動の音が周りに聞こえてしまいそうだった。そんな心臓を必死に御しながらカウンターを見やる。彼──佐伯先輩は何か作業をしているらしく、こちらに背を向けていた。
きっと、これは世に言う「ひとめぼれ」なのだ。すらりと高い背も、濃紺のブレザーでふちどられた肩のラインも、何もかもが完璧に見えて思わずため息が出そうになる。
そんな私の視線を察知したわけではないはずだけど、先輩が振り向きそうな気配がして私は慌てて目を逸らした。
まるで時間が止まってしまったみたいだった。
入学して十日目。この図書室に通い詰めるようになって五日目。
そんな今日、私はついに出会ってしまったのだ。
「……ああ、今日は佐伯くんだったわよね。これから一時間くらい職員会議なんだけど、あとお願いできる?」
司書の辻先生のささやき声が聞こえて、私はふと読んでいた本から顔を上げた。
見ればちょうど、辻先生と入れ替わるようにしてカウンターに入っていく生徒がいる。二年生か、それとも三年生か──雰囲気からして先輩なのは間違いない。カウンターに入っていけるということは図書委員なのだろう。
「はい、ちゃんとやっておくので大丈夫です」
カウンターの入り口をぱたりと閉めると、辻先生に「佐伯くん」と呼ばれた彼はにこやかに言った。
今どき珍しいくらいにきちんと品よく着こなされた制服。細面によく似合った、癖のないサラサラの髪。今日初めて見たはずのその姿から、私は目が離せなくなってしまった。まるで私ひとりの時間が止まってしまったみたいに。
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そんな私の視線を察知したわけではないはずだけど、先輩が振り向きそうな気配がして私は慌てて目を逸らした。
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