殺人鬼との恋

しましまのしっぽ

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私は慌てて自分の部屋を飛び出す。
そのままの勢いで家の外に出る。

何も考えずに飛び出してきたが、辺りを見回して、傘を持った男しか付近に居ないことを確認してホッとした。

玄関に置いてある傘を手にして走る。

そう。傘を持っている男の方へ走る。


そんなに遠い所にいた訳じゃないからすぐにたどり着く。だけど勢いだけで来てしまったので何を言えばいいのか分からなくなってしまった。

男は様子を伺うように見てくるが話してくるとはなく、無言が続いた。







先に沈黙を破ったのは男の方だった。

「…もしかして …さっきの子?」

「…えっと… 多分そうだと思う。」

「あなたはさっきの人殺しさん?」

「…たぶんそうだね」

やっぱりそうだったようだ。

「と言うことは、その傘私の傘?」

初めて見たときは怖いと言う感情でほとんど動くことも喋ることも考えることもてできなかった。だけど今は思っていた以上に喋ることが出来ている自分に驚いている。

「うん。さっき君が置いていった傘。」

ここまで会話しておいてなのだが、此処でこの人と話していると、傘は無事に帰ってきてもまた怪しくなってしまうのでは?と思ってきた。

はい。
と言って傘を差し出してくるのでありがとうと言って、傘を受け取った。

誰かにみられる前に早く家に帰りたい。そう思っているはずなのに、今此処でこの男と別れたらもう二度と会えない気がした。
いや、別に会えなくても良い筈なのだ。こんなに怪しい人とは一刻も早く離れたいはずだ。

だけど…
だけど私の直感はもう少し一緒に居てたいと言う。

自分のことの筈なのに、自分では全く理解の出来ない状態になってしまった。

困ってしまう。

しかし、この状況を長引かせようにも傘を返してもらった私には為す術はない。

そうこう悩んでいると

「じゃあ さようなら」
そう言って住宅街の出口の方を向く。

「待って!!」
何も考えていないが、声を張る

「何?」
先程までとは違い少し低い声にビクッとする。

怖い。
今までに私が怖い感情を感じないで、話が出来ていたのは、私が慣れてきたとかそんな話じゃあ無かったんだ。

この人がわざと話しやすい空気を作っていたんだ。

「…あの、雨に濡れて寒くないですか?
家に来ませんか?」

つくづく、今日の自分は自分にも理解の出来ないことばかりをする。

男はこっちを見ている。
何も話さない。

家に戻ることにした。
あんなことを言ったが、人を殺したような人が行きますなんて言わないだろう。

来た道を戻る。

傘も戻ってきたことだしひと安心だ。





玄関の前につき、道を振り返る。



男がいた。

着いてきていた。

ビックリする。

だが、誘ったのはこっちなのだからどうしようもない。

きっとこの時の顔はひきつっていたに違いない。

「どうぞ。は、入ってください。」




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