2 / 10
1
しおりを挟む私があの人に出会ったのは雨の降る夜の事だった。
やけに静かな夜だった。
放課後に友達と遊んで帰るのが遅くなってしまい、辺りはもう真っ暗になっていた。
いつもは滅多に家に居てないはずの父から電話の着信音がずっと鳴っている
さっき電話に出てみた。
別に帰るのが遅くなって怒っての電話では無いようだ。
「今帰ってる途中。もう少しで着くから!」
そう言って電話を切った。
また着信音が鳴り響いた。
画面を見るとやっぱり父からだった。
放っておくとが切れたが、また着信音が流れ始めた。
煩わしく思い着信音を鳴らしたままスマホを鞄の中にいれた。
あれだけ電話を掛けてくるのだから何か話でもあるのだろうと思い少し急いで帰ることにした。
少し駆け足で、普段は通らない路地裏の方へ曲がった。
この道を使うと、家のある住宅街の入り口まで行けるので少しだけ早く帰ることができる。
だけど、細くて薄暗い道でなんだか気味が悪いので、よっぽどの事がないと使わない。
今日はよっぽどの事になるのかは分からないが、急ぐことに越したことはないと思い使うことに決めたのだ。
路地裏に入りかかった頃急に雨脚が強くなった。
雨が傘に当たってポツポツと跳ねる音が大きくなる。
そして、私は見てしまった。
静かな夜
私はどんどん大きくなっていく雨の音と目の前の光景しか分からなかった。
いや、目の前の出来事も理解は出来ていない。
人って本当にびっくりすると動けなくなるらしい
人が…
人が死んでいる。
多分。
血が出てる。
死んでるってなんだったけ?
叫びたいのに声もでない。
訳がわからなくなって死んでるであろう人から目を離すと、少し離れたところに人がいた。
多分犯人。
血が付いたナイフみたいな刃物を持って、血まみれの人。
見ただけで危ない人、逃げないとダメだと分かるのに…
目を奪われてしまった。
目が合った。
恐怖で動けなくなったのだとその時は思っていた。
だけど今思うと、私が初めて恋に落ちた瞬間だったと思う。
もう雨の音も聞こえなくなって、目の前の男しか見ることが出来なくなっていた。
「ねぇ~、電話?なってるよ?」
血まみれの刃物を持っている人とは思えない呑気な声が聞こえてきた。
しかし、少し緊張が溶けてしまい、着信音が流れていることに気がついた
スマホを取り出そうと思い鞄に手を掛けると自分が濡れていることに気がついた。
手に持っていたはずの傘は地面に落ちている。
そして、今の状況がハッキリとしてきた。
目の前にいる男は人殺しだ。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
男性向け(女声)シチュエーションボイス台本
しましまのしっぽ
恋愛
男性向け(女声)シチュエーションボイス台本です。
関西弁彼女の台本を標準語に変えたものもあります。ご了承ください
ご自由にお使いください。
イラストはノーコピーライトガールさんからお借りしました
【ヤンデレ鬼ごっこ実況中】
階段
恋愛
ヤンデレ彼氏の鬼ごっこしながら、
屋敷(監禁場所)から脱出しようとする話
_________________________________
【登場人物】
・アオイ
昨日初彼氏ができた。
初デートの後、そのまま監禁される。
面食い。
・ヒナタ
アオイの彼氏。
お金持ちでイケメン。
アオイを自身の屋敷に監禁する。
・カイト
泥棒。
ヒナタの屋敷に盗みに入るが脱出できなくなる。
アオイに協力する。
_________________________________
【あらすじ】
彼氏との初デートを楽しんだアオイ。
彼氏に家まで送ってもらっていると急に眠気に襲われる。
目覚めると知らないベッドに横たわっており、手足を縛られていた。
色々あってヒタナに監禁された事を知り、隙を見て拘束を解いて部屋の外へ出ることに成功する。
だがそこは人里離れた大きな屋敷の最上階だった。
ヒタナから逃げ切るためには、まずこの屋敷から脱出しなければならない。
果たしてアオイはヤンデレから逃げ切ることができるのか!?
_________________________________
7話くらいで終わらせます。
短いです。
途中でR15くらいになるかもしれませんがわからないです。
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
四十二歳の冴えない男が、恋をして、愛を知る。
只野誠
恋愛
今まで恋愛とは無縁の冴えない男が恋をして、やがて愛を知る。
大人のラブストーリーとは言えない、そんな拙い恋物語。
【完結済み】全四十話+追加話
初日に九話まで公開、後は一日ごとに一話公開。
人生に疲れた女と殺人鬼の愛欲の末路
栗菓子
恋愛
女は不遇だった。決して容姿は悪くないが、いかんせんそれは自分の人生において運が悪かった。
性質の悪い男を引き寄せ、男運が悪いと女は30才ぐらいに悟った。
女はすっかり疲れ果てた。
そんな折、とても美しい見たことが無い美麗な男に会った。これは夢だろうかと思った。目が獣のように光っていなければだ。男の傍らには犠牲者が数人呻いていた。血だまりが月の光に照らされて、幻想的だった。
普通は叫ぶだろうが、女は己の不遇にうちひがれて、精神状態が異常だった。
嗚呼、これで楽に慣れると思ったのだ。しかし体は無意識に不可思議な行動をとった。
いつも理性があったら決してしないだろう破廉恥な痴女を女はやった。
スカートをめくって、下着だけは綺麗な上質なものをいつも買っている。そのうえで地味な服装をしているのが女の密かな趣味だった。
黒い繊細なレースと真紅の花びらを彩った下着。陰毛がかすかに見えるぐらいの透け具合。
女は、無意識に妖艶に、下着を殺人鬼に見せびらかした。
透けるような白い肌の足と、性器には自信があった。何回かつきあった男が名器といったから。
痴女と侮蔑されるだろうなとわくわくしながら女はやっと死ねる。楽になれると嬉しかった。
殺人鬼は、子どものように当惑しながら顔を赤らめた。あれ?女は変だなあと思いながらも犯していいわよと誘惑した。
刃物がやってきた。嗚呼これでいい。女は目を閉じた。
すると、刃物が女の服装を切り裂いて、肌はあまり傷つけずに、全裸にし、下着だけをつけさせて情交を交わした。こんな死体の側でまぐわうなんて狂ってるう・・。かすかに冷静な女の意識が警戒をしたが、もう命を捨てた女にはどうてもよかった。
血に塗れた接吻は苦い鉄の味がした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる