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滅多にあることではない。それを聞いたクルルは、なんだか嬉しかった。ルククが守ってくれた、その事実だけで心が幸せで満たされているのに、出会えたこと自体が奇跡だったかもしれないというのだ。嬉しくてたまらない。
「あの、それで……私たちは、元の世界に帰れるんですか?」
期待をかけて女神様に尋ねると、女神様は嬉しそうに笑いながら
「ええ。返してあげられるわよ。」
早速、という女神様。女神様の差し出した手を取ろうとしたクルルの手を、ルククが止めた。
「待って。」
「え?どうして?ルククも帰るでしょ?」
ルククの表情は、今にも泣きそうだ。
「クルル、俺と一緒にこの世界で生きようよ!」
その声は必死だった。
「俺は、帰らない。待ってくれてる家族は、もういないから……。」
クルルはそうじゃないかもしれない、でも、わがままを言うことが許されるなら。そう言ってルククは泣き出した。
「ルクク……。」
なんだかくるるも泣きたくなってしまってきて、涙ぐむ。元の世界に帰って、家族と過ごす?この世界に残って、大切な人と過ごす?その二択に、クルルは迫られた。
「ううん、本当はわかってた……。」
ぽそりと呟く。
「あのね、家族を連れていった人間が、駆除するんだって言ってたんだ。多分、許可を得て私たちを保護している人たちじゃなかったんだと思う。だから、きっともうこの世には……。」
本当は知っていたのだ。家族には、もう二度と会えないって。けれど、信じたくなくて。それを心の奥底に隠して生きてきた。
それを認めることができたクルルには、もう道ははっきりと見えていた。
「いいよ。この世界で一緒に生きよう。」
数年後。私を守ってくれたルククの後ろ姿に惚れた私は、そのままルククと結婚した。
あの後、女神様は、にっこり笑顔で消えていき、それ以来会っていない。
私は今も、マフラーを編んで生活している。私たちを繋いでくれたマフラーに感謝しながら……。
失われた家族はもう戻って来ない。でも、前向きで生きていこうと思う。いつか、あの世にいる家族に「幸せになったよ。」って、胸を張って言えるように……。
「あの、それで……私たちは、元の世界に帰れるんですか?」
期待をかけて女神様に尋ねると、女神様は嬉しそうに笑いながら
「ええ。返してあげられるわよ。」
早速、という女神様。女神様の差し出した手を取ろうとしたクルルの手を、ルククが止めた。
「待って。」
「え?どうして?ルククも帰るでしょ?」
ルククの表情は、今にも泣きそうだ。
「クルル、俺と一緒にこの世界で生きようよ!」
その声は必死だった。
「俺は、帰らない。待ってくれてる家族は、もういないから……。」
クルルはそうじゃないかもしれない、でも、わがままを言うことが許されるなら。そう言ってルククは泣き出した。
「ルクク……。」
なんだかくるるも泣きたくなってしまってきて、涙ぐむ。元の世界に帰って、家族と過ごす?この世界に残って、大切な人と過ごす?その二択に、クルルは迫られた。
「ううん、本当はわかってた……。」
ぽそりと呟く。
「あのね、家族を連れていった人間が、駆除するんだって言ってたんだ。多分、許可を得て私たちを保護している人たちじゃなかったんだと思う。だから、きっともうこの世には……。」
本当は知っていたのだ。家族には、もう二度と会えないって。けれど、信じたくなくて。それを心の奥底に隠して生きてきた。
それを認めることができたクルルには、もう道ははっきりと見えていた。
「いいよ。この世界で一緒に生きよう。」
数年後。私を守ってくれたルククの後ろ姿に惚れた私は、そのままルククと結婚した。
あの後、女神様は、にっこり笑顔で消えていき、それ以来会っていない。
私は今も、マフラーを編んで生活している。私たちを繋いでくれたマフラーに感謝しながら……。
失われた家族はもう戻って来ない。でも、前向きで生きていこうと思う。いつか、あの世にいる家族に「幸せになったよ。」って、胸を張って言えるように……。
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