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竜との対面
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なんとか山の頂点までたどり着いた二人。竜のいる谷はもう目の前だ。
「この辺りのはずなんだけれど…どこだろう?」
「あたりを探してみ…よ…。」
「ん?どうした?」
クルルが震える手で指さしたのは、眠っている一匹の竜だった。
竜に会えた喜びより、恐怖が勝る。
岩陰に隠れどうしようかと小声で相談していると、竜が目を覚ました。
「そこにいる二匹はなんのようだい?」
その声はあまりにも優しく、見た目からは想像できないものだった。
「ね、願いを叶えてくれると聞いて…!」
岩陰から顔を出し、竜にも届くよう、大きな声でルククが叫んだ。
「そうだね、できる限りなら…いいよ。いってごらん。」
もっと威圧的な竜なのかと怯えていた二人は、なんだか安心した気持ちになり、今までのことを話した。時間をかけて、ゆっくりと。
「そうかい。そりゃあ大変だったね。」
竜は大きな手をあげて、二人の頭を撫でた。
「そ、それで、竜さんは僕たちを元の世界に戻すことはできますか?」
ルククがそう問いかけると、竜は残念そうに首を振った。
「残念だけれど、この世界にそういう魔法はないんだよ。それこそ、神様にでも会わないと。だけど、この世界の神様は個人的な願いを聞き届けてくださることはないんだ。」
神様も忙しく、国規模ならまだしも、個人個人の願いを聞いている余裕はないのだという。
「そ、そんな…。」
二人は絶望の崖に立たされた気分だった。もう二度と、戻れないかもしれないだなんて。
「今日は私が家まで送ってあげようね。」
竜はそういうと、二人に背中に乗るように促した。空からの景色は絶景だった。けれど、それも二人の絶望を拭えるほどではなかった。
「この辺りのはずなんだけれど…どこだろう?」
「あたりを探してみ…よ…。」
「ん?どうした?」
クルルが震える手で指さしたのは、眠っている一匹の竜だった。
竜に会えた喜びより、恐怖が勝る。
岩陰に隠れどうしようかと小声で相談していると、竜が目を覚ました。
「そこにいる二匹はなんのようだい?」
その声はあまりにも優しく、見た目からは想像できないものだった。
「ね、願いを叶えてくれると聞いて…!」
岩陰から顔を出し、竜にも届くよう、大きな声でルククが叫んだ。
「そうだね、できる限りなら…いいよ。いってごらん。」
もっと威圧的な竜なのかと怯えていた二人は、なんだか安心した気持ちになり、今までのことを話した。時間をかけて、ゆっくりと。
「そうかい。そりゃあ大変だったね。」
竜は大きな手をあげて、二人の頭を撫でた。
「そ、それで、竜さんは僕たちを元の世界に戻すことはできますか?」
ルククがそう問いかけると、竜は残念そうに首を振った。
「残念だけれど、この世界にそういう魔法はないんだよ。それこそ、神様にでも会わないと。だけど、この世界の神様は個人的な願いを聞き届けてくださることはないんだ。」
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「そ、そんな…。」
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