悪役令嬢となる為にゲーム世界へ持っていく物?では、神様、あなたで。

わかば

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結ばれるまで

2話 転生に持っていくもの…?それなら!

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「信じて、もらえないですよね、いきなりこんなことを言ってしまって…。」
神様と名乗るその少年は、俯いてしょんぼりしながらそう続けた。慌てて返事をしなければと口を開ける。
「そんなことありませんわ!信じますとも!」
神様だなんて最初は冗談だと思いたかったのだが、今ではそんなことは言っていられない。なぜなら、その美しい少年は浮いているからだ。
ど、どうやって浮いているのでしょうか…?
そう、心の中で思ったつもりだったのに。少年は、
「神の力です!」
と返事をした。
って、えええ!心の声が漏れてますの!?…落ち着くのです、私。浅香家のものがこんなことで慌てるなど。
必死で落ち着こうとするも、今起こっていることは人間が許容できる範囲を超えていた。凛の頭の中はふっと真っ白になり、また意識が途絶えることとなった。

凛が再び目を覚ますと、今度はベッドに寝かされていた。指を動かしてみると、深々していて気持ちがいい。
「あ、起きましたか?」
そう尋ねてきたのは、隣でまたしても浮いている神だった。
「も、申し訳ありませんわ…話の途中で気を失ってしまうなど。」
穴があったら今にも入りたい気持ちで返事をする。話している途中で気を失うなど、失礼極まりない、と凛は自分を責めた。思わず手でコツンと自分の頭を殴ってしまうくらいに。
「落ち着かれたのでしたら、今回の件についてご説明しても…?」
上目遣いで見られた瞬間。
な、なんでしょうか。し、心臓がバクバクしますわ…。
心を読まれてしまうのだから、変なことは思わないようにしないとと自分を立て直し、神に向き直る。
「ええ。お願い致しますわ。」
神がベットにふわりと腰掛ける。ベッドの中に入っているままでは失礼だろうと思い、凛もギシギシと音を立てながら神の横に腰掛けた。
「あなたには転生していただきたいのです、ゲームの世界に。」
「…はい?」
神の話をまとめると、大体の内容はこんな感じだった。
(最近は異世界転生やゲーム転生っていうのが流行ってるらしい…。そうだ!最近死ぬ予定じゃなかった女の子が二人死んだはず!試しに転生させてみよう!)
と、神様のお偉いさんが思ったらしく…。
「わ、私、死ぬ予定ではありませんでしたの?」
「はい。本当はすみれさんと言う方がお亡くなりになられるはずだったのですが…。」
その言葉を聞いて、驚くとともに凛は安堵を感じていた。代わりに凛が死んでしまった。それは、すみれが助かったと言うことを指しているに等しいからだ。
「なるほど。わかりましたわ。」
「納得していただけたのですか!?本当に申し訳ありません…。」
神が深々と頭を下げる。凛は首を横に振った。
死にたくなかった。それはある。後悔もしている。が、この美しい神様のために転生するのはそう悪くないように感じた。
「そういえば、転生する際、なんでも一つ持っていけると言うことなのですが…。」
なんでも、と、言われましても。あいにく私はそこまで物に執着心がなく…。ああ、そうですわね。なんでも、とおっしゃるなら。
「神様を、是非あなたを持っていきたいですわ。」
「…はい?」
今度は神が驚く番だった。そう。凛は怖いもの知らずの性格だったのだ。
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