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結ばれるまで
1話 私、死んでしまったの…?
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「おはよう、凛ちゃん。」
「ごきげんよう、すみれさん。」
朝、友人と挨拶を済ませて共に学校へと赴く。いい朝だ。小鳥はちゅんちゅんと鳴き、朝の光が二人を温めた。まるで二人の頭を撫でるかのように。
「いい朝ですわね。」
私は浅香凛。一言で言うと、いいところのお嬢様で、はっきり言って頭がいい。運動もできる、成績優秀者だ。その代わり、常識を全然知らないお嬢様。それに物怖じせず毎朝声をかけてきてくれるのが今凛の隣で笑っている川内すみれだ。
テトテトとおしゃべりをしながら道を歩いていると、学校なんてすぐに着いてしまって。
「では、また放課後にね、凛ちゃん。」
「ええ、わかりましたわ、すみれさん。」
楽しそうに笑い合うその姿は、まさに親友そのものだった。
こんなお友達を手に入れられて、私は幸せ者ですわね…。
そう思って、ふとすみれを振り返った。その時すみれが見たのは、ナイフを持った自分の部下だった。一つ上の学年に通う、凛の幼なじみ兼執事。何を思ったのか、彼は震える手でナイフを握り、それをすみれに向けている。彼が一歩、踏み出した。すみれを刺す気だ。冷や汗が一瞬のうちにどんどんこぼれ出る。
勇気を出すのです、私!
「すみれさん!」
「えっ?」
ドンっと、音を立てて突き飛ばした。
「…ここは…?」
気がつくと、真っ白な部屋にいた。いや、部屋とは呼べないのかもしれない。そこはただただ広く、そして何もない場所だった。あるのは私が寝ていたベッドだけだ。端が見えないくらい広いその部屋、凛は横たわっていた。
「誰かいませんの?!」
気を失う前のことを思い出す。
そうですわ。確か私、すみれさんの代わりに刺されて…。
すみれは無事だろうか。心配になり、辺りをキョロキョロと見渡すも、そこにすみれの姿が見つかるはずもなく。
「だ、誰もいませんの?」
もう一度そう聞いてみた時だった。後ろから、少年のような、少女のような、美しい声がした。
「いますよ。ここに。」
ばっと勢いよく振り返る。驚いたから、と言うよりも、声の主の姿を見ていたいと言う興味の方が強かったかもしれない。
そして、凛が見たのは。
「こんにちは。」
この世のものとは思えないくらい、美しい少年だった。例えば、漫画であれば周りにバラが描かれるくらい。例えば、学校であれば、周りに女生徒が群がるくらい。
ああ、この美しさ、例えることなんて出来ませんわ…。
そのくらいそこにいた彼は美しくて。中性的なその美しさは、男女問わず人々を魅了するだろう。
「は、初めましてですわね…どちら様でしょうか?」
なんとか声を出して問いかける。不安の中で凛が生み出した凛の精一杯の勇気だった。
「私はですね…神様です。」
か、神様ですって?もしかしてここは、あの世?
イケメンを前に心臓をドキドキさせながら、嫌な考えが身体中を巡る。今にも後頭部からひっくり返って倒れてしまいそうだ。
私…もしかして、死にましたの?
「ごきげんよう、すみれさん。」
朝、友人と挨拶を済ませて共に学校へと赴く。いい朝だ。小鳥はちゅんちゅんと鳴き、朝の光が二人を温めた。まるで二人の頭を撫でるかのように。
「いい朝ですわね。」
私は浅香凛。一言で言うと、いいところのお嬢様で、はっきり言って頭がいい。運動もできる、成績優秀者だ。その代わり、常識を全然知らないお嬢様。それに物怖じせず毎朝声をかけてきてくれるのが今凛の隣で笑っている川内すみれだ。
テトテトとおしゃべりをしながら道を歩いていると、学校なんてすぐに着いてしまって。
「では、また放課後にね、凛ちゃん。」
「ええ、わかりましたわ、すみれさん。」
楽しそうに笑い合うその姿は、まさに親友そのものだった。
こんなお友達を手に入れられて、私は幸せ者ですわね…。
そう思って、ふとすみれを振り返った。その時すみれが見たのは、ナイフを持った自分の部下だった。一つ上の学年に通う、凛の幼なじみ兼執事。何を思ったのか、彼は震える手でナイフを握り、それをすみれに向けている。彼が一歩、踏み出した。すみれを刺す気だ。冷や汗が一瞬のうちにどんどんこぼれ出る。
勇気を出すのです、私!
「すみれさん!」
「えっ?」
ドンっと、音を立てて突き飛ばした。
「…ここは…?」
気がつくと、真っ白な部屋にいた。いや、部屋とは呼べないのかもしれない。そこはただただ広く、そして何もない場所だった。あるのは私が寝ていたベッドだけだ。端が見えないくらい広いその部屋、凛は横たわっていた。
「誰かいませんの?!」
気を失う前のことを思い出す。
そうですわ。確か私、すみれさんの代わりに刺されて…。
すみれは無事だろうか。心配になり、辺りをキョロキョロと見渡すも、そこにすみれの姿が見つかるはずもなく。
「だ、誰もいませんの?」
もう一度そう聞いてみた時だった。後ろから、少年のような、少女のような、美しい声がした。
「いますよ。ここに。」
ばっと勢いよく振り返る。驚いたから、と言うよりも、声の主の姿を見ていたいと言う興味の方が強かったかもしれない。
そして、凛が見たのは。
「こんにちは。」
この世のものとは思えないくらい、美しい少年だった。例えば、漫画であれば周りにバラが描かれるくらい。例えば、学校であれば、周りに女生徒が群がるくらい。
ああ、この美しさ、例えることなんて出来ませんわ…。
そのくらいそこにいた彼は美しくて。中性的なその美しさは、男女問わず人々を魅了するだろう。
「は、初めましてですわね…どちら様でしょうか?」
なんとか声を出して問いかける。不安の中で凛が生み出した凛の精一杯の勇気だった。
「私はですね…神様です。」
か、神様ですって?もしかしてここは、あの世?
イケメンを前に心臓をドキドキさせながら、嫌な考えが身体中を巡る。今にも後頭部からひっくり返って倒れてしまいそうだ。
私…もしかして、死にましたの?
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