蛇神様の花わずらい～逆ハー溺愛新婚生活～

バレンタイン番外編

バレンタインデー２

　熱い。
　体も、頭も。

　後ろから抱きかかえられる格好で、美鎖は穂波に貫かれていた。膝を持ち上げられ、繋がっている場所が丸見えになっている。
　口には暗夜の固いものが出し入れされていた。

　湿った音が響く。
　頭がぼうっとする。

　ふいに伸びてきた雪影の指が、さらけ出された結合部に触れる。

「ぅんんっ！」

　敏感な芽を摘ままれて、美鎖はぎくりとのけ反った。思わず吐き出してしまった雄槍に歯が引っ掛かる。

「つっ！」

　暗夜が片眉をしかめて呻いた。

「雪影……」

　暗夜が雪影を睨み付けた。目付きが悪いので迫力がある。
　だが雪影は挑発的に笑うだけだ。その手はしっかりと美鎖の急所を捉え、細かな振動で責めたてる。
　唇を解放された美鎖は、大胆な声をあげる。

「ぁああっ！　ひぁんっ！」

　下から穂波に突き上げられる。雪影に敏感な粒を押し潰される。

　くる。
　イク。

　背後で穂波が切羽詰まった声を漏らす。

「美鎖っ、絞め、す、ぎっ……！」

　美鎖がピンと背を反らした瞬間、体内の穂波も爆発する。注ぎ込まれる、熱い劣情の塊。

「はぁっ……」

　美鎖はぐったりと畳の上に崩れ落ちた。

「今のは私の指で気をやったんですよね？」

「違うよ、僕のでイッたんだってば！」

　雪影と穂波が言い争いを始める。
　それを尻目に、暗夜が美鎖の体を抱き上げた。ぼんやりしている美鎖に、深く、いたわるようなキスをしてくる。

「ちょっと、暗夜。何抜け駆けしてんのさ？」

「次は私の番ですよ」

　雪影が美鎖の体を奪い返す。畳に仰向けで押さえつけると、正常位で押し入ってきた。

「ああああっ！」

　目がチカチカする。脳裏で火花が散る。引くことを知らぬ快楽はとぐろを巻き、体中を暴れまわった。美鎖の背が跳ねる。
　雪影はゆったりと船を漕ぐような動きで美鎖を翻弄した。深いところを掘り起こされるような感覚。溢れるものが止まらない。

「あっ！　も、だめ！　いやぁ！」

　甘い責め苦に耐えられず、美鎖は首を振る。
　水の音がする。耕されているのは自分だ。ぐちゃぐちゃのぬかるみに、底のない沼に、ずぶずぶと堕とされていく。

　ふと、雪影が顔をあげる。まだ出番の回ってこない暗夜が、美鎖の乱れる様に見入っていた。

「暗夜、物欲しそうな顔をするくらいなら、こちらはいかがですか？」

　雪影が美鎖の体を抱えあげた。白くあらわになった臀部を、雪影の手が大きく割り開く。

「やっ！　そこはダメ！」

　美鎖は雪影の手を押さえようとしたが、無駄だった。
　菊の花を思わせるすぼまりが姿を現す。美鎖にとってそれは不浄の門でしかなく、最も秘めておきたい場所だった。しかも、貫かれた場所から蜜が滴り、ねっとりと光を放っている。
　暗夜が生唾を飲んだ。美鎖の腰に手をあて、自身の猛りたつものを後ろに合わせてくる。

「やめて……！」

　美鎖は悲痛な声で訴えた。

「だいじょーぶだよ、美鎖。この前は僕のも飲み込めたでしょ？」

　穂波が微笑みながら手を伸ばし、美鎖の髪をクルクルともてあそんだ。あの時も泣いて嫌がったのに、最終的には好きにされてしまった。

「お願い……」

　暗夜の方を振り返る。だが、いつもは気遣ってくれる彼も、もう余裕がないらしい。

「美鎖、すまない」

「ひっ！」

　ぬく、と、切っ先がもぐり混んでくる。様子をうかがうように、何度か門を押された。前からこぼれた蜜のせいで、忌々しいほどに滑りが良い。

「やっ！　やああっ！」

　入ってくる。排泄のための器官に、美鎖を屈服させる凶悪な雄の塊が。

「あ、あ……」

　美鎖は天井を仰いで、魚のように口をぱくぱくさせた。気持ち悪いのと気持ち良いのとが混ざり合って、よくわからなくなる。堕ちてしまう。
　背後で暗夜が溜め息をもらした。全て入ったらしい。

「こっちも良く絞まりますねぇ」

　雪影が目を細めた。
　美鎖は必死で浅い呼吸を繰り返した。全身から汗が噴き出してくる。
　苦しい。前も後ろも異物を飲み込まされた腹部が、みっしりと重量を訴えてくる。

　穂波が横からなだめるように美鎖の頭を撫でた。

「力抜いて、美鎖。すぐ気持ちよくなるよ」

　穂波はクスクス笑う。
　ゆっくりと雪影と暗夜が動き出した。

「だ、めっ……あっあ……あっ！」

　美鎖は逃れるように身をよじる。だが力強い腕に押さえ込まれてしまった。
　最初は探るように。けれど、だんだんリズミカルに。湿りを帯びた音が、徐々に激しくなっていく。

「はぁ、ん……！」

　違和感の強かった場所が馴染んでいく。快感が強くなる。
　内側で、雪影と暗夜が擦れ合うのがわかった。薄い壁を隔てた場所で、ゴリゴリと響きあう。

「あっ！　ふぁっ！　ひゃあぁんっ！」

　雪影も暗夜も、こういう時ばかり息がぴったりだ。
　揺られる。擦られる。
　手足が痙攣している。このままでは脳が焼き切れる。

「も、やだっ！　いやぁあ！」

　快楽電流は飽和状態だ。体が発光する。
　ぐぐ、と、美鎖の背が若竹のようにしなる。限界だった。

「いっ――――！」

　爆ぜる。全てが弾け飛ぶ。

　次の瞬間、美鎖の意識は漆黒の海に投げ出されていた。
　音のない波間。圧倒的な孤独の海。美鎖の体は黒い水の合間に浮き沈みする。
　あまりにも自分はちっぽけで、すぐにも飲み込まれてしまいそうだった。いや、もう飲み込まれてしまったのだろうか。

　暗闇に月の光が差して、美鎖はぼんやりと目を開いた。見ると、穂波がこちらをのぞきこんでいた。優しく頭を撫でてくれる。
　体にわだかまる違和感に、美鎖は自分が現実に戻ってきたことを知った。
　雪影と暗夜が体を引き抜く。美鎖はぶるりと身を震わせた。

「美鎖、素敵でしたよ」

　雪影が優しくキスを落としてくる。

「大丈夫か、美鎖」

　後ろから暗夜も体を支えてくれる。

「はぁっ……はっ……」

　しばらく美鎖は言葉を発することが出来なかった。まだ波に揺られているような気がする。

「……で？　誰が一番気持ちよかったの？」

　穂波が無邪気に質問をぶつけてくる。美鎖は荒かった呼吸をぴたりと止めた。そんなこと、わかるわけがない。

「やっぱ僕だよね？」

　にこにこにこーっと、穂波がわざとらしいほど微笑んでくる。

「私に決まってるでしょう？」

　負けじと雪影も身を乗り出してくる。二人は極上の笑顔で睨み合った。
　ぼそっと暗夜が呟いた。

「俺はまだ足りない」

　雪影と穂波は顔を見合わせる。

「……今日は珍しく暗夜が積極的ですねぇ」

「そーだよね、いつもは止める側なのに」

「たまにはいーだろ、別に」

　よくない。全然よくない。暗夜にまでがっついてこられたら、美鎖はいったいどうなるのだ。

「せめて、少し休憩を……」

　控えめな美鎖の声は、三人の声にかきけされる。

「次は僕からだよね？　二人とも今終わったばっかりだし」

「何を言ってるんですか、私はまだまだ元気ですよ」

「俺は今度は前から入れたい」

　美鎖は衣服をかき集め、こっそり部屋を出ようとした。しかし、すぐ雪影に腕を捕まれる。

「どこに行くんですか、美鎖？」

　雪影の笑顔が恐ろしい。もちろん、その後ろには暗夜と穂波もいる。

「きょ、今日はもう終わりにしませんか？」

「何言ってんの、美鎖。今日はバレンタインだよ？　たぁっぷり愛を確かめ合おうね！」

　穂波は首を傾けて可愛らしく笑うが、言っている内容は全く可愛くない。

「呪いが成功しているか、美鎖も確かめた方がいーだろ」

　暗夜も庇ってくれる気配はない。美鎖はひきつった笑いを浮かべた。

　蛇神様の宴は、まだまだ終わらないらしかった。