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本編
神様の仕事
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今夜はカレーである。暗夜は料理に目覚めたらしく、スパイスの調合まで始めるようになってしまった。
穂波が大きく口を開けてパクついている。
「で、北の水脈を見に行って来たんだけど、だいぶ気の流れが狂っちゃってるみたいだよ」
穂波の言葉に、雪影が地図を広げながら頷いている。
「あの辺りは祭祀が出来る人間がいなくなってしまいましたからね。外国の人間に土地が買われているそうですし、これからも荒れる一方でしょう」
「雪影が美鎖のお婆ちゃんに頼まれて調べに行った海洋資源はどうなの?」
「海は守備範囲から少し離れていますし、今から割り込むのは厳しそうですねぇ。せめて巫女が現れるのが十年早ければ……。まぁ、お金の流れの一部をこちらに流すのは可能ですが」
何だか難しそうな話をしている。
美鎖は台所に立っている暗夜にこっそりと尋ねた。
「あの、うちの祖母はどういったことを皆さんに頼んでるんですか?」
「んー、俺も難しいことはわからないが……」
暗夜は独り暮らし用の台所には不釣り合いなほど立派な調味料棚に、スパイスの入ったビンを丁寧に並べている。
「俺たちの力を利用して、一族に富をもたらすようにしたいらしい。水とか金とか、蛇が得意な分野だからな」
「それってつまり、神様の力をお金儲けに使ってるってことですよね?」
「人間が神に望むことなんてそんなもんだろ。商売繁盛に、子宝とか、健康長寿とか」
確かに、神社やお寺の絵馬には、個人的で即物的な願い事が多い。
「でも、そんなふうに力を使われて、嫌な気はしないんですか?」
「巫女の一族には、山を守ったり祭を行ってもらったりしねーと、俺らも消えちまうからな。栄えてもらう方がいいに決まってんだろ」
そういうものなのだろうか。
「じゃあ、暗夜さんもそういった仕事をしてくれてるんですか?」
「あー、俺は……」
暗夜が言葉を濁す。
「?」
「暗夜は呪術戦に特化したタイプだよ」
穂波がスプーンをくわえながらこっちを見ていた。
「蛇は呪詛も得意だからね。消したい人がいるなら、暗夜に頼めば一発だよ」
爽やかに恐ろしいことを言う。
「もうそんな時代じゃないらしいけどな」
暗夜は顔をしかめている。何となく危険な役割であることは伝わってきて、美鎖はこの前の血だらけだった暗夜を思い出した。
「怪我をすることはよくあるんですか?」
「犬神も呪詛が得意だからな。ぶつかり合えば、そういうこともある」
美鎖がじっと心配そうに見つめていると、暗夜は戸惑った顔をした。
「な、なんだよ」
「あんまり怪我して欲しくないなぁと……」
ぐぅ、と暗夜がうめいて、顔が赤くなる。
それを見た穂波が、美鎖の腰にまとわりついてくる。
「美鎖ぁ、僕のことも心配してよ~」
「心配されるのは未熟な証ですよ」
「そんなこと言って、雪影だって嫉妬してるくせに」
穂波と雪影が静かににらみ合う。こういう状況になると、美鎖はどうしていいのかわからなくなってしまう。とりあえず話題をそらすことにした。
「そういえば、パーティで捕まえた犬の毛から、何かわかりそうですか?」
雪影は肩をすくめた。
「ええ、術者の狙いは美鎖ですね。ずいぶん近くまできているようです」
狙われている、という事実に、美鎖はぶるりと震えた。
「大丈夫ですよ。罠を張っておきましたから、そのうち引っ掛かるでしょう」
「明日から学校でしょ? 僕がちゃんと美鎖のこと守ってあげるから安心して」
穂波がぎゅうっと抱きしめてくる。
「あ、ありがとうございます……」
いよいよ大学生活のスタートだ。高校を卒業するときは、こんなことになるとは思っていなかったけれど。
「美鎖と楽しい学生生活~」
ウキウキしている穂波の後ろで、雪影が悪い笑顔を浮かべている。
「さて、私も罠を見張っておかなければなりませんし……」
その様子を見ていた暗夜も、軽く息を吐いた。
「まぁ、狙われてるんなら、護衛はしっかりしといた方がいいだろ」
二人の呟きの意味を、美鎖は理解出来なかった。
翌日、美鎖は理子と一緒にキャンパスへ向かった。大きなホールで入学式を終え、緊張や期待で騒いでいる新入生たちと外に出る。父兄と写真を撮っている生徒や、サークル勧誘のために集まってきた先輩たちで、周囲はごった返していた。
「賑やかだね~! 美鎖、サークルどうする?」
理子はまわりを見てはしゃいでいる。明るいグレーのスーツ姿が初々しい。
「うーん、いろいろ見てから決めようかな」
「じゃあ、ちょっと待ってて。お父さんたちと話してくるね。後で一緒に見に行こー!」
理子は手を振って、校門の方に消えて行く。美鎖の家族は入学式に来ていない。理子を待っている間、どこかで時間をつぶすことにする。
そういえば、穂波も来ているはずだが、どこにいるのだろう。
「美鎖!」
名前を呼ばれて振り返る。
並木道のあたりに、特に大きな人だかりが出来ていた。その中央に穂波の金髪が見える。ぴょこぴょこ跳び跳ねながら美鎖に手を振っている。
「穂波さ……」
返事をしようとして、美鎖は固まった。人だかりがいっせいにこちらを見ている。もしかしてあの人たちは全部、穂波の取り巻きだったりするのだろうか。
いや、まさか。
だが、その予感は当たっていた。美鎖が動かないので、穂波がこちらにやってくる。その後に人だかりが一緒についてくるのだ。
「サークルに誘われてたんだー。今夜、新歓コンパがあるんだって。新入生はタダらしいよ」
穂波の手にはサークル勧誘のチラシが大量に握られている。
「美鎖、どこか行きたいとこある?」
穂波の言葉に、周囲の女性たちが反応する。
「穂波くんの知り合い? うちにおいでよ!」
「いやいやいや、うちの方が楽しいよ!」
美鎖も囲まれてしまう。見事に女性ばかりだった。美鎖のことを何者だという目で見てくる人間もいるが、それより穂波を勧誘する方が優先順位が上らしい。
「わ、わたしは、理子と一緒に探すから……」
「ふーん、じゃあいいや」
穂波がチラシを折り畳んだ。
「えっ? 穂波くん、来てくれないの?」
「その子おいて一人でくればいいじゃん!」
女性たちが口々に言う。
「だって美鎖がいないと意味ないし」
穂波は取り合わない。
「じゃあ行こっか」
穂波に手を引かれて人混みを抜ける。まわりの視線が痛い。
まだ時間があるので、この前も寄ったカフェで一息つくことにした。
そこでも、カウンターに何人かの女子が固まっている。キッチンの方を覗いているようだ。
「かっこいい~!」
女子たちの黄色い声に何事かと目を向けると、カウンターの向こうには暗夜がいた。
「な、に、やってるんですか……?」
「どこで美鎖が狙われるかわかんねーし、少しでも側にいた方がいいだろ?」
暗夜は無愛想な顔でキッチンにのっそり突っ立っている。服装は、カフェの店員のユニフォームだった。
「もしかして、ここで働いてるんですか?」
「あはは、暗夜、エプロン似合うー!」
「冷やかしなら帰れよ」
穂波が笑うと、暗夜は舌打ちをしてキッチンの奥に隠れてしまった。
「暗夜、単純に料理の勉強がしたいだけなんじゃないの?」
穂波の指摘に、美鎖も心の中で頷いた。この前クレープを買って帰ったら、暗夜はあまりの美味しさに感動していた。このカフェのメニューにもクレープがある。つまりそういうことだろう。
「もしかして、雪影さんもどこかに居るのでしょうか」
穂波と暗夜が紛れ込んでいるのに、彼が一人で大人しくしているはずがない。
その後、理子と合流したものの、雪影の姿は見当たらなかった。
美鎖がそのことをすっかり忘れて寮に帰ってくると、一階のロビーが騒がしい。寮のエントランスを抜けると、小さなパーティが開けそうなくらいのロビーがある。普段は丸テーブルと椅子が何セットか置かれていて、お茶を飲んだり勉強会に使われたりしている。そこに人が集まっているらしい。
「管理人さんはおいくつなんですか?」
「ふふふ、二千歳は軽く超えてますねぇ」
「管理人さんって、真面目そうに見えて、冗談がお好きなんですね~」
聞き覚えのある声に、まさか、と美鎖は立ち止まる。
「どうかしたー?」
一緒に帰ってきた理子が怪訝な顔をする。ちなみに穂波とは入口で別れた。部屋に行けば顔を合わせるのだが、男子禁制なので誰かに見られるのは流石にまずい。
そう、ここは女子寮で、男性は立ち入り禁止なのだ。
それなのに。
「おや、おかえりなさい」
ロビーの椅子に腰かけて、にっこり笑っているのは雪影だった。
なんでここにいるんですか――!
という叫びは飲み込んだ。
雪影の回りにいる女の子たちが恐い。女子の集団にじっと品定めされるのは、今日で何度目だろう。
「今日からここの管理人になりました、雪影です。初めまして」
白々しく雪影が話しかけてくる。初対面という設定にするつもりらしい。その方が美鎖も色々突っ込まれなくてありがたい。
「初めまして……」
細かいことは後で聞こう。美鎖はぎこちなく返事をして、さっさと部屋に戻ることにした。背後では雪影が寮生に質問責めにされている。
雪影も、暗夜も、穂波も、美鎖を心配してくれるのはありがたい。けれど、ここまでやるのはどうなのだろう。雪影に至っては、絶対に裏で手を回したに違いない。カフェの店員も、寮の管理人も、神様の仕事としてはかなりの違和感だ。
(でも、三人とも楽しそうだな)
三者三様に人間の世界に溶け込んでいる姿を思い出して、美鎖は少し胸が温かくなるのを感じた。
穂波が大きく口を開けてパクついている。
「で、北の水脈を見に行って来たんだけど、だいぶ気の流れが狂っちゃってるみたいだよ」
穂波の言葉に、雪影が地図を広げながら頷いている。
「あの辺りは祭祀が出来る人間がいなくなってしまいましたからね。外国の人間に土地が買われているそうですし、これからも荒れる一方でしょう」
「雪影が美鎖のお婆ちゃんに頼まれて調べに行った海洋資源はどうなの?」
「海は守備範囲から少し離れていますし、今から割り込むのは厳しそうですねぇ。せめて巫女が現れるのが十年早ければ……。まぁ、お金の流れの一部をこちらに流すのは可能ですが」
何だか難しそうな話をしている。
美鎖は台所に立っている暗夜にこっそりと尋ねた。
「あの、うちの祖母はどういったことを皆さんに頼んでるんですか?」
「んー、俺も難しいことはわからないが……」
暗夜は独り暮らし用の台所には不釣り合いなほど立派な調味料棚に、スパイスの入ったビンを丁寧に並べている。
「俺たちの力を利用して、一族に富をもたらすようにしたいらしい。水とか金とか、蛇が得意な分野だからな」
「それってつまり、神様の力をお金儲けに使ってるってことですよね?」
「人間が神に望むことなんてそんなもんだろ。商売繁盛に、子宝とか、健康長寿とか」
確かに、神社やお寺の絵馬には、個人的で即物的な願い事が多い。
「でも、そんなふうに力を使われて、嫌な気はしないんですか?」
「巫女の一族には、山を守ったり祭を行ってもらったりしねーと、俺らも消えちまうからな。栄えてもらう方がいいに決まってんだろ」
そういうものなのだろうか。
「じゃあ、暗夜さんもそういった仕事をしてくれてるんですか?」
「あー、俺は……」
暗夜が言葉を濁す。
「?」
「暗夜は呪術戦に特化したタイプだよ」
穂波がスプーンをくわえながらこっちを見ていた。
「蛇は呪詛も得意だからね。消したい人がいるなら、暗夜に頼めば一発だよ」
爽やかに恐ろしいことを言う。
「もうそんな時代じゃないらしいけどな」
暗夜は顔をしかめている。何となく危険な役割であることは伝わってきて、美鎖はこの前の血だらけだった暗夜を思い出した。
「怪我をすることはよくあるんですか?」
「犬神も呪詛が得意だからな。ぶつかり合えば、そういうこともある」
美鎖がじっと心配そうに見つめていると、暗夜は戸惑った顔をした。
「な、なんだよ」
「あんまり怪我して欲しくないなぁと……」
ぐぅ、と暗夜がうめいて、顔が赤くなる。
それを見た穂波が、美鎖の腰にまとわりついてくる。
「美鎖ぁ、僕のことも心配してよ~」
「心配されるのは未熟な証ですよ」
「そんなこと言って、雪影だって嫉妬してるくせに」
穂波と雪影が静かににらみ合う。こういう状況になると、美鎖はどうしていいのかわからなくなってしまう。とりあえず話題をそらすことにした。
「そういえば、パーティで捕まえた犬の毛から、何かわかりそうですか?」
雪影は肩をすくめた。
「ええ、術者の狙いは美鎖ですね。ずいぶん近くまできているようです」
狙われている、という事実に、美鎖はぶるりと震えた。
「大丈夫ですよ。罠を張っておきましたから、そのうち引っ掛かるでしょう」
「明日から学校でしょ? 僕がちゃんと美鎖のこと守ってあげるから安心して」
穂波がぎゅうっと抱きしめてくる。
「あ、ありがとうございます……」
いよいよ大学生活のスタートだ。高校を卒業するときは、こんなことになるとは思っていなかったけれど。
「美鎖と楽しい学生生活~」
ウキウキしている穂波の後ろで、雪影が悪い笑顔を浮かべている。
「さて、私も罠を見張っておかなければなりませんし……」
その様子を見ていた暗夜も、軽く息を吐いた。
「まぁ、狙われてるんなら、護衛はしっかりしといた方がいいだろ」
二人の呟きの意味を、美鎖は理解出来なかった。
翌日、美鎖は理子と一緒にキャンパスへ向かった。大きなホールで入学式を終え、緊張や期待で騒いでいる新入生たちと外に出る。父兄と写真を撮っている生徒や、サークル勧誘のために集まってきた先輩たちで、周囲はごった返していた。
「賑やかだね~! 美鎖、サークルどうする?」
理子はまわりを見てはしゃいでいる。明るいグレーのスーツ姿が初々しい。
「うーん、いろいろ見てから決めようかな」
「じゃあ、ちょっと待ってて。お父さんたちと話してくるね。後で一緒に見に行こー!」
理子は手を振って、校門の方に消えて行く。美鎖の家族は入学式に来ていない。理子を待っている間、どこかで時間をつぶすことにする。
そういえば、穂波も来ているはずだが、どこにいるのだろう。
「美鎖!」
名前を呼ばれて振り返る。
並木道のあたりに、特に大きな人だかりが出来ていた。その中央に穂波の金髪が見える。ぴょこぴょこ跳び跳ねながら美鎖に手を振っている。
「穂波さ……」
返事をしようとして、美鎖は固まった。人だかりがいっせいにこちらを見ている。もしかしてあの人たちは全部、穂波の取り巻きだったりするのだろうか。
いや、まさか。
だが、その予感は当たっていた。美鎖が動かないので、穂波がこちらにやってくる。その後に人だかりが一緒についてくるのだ。
「サークルに誘われてたんだー。今夜、新歓コンパがあるんだって。新入生はタダらしいよ」
穂波の手にはサークル勧誘のチラシが大量に握られている。
「美鎖、どこか行きたいとこある?」
穂波の言葉に、周囲の女性たちが反応する。
「穂波くんの知り合い? うちにおいでよ!」
「いやいやいや、うちの方が楽しいよ!」
美鎖も囲まれてしまう。見事に女性ばかりだった。美鎖のことを何者だという目で見てくる人間もいるが、それより穂波を勧誘する方が優先順位が上らしい。
「わ、わたしは、理子と一緒に探すから……」
「ふーん、じゃあいいや」
穂波がチラシを折り畳んだ。
「えっ? 穂波くん、来てくれないの?」
「その子おいて一人でくればいいじゃん!」
女性たちが口々に言う。
「だって美鎖がいないと意味ないし」
穂波は取り合わない。
「じゃあ行こっか」
穂波に手を引かれて人混みを抜ける。まわりの視線が痛い。
まだ時間があるので、この前も寄ったカフェで一息つくことにした。
そこでも、カウンターに何人かの女子が固まっている。キッチンの方を覗いているようだ。
「かっこいい~!」
女子たちの黄色い声に何事かと目を向けると、カウンターの向こうには暗夜がいた。
「な、に、やってるんですか……?」
「どこで美鎖が狙われるかわかんねーし、少しでも側にいた方がいいだろ?」
暗夜は無愛想な顔でキッチンにのっそり突っ立っている。服装は、カフェの店員のユニフォームだった。
「もしかして、ここで働いてるんですか?」
「あはは、暗夜、エプロン似合うー!」
「冷やかしなら帰れよ」
穂波が笑うと、暗夜は舌打ちをしてキッチンの奥に隠れてしまった。
「暗夜、単純に料理の勉強がしたいだけなんじゃないの?」
穂波の指摘に、美鎖も心の中で頷いた。この前クレープを買って帰ったら、暗夜はあまりの美味しさに感動していた。このカフェのメニューにもクレープがある。つまりそういうことだろう。
「もしかして、雪影さんもどこかに居るのでしょうか」
穂波と暗夜が紛れ込んでいるのに、彼が一人で大人しくしているはずがない。
その後、理子と合流したものの、雪影の姿は見当たらなかった。
美鎖がそのことをすっかり忘れて寮に帰ってくると、一階のロビーが騒がしい。寮のエントランスを抜けると、小さなパーティが開けそうなくらいのロビーがある。普段は丸テーブルと椅子が何セットか置かれていて、お茶を飲んだり勉強会に使われたりしている。そこに人が集まっているらしい。
「管理人さんはおいくつなんですか?」
「ふふふ、二千歳は軽く超えてますねぇ」
「管理人さんって、真面目そうに見えて、冗談がお好きなんですね~」
聞き覚えのある声に、まさか、と美鎖は立ち止まる。
「どうかしたー?」
一緒に帰ってきた理子が怪訝な顔をする。ちなみに穂波とは入口で別れた。部屋に行けば顔を合わせるのだが、男子禁制なので誰かに見られるのは流石にまずい。
そう、ここは女子寮で、男性は立ち入り禁止なのだ。
それなのに。
「おや、おかえりなさい」
ロビーの椅子に腰かけて、にっこり笑っているのは雪影だった。
なんでここにいるんですか――!
という叫びは飲み込んだ。
雪影の回りにいる女の子たちが恐い。女子の集団にじっと品定めされるのは、今日で何度目だろう。
「今日からここの管理人になりました、雪影です。初めまして」
白々しく雪影が話しかけてくる。初対面という設定にするつもりらしい。その方が美鎖も色々突っ込まれなくてありがたい。
「初めまして……」
細かいことは後で聞こう。美鎖はぎこちなく返事をして、さっさと部屋に戻ることにした。背後では雪影が寮生に質問責めにされている。
雪影も、暗夜も、穂波も、美鎖を心配してくれるのはありがたい。けれど、ここまでやるのはどうなのだろう。雪影に至っては、絶対に裏で手を回したに違いない。カフェの店員も、寮の管理人も、神様の仕事としてはかなりの違和感だ。
(でも、三人とも楽しそうだな)
三者三様に人間の世界に溶け込んでいる姿を思い出して、美鎖は少し胸が温かくなるのを感じた。
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