アレが欲しいだけですの。 ー愛人から旦那様を寝取る目的はひとつですー

濃子

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第15話 従兄弟の嫁ぎ先☆

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 ラース大公領の隣バンス大公領に、サキナの従兄弟のセリは嫁いで行った。大好きな優しい従兄弟との決別は本当に寂しかった。手紙で頻繁にやり取りするはずが、サキナが出しても返事が来ない。その状態のまま今に至るーー。

 だが、ラース大公が行けといってくれたのだ、セリに会える。
 サキナはテレゼを抱きながらるんるんだったのだがーー。よく考えると、自分は妊娠中、6か月の赤子。
 極めつけは、すぐに棒を突っ込もうとする旦那。

 こ、これは無理ゲーだわ。




「馬車の中もいいもんだ……」
 やっぱりエドアルドだった。
 赤子を放ったらかしにし、サキナを後ろから恍惚と抱くエドアルドに対し、お腹の心配しかしていないサキナ。
『何?妊娠中のセックスか?おまえも好きだなー』
 違うわ。
『無理をしなければ大丈夫だろう。私はそのとき、いろんなモノ・・を食ったな』
 あー、元気ですこと。
「うっ、サキナ……」
 何回出す気だ。
 狭い中で突っ込まれて、サキナはもはや笑うしかない。
「ーーなんでそんなに好きなんですか?」
「美しいからだ……」
「いや、私じゃなくて、セックスの話ですよ」
 美しさは否定しない。
「おまえだからだ……」
 嘘こけ。


「旦那様はバンス領には?」
「軍の合同演習で行くぐらいだな。かなり暑いぞ」
 そうなのか。
「テレゼ様の汗疹に気をつけなければ」
 ついてきてくれたエアロが言った。本当に彼がいなければ終わっている。ちなみに、レインはエドアルドの屋敷に残し、サキナの仕事をこなしてもらっている。


「まあ、本当に暑いわ」
「ーー前から思っていたのだが、アザ花種はそういう、柔らかい話し方なのか?」
 「あー、私だけかも……」
 もう、サキナがどう話していたか思い出せない。咲夜だった自分のほうが強すぎる。
「とてもいいな……」
 後ろから抱きすくめられる。
 女性らしさがない世界だから新鮮なんだろうな。冷静に考えながら、サキナはエドアルドをはらった。
「人前ですよ」
 軽く嗜めた後、サキナはバンス大公の城に入った。
「まあ、大きな城」
 案内係がサキナ達の前に立った。
「ようこそいらっしゃいました。どうぞこちらへ」
 無表情が気になったが、サキナは案内に従って歩いて行く。


 暗い廊下を抜けると、大公の謁見の間に出る。だが、誰もおらずサキナは首を傾げた。
「どういうことかしら」
 エドアルドが黙って剣に手をかけた。
「そんな、だめですよ」
「わかっている」
 ただし、警戒はやめなかった。


 奥から足音がした。エドアルドが眉をしかめた。
「ーーおかしい」
 ぼそり、と言った。
「え?」
 何が、とサキナが思ったとき、従兄弟のセリは姿を見せた。
「え!」
 サキナは目を疑った。
 
 前を歩くガタイのいい美丈夫は、バンス大公の令息ドーラだろう。盛り上がった筋肉が見える服を着ている。だが、何よりサキナが驚いたのは、ドーラに首輪を付けられ引きずられて歩くセリだ。
 美貌は別れたときのままだが、表情がない。目が死んでいる。

「よく、参られた。ラース大公には聞いている。東の塔を使え、我が城には賊の一匹も侵入できぬから安心せよ」
「お心遣い、ありがとうございます」
「ではー」
「お待ち下さい!セリと、従兄弟と話をさせてください!」
「ならぬ、セリは務めを果たさねばならぬ……」
「務め?」
「子を、子を早く産まねばならん。おまえのようにな……」
「ならば、拘束をおときください!ストレスは身体に負担をかけ、妊娠しにくくなります!」

 そう思うと、サキナはよく妊娠したなー、と思うが。

「黙れ!」
 ごつい男に凄まれてサキナは怯んだ。何この人、マッチョの元カレ平祐へいすけ君より怖いわー。
 ヤラせなかったらぶたれたこともあったわね。デカすぎて痛くて無理だったのよー、とサキナは昔を懐かしんだ。殴られて歯が折れたので通報したがーー、その後はいい女王様を見つけて毎日ぶたれていると、風の噂で聞いた。

「サキナ、ドーラ様に逆らわないで」
 セリが言った。
「俺にことわりもなく話すな!」
「……申し訳ございません」
 セリは疲れたように言った。心が生きていない。
「ーードーラ様」
「なんだ?」
「ここにいる私の主人と剣を交えていただきたい!」
 エドアルドが目を丸く開いた。
「はあ?」
「私の主人が勝ちましたら、セリと2人で話をさせてください!お願いいたします!」
「ーーふん。いいだろう。いかに大公の鷹といえど俺に勝てるわけがないがーー」  
 ドーラはセリの鎖を柱につないだ。その慣れた手付きにサキナは眉をしかめる。
 エドアルドはジャケットを脱いでシャツ姿になった。
 
「では、1本でよろしいか?」
「ああ。はじめよう。細かいことはいい」
 対峙した2人は、睨み合ったまま剣を構えた。
「はじめ」
 ドーラが言った瞬間、サキナは目を疑った。
 エドアルドが、まさしく鷹のような疾さでドーラに剣を突き刺したのだ。
「え?」
 あまりの速さにドーラが固まっていた。その胸の寸前でエドアルドは剣をとめている。


「本当に凄いんですね」
 サキナが感心したように言うと、エドアルドは片眉をあげた。
「知らなかったのか」
「ええ、ただの強姦魔だと」
「失礼な」
 不貞腐れたエドアルドはドーラを見た。
「セリ殿と話をさせてもらおうか」
「ーーああ」
 瞬殺に勢いを削がれたのか、ドーラはセリの鎖を外した。
 セリがサキナにゆっくりと近付いた。
「サキナ……」
「セリ!手紙を書いたのに、どうして返事をくれなかったの?」
「それは……」
 セリは下を向いた。エドアルドがドーラに言う。
「2人で話ができる場所はないか?」
「ーーこの奥に貴賓室がある。使え」
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