184 / 236
東堂の恋わずらい編
第18話 疑われた兵馬
しおりを挟む「ーー何の話?」
笑顔が怖い。
琉生斗は素直にそう思った。
笑っているのに、嵐の前の静けさのような嫌な空気を感じる。
「ーー何でもないよな!」
慌てて琉生斗は誤魔化すために兵馬の肩を叩いた。
「ルート」
淡々とした口調でラルジュナが名を呼ぶ。
「あっ、」
彼の目が笑っていない。
「アレクセイが一緒に散歩がしたいって言ってたよ」
「いやーー」
圧もきつい。
この空気の中、自分は親友を見捨てるのかーー。
「どうしたの?」
「う、うん……、兵馬も……」
親友の腕をつかみ、行こうとするが、
「ヒョウマはボクといるよ」
と、あっさり止められる。
「そ、そう……」
ーー痛恨のミスだ。
ふたりから離れながら、心臓の音がバクバクと鳴るのを琉生斗は感じた。
ーー何もなくても、疑惑をもつような事言っちまったよな。おれは余計な事してーー。
反省して振り向くと、そこに兵馬達はいなかった。
どこかに転移したのだろう。
「ーーどうしよう」
琉生斗は項垂れた。
「ーールート、どうした?」
「アレクーー」
心配で迎えにきたアレクセイの腕の中に琉生斗は飛び込んだ。
「ーーおれはまた最低な事をした……。兵馬の事になると何でこうなんだろーー」
「何があった?」
「兵馬に兄貴にひどい事をされてないか聞いたんだ。ラルさんがいる事に気づかなくてーー」
「…………ラルジュナは?」
「おれに離れるように言って、気づいたら転移してたーー。どうしよう、こじれてないかな……」
「大丈夫だ。ラルジュナなら冷静さを欠くことはないだろう」
ーーいや、それは違う。
それは違うと思う。なぜだかはわからないが、彼からは冷静さを感じられなかった。
「……」
自分に呆れ、ため息をつく。
アレクセイの背にきつく腕をまわしながら、琉生斗は親友の身を案じた。
案じるしかできないなんて、ごめん、兵馬ーー。
オランジーの別荘に戻ると、ラルジュナは魔法でユーリを眠らせた。
「あまりやると効かなくなるから今だけね」
ふふっ、と笑いながら兵馬をソファーに座らせる。
「ーージュナ、あのね」
自身も隣りに腰をかけ、兵馬の強張った頬を優しく撫でた。
「言わなくていいよ」
「えっ?」
「ーー記憶を読むから」
「あっーー」
兵馬の目が大きく開かれる。
「見られて困るものがあるの?」
「…………」
ぶつかった視線を先にそらしたのは兵馬だ。眉をしかめて、困惑したような表情になる。
「……あるんだ」
「ないよーー、でもーー、、、」
首を振った兵馬を強い力で抱きしめ、じっと目を見つめた。
視線が下にぶれる、罪悪感かーー。
「わかったーー」
押し倒して、ラルジュナは額をくっつける。
彼の記憶を自分の頭に流し、見たい部分でとめてーー……。
あらわれたのは、琉生斗に似た美青年だ。
ーーこいつがルキアだな。顔は似てるけど、ルートより完全に危ない目をしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
いつも最後まで読んでいただき、ありがとうございま~す😊
琉生斗の兄弟は、姉の琉亜、兄の琉生亜、そして、琉生斗です。漢字が一緒なのは、父親の累さんがめんどくさかったからです。ひどい話ですね😩
64
お気に入りに追加
76
あなたにおすすめの小説

婚約破棄された僕は過保護な王太子殿下とドS級冒険者に溺愛されながら召喚士としての新しい人生を歩みます
八神紫音
BL
「嫌ですわ、こんななよなよした男が夫になるなんて。お父様、わたくしこの男とは婚約破棄致しますわ」
ハプソン男爵家の養子である僕、ルカは、エトワール伯爵家のアンネリーゼお嬢様から婚約破棄を言い渡される。更に自分の屋敷に戻った僕に待っていたのは、ハプソン家からの追放だった。
でも、何もかもから捨てられてしまったと言う事は、自由になったと言うこと。僕、解放されたんだ!
一旦かつて育った孤児院に戻ってゆっくり考える事にするのだけれど、その孤児院で王太子殿下から僕の本当の出生を聞かされて、ドSなS級冒険者を護衛に付けて、僕は城下町を旅立った。

飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?
悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
*
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
【完結】ここで会ったが、十年目。
N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化)
我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。
(追記5/14 : お互いぶん回してますね。)
Special thanks
illustration by おのつく 様
X(旧Twitter) @__oc_t
※ご都合主義です。あしからず。
※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。
※◎は視点が変わります。
気弱なスパダリ御曹司にノンケの僕は落とされました
海野幻創
BL
【陽気な庶民✕引っ込み思案の御曹司】
これまで何人の女性を相手にしてきたか数えてもいない生田雅紀(いくたまさき)は、整った容姿と人好きのする性格から、男女問わず常に誰かしらに囲まれて、暇をつぶす相手に困らない生活を送っていた。
それゆえ過去に囚われることもなく、未来のことも考えず、だからこそ生きている実感もないままに、ただただ楽しむだけの享楽的な日々を過ごしていた。
そんな日々が彼に出会って一変する。
自分をも凌ぐ美貌を持つだけでなく、スラリとした長身とスタイルの良さも傘にせず、御曹司であることも口重く言うほどの淑やかさを持ちながら、伏し目がちにおどおどとして、自信もなく気弱な男、久世透。
自分のような人間を相手にするレベルの人ではない。
そのはずが、なにやら友情以上の何かを感じてならない。
というか、自分の中にこれまで他人に抱いたことのない感情が見え隠れし始めている。
↓この作品は下記作品の改稿版です↓
【その溺愛は伝わりづらい!気弱なスパダリ御曹司にノンケの僕は落とされました】
https://www.alphapolis.co.jp/novel/962473946/33887994
主な改稿点は、コミカル度をあげたことと生田の視点に固定したこと、そしてキャラの受攻に関する部分です。
その他に新キャラを二人出したこと、エピソードや展開をいじりました。

実はαだった俺、逃げることにした。
るるらら
BL
俺はアルディウス。とある貴族の生まれだが今は冒険者として悠々自適に暮らす26歳!
実は俺には秘密があって、前世の記憶があるんだ。日本という島国で暮らす一般人(サラリーマン)だったよな。事故で死んでしまったけど、今は転生して自由気ままに生きている。
一人で生きるようになって数十年。過去の人間達とはすっかり縁も切れてこのまま独身を貫いて生きていくんだろうなと思っていた矢先、事件が起きたんだ!
前世持ち特級Sランク冒険者(α)とヤンデレストーカー化した幼馴染(α→Ω)の追いかけっ子ラブ?ストーリー。
!注意!
初のオメガバース作品。
ゆるゆる設定です。運命の番はおとぎ話のようなもので主人公が暮らす時代には存在しないとされています。
バースが突然変異した設定ですので、無理だと思われたらスッとページを閉じましょう。
!ごめんなさい!
幼馴染だった王子様の嘆き3 の前に
復活した俺に不穏な影1 を更新してしまいました!申し訳ありません。新たに更新しましたので確認してみてください!

我が家に子犬がやって来た!
もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。
アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。
だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。
この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。
※全102話で完結済。
★『小説家になろう』でも読めます★

不遇聖女様(男)は、国を捨てて闇落ちする覚悟を決めました!
ミクリ21
BL
聖女様(男)は、理不尽な不遇を受けていました。
その不遇は、聖女になった7歳から始まり、現在の15歳まで続きました。
しかし、聖女ラウロはとうとう国を捨てるようです。
何故なら、この世界の成人年齢は15歳だから。
聖女ラウロは、これからは闇落ちをして自由に生きるのだ!!(闇落ちは自称)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる