ロクイチ聖女 6分の1の確率で聖女になりました。第三部 第四部

濃子

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東堂の恋わずらい編

第18話 疑われた兵馬

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「ーー何の話?」

 笑顔が怖い。
 琉生斗は素直にそう思った。
 笑っているのに、嵐の前の静けさのような嫌な空気を感じる。


「ーー何でもないよな!」
 慌てて琉生斗は誤魔化すために兵馬の肩を叩いた。

「ルート」
 淡々とした口調でラルジュナが名を呼ぶ。
「あっ、」
 彼の目が笑っていない。


「アレクセイが一緒に散歩がしたいって言ってたよ」
「いやーー」
 圧もきつい。


 この空気の中、自分は親友を見捨てるのかーー。


「どうしたの?」
「う、うん……、兵馬も……」
 親友の腕をつかみ、行こうとするが、
「ヒョウマはボクといるよ」
 と、あっさり止められる。


「そ、そう……」


 ーー痛恨のミスだ。


 ふたりから離れながら、心臓の音がバクバクと鳴るのを琉生斗は感じた。


 ーー何もなくても、疑惑をもつような事言っちまったよな。おれは余計な事してーー。


 反省して振り向くと、そこに兵馬達はいなかった。

 どこかに転移したのだろう。


「ーーどうしよう」
 琉生斗は項垂れた。





「ーールート、どうした?」
「アレクーー」
 心配で迎えにきたアレクセイの腕の中に琉生斗は飛び込んだ。

「ーーおれはまた最低な事をした……。兵馬の事になると何でこうなんだろーー」
「何があった?」
「兵馬に兄貴にひどい事をされてないか聞いたんだ。ラルさんがいる事に気づかなくてーー」
「…………ラルジュナは?」
「おれに離れるように言って、気づいたら転移してたーー。どうしよう、こじれてないかな……」
「大丈夫だ。ラルジュナなら冷静さを欠くことはないだろう」


 ーーいや、それは違う。


 それは違うと思う。なぜだかはわからないが、彼からは冷静さを感じられなかった。

「……」
 自分に呆れ、ため息をつく。
 アレクセイの背にきつく腕をまわしながら、琉生斗は親友の身を案じた。


 案じるしかできないなんて、ごめん、兵馬ーー。













 オランジーの別荘に戻ると、ラルジュナは魔法でユーリを眠らせた。
「あまりやると効かなくなるから今だけね」

 ふふっ、と笑いながら兵馬をソファーに座らせる。
「ーージュナ、あのね」
 自身も隣りに腰をかけ、兵馬の強張った頬を優しく撫でた。


「言わなくていいよ」
「えっ?」
「ーー記憶を読むから」
「あっーー」
 兵馬の目が大きく開かれる。

「見られて困るものがあるの?」
「…………」
 ぶつかった視線を先にそらしたのは兵馬だ。眉をしかめて、困惑したような表情になる。

「……あるんだ」
「ないよーー、でもーー、、、」 
 首を振った兵馬を強い力で抱きしめ、じっと目を見つめた。

 視線が下にぶれる、罪悪感かーー。

「わかったーー」
 押し倒して、ラルジュナは額をくっつける。

 彼の記憶を自分の頭に流し、見たい部分でとめてーー……。






 あらわれたのは、琉生斗に似た美青年だ。


 ーーこいつがルキアだな。顔は似てるけど、ルートより完全に危ない目をしてる。







ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 いつも最後まで読んでいただき、ありがとうございま~す😊

 琉生斗の兄弟は、姉の琉亜るあ、兄の琉生亜るきあ、そして、琉生斗です。漢字が一緒なのは、父親のるいさんがめんどくさかったからです。ひどい話ですね😩




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