ロクイチ聖女 6分の1の確率で聖女になりました。第三部 第四部

濃子

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東堂の恋わずらい編

第16話 スパダリはどこまでもスパダリです。

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 日差しはきついがカラッとした空気のため歩きやすい。育児中にずいぶんと、外に出るくせがついた兵馬だ。

 なんせ、ミルクでもお尻でも抱っこでもない場合は、外に行きたいユーリなので、夜中でもどれだけ連れて行ったかわからない。

 そんなときラルジュナは、必ず起きて付き合ってくれる。どれだけ起こさないように、そぉ~と動いても彼は起きてしまう。屋敷のまわりは衛兵が巡回しているから大丈夫、といっても無駄なのだ。


 次の日の事を考えると、仕事が詰まっているため申し訳ないと思うのだが、夜中のデートが嬉しいのも事実だったりする。






 涼しいところを探しながら、歩いてみるがやはり暑い。
「お外、気持ちいい?」
 日陰が欲しい。
「うーうー」
 ユーリは暑いだろうに楽しそうだ。

 自分達に気がついたらしく、ラルジュナが手を振ってくる。


「ジュナ。どこか涼しいところないかなー?」
 兵馬は声を張り尋ねる。邪魔をしないように自分達だけで行こうと思っているのだがーー。


「散歩ー?連れていってあげるー♡」
 笑顔でラルジュナが応じた。
「あっ、ありがとう」
 
 旦那が性格もスパダリで、幸せすぎて怖い、と兵馬は思う。




 
「アリョーシャ。ごめん、ちょっと抜けるねーー」
 友が家族の元へと走りだす。
「ああ」




 ラルジュナがユーリを抱きあげ、頬を擦り寄せる。幸せな友の顔が、アレクセイは嬉しくて仕方がない。

 幾度となく見るその姿に、自然に笑みがこぼれる。冬には自分もこうなるのかと思うと、変にくすぐったい気持ちだ。


「ーー父親、か……」
 見本がひどいが、どこも似たりよったりかもしれないーー。いや、他がどうこうよりも自分が築いていくものがどうであるか、それが大切だ。



 愛する妻と子(神竜だが)と仲睦まじい家庭を築くーー。幸せすぎて恐ろしいとはこの事だろう。
 










「ーー殿下ぁーー。治癒をお願いします」
「ああ。斬り方が荒いな」
「うぃーす……」

 引っ掻き傷だらけの東堂は、アレクセイに傷を治してもらうとすぐに飛び出していく。へこたれる事なくドラゴンに果敢に立ち向かっていく姿は、頼もしさしかない。

 彼は大隊長になれる器だ。魔法騎士団からだすのは正直惜しい事なのだが……。


「さて、どうしたものか……」

















「東堂に金を貸す?」
 帰宅したアレクセイから告げられた事に、琉生斗は目を丸くした。

「ああ。返して貰う気はないが」
「えーー?なんか、アスラーンさんの一人勝ちみたいだな」
 アレクセイが黒のマントを取りはずし騎士服を脱ぐ。琉生斗はその様子を食い入るように見ている。

 ガン見だーー。

 カッコよすぎて一瞬たりとも目が離せないーー。

「いや、どうだろうーー。アスラーンはトードゥと是が非でも結婚したがっているように見えるが……」
「ふうん。何でそこまであいつにこだわるんだろ」

 白シャツ姿のアレクセイに抱きつき、その胸に顔をうずめる。琉生斗の幸せな時間だ。

「それは私もわからないが、賠償金問題を解決すればあいつの思惑も少しはみえるかもしれない、とラルジュナが言うのでなーー」
 妻の髪をすきながら、アレクセイがキスに誘う。
「ラルさんでもわからないのか……」
 仲良しさんでもわからないとはーー。


「んっ、、」
 重ねたくちびるがすぐに熱くなる。自ら舌を突っ込み、アレクセイの舌と絡め合う。舌までもがお互いが好きでたまらないとピタリと吸い付き、離れるのを嫌がってしまう。

 ーー難儀な身体になったなぁ。

「ーーアレクぅーー、早く思いっきりしたいなーー」
 琉生斗は熱っぽい目で夫を見つめた。アレクセイが違う方向をむく。直視すれば理性が飛ぶ、ぶっ飛ぶだろう。

「ーールート、煽らないでくれ……」

 どうせ今日、連れて行かなかった事を拗ねているのだ。


「明日も行くのか?」
 少しぶーたれた愛らしい顔で琉生斗は聞く。
「ようやく斬れてきたからな。このまま仕上げたいところだ」
「やったー!明日は行ってもいいって!」
「ーーそうか」
 ふたりは顔を見合わせて微笑んだ。
「アレクーー、すっげぇ好き!」
「愛している、ルート……。また少し大きくなっているな」
 感慨深げにアレクセイが琉生斗のお腹に触れる。
「兵馬がさ、5ヶ月に入ったら動くのがわかるって言ってたんだー。どんな風に動くんだろ」
 不思議そうな顔で琉生斗は首を傾げた。

「ーー楽しみだな」
「ああ!」

 
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