ロクイチ聖女 6分の1の確率で聖女になりました。第三部 第四部

濃子

文字の大きさ
上 下
182 / 236
東堂の恋わずらい編

第16話 スパダリはどこまでもスパダリです。

しおりを挟む
 
 日差しはきついがカラッとした空気のため歩きやすい。育児中にずいぶんと、外に出るくせがついた兵馬だ。

 なんせ、ミルクでもお尻でも抱っこでもない場合は、外に行きたいユーリなので、夜中でもどれだけ連れて行ったかわからない。

 そんなときラルジュナは、必ず起きて付き合ってくれる。どれだけ起こさないように、そぉ~と動いても彼は起きてしまう。屋敷のまわりは衛兵が巡回しているから大丈夫、といっても無駄なのだ。


 次の日の事を考えると、仕事が詰まっているため申し訳ないと思うのだが、夜中のデートが嬉しいのも事実だったりする。






 涼しいところを探しながら、歩いてみるがやはり暑い。
「お外、気持ちいい?」
 日陰が欲しい。
「うーうー」
 ユーリは暑いだろうに楽しそうだ。

 自分達に気がついたらしく、ラルジュナが手を振ってくる。


「ジュナ。どこか涼しいところないかなー?」
 兵馬は声を張り尋ねる。邪魔をしないように自分達だけで行こうと思っているのだがーー。


「散歩ー?連れていってあげるー♡」
 笑顔でラルジュナが応じた。
「あっ、ありがとう」
 
 旦那が性格もスパダリで、幸せすぎて怖い、と兵馬は思う。




 
「アリョーシャ。ごめん、ちょっと抜けるねーー」
 友が家族の元へと走りだす。
「ああ」




 ラルジュナがユーリを抱きあげ、頬を擦り寄せる。幸せな友の顔が、アレクセイは嬉しくて仕方がない。

 幾度となく見るその姿に、自然に笑みがこぼれる。冬には自分もこうなるのかと思うと、変にくすぐったい気持ちだ。


「ーー父親、か……」
 見本がひどいが、どこも似たりよったりかもしれないーー。いや、他がどうこうよりも自分が築いていくものがどうであるか、それが大切だ。



 愛する妻と子(神竜だが)と仲睦まじい家庭を築くーー。幸せすぎて恐ろしいとはこの事だろう。
 










「ーー殿下ぁーー。治癒をお願いします」
「ああ。斬り方が荒いな」
「うぃーす……」

 引っ掻き傷だらけの東堂は、アレクセイに傷を治してもらうとすぐに飛び出していく。へこたれる事なくドラゴンに果敢に立ち向かっていく姿は、頼もしさしかない。

 彼は大隊長になれる器だ。魔法騎士団からだすのは正直惜しい事なのだが……。


「さて、どうしたものか……」

















「東堂に金を貸す?」
 帰宅したアレクセイから告げられた事に、琉生斗は目を丸くした。

「ああ。返して貰う気はないが」
「えーー?なんか、アスラーンさんの一人勝ちみたいだな」
 アレクセイが黒のマントを取りはずし騎士服を脱ぐ。琉生斗はその様子を食い入るように見ている。

 ガン見だーー。

 カッコよすぎて一瞬たりとも目が離せないーー。

「いや、どうだろうーー。アスラーンはトードゥと是が非でも結婚したがっているように見えるが……」
「ふうん。何でそこまであいつにこだわるんだろ」

 白シャツ姿のアレクセイに抱きつき、その胸に顔をうずめる。琉生斗の幸せな時間だ。

「それは私もわからないが、賠償金問題を解決すればあいつの思惑も少しはみえるかもしれない、とラルジュナが言うのでなーー」
 妻の髪をすきながら、アレクセイがキスに誘う。
「ラルさんでもわからないのか……」
 仲良しさんでもわからないとはーー。


「んっ、、」
 重ねたくちびるがすぐに熱くなる。自ら舌を突っ込み、アレクセイの舌と絡め合う。舌までもがお互いが好きでたまらないとピタリと吸い付き、離れるのを嫌がってしまう。

 ーー難儀な身体になったなぁ。

「ーーアレクぅーー、早く思いっきりしたいなーー」
 琉生斗は熱っぽい目で夫を見つめた。アレクセイが違う方向をむく。直視すれば理性が飛ぶ、ぶっ飛ぶだろう。

「ーールート、煽らないでくれ……」

 どうせ今日、連れて行かなかった事を拗ねているのだ。


「明日も行くのか?」
 少しぶーたれた愛らしい顔で琉生斗は聞く。
「ようやく斬れてきたからな。このまま仕上げたいところだ」
「やったー!明日は行ってもいいって!」
「ーーそうか」
 ふたりは顔を見合わせて微笑んだ。
「アレクーー、すっげぇ好き!」
「愛している、ルート……。また少し大きくなっているな」
 感慨深げにアレクセイが琉生斗のお腹に触れる。
「兵馬がさ、5ヶ月に入ったら動くのがわかるって言ってたんだー。どんな風に動くんだろ」
 不思議そうな顔で琉生斗は首を傾げた。

「ーー楽しみだな」
「ああ!」

 
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された僕は過保護な王太子殿下とドS級冒険者に溺愛されながら召喚士としての新しい人生を歩みます

八神紫音
BL
「嫌ですわ、こんななよなよした男が夫になるなんて。お父様、わたくしこの男とは婚約破棄致しますわ」  ハプソン男爵家の養子である僕、ルカは、エトワール伯爵家のアンネリーゼお嬢様から婚約破棄を言い渡される。更に自分の屋敷に戻った僕に待っていたのは、ハプソン家からの追放だった。  でも、何もかもから捨てられてしまったと言う事は、自由になったと言うこと。僕、解放されたんだ!  一旦かつて育った孤児院に戻ってゆっくり考える事にするのだけれど、その孤児院で王太子殿下から僕の本当の出生を聞かされて、ドSなS級冒険者を護衛に付けて、僕は城下町を旅立った。

悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)

【完結】ここで会ったが、十年目。

N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化) 我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。 (追記5/14 : お互いぶん回してますね。) Special thanks illustration by おのつく 様 X(旧Twitter) @__oc_t ※ご都合主義です。あしからず。 ※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。 ※◎は視点が変わります。

不遇聖女様(男)は、国を捨てて闇落ちする覚悟を決めました!

ミクリ21
BL
聖女様(男)は、理不尽な不遇を受けていました。 その不遇は、聖女になった7歳から始まり、現在の15歳まで続きました。 しかし、聖女ラウロはとうとう国を捨てるようです。 何故なら、この世界の成人年齢は15歳だから。 聖女ラウロは、これからは闇落ちをして自由に生きるのだ!!(闇落ちは自称)

実はαだった俺、逃げることにした。

るるらら
BL
 俺はアルディウス。とある貴族の生まれだが今は冒険者として悠々自適に暮らす26歳!  実は俺には秘密があって、前世の記憶があるんだ。日本という島国で暮らす一般人(サラリーマン)だったよな。事故で死んでしまったけど、今は転生して自由気ままに生きている。  一人で生きるようになって数十年。過去の人間達とはすっかり縁も切れてこのまま独身を貫いて生きていくんだろうなと思っていた矢先、事件が起きたんだ!  前世持ち特級Sランク冒険者(α)とヤンデレストーカー化した幼馴染(α→Ω)の追いかけっ子ラブ?ストーリー。 !注意! 初のオメガバース作品。 ゆるゆる設定です。運命の番はおとぎ話のようなもので主人公が暮らす時代には存在しないとされています。 バースが突然変異した設定ですので、無理だと思われたらスッとページを閉じましょう。 !ごめんなさい! 幼馴染だった王子様の嘆き3 の前に 復活した俺に不穏な影1 を更新してしまいました!申し訳ありません。新たに更新しましたので確認してみてください!

繋がれた絆はどこまでも

mahiro
BL
生存率の低いベイリー家。 そんな家に生まれたライトは、次期当主はお前であるのだと父親である国王は言った。 ただし、それは公表せず表では双子の弟であるメイソンが次期当主であるのだと公表するのだという。 当主交代となるそのとき、正式にライトが当主であるのだと公表するのだとか。 それまでは国を離れ、当主となるべく教育を受けてくるようにと指示をされ、国を出ることになったライト。 次期当主が発表される数週間前、ライトはお忍びで国を訪れ、屋敷を訪れた。 そこは昔と大きく異なり、明るく温かな空気が流れていた。 その事に疑問を抱きつつも中へ中へと突き進めば、メイソンと従者であるイザヤが突然抱き合ったのだ。 それを見たライトは、ある決意をし……?

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

処理中です...