182 / 235
東堂の恋わずらい編
第16話 スパダリはどこまでもスパダリです。
しおりを挟む日差しはきついがカラッとした空気のため歩きやすい。育児中にずいぶんと、外に出るくせがついた兵馬だ。
なんせ、ミルクでもお尻でも抱っこでもない場合は、外に行きたいユーリなので、夜中でもどれだけ連れて行ったかわからない。
そんなときラルジュナは、必ず起きて付き合ってくれる。どれだけ起こさないように、そぉ~と動いても彼は起きてしまう。屋敷のまわりは衛兵が巡回しているから大丈夫、といっても無駄なのだ。
次の日の事を考えると、仕事が詰まっているため申し訳ないと思うのだが、夜中のデートが嬉しいのも事実だったりする。
涼しいところを探しながら、歩いてみるがやはり暑い。
「お外、気持ちいい?」
日陰が欲しい。
「うーうー」
ユーリは暑いだろうに楽しそうだ。
自分達に気がついたらしく、ラルジュナが手を振ってくる。
「ジュナ。どこか涼しいところないかなー?」
兵馬は声を張り尋ねる。邪魔をしないように自分達だけで行こうと思っているのだがーー。
「散歩ー?連れていってあげるー♡」
笑顔でラルジュナが応じた。
「あっ、ありがとう」
旦那が性格もスパダリで、幸せすぎて怖い、と兵馬は思う。
「アリョーシャ。ごめん、ちょっと抜けるねーー」
友が家族の元へと走りだす。
「ああ」
ラルジュナがユーリを抱きあげ、頬を擦り寄せる。幸せな友の顔が、アレクセイは嬉しくて仕方がない。
幾度となく見るその姿に、自然に笑みがこぼれる。冬には自分もこうなるのかと思うと、変にくすぐったい気持ちだ。
「ーー父親、か……」
見本がひどいが、どこも似たりよったりかもしれないーー。いや、他がどうこうよりも自分が築いていくものがどうであるか、それが大切だ。
愛する妻と子(神竜だが)と仲睦まじい家庭を築くーー。幸せすぎて恐ろしいとはこの事だろう。
「ーー殿下ぁーー。治癒をお願いします」
「ああ。斬り方が荒いな」
「うぃーす……」
引っ掻き傷だらけの東堂は、アレクセイに傷を治してもらうとすぐに飛び出していく。へこたれる事なくドラゴンに果敢に立ち向かっていく姿は、頼もしさしかない。
彼は大隊長になれる器だ。魔法騎士団からだすのは正直惜しい事なのだが……。
「さて、どうしたものか……」
「東堂に金を貸す?」
帰宅したアレクセイから告げられた事に、琉生斗は目を丸くした。
「ああ。返して貰う気はないが」
「えーー?なんか、アスラーンさんの一人勝ちみたいだな」
アレクセイが黒のマントを取りはずし騎士服を脱ぐ。琉生斗はその様子を食い入るように見ている。
ガン見だーー。
カッコよすぎて一瞬たりとも目が離せないーー。
「いや、どうだろうーー。アスラーンはトードゥと是が非でも結婚したがっているように見えるが……」
「ふうん。何でそこまであいつにこだわるんだろ」
白シャツ姿のアレクセイに抱きつき、その胸に顔をうずめる。琉生斗の幸せな時間だ。
「それは私もわからないが、賠償金問題を解決すればあいつの思惑も少しはみえるかもしれない、とラルジュナが言うのでなーー」
妻の髪をすきながら、アレクセイがキスに誘う。
「ラルさんでもわからないのか……」
仲良しさんでもわからないとはーー。
「んっ、、」
重ねたくちびるがすぐに熱くなる。自ら舌を突っ込み、アレクセイの舌と絡め合う。舌までもがお互いが好きでたまらないとピタリと吸い付き、離れるのを嫌がってしまう。
ーー難儀な身体になったなぁ。
「ーーアレクぅーー、早く思いっきりしたいなーー」
琉生斗は熱っぽい目で夫を見つめた。アレクセイが違う方向をむく。直視すれば理性が飛ぶ、ぶっ飛ぶだろう。
「ーールート、煽らないでくれ……」
どうせ今日、連れて行かなかった事を拗ねているのだ。
「明日も行くのか?」
少しぶーたれた愛らしい顔で琉生斗は聞く。
「ようやく斬れてきたからな。このまま仕上げたいところだ」
「やったー!明日は行ってもいいって!」
「ーーそうか」
ふたりは顔を見合わせて微笑んだ。
「アレクーー、すっげぇ好き!」
「愛している、ルート……。また少し大きくなっているな」
感慨深げにアレクセイが琉生斗のお腹に触れる。
「兵馬がさ、5ヶ月に入ったら動くのがわかるって言ってたんだー。どんな風に動くんだろ」
不思議そうな顔で琉生斗は首を傾げた。
「ーー楽しみだな」
「ああ!」
62
お気に入りに追加
76
あなたにおすすめの小説

美形×平凡のBLゲームに転生した平凡騎士の俺?!
元森
BL
「嘘…俺、平凡受け…?!」
ある日、ソーシード王国の騎士であるアレク・シールド 28歳は、前世の記憶を思い出す。それはここがBLゲーム『ナイトオブナイト』で美形×平凡しか存在しない世界であること―――。そして自分は主人公の友人であるモブであるということを。そしてゲームのマスコットキャラクター:セーブたんが出てきて『キミを最強の受けにする』と言い出して―――?!
隠し攻略キャラ(俺様ヤンデレ美形攻め)×気高い平凡騎士受けのハチャメチャ転生騎士ライフ!
【完結】ここで会ったが、十年目。
N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化)
我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。
(追記5/14 : お互いぶん回してますね。)
Special thanks
illustration by おのつく 様
X(旧Twitter) @__oc_t
※ご都合主義です。あしからず。
※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。
※◎は視点が変わります。
悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
*
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)

繋がれた絆はどこまでも
mahiro
BL
生存率の低いベイリー家。
そんな家に生まれたライトは、次期当主はお前であるのだと父親である国王は言った。
ただし、それは公表せず表では双子の弟であるメイソンが次期当主であるのだと公表するのだという。
当主交代となるそのとき、正式にライトが当主であるのだと公表するのだとか。
それまでは国を離れ、当主となるべく教育を受けてくるようにと指示をされ、国を出ることになったライト。
次期当主が発表される数週間前、ライトはお忍びで国を訪れ、屋敷を訪れた。
そこは昔と大きく異なり、明るく温かな空気が流れていた。
その事に疑問を抱きつつも中へ中へと突き進めば、メイソンと従者であるイザヤが突然抱き合ったのだ。
それを見たライトは、ある決意をし……?
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。

我が家に子犬がやって来た!
もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。
アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。
だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。
この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。
※全102話で完結済。
★『小説家になろう』でも読めます★
僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました
楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。
ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。
喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。
「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」
契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。
エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。

結婚式当日に「ちょっと待った」されたので、転生特典(執事)と旅に出たい
オオトリ
BL
とある教会で、今日一組の若い男女が結婚式を挙げようとしていた。
今、まさに新郎新婦が手を取り合おうとしたその時―――
「ちょっと待ったー!」
乱入者の声が響き渡った。
これは、とある事情で異世界転生した主人公が、結婚式当日に「ちょっと待った」されたので、
白米を求めて 俺TUEEEEせずに、執事TUEEEEな旅に出たい
そんなお話
※主人公は当初女性と婚約しています(タイトルの通り)
※主人公ではない部分で、男女の恋愛がお話に絡んでくることがあります
※BLは読むことも初心者の作者の初作品なので、タグ付けなど必要があれば教えてください
※完結しておりますが、今後番外編及び小話、続編をいずれ追加して参りたいと思っています
※小説家になろうさんでも同時公開中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる