180 / 236
東堂の恋わずらい編
第14話 Bも捨てがたいーー
しおりを挟む
一方、東堂はヤーシャル島で竜殺しの特訓真っ最中だった。そして、現在、いままでのどの場面よりも死ぬかもしれないと思っている。
ガンッ!
「おまえ、やる気あんのかーー」
長い足で東堂は胸を押さえ込まれた。
「あ、あります!」
「ひとの話聞く耳あんのか?突っ込む前にドラゴンと目を合わすんだよ!何回言えばわかんだよ!?」
「すんません!」
「すみませんだよ、バカ!」
ラルジュナに蹴られ、東堂は転がりながらドラゴンの前に放りだされる。
青いドラゴンが欠伸をし、東堂など気にする様子もない。
「そんなんだから舐められるんだろ」
「は、はいーー」
ーーキャラ変わりすぎだろ。何だよこのひと。
その様子を遠くで見ているのは兵馬とユーリだ。兵馬は鼻血でも吹きそうなぐらい、うっとりとした顔になっている。
ーーこれが、兵馬のツボか。優等生はヤンキーが好きだよな。
「向こうも目を見りゃ強さがわかんだから、こっちも気合いで負けんじゃねえよ」
ヤンキー風な王子だな、と東堂は感じた。育ちが良すぎて完全には無理なのだろう。
「うすっ!」
ドラゴンの目をしっかりと真正面から睨みつける。ドラゴンがピクリと目を動かす。
そのまま、長い間睨み合う。
ドラゴンが前足をあげた。
ーー来るか!
東堂が刃が厚い豪剣を持ち上げる。聖剣がどれだけ軽いか、弛んでいたことを自覚させられる重さだ。
ーー普段は重い剣で訓練するべきだよな。
アレクセイもそうだと聞いていたのにーー、自分の甘さが嫌になる。
「あれ?」
ドラゴンは優雅に歩いて行ってしまった。
「あらー」
「殺る価値もねえみたいだな」
吐き捨てるように言い、ラルジュナが兵馬の元へと飛んで行った。
深く呼吸をし、気持ちを切り替える。
「よしっ!次行こう!」
「ヒョウマー、暑くないー?」
「全然だよ。あっ、殿下、お疲れ様」
「ああーー。どうだ?」
ユーリに虫避けクリームを塗っていた兵馬が、アレクセイに気づいた。
「あぅ、あぅ~」
外にいるだけでごきげんなユーリだ。
「アスラーンがずいぶん甘やかしたねー。聖剣使わせてたんだよー」
「それは、斬れないな」
「だめなの?」
「斬れるようになるまでは普通の剣で斬る。聖剣に頼ると斬り方が覚えられない」
「聖剣の力で斬れちゃうからか」
「そうー。物わかりが悪いから蹴っ飛ばしてきちゃったー♡」
「ラルジュナBでか」
「ふふふっ、懐かしいー」
「ん?もしかして血液型の話?」
兵馬が目を丸くする。
「そうそうー。二重人格だって言われてねー、ラルジュナAとラルジュナBってあだ名がついたんだよー」
「えっー!ジュナABなの?僕もだよ」
「ホントー!って前に身体調べたときにわかってるけどねー」
「へぇー、相性いいんすね」
靴紐が切れて戻ってきた東堂が、アレクセイを見て頭をかいた。
「相性?」
「血液型占いだよ。殿下ってO型でしょ?ルートがA型だから相性ばっちりだね!」
「ーーそうか」
微笑むアレクセイは本当に嬉しそうだ。
O型ーー?、と首を傾げて東堂がアレクセイを見る。自分が知ってるO型とはかけ離れているようなーー(じゃあ何だと言われると困るけど)。
「占いになるんだねー」
「誕生日関係が多いっすよ。星座とか動物とかーー」
「面白そうだねー。姉さんに教えてあげようー。トードォ君は何型なの?」
「あぁ、俺はO型っすーー」
その言葉に兵馬が軽く眉をあげた。
「ーーふにゃー」
ふにゃふにゃ動きながらユーリがもがいている。
「ユーリ、お腹空いたの?」
「ぷうー」
かわいいおならだった。
兵馬が休息所(ラルジュナがつくった)にユーリを寝かしに行くと、東堂は火を起こした。焚き火の前で3人のぐだくだな話がはじまる。
「ーー俺はどうしたらよかったんすか?結婚ってしなきゃダメなんすかね」
「トードォ君としては結婚なしで付き合いたかったのー?」
「急に結婚って言われても。そんな関係だったっけ?って感じっす」
「あっさりしてるねー。リルハンパパも必死なんだよー」
異世界人との間なら、男子が生まれやすいなんて聞くとねー。
「ーーユーリを見て、いける、って思っちゃったんだなー。これはもう、アスラーンにユーリを預けてたボクが悪いから、トードォ君にはできる限り協力するねー」
「すんません」
東堂の目が潤む。
「はぁ。でも、俺ちょっといいなあ、ってぐらいっすよー。そんな気持ちで身体が変わるんすかねー?しかも、別れたら向こうは子供の記憶失くすって。どうなるんですか?」
アレクセイとラルジュナは目を合わせた。
「ーー絶対にないなー」
「ああーー」
「へっ?」
「ううん。こっちの話」
自分達は絶対にないーー。
「そりゃあ、殿下とラルさんは一途っぽいけど、あのひとなんか他に興味ができればそっちに行くでしょ。わざわざ俺を巻き込まなくても、10人ぐらいと結婚すりゃいいのにー」
焚き火の火を見ていると心が落ち着いてくる。なんでだろう。
ーーそういえば、親父とキャンプに行くとき、必ず杉田のおじさんを誘ってたっけ。親父、案外純愛なひとなんだな。おっさんでも長く続くひとは続くのかもな。
ーー果たして、自分はどうなんだ?
「例えば婚約した場合、俺はどうなるんです?」
「軍にはいられない」
「婚約でも!?」
「そりゃ、未来の王太子妃様だからねー。お后教育ってヤツを叩き込まれるんだよー」
「じゃあ、やっぱりあの場は断るしかないじゃないっすか!」
「ああいう場合は、善処します、って言うんだよ」
「無理っしょ!」
「無理でも断定は避けるの。ーー賠償金きたの?」
「ああ、ーー50億だそうだ」
東堂は目を開いたまま気絶した。
ガンッ!
「おまえ、やる気あんのかーー」
長い足で東堂は胸を押さえ込まれた。
「あ、あります!」
「ひとの話聞く耳あんのか?突っ込む前にドラゴンと目を合わすんだよ!何回言えばわかんだよ!?」
「すんません!」
「すみませんだよ、バカ!」
ラルジュナに蹴られ、東堂は転がりながらドラゴンの前に放りだされる。
青いドラゴンが欠伸をし、東堂など気にする様子もない。
「そんなんだから舐められるんだろ」
「は、はいーー」
ーーキャラ変わりすぎだろ。何だよこのひと。
その様子を遠くで見ているのは兵馬とユーリだ。兵馬は鼻血でも吹きそうなぐらい、うっとりとした顔になっている。
ーーこれが、兵馬のツボか。優等生はヤンキーが好きだよな。
「向こうも目を見りゃ強さがわかんだから、こっちも気合いで負けんじゃねえよ」
ヤンキー風な王子だな、と東堂は感じた。育ちが良すぎて完全には無理なのだろう。
「うすっ!」
ドラゴンの目をしっかりと真正面から睨みつける。ドラゴンがピクリと目を動かす。
そのまま、長い間睨み合う。
ドラゴンが前足をあげた。
ーー来るか!
東堂が刃が厚い豪剣を持ち上げる。聖剣がどれだけ軽いか、弛んでいたことを自覚させられる重さだ。
ーー普段は重い剣で訓練するべきだよな。
アレクセイもそうだと聞いていたのにーー、自分の甘さが嫌になる。
「あれ?」
ドラゴンは優雅に歩いて行ってしまった。
「あらー」
「殺る価値もねえみたいだな」
吐き捨てるように言い、ラルジュナが兵馬の元へと飛んで行った。
深く呼吸をし、気持ちを切り替える。
「よしっ!次行こう!」
「ヒョウマー、暑くないー?」
「全然だよ。あっ、殿下、お疲れ様」
「ああーー。どうだ?」
ユーリに虫避けクリームを塗っていた兵馬が、アレクセイに気づいた。
「あぅ、あぅ~」
外にいるだけでごきげんなユーリだ。
「アスラーンがずいぶん甘やかしたねー。聖剣使わせてたんだよー」
「それは、斬れないな」
「だめなの?」
「斬れるようになるまでは普通の剣で斬る。聖剣に頼ると斬り方が覚えられない」
「聖剣の力で斬れちゃうからか」
「そうー。物わかりが悪いから蹴っ飛ばしてきちゃったー♡」
「ラルジュナBでか」
「ふふふっ、懐かしいー」
「ん?もしかして血液型の話?」
兵馬が目を丸くする。
「そうそうー。二重人格だって言われてねー、ラルジュナAとラルジュナBってあだ名がついたんだよー」
「えっー!ジュナABなの?僕もだよ」
「ホントー!って前に身体調べたときにわかってるけどねー」
「へぇー、相性いいんすね」
靴紐が切れて戻ってきた東堂が、アレクセイを見て頭をかいた。
「相性?」
「血液型占いだよ。殿下ってO型でしょ?ルートがA型だから相性ばっちりだね!」
「ーーそうか」
微笑むアレクセイは本当に嬉しそうだ。
O型ーー?、と首を傾げて東堂がアレクセイを見る。自分が知ってるO型とはかけ離れているようなーー(じゃあ何だと言われると困るけど)。
「占いになるんだねー」
「誕生日関係が多いっすよ。星座とか動物とかーー」
「面白そうだねー。姉さんに教えてあげようー。トードォ君は何型なの?」
「あぁ、俺はO型っすーー」
その言葉に兵馬が軽く眉をあげた。
「ーーふにゃー」
ふにゃふにゃ動きながらユーリがもがいている。
「ユーリ、お腹空いたの?」
「ぷうー」
かわいいおならだった。
兵馬が休息所(ラルジュナがつくった)にユーリを寝かしに行くと、東堂は火を起こした。焚き火の前で3人のぐだくだな話がはじまる。
「ーー俺はどうしたらよかったんすか?結婚ってしなきゃダメなんすかね」
「トードォ君としては結婚なしで付き合いたかったのー?」
「急に結婚って言われても。そんな関係だったっけ?って感じっす」
「あっさりしてるねー。リルハンパパも必死なんだよー」
異世界人との間なら、男子が生まれやすいなんて聞くとねー。
「ーーユーリを見て、いける、って思っちゃったんだなー。これはもう、アスラーンにユーリを預けてたボクが悪いから、トードォ君にはできる限り協力するねー」
「すんません」
東堂の目が潤む。
「はぁ。でも、俺ちょっといいなあ、ってぐらいっすよー。そんな気持ちで身体が変わるんすかねー?しかも、別れたら向こうは子供の記憶失くすって。どうなるんですか?」
アレクセイとラルジュナは目を合わせた。
「ーー絶対にないなー」
「ああーー」
「へっ?」
「ううん。こっちの話」
自分達は絶対にないーー。
「そりゃあ、殿下とラルさんは一途っぽいけど、あのひとなんか他に興味ができればそっちに行くでしょ。わざわざ俺を巻き込まなくても、10人ぐらいと結婚すりゃいいのにー」
焚き火の火を見ていると心が落ち着いてくる。なんでだろう。
ーーそういえば、親父とキャンプに行くとき、必ず杉田のおじさんを誘ってたっけ。親父、案外純愛なひとなんだな。おっさんでも長く続くひとは続くのかもな。
ーー果たして、自分はどうなんだ?
「例えば婚約した場合、俺はどうなるんです?」
「軍にはいられない」
「婚約でも!?」
「そりゃ、未来の王太子妃様だからねー。お后教育ってヤツを叩き込まれるんだよー」
「じゃあ、やっぱりあの場は断るしかないじゃないっすか!」
「ああいう場合は、善処します、って言うんだよ」
「無理っしょ!」
「無理でも断定は避けるの。ーー賠償金きたの?」
「ああ、ーー50億だそうだ」
東堂は目を開いたまま気絶した。
60
お気に入りに追加
76
あなたにおすすめの小説
悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
*
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
【完結】ここで会ったが、十年目。
N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化)
我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。
(追記5/14 : お互いぶん回してますね。)
Special thanks
illustration by おのつく 様
X(旧Twitter) @__oc_t
※ご都合主義です。あしからず。
※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。
※◎は視点が変わります。

不遇聖女様(男)は、国を捨てて闇落ちする覚悟を決めました!
ミクリ21
BL
聖女様(男)は、理不尽な不遇を受けていました。
その不遇は、聖女になった7歳から始まり、現在の15歳まで続きました。
しかし、聖女ラウロはとうとう国を捨てるようです。
何故なら、この世界の成人年齢は15歳だから。
聖女ラウロは、これからは闇落ちをして自由に生きるのだ!!(闇落ちは自称)

実はαだった俺、逃げることにした。
るるらら
BL
俺はアルディウス。とある貴族の生まれだが今は冒険者として悠々自適に暮らす26歳!
実は俺には秘密があって、前世の記憶があるんだ。日本という島国で暮らす一般人(サラリーマン)だったよな。事故で死んでしまったけど、今は転生して自由気ままに生きている。
一人で生きるようになって数十年。過去の人間達とはすっかり縁も切れてこのまま独身を貫いて生きていくんだろうなと思っていた矢先、事件が起きたんだ!
前世持ち特級Sランク冒険者(α)とヤンデレストーカー化した幼馴染(α→Ω)の追いかけっ子ラブ?ストーリー。
!注意!
初のオメガバース作品。
ゆるゆる設定です。運命の番はおとぎ話のようなもので主人公が暮らす時代には存在しないとされています。
バースが突然変異した設定ですので、無理だと思われたらスッとページを閉じましょう。
!ごめんなさい!
幼馴染だった王子様の嘆き3 の前に
復活した俺に不穏な影1 を更新してしまいました!申し訳ありません。新たに更新しましたので確認してみてください!

繋がれた絆はどこまでも
mahiro
BL
生存率の低いベイリー家。
そんな家に生まれたライトは、次期当主はお前であるのだと父親である国王は言った。
ただし、それは公表せず表では双子の弟であるメイソンが次期当主であるのだと公表するのだという。
当主交代となるそのとき、正式にライトが当主であるのだと公表するのだとか。
それまでは国を離れ、当主となるべく教育を受けてくるようにと指示をされ、国を出ることになったライト。
次期当主が発表される数週間前、ライトはお忍びで国を訪れ、屋敷を訪れた。
そこは昔と大きく異なり、明るく温かな空気が流れていた。
その事に疑問を抱きつつも中へ中へと突き進めば、メイソンと従者であるイザヤが突然抱き合ったのだ。
それを見たライトは、ある決意をし……?

我が家に子犬がやって来た!
もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。
アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。
だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。
この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。
※全102話で完結済。
★『小説家になろう』でも読めます★
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる