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東堂の恋わずらい編
第14話 Bも捨てがたいーー
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一方、東堂はヤーシャル島で竜殺しの特訓真っ最中だった。そして、現在、いままでのどの場面よりも死ぬかもしれないと思っている。
ガンッ!
「おまえ、やる気あんのかーー」
長い足で東堂は胸を押さえ込まれた。
「あ、あります!」
「ひとの話聞く耳あんのか?突っ込む前にドラゴンと目を合わすんだよ!何回言えばわかんだよ!?」
「すんません!」
「すみませんだよ、バカ!」
ラルジュナに蹴られ、東堂は転がりながらドラゴンの前に放りだされる。
青いドラゴンが欠伸をし、東堂など気にする様子もない。
「そんなんだから舐められるんだろ」
「は、はいーー」
ーーキャラ変わりすぎだろ。何だよこのひと。
その様子を遠くで見ているのは兵馬とユーリだ。兵馬は鼻血でも吹きそうなぐらい、うっとりとした顔になっている。
ーーこれが、兵馬のツボか。優等生はヤンキーが好きだよな。
「向こうも目を見りゃ強さがわかんだから、こっちも気合いで負けんじゃねえよ」
ヤンキー風な王子だな、と東堂は感じた。育ちが良すぎて完全には無理なのだろう。
「うすっ!」
ドラゴンの目をしっかりと真正面から睨みつける。ドラゴンがピクリと目を動かす。
そのまま、長い間睨み合う。
ドラゴンが前足をあげた。
ーー来るか!
東堂が刃が厚い豪剣を持ち上げる。聖剣がどれだけ軽いか、弛んでいたことを自覚させられる重さだ。
ーー普段は重い剣で訓練するべきだよな。
アレクセイもそうだと聞いていたのにーー、自分の甘さが嫌になる。
「あれ?」
ドラゴンは優雅に歩いて行ってしまった。
「あらー」
「殺る価値もねえみたいだな」
吐き捨てるように言い、ラルジュナが兵馬の元へと飛んで行った。
深く呼吸をし、気持ちを切り替える。
「よしっ!次行こう!」
「ヒョウマー、暑くないー?」
「全然だよ。あっ、殿下、お疲れ様」
「ああーー。どうだ?」
ユーリに虫避けクリームを塗っていた兵馬が、アレクセイに気づいた。
「あぅ、あぅ~」
外にいるだけでごきげんなユーリだ。
「アスラーンがずいぶん甘やかしたねー。聖剣使わせてたんだよー」
「それは、斬れないな」
「だめなの?」
「斬れるようになるまでは普通の剣で斬る。聖剣に頼ると斬り方が覚えられない」
「聖剣の力で斬れちゃうからか」
「そうー。物わかりが悪いから蹴っ飛ばしてきちゃったー♡」
「ラルジュナBでか」
「ふふふっ、懐かしいー」
「ん?もしかして血液型の話?」
兵馬が目を丸くする。
「そうそうー。二重人格だって言われてねー、ラルジュナAとラルジュナBってあだ名がついたんだよー」
「えっー!ジュナABなの?僕もだよ」
「ホントー!って前に身体調べたときにわかってるけどねー」
「へぇー、相性いいんすね」
靴紐が切れて戻ってきた東堂が、アレクセイを見て頭をかいた。
「相性?」
「血液型占いだよ。殿下ってO型でしょ?ルートがA型だから相性ばっちりだね!」
「ーーそうか」
微笑むアレクセイは本当に嬉しそうだ。
O型ーー?、と首を傾げて東堂がアレクセイを見る。自分が知ってるO型とはかけ離れているようなーー(じゃあ何だと言われると困るけど)。
「占いになるんだねー」
「誕生日関係が多いっすよ。星座とか動物とかーー」
「面白そうだねー。姉さんに教えてあげようー。トードォ君は何型なの?」
「あぁ、俺はO型っすーー」
その言葉に兵馬が軽く眉をあげた。
「ーーふにゃー」
ふにゃふにゃ動きながらユーリがもがいている。
「ユーリ、お腹空いたの?」
「ぷうー」
かわいいおならだった。
兵馬が休息所(ラルジュナがつくった)にユーリを寝かしに行くと、東堂は火を起こした。焚き火の前で3人のぐだくだな話がはじまる。
「ーー俺はどうしたらよかったんすか?結婚ってしなきゃダメなんすかね」
「トードォ君としては結婚なしで付き合いたかったのー?」
「急に結婚って言われても。そんな関係だったっけ?って感じっす」
「あっさりしてるねー。リルハンパパも必死なんだよー」
異世界人との間なら、男子が生まれやすいなんて聞くとねー。
「ーーユーリを見て、いける、って思っちゃったんだなー。これはもう、アスラーンにユーリを預けてたボクが悪いから、トードォ君にはできる限り協力するねー」
「すんません」
東堂の目が潤む。
「はぁ。でも、俺ちょっといいなあ、ってぐらいっすよー。そんな気持ちで身体が変わるんすかねー?しかも、別れたら向こうは子供の記憶失くすって。どうなるんですか?」
アレクセイとラルジュナは目を合わせた。
「ーー絶対にないなー」
「ああーー」
「へっ?」
「ううん。こっちの話」
自分達は絶対にないーー。
「そりゃあ、殿下とラルさんは一途っぽいけど、あのひとなんか他に興味ができればそっちに行くでしょ。わざわざ俺を巻き込まなくても、10人ぐらいと結婚すりゃいいのにー」
焚き火の火を見ていると心が落ち着いてくる。なんでだろう。
ーーそういえば、親父とキャンプに行くとき、必ず杉田のおじさんを誘ってたっけ。親父、案外純愛なひとなんだな。おっさんでも長く続くひとは続くのかもな。
ーー果たして、自分はどうなんだ?
「例えば婚約した場合、俺はどうなるんです?」
「軍にはいられない」
「婚約でも!?」
「そりゃ、未来の王太子妃様だからねー。お后教育ってヤツを叩き込まれるんだよー」
「じゃあ、やっぱりあの場は断るしかないじゃないっすか!」
「ああいう場合は、善処します、って言うんだよ」
「無理っしょ!」
「無理でも断定は避けるの。ーー賠償金きたの?」
「ああ、ーー50億だそうだ」
東堂は目を開いたまま気絶した。
ガンッ!
「おまえ、やる気あんのかーー」
長い足で東堂は胸を押さえ込まれた。
「あ、あります!」
「ひとの話聞く耳あんのか?突っ込む前にドラゴンと目を合わすんだよ!何回言えばわかんだよ!?」
「すんません!」
「すみませんだよ、バカ!」
ラルジュナに蹴られ、東堂は転がりながらドラゴンの前に放りだされる。
青いドラゴンが欠伸をし、東堂など気にする様子もない。
「そんなんだから舐められるんだろ」
「は、はいーー」
ーーキャラ変わりすぎだろ。何だよこのひと。
その様子を遠くで見ているのは兵馬とユーリだ。兵馬は鼻血でも吹きそうなぐらい、うっとりとした顔になっている。
ーーこれが、兵馬のツボか。優等生はヤンキーが好きだよな。
「向こうも目を見りゃ強さがわかんだから、こっちも気合いで負けんじゃねえよ」
ヤンキー風な王子だな、と東堂は感じた。育ちが良すぎて完全には無理なのだろう。
「うすっ!」
ドラゴンの目をしっかりと真正面から睨みつける。ドラゴンがピクリと目を動かす。
そのまま、長い間睨み合う。
ドラゴンが前足をあげた。
ーー来るか!
東堂が刃が厚い豪剣を持ち上げる。聖剣がどれだけ軽いか、弛んでいたことを自覚させられる重さだ。
ーー普段は重い剣で訓練するべきだよな。
アレクセイもそうだと聞いていたのにーー、自分の甘さが嫌になる。
「あれ?」
ドラゴンは優雅に歩いて行ってしまった。
「あらー」
「殺る価値もねえみたいだな」
吐き捨てるように言い、ラルジュナが兵馬の元へと飛んで行った。
深く呼吸をし、気持ちを切り替える。
「よしっ!次行こう!」
「ヒョウマー、暑くないー?」
「全然だよ。あっ、殿下、お疲れ様」
「ああーー。どうだ?」
ユーリに虫避けクリームを塗っていた兵馬が、アレクセイに気づいた。
「あぅ、あぅ~」
外にいるだけでごきげんなユーリだ。
「アスラーンがずいぶん甘やかしたねー。聖剣使わせてたんだよー」
「それは、斬れないな」
「だめなの?」
「斬れるようになるまでは普通の剣で斬る。聖剣に頼ると斬り方が覚えられない」
「聖剣の力で斬れちゃうからか」
「そうー。物わかりが悪いから蹴っ飛ばしてきちゃったー♡」
「ラルジュナBでか」
「ふふふっ、懐かしいー」
「ん?もしかして血液型の話?」
兵馬が目を丸くする。
「そうそうー。二重人格だって言われてねー、ラルジュナAとラルジュナBってあだ名がついたんだよー」
「えっー!ジュナABなの?僕もだよ」
「ホントー!って前に身体調べたときにわかってるけどねー」
「へぇー、相性いいんすね」
靴紐が切れて戻ってきた東堂が、アレクセイを見て頭をかいた。
「相性?」
「血液型占いだよ。殿下ってO型でしょ?ルートがA型だから相性ばっちりだね!」
「ーーそうか」
微笑むアレクセイは本当に嬉しそうだ。
O型ーー?、と首を傾げて東堂がアレクセイを見る。自分が知ってるO型とはかけ離れているようなーー(じゃあ何だと言われると困るけど)。
「占いになるんだねー」
「誕生日関係が多いっすよ。星座とか動物とかーー」
「面白そうだねー。姉さんに教えてあげようー。トードォ君は何型なの?」
「あぁ、俺はO型っすーー」
その言葉に兵馬が軽く眉をあげた。
「ーーふにゃー」
ふにゃふにゃ動きながらユーリがもがいている。
「ユーリ、お腹空いたの?」
「ぷうー」
かわいいおならだった。
兵馬が休息所(ラルジュナがつくった)にユーリを寝かしに行くと、東堂は火を起こした。焚き火の前で3人のぐだくだな話がはじまる。
「ーー俺はどうしたらよかったんすか?結婚ってしなきゃダメなんすかね」
「トードォ君としては結婚なしで付き合いたかったのー?」
「急に結婚って言われても。そんな関係だったっけ?って感じっす」
「あっさりしてるねー。リルハンパパも必死なんだよー」
異世界人との間なら、男子が生まれやすいなんて聞くとねー。
「ーーユーリを見て、いける、って思っちゃったんだなー。これはもう、アスラーンにユーリを預けてたボクが悪いから、トードォ君にはできる限り協力するねー」
「すんません」
東堂の目が潤む。
「はぁ。でも、俺ちょっといいなあ、ってぐらいっすよー。そんな気持ちで身体が変わるんすかねー?しかも、別れたら向こうは子供の記憶失くすって。どうなるんですか?」
アレクセイとラルジュナは目を合わせた。
「ーー絶対にないなー」
「ああーー」
「へっ?」
「ううん。こっちの話」
自分達は絶対にないーー。
「そりゃあ、殿下とラルさんは一途っぽいけど、あのひとなんか他に興味ができればそっちに行くでしょ。わざわざ俺を巻き込まなくても、10人ぐらいと結婚すりゃいいのにー」
焚き火の火を見ていると心が落ち着いてくる。なんでだろう。
ーーそういえば、親父とキャンプに行くとき、必ず杉田のおじさんを誘ってたっけ。親父、案外純愛なひとなんだな。おっさんでも長く続くひとは続くのかもな。
ーー果たして、自分はどうなんだ?
「例えば婚約した場合、俺はどうなるんです?」
「軍にはいられない」
「婚約でも!?」
「そりゃ、未来の王太子妃様だからねー。お后教育ってヤツを叩き込まれるんだよー」
「じゃあ、やっぱりあの場は断るしかないじゃないっすか!」
「ああいう場合は、善処します、って言うんだよ」
「無理っしょ!」
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東堂は目を開いたまま気絶した。
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