177 / 236
東堂の恋わずらい編
第12話 東堂は邪魔をしない ☆
しおりを挟む「おはよう、ヒョウマー」
旦那様の寝起きの色っぽい掠れ声に、気を失いかける兵馬だ。落としかけた哺乳瓶をしっかりと握りしめる。
「早いね、ジュナ」
ユーリの夜の睡眠がまとまってきて、少し楽になってきたが、まだまだ寝不足は解消できそうにない。
そう思うと自分の母親は、はじめての育児が双子だ。父は何もやってこなかったと聞いた事がある。考えれば気を失うほど大変だったに違いない。
「彼はもっと早いねー」
日が昇る前から砂浜を走る青年がいる。
東堂だ。
一心不乱に走りにくい砂の上を身体を揺らさずに走っていく。
「ーーねえ、トードォ君てさ……」
「うん……」
兵馬は言葉を塞ぐようにラルジュナの唇にキスをした。そのままラルジュナが深く唇を重ねていく。
「んっ、ん」
チュッ、チュッ、とカワイイ音から、ぴちゃ、ぴちゃんと口からの音が聞こえるキスへと変わる。
「ーーふっ、ジュナ……」
「眠い?」
「大丈夫……」
答えを聞いてラルジュナが兵馬を抱えてソファーに腰かけた。膝の上に妻を乗せて服を脱がせていく。
「ーー東堂帰って来ないかな……」
「結界を張ってればわかるよー」
兵馬がラルジュナの首にしっかりと腕をまわし、下から突き上げてくる自分のモノを後孔で受けとめる。
「あっ、あんっ~~!あんっ~~!ああっ~~~!」
色っぽい嬌声に、ラルジュナは目を細めて笑う。
「キミはカワイ過ぎるよ」
やらしいし、と耳元で囁く。
「ふっ」
耳が感じるのか真っ赤になる。両足をしっかりと持ち上げ、深い部分を何度も突いた。
「ーーあっ、あっ、あっ、あんっ、ーーっあぁんっ!!」
激しく身体を震わせ、兵馬の身体から力が抜ける。
「ーーありがとー、少しでも寝ててねー」
兵馬がこくん、と頷いた。
本音を言えばもっとしたいが無理は禁物。
ぐったりしている兵馬を寝室に運び、横たえる。キスをしてラルジュナはすぐに離れた。長くしてしまうと、また行為がはじまってしまうからだ。
「ーーカワイイ」
家の中では眼鏡をかけなくても見えるそうだが、外ではしっかりかけてもらわないと、絶対に変なのが寄ってくる。
それにしても、可愛くて愛しい存在がふたつもあるとはーー。自分にそんな幸運が訪れるとは、数年前までは思いもしなかった。
ベビーベッドですやすや寝ているユーリに近づき、起こさないように頬に触れる。こんなに柔らかいものは他にはない、と思うほどぷにぷにとしたほっぺだ。
「食べたくなるほどカワイイ、ってこういう気持ちなんだねー」
しかし、寝てるときに起こしたくなるのはダメだねーー。泣いてると、早く寝て、って思うけどーー。
強大国の王子として生まれたが、自分の望みはわりとシンプルだ。
好きなひとと暮らしたい、そのひとを幸せにしたい。そのひとを取り巻く環境も幸せにしたいーー、そんなものだ。
だからこそ、彼の事を何とかしてやらねば、と思うわけなのだがーー。
「はよー、トードォ君ー」
「うすっ!」
汗を手で飛ばし聖剣を下ろすと、東堂はラルジュナに頭を下げた。
「頭なんか下げないでよー、ただの友達の旦那なんだからー」
気さくな笑顔に東堂は目を丸くする。
「……うすっ」
「今日はパラダイス島の近くにあるヤーシャル島に行ってみようかー。あそこのギルドに登録すれば、ドラゴンが斬り放題だよー」
斬り放題ーー。そんな野菜詰め放題みたいに簡単に言われてもな。
「はいっ!」
「マスタークラスは斬れそうなの?」
「まだまだです。ノーマルで50ぐらいでーー」
「そうだねー、100を超えるとコツみたいなのが身につくんだけどねー」
「100ーー、あ、……70って聞きましたけど……」
「聖剣があるからでしょ?無しでは斬れない?」
「ーーはい」
髪をかきあげながらラルジュナが言う。
「ーー聖剣ありきの考えは怖いよ。まずは普通の剣で斬れるようにならないと」
「ーー魔法で剣の強化をかけながらですか?」
東堂の言葉にラルジュナが目を瞬いた。
「普通の剣だ」
「斬れるんですか!?」
「豪剣を使う。あいつ、基礎を飛ばしてるなー。教え方雑なんだからー」
ラルジュナが空中から剣を取り出した。それを東堂に渡す。東堂は聖剣を魔法で消してから、豪剣を受け取り、、、。
「ぎゃっ、重い!」
「ドラゴンの身体が固定して見えるようになったら、喉元をパンっ、て斬るんだよー」
「固定……」
「とまって見えるんだよー」
結構動くよなー、巨大なくせにーー。
と、考える東堂を気にもせずにラルジュナが言った。
「ヒョウマ、ソラリス大神殿に送ってくるから、用意してねー」
「はいっ!お願いします!」
53
お気に入りに追加
76
あなたにおすすめの小説
悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
*
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
【完結】ここで会ったが、十年目。
N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化)
我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。
(追記5/14 : お互いぶん回してますね。)
Special thanks
illustration by おのつく 様
X(旧Twitter) @__oc_t
※ご都合主義です。あしからず。
※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。
※◎は視点が変わります。

不遇聖女様(男)は、国を捨てて闇落ちする覚悟を決めました!
ミクリ21
BL
聖女様(男)は、理不尽な不遇を受けていました。
その不遇は、聖女になった7歳から始まり、現在の15歳まで続きました。
しかし、聖女ラウロはとうとう国を捨てるようです。
何故なら、この世界の成人年齢は15歳だから。
聖女ラウロは、これからは闇落ちをして自由に生きるのだ!!(闇落ちは自称)
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

実はαだった俺、逃げることにした。
るるらら
BL
俺はアルディウス。とある貴族の生まれだが今は冒険者として悠々自適に暮らす26歳!
実は俺には秘密があって、前世の記憶があるんだ。日本という島国で暮らす一般人(サラリーマン)だったよな。事故で死んでしまったけど、今は転生して自由気ままに生きている。
一人で生きるようになって数十年。過去の人間達とはすっかり縁も切れてこのまま独身を貫いて生きていくんだろうなと思っていた矢先、事件が起きたんだ!
前世持ち特級Sランク冒険者(α)とヤンデレストーカー化した幼馴染(α→Ω)の追いかけっ子ラブ?ストーリー。
!注意!
初のオメガバース作品。
ゆるゆる設定です。運命の番はおとぎ話のようなもので主人公が暮らす時代には存在しないとされています。
バースが突然変異した設定ですので、無理だと思われたらスッとページを閉じましょう。
!ごめんなさい!
幼馴染だった王子様の嘆き3 の前に
復活した俺に不穏な影1 を更新してしまいました!申し訳ありません。新たに更新しましたので確認してみてください!

我が家に子犬がやって来た!
もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。
アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。
だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。
この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。
※全102話で完結済。
★『小説家になろう』でも読めます★

繋がれた絆はどこまでも
mahiro
BL
生存率の低いベイリー家。
そんな家に生まれたライトは、次期当主はお前であるのだと父親である国王は言った。
ただし、それは公表せず表では双子の弟であるメイソンが次期当主であるのだと公表するのだという。
当主交代となるそのとき、正式にライトが当主であるのだと公表するのだとか。
それまでは国を離れ、当主となるべく教育を受けてくるようにと指示をされ、国を出ることになったライト。
次期当主が発表される数週間前、ライトはお忍びで国を訪れ、屋敷を訪れた。
そこは昔と大きく異なり、明るく温かな空気が流れていた。
その事に疑問を抱きつつも中へ中へと突き進めば、メイソンと従者であるイザヤが突然抱き合ったのだ。
それを見たライトは、ある決意をし……?
推しの為なら悪役令息になるのは大歓迎です!
こうらい ゆあ
BL
「モブレッド・アテウーマ、貴様との婚約を破棄する!」王太子の宣言で始まった待ちに待った断罪イベント!悪役令息であるモブレッドはこの日を心待ちにしていた。すべては推しである主人公ユレイユの幸せのため!推しの幸せを願い、日夜フラグを必死に回収していくモブレッド。ところが、予想外の展開が待っていて…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる