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東堂の恋わずらい編
第12話 東堂は邪魔をしない ☆
しおりを挟む「おはよう、ヒョウマー」
旦那様の寝起きの色っぽい掠れ声に、気を失いかける兵馬だ。落としかけた哺乳瓶をしっかりと握りしめる。
「早いね、ジュナ」
ユーリの夜の睡眠がまとまってきて、少し楽になってきたが、まだまだ寝不足は解消できそうにない。
そう思うと自分の母親は、はじめての育児が双子だ。父は何もやってこなかったと聞いた事がある。考えれば気を失うほど大変だったに違いない。
「彼はもっと早いねー」
日が昇る前から砂浜を走る青年がいる。
東堂だ。
一心不乱に走りにくい砂の上を身体を揺らさずに走っていく。
「ーーねえ、トードォ君てさ……」
「うん……」
兵馬は言葉を塞ぐようにラルジュナの唇にキスをした。そのままラルジュナが深く唇を重ねていく。
「んっ、ん」
チュッ、チュッ、とカワイイ音から、ぴちゃ、ぴちゃんと口からの音が聞こえるキスへと変わる。
「ーーふっ、ジュナ……」
「眠い?」
「大丈夫……」
答えを聞いてラルジュナが兵馬を抱えてソファーに腰かけた。膝の上に妻を乗せて服を脱がせていく。
「ーー東堂帰って来ないかな……」
「結界を張ってればわかるよー」
兵馬がラルジュナの首にしっかりと腕をまわし、下から突き上げてくる自分のモノを後孔で受けとめる。
「あっ、あんっ~~!あんっ~~!ああっ~~~!」
色っぽい嬌声に、ラルジュナは目を細めて笑う。
「キミはカワイ過ぎるよ」
やらしいし、と耳元で囁く。
「ふっ」
耳が感じるのか真っ赤になる。両足をしっかりと持ち上げ、深い部分を何度も突いた。
「ーーあっ、あっ、あっ、あんっ、ーーっあぁんっ!!」
激しく身体を震わせ、兵馬の身体から力が抜ける。
「ーーありがとー、少しでも寝ててねー」
兵馬がこくん、と頷いた。
本音を言えばもっとしたいが無理は禁物。
ぐったりしている兵馬を寝室に運び、横たえる。キスをしてラルジュナはすぐに離れた。長くしてしまうと、また行為がはじまってしまうからだ。
「ーーカワイイ」
家の中では眼鏡をかけなくても見えるそうだが、外ではしっかりかけてもらわないと、絶対に変なのが寄ってくる。
それにしても、可愛くて愛しい存在がふたつもあるとはーー。自分にそんな幸運が訪れるとは、数年前までは思いもしなかった。
ベビーベッドですやすや寝ているユーリに近づき、起こさないように頬に触れる。こんなに柔らかいものは他にはない、と思うほどぷにぷにとしたほっぺだ。
「食べたくなるほどカワイイ、ってこういう気持ちなんだねー」
しかし、寝てるときに起こしたくなるのはダメだねーー。泣いてると、早く寝て、って思うけどーー。
強大国の王子として生まれたが、自分の望みはわりとシンプルだ。
好きなひとと暮らしたい、そのひとを幸せにしたい。そのひとを取り巻く環境も幸せにしたいーー、そんなものだ。
だからこそ、彼の事を何とかしてやらねば、と思うわけなのだがーー。
「はよー、トードォ君ー」
「うすっ!」
汗を手で飛ばし聖剣を下ろすと、東堂はラルジュナに頭を下げた。
「頭なんか下げないでよー、ただの友達の旦那なんだからー」
気さくな笑顔に東堂は目を丸くする。
「……うすっ」
「今日はパラダイス島の近くにあるヤーシャル島に行ってみようかー。あそこのギルドに登録すれば、ドラゴンが斬り放題だよー」
斬り放題ーー。そんな野菜詰め放題みたいに簡単に言われてもな。
「はいっ!」
「マスタークラスは斬れそうなの?」
「まだまだです。ノーマルで50ぐらいでーー」
「そうだねー、100を超えるとコツみたいなのが身につくんだけどねー」
「100ーー、あ、……70って聞きましたけど……」
「聖剣があるからでしょ?無しでは斬れない?」
「ーーはい」
髪をかきあげながらラルジュナが言う。
「ーー聖剣ありきの考えは怖いよ。まずは普通の剣で斬れるようにならないと」
「ーー魔法で剣の強化をかけながらですか?」
東堂の言葉にラルジュナが目を瞬いた。
「普通の剣だ」
「斬れるんですか!?」
「豪剣を使う。あいつ、基礎を飛ばしてるなー。教え方雑なんだからー」
ラルジュナが空中から剣を取り出した。それを東堂に渡す。東堂は聖剣を魔法で消してから、豪剣を受け取り、、、。
「ぎゃっ、重い!」
「ドラゴンの身体が固定して見えるようになったら、喉元をパンっ、て斬るんだよー」
「固定……」
「とまって見えるんだよー」
結構動くよなー、巨大なくせにーー。
と、考える東堂を気にもせずにラルジュナが言った。
「ヒョウマ、ソラリス大神殿に送ってくるから、用意してねー」
「はいっ!お願いします!」
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