ロクイチ聖女 6分の1の確率で聖女になりました。第三部 第四部

濃子

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東堂の恋わずらい編

第12話 東堂は邪魔をしない ☆

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「おはよう、ヒョウマー」
 旦那様の寝起きの色っぽい掠れ声に、気を失いかける兵馬だ。落としかけた哺乳瓶をしっかりと握りしめる。 



「早いね、ジュナ」
 ユーリの夜の睡眠がまとまってきて、少し楽になってきたが、まだまだ寝不足は解消できそうにない。

 そう思うと自分の母親は、はじめての育児が双子だ。父は何もやってこなかったと聞いた事がある。考えれば気を失うほど大変だったに違いない。


「彼はもっと早いねー」
 日が昇る前から砂浜を走る青年がいる。
 東堂だ。
 一心不乱に走りにくい砂の上を身体を揺らさずに走っていく。

「ーーねえ、トードォ君てさ……」
「うん……」
 兵馬は言葉を塞ぐようにラルジュナの唇にキスをした。そのままラルジュナが深く唇を重ねていく。
「んっ、ん」
 チュッ、チュッ、とカワイイ音から、ぴちゃ、ぴちゃんと口からの音が聞こえるキスへと変わる。
「ーーふっ、ジュナ……」
「眠い?」
「大丈夫……」

 答えを聞いてラルジュナが兵馬を抱えてソファーに腰かけた。膝の上に妻を乗せて服を脱がせていく。
「ーー東堂帰って来ないかな……」
「結界を張ってればわかるよー」





 兵馬がラルジュナの首にしっかりと腕をまわし、下から突き上げてくる自分のモノを後孔で受けとめる。
「あっ、あんっ~~!あんっ~~!ああっ~~~!」
 色っぽい嬌声に、ラルジュナは目を細めて笑う。

「キミはカワイ過ぎるよ」
 やらしいし、と耳元で囁く。
「ふっ」
 耳が感じるのか真っ赤になる。両足をしっかりと持ち上げ、深い部分を何度も突いた。


「ーーあっ、あっ、あっ、あんっ、ーーっあぁんっ!!」
 激しく身体を震わせ、兵馬の身体から力が抜ける。


「ーーありがとー、少しでも寝ててねー」
 兵馬がこくん、と頷いた。

 本音を言えばもっとしたいが無理は禁物。


 ぐったりしている兵馬を寝室に運び、横たえる。キスをしてラルジュナはすぐに離れた。長くしてしまうと、また行為がはじまってしまうからだ。

「ーーカワイイ」
 家の中では眼鏡をかけなくても見えるそうだが、外ではしっかりかけてもらわないと、絶対に変なのが寄ってくる。


 それにしても、可愛くて愛しい存在がふたつもあるとはーー。自分にそんな幸運が訪れるとは、数年前までは思いもしなかった。

 ベビーベッドですやすや寝ているユーリに近づき、起こさないように頬に触れる。こんなに柔らかいものは他にはない、と思うほどぷにぷにとしたほっぺだ。

「食べたくなるほどカワイイ、ってこういう気持ちなんだねー」

 しかし、寝てるときに起こしたくなるのはダメだねーー。泣いてると、早く寝て、って思うけどーー。

 強大国の王子として生まれたが、自分の望みはわりとシンプルだ。

 好きなひとと暮らしたい、そのひとを幸せにしたい。そのひとを取り巻く環境も幸せにしたいーー、そんなものだ。


 だからこそ、彼の事を何とかしてやらねば、と思うわけなのだがーー。












「はよー、トードォ君ー」
「うすっ!」
 汗を手で飛ばし聖剣を下ろすと、東堂はラルジュナに頭を下げた。
「頭なんか下げないでよー、ただの友達の旦那なんだからー」

 気さくな笑顔に東堂は目を丸くする。

「……うすっ」
「今日はパラダイス島の近くにあるヤーシャル島に行ってみようかー。あそこのギルドに登録すれば、ドラゴンが斬り放題だよー」

 斬り放題ーー。そんな野菜詰め放題みたいに簡単に言われてもな。

「はいっ!」
「マスタークラスは斬れそうなの?」
「まだまだです。ノーマルで50ぐらいでーー」
「そうだねー、100を超えるとコツみたいなのが身につくんだけどねー」
「100ーー、あ、……70って聞きましたけど……」
「聖剣があるからでしょ?無しでは斬れない?」
「ーーはい」
 髪をかきあげながらラルジュナが言う。
「ーー聖剣ありきの考えは怖いよ。まずは普通の剣で斬れるようにならないと」

「ーー魔法で剣の強化をかけながらですか?」
 東堂の言葉にラルジュナが目をしばたいた。
「普通の剣だ」
「斬れるんですか!?」
「豪剣を使う。あいつ、基礎を飛ばしてるなー。教え方雑なんだからー」

 ラルジュナが空中から剣を取り出した。それを東堂に渡す。東堂は聖剣を魔法で消してから、豪剣を受け取り、、、。

「ぎゃっ、重い!」
「ドラゴンの身体が固定して見えるようになったら、喉元をパンっ、て斬るんだよー」
「固定……」
「とまって見えるんだよー」


 結構動くよなー、巨大なくせにーー。


 と、考える東堂を気にもせずにラルジュナが言った。

「ヒョウマ、ソラリス大神殿に送ってくるから、用意してねー」
「はいっ!お願いします!」


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