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東堂の恋わずらい編
第10話 クズ男認定
しおりを挟む「ーーそれは、トードォ君。アスラーンを弄んだんだね?」
「えっ?」
「ーーひどいな。他所の国の王太子をーー」
「はあーーーーー!?!?!?」
東堂の口が開いたまま塞がらない。
「アレクセイ殿下、正式に賠償金を請求する」
「ちょっと待ってください!殿下なんか関係ないじゃないですかぁ!」
「いや、責任は国にある」
「なんで!!!そもそも、アス太子と俺はーー!」
「ダメだよ!トードォ君!言質を取られる!」
「え?」
「もう、キミは王太子を弄んだ重罪人なんだから、これ以上はそれを言ったらダメだ!」
「なんでっ!?」
「アスラーンが否定しないからだよ!アスラーンが関係があると言っているのに、キミは違うと言う。これはどういう事かわかる?」
東堂は頭の中を整理した。
「え?…………、ーーそれはつまり、俺が『向こうは本気でも俺は遊びだった』、みたいなクズって事になるんすか!?」
「だね。まわりにはキミ達の関係が知られているし、キミの意思に関係なく、もうここは婚約の場なんだよー」
ホント、この国はアスラーンに甘いなー。
「ば、賠償金ってーー」
「ムリだよトードォ君、キミが払える額じゃないー。億で済ますつもりはないよー」
「ひとり息子を傷つけられたんだ、わかるね?」
リルハンが凄みをきかせるーー。
わからん。
琉生斗とアレクセイは帰る準備をはじめた。こんな茶番に付き合っていられるか、である。
「すまない、アスラーン。ーーーま、魔蝕がでそうだ」
嘘がつけないアレクセイは視線がぶれた。
「あぁ。なんか久々にもやもやする」
琉生斗はわざとらしく聖女の証を触る。
「待ってくれよ!!!」
東堂が涙目で琉生斗にすがる。
「助けてくれ!」
「考えが浮かばない。じゃあな、王太子妃殿下」
「そんなばかな!」
「おまえ、ダンス上手いじゃん。その上、誰からもすぐに好かれるし、意外にむいてるかもな」
琉生斗は助ける事を放棄した。
これが兵馬なら真剣に考えるが、東堂の場合は完全に自分が撒いた種だ。どうにもならないだろう。
「ーー弄んだつもりはないんす。グスッ、ただ、ーー」
東堂が本気で泣きだした。
さすがに琉生斗は慌てる。
「だ、大丈夫だよ!東堂!お、億の賠償金ぐらいアレクと兵馬が貸してくれるから!」
「ーー返せねえ……」
それはそうだろう。
「聖女はまぬがれたのに、王子の嫁ってなんなんだ!」
「ーー聖女は罰ゲームじゃねえわ」
まったく、助ける気が失せる。
琉生斗はため息をつきながらアスラーンを見た。
「アスラーンさんの要望は、東堂と結婚する事なのか?」
「ああ」
「はあー、きっぱり言うね。おまえ、プロポーズされてるけど、どうするんだ?」
項垂れている東堂にたずねる。
何を思案中なのかはわからないが、彼は小さく首を振った。
「ーー無理だ」
ゆっくりと立ちあがる。東堂はキュッと寄せた眉を開いて、真っ直ぐな目でアスラーンを見た。
「賠償金を何百年かかっても俺が払います。結婚はしません」
揺らぐ事のない視線に、アスラーンは悲しそうに首を傾ける。
「ーー少しも揺れんか?」
その視線を受けても、東堂の心にぶれはなかった。
「揺れません。いままで、すいませんでした」
深々と頭を下げる。
「ーー残念だよ。トードォ君」
リルハンが息子の顔を見ながらため息をついた。
「じゃあ、アレクセイ君。アダマスには伝えるから」
「リルハン陛下ーー、あまりにも彼の気持ちを無視した話ではないでしょうか?」
アレクセイの言葉を払いのけるようにリルハンが返す。
「そうかな?誰が見ても付き合っていたのは確かだよ?」
「………」
東堂が下がる。
誰の顔も見ないように深く頭を下げながらーー。
「ーー東堂……」
追いかけるわけにもいかず、琉生斗は立ち尽くした。
「はあー、やんなるねー」
ラルジュナがアスラーンを睨む。
食事会は最悪な空気なまま、終了となった。
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