ロクイチ聖女 6分の1の確率で聖女になりました。第三部 第四部

濃子

文字の大きさ
上 下
175 / 236
東堂の恋わずらい編

第10話 クズ男認定

しおりを挟む

「ーーそれは、トードォ君。アスラーンをもてあそんだんだね?」
「えっ?」
「ーーひどいな。他所の国の王太子をーー」
「はあーーーーー!?!?!?」
 東堂の口が開いたまま塞がらない。


「アレクセイ殿下、正式に賠償金を請求する」
「ちょっと待ってください!殿下なんか関係ないじゃないですかぁ!」
「いや、責任は国にある」
「なんで!!!そもそも、アス太子と俺はーー!」

「ダメだよ!トードォ君!言質を取られる!」
「え?」
「もう、キミは王太子をもてあそんだ重罪人なんだから、これ以上はそれを言ったらダメだ!」
「なんでっ!?」


「アスラーンが否定しないからだよ!アスラーンが関係があると言っているのに、キミは違うと言う。これはどういう事かわかる?」

 東堂は頭の中を整理した。
「え?…………、ーーそれはつまり、俺が『向こうは本気でも俺は遊びだった』、みたいなクズって事になるんすか!?」

「だね。まわりにはキミ達の関係が知られているし、キミの意思に関係なく、もうここは婚約の場なんだよー」
 ホント、この国はアスラーンに甘いなー。


「ば、賠償金ってーー」
「ムリだよトードォ君、キミが払える額じゃないー。億で済ますつもりはないよー」
「ひとり息子を傷つけられたんだ、わかるね?」
 リルハンが凄みをきかせるーー。






 わからん。


 琉生斗とアレクセイは帰る準備をはじめた。こんな茶番に付き合っていられるか、である。


「すまない、アスラーン。ーーーま、魔蝕がでそうだ」
 嘘がつけないアレクセイは視線がぶれた。
「あぁ。なんか久々にもやもやする」
 琉生斗はわざとらしく聖女の証を触る。

「待ってくれよ!!!」
 東堂が涙目で琉生斗にすがる。
「助けてくれ!」
「考えが浮かばない。じゃあな、王太子妃殿下」
「そんなばかな!」
「おまえ、ダンス上手いじゃん。その上、誰からもすぐに好かれるし、意外にむいてるかもな」

 琉生斗は助ける事を放棄した。
 これが兵馬なら真剣に考えるが、東堂の場合は完全に自分が撒いた種だ。どうにもならないだろう。

 



「ーー弄んだつもりはないんす。グスッ、ただ、ーー」
 東堂が本気で泣きだした。

 さすがに琉生斗は慌てる。
「だ、大丈夫だよ!東堂!お、億の賠償金ぐらいアレクと兵馬が貸してくれるから!」
「ーー返せねえ……」
 それはそうだろう。

「聖女はまぬがれたのに、王子の嫁ってなんなんだ!」
「ーー聖女は罰ゲームじゃねえわ」
 まったく、助ける気が失せる。

 琉生斗はため息をつきながらアスラーンを見た。
「アスラーンさんの要望は、東堂と結婚する事なのか?」
「ああ」
「はあー、きっぱり言うね。おまえ、プロポーズされてるけど、どうするんだ?」

 項垂れている東堂にたずねる。





 何を思案中なのかはわからないが、彼は小さく首を振った。


 
「ーー無理だ」
 ゆっくりと立ちあがる。東堂はキュッと寄せた眉を開いて、真っ直ぐな目でアスラーンを見た。

「賠償金を何百年かかっても俺が払います。結婚はしません」
 揺らぐ事のない視線に、アスラーンは悲しそうに首を傾ける。

「ーー少しも揺れんか?」

 その視線を受けても、東堂の心にぶれはなかった。
「揺れません。いままで、すいませんでした」
 深々と頭を下げる。


「ーー残念だよ。トードォ君」
 リルハンが息子の顔を見ながらため息をついた。

「じゃあ、アレクセイ君。アダマスには伝えるから」
「リルハン陛下ーー、あまりにも彼の気持ちを無視した話ではないでしょうか?」

 アレクセイの言葉を払いのけるようにリルハンが返す。
「そうかな?誰が見ても付き合っていたのは確かだよ?」
「………」



 東堂が下がる。
 誰の顔も見ないように深く頭を下げながらーー。

「ーー東堂……」
 追いかけるわけにもいかず、琉生斗は立ち尽くした。

「はあー、やんなるねー」
 ラルジュナがアスラーンを睨む。

 食事会は最悪な空気なまま、終了となった。






しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された僕は過保護な王太子殿下とドS級冒険者に溺愛されながら召喚士としての新しい人生を歩みます

八神紫音
BL
「嫌ですわ、こんななよなよした男が夫になるなんて。お父様、わたくしこの男とは婚約破棄致しますわ」  ハプソン男爵家の養子である僕、ルカは、エトワール伯爵家のアンネリーゼお嬢様から婚約破棄を言い渡される。更に自分の屋敷に戻った僕に待っていたのは、ハプソン家からの追放だった。  でも、何もかもから捨てられてしまったと言う事は、自由になったと言うこと。僕、解放されたんだ!  一旦かつて育った孤児院に戻ってゆっくり考える事にするのだけれど、その孤児院で王太子殿下から僕の本当の出生を聞かされて、ドSなS級冒険者を護衛に付けて、僕は城下町を旅立った。

悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)

【完結】ここで会ったが、十年目。

N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化) 我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。 (追記5/14 : お互いぶん回してますね。) Special thanks illustration by おのつく 様 X(旧Twitter) @__oc_t ※ご都合主義です。あしからず。 ※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。 ※◎は視点が変わります。

実はαだった俺、逃げることにした。

るるらら
BL
 俺はアルディウス。とある貴族の生まれだが今は冒険者として悠々自適に暮らす26歳!  実は俺には秘密があって、前世の記憶があるんだ。日本という島国で暮らす一般人(サラリーマン)だったよな。事故で死んでしまったけど、今は転生して自由気ままに生きている。  一人で生きるようになって数十年。過去の人間達とはすっかり縁も切れてこのまま独身を貫いて生きていくんだろうなと思っていた矢先、事件が起きたんだ!  前世持ち特級Sランク冒険者(α)とヤンデレストーカー化した幼馴染(α→Ω)の追いかけっ子ラブ?ストーリー。 !注意! 初のオメガバース作品。 ゆるゆる設定です。運命の番はおとぎ話のようなもので主人公が暮らす時代には存在しないとされています。 バースが突然変異した設定ですので、無理だと思われたらスッとページを閉じましょう。 !ごめんなさい! 幼馴染だった王子様の嘆き3 の前に 復活した俺に不穏な影1 を更新してしまいました!申し訳ありません。新たに更新しましたので確認してみてください!

繋がれた絆はどこまでも

mahiro
BL
生存率の低いベイリー家。 そんな家に生まれたライトは、次期当主はお前であるのだと父親である国王は言った。 ただし、それは公表せず表では双子の弟であるメイソンが次期当主であるのだと公表するのだという。 当主交代となるそのとき、正式にライトが当主であるのだと公表するのだとか。 それまでは国を離れ、当主となるべく教育を受けてくるようにと指示をされ、国を出ることになったライト。 次期当主が発表される数週間前、ライトはお忍びで国を訪れ、屋敷を訪れた。 そこは昔と大きく異なり、明るく温かな空気が流れていた。 その事に疑問を抱きつつも中へ中へと突き進めば、メイソンと従者であるイザヤが突然抱き合ったのだ。 それを見たライトは、ある決意をし……?

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

不遇聖女様(男)は、国を捨てて闇落ちする覚悟を決めました!

ミクリ21
BL
聖女様(男)は、理不尽な不遇を受けていました。 その不遇は、聖女になった7歳から始まり、現在の15歳まで続きました。 しかし、聖女ラウロはとうとう国を捨てるようです。 何故なら、この世界の成人年齢は15歳だから。 聖女ラウロは、これからは闇落ちをして自由に生きるのだ!!(闇落ちは自称)

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

処理中です...