ロクイチ聖女 6分の1の確率で聖女になりました。第三部 第四部

濃子

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東堂の恋わずらい編

第9話 極秘事項がもれている?

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「はははっ、アスラーンではないよ。昔アダマスに聞いた事がある。聖女は男でも子供が産めると」

「ええぇぇぇーーー!!!」
 極秘事項を何べらべらしゃべってんだ、あの王様はっ!!!

「父上ーー」
 アレクセイが頭を押さえた。
「もしかして、聖女というよりは異世界の者なら可能なのかと思ってね」

 にこにことリルハンが続ける。話しを聞きながら、なぜか東堂は背中に寒いものを感じていた。


 ーーヤバい……。なんかいるーー。いや、ずっとあそこにいるんだーー。



「最近うちの娘達が、ひとりの赤ん坊を取り合っていてね。うちはよく侍女も自分の子を連れて仕事に来ているから、最初は侍女の誰かの子供だと思っていたんだけど」

 グローバルな職場だ。
 ぜひ、見習いたい、と琉生斗は思う。

「あんな美形な赤ちゃんは、ちょっとないよね」
 ふふふっ、とリルハンが笑う。
 
「リルハンパパ、わかってると思うけどー」
 ラルジュナの声が低い。
「ーーもしかしたら、アルジュナも覚えているかもしれないよ」
 ちっ、とラルジュナが舌打ちした。

「ーーありがとう。気をつけるよー」
「個人的な事を言えばアルジュナには会わせてあげて欲しいけどね」
 軽くため息をつく。
「…………パパ、口と態度にすぐでるからねー」
 それがなければねー。


「で、それを知ってるリルハンパパは、何を企んでるのー?」

 琉生斗は目を見開いた。
 付き合ってるのを黙認していたのは、その事実を知っていたからだとしたら?

 リルハン陛下は、マジで東堂をアスラーンさんの嫁にする気なのか!


 どう考えても違う気しかしないーー!





「うん、トードォ君。君も産めるんだよね?」



 マジかぁぁぁぁーーー!!!



 琉生斗もだが、アレクセイも愕然とした表情で目を開けたまま固まっている。


「ひぇっ?」
「アスラーンの身体に合わせて作られるんだよね?」
 東堂が引きつりながら変な声を出した。

「いや、知らないっす……」
 そうなの?
 とでも言いたそうな東堂の目とぶつかり、琉生斗は目を細める。

 
 極秘中の極秘事項を他国の王が知っているとはーー。


「産んで欲しいな。とっても頑丈な男の子が産まれそうだ」
「はははっ。父上、気が早い」
 気が早いどころの話ではない。まず、結婚する気なんか東堂にはないだろう。


「ーーあのね、アスラーン。男児目当てで結婚したとして子供はできないよー」
「互いが心から願わねば変わらないのだろう?おまえの惚気話など、珍しいものを聞かせてくれるのか?」
「そりゃ、うちの嫁さんがどれだけカワイイのかぐらいは教えてあげてもいいけどー」
「得意な体位は?」
「うんとねーー」
「聞きたくない!おれの兵馬はきれいなままなんだぁ!!!」
 琉生斗は叫んだ。


 言わないよ、そんなのー、とラルジュナが目を細める。

「わかってるんなら何も言いませんよー。一生できなくても互いを恨むことのないようにねー」
「ひどいな。友なら協力するものだろう」
「どうやって協力したらいいのさー?」
 やることやってて付き合ってないなら、どうしょうもないよねー?


「それに、トードォ君ー。くらってるけど効果ないじゃないー」
「えっ?」
 琉生斗は東堂を見た。

 彼の視線はアスラーンの後ろにある。


「どうしたんだ?東堂?」
「ーーーーあっ!いや、ーー、、、」
 口ごもり、下を向いた東堂に、琉生斗は眉をしかめた。東堂の視線が向いていた付近に目をやると、ふわりと光るものが視え隠れしている。

「あっ!女神様かっ!」
「え?女神様?ーー違うだろ?カエルだよな?」
「ん?アジャハンっていったら愛の三女神様だろ?」
「えっーー?カエルは?あのでっけえカエルはなんだ?」


 リルハンとアスラーンが感嘆の息をもらした。
「ーーふふっ。凄いね、トードォ君、タニグク様が視えるなんてまずない事だ」
 ラルジュナが眉を寄せ、アスラーンを凝視する。
「うわぁ、視えない。トードォ君、すごいねー」
「おれもはっきりとはわかんねえ」
 琉生斗は首を振るとアレクセイも頷いた。

「アジャハンの建国神様なのだよ。恥ずかしがり屋な御方で、人前にでる事などありえない」
「気に入ってくださったようだね」
「そうだな」
「アダマスには伝えておこう」
「お願いします」

 いや、ちょっと待てーー。

 東堂は目を見開いたままカエルを視ていた。身体は緑色ではあるが、クリーム色な緑色だ。おもちゃにも見えない事もない。

 そのタニグク様と呼ばれるカエルが何かを言っている。

「オーディールの城……?」
 何気なく口にした言葉にリルハンが反応した。
「ーーそうか、タニグク様はふたりを試したいと仰せか」
「何の話だ?」
「建国時代の遺産でね。昔はよく王妃になるものの試練として使われたらしいが、近年はない」
「どうして?」
「難しすぎて攻略できないからだよ。こんなのやるぐらいなら王妃になんてならない、と不満が続出したらしい」
「そんなものがあったとはーー。なら、トードォ、いつ行こうか?」
「へ?」
「おまえと私なら、楽なものだろう」
「え?」


「いやいやいや、先走りすぎだって!」
 ラルジュナが間に入った。
「ーーラルジュナ君、うちの国の事に首を突っ込まないで欲しいな」
 笑顔がなんだか嘘くさく見えるリルハンに、ラルジュナが噛みつく。
「はい!でました!リルハンパパの笑顔の圧力!!!ちょっとはトードォ君の気持ちになってあげなよ!」
「ら、ラルさんーー」
 このひと実は救いの女神様か?


「トードォ君、アスラーンと結婚しないのかい?」
「あっ!」
「しませんよ!」
 なんで話がそこまで進んでいるのだ。付き合ってもいないだろうがーー。しかし、ラルジュナはなぜ慌てた顔をしているのだろう。自分が返事をするのをとめたみたいだがーー。



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