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悪魔が来たりて嘘をつく編
第143話 悪魔より悪魔らしいひと
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「よしっ!おらっ!もういっちょ!」
戦闘がはじまってから、東堂はずっと剣を振り続けている。とまる事をしらない、狂戦士のように。
「悪魔が磁場を展開したーー!」
その範囲は魔法が使えない。ますます東堂の出番が増える。
「トードォ!保護がない状態だぞ!無理に突っ込むな!」
トルイストの声も耳に入らない。東堂はただ、聖剣を振るう。最後はハオルのところへ行くために、前へ進むのだ。
「磁場解除しました~!」
町子が叫ぶ。悪魔が磁場を張る度に、磁場解析をして解除しているため、攻撃に転じる事ができない。
「ーーハオルをぶん殴りたいのに~~!」
皆、気持ちは同じだ。
「おうっ!行くぜ、町子!」
「は~い~!」
戦いは続くーー。
早く起きないとーー。
琉生斗は焦る。
こうしている間にも皆が危険な目にあっているかもしれない。自分の力が少しでも役に立つなら行きたい。
なのに、身体が動かない。
水鏡の間じゃ、神農じいちゃんも出てこれねえよなーー。魔蝕もだめだーー、女神様の気にビビってるーー。
このままじゃーー。
『ーールート、知ってる?金縛りになったときはね、焦って体を無理に動かしちゃだめなんだってーー。 まずは深呼吸をして呼吸を整えて、ゆっくりと身体の一部を動かしてみるんだ。 一部を動かすことによって、その行動を脳が察知し金縛りが解けるんだってーー』
琉生斗は深呼吸を繰り返した。
一部、身体の一部分。
頼むから動いてくれーー!
美花が荒く呼吸を繰り返す。
日が変わろうとしている。
よくもったほうだ、とラルジュナは思う。
悪魔の力が活発になる夜が、まだ続く。魔法騎士達の顔からも疲労と緊張感が漂っていた。
「ーー破壊すればするほど強くなるみたいだね」
ハオルはまた強さの段階があがっている。にやにやと微笑む顔も、ハオルの原型はない。ただの悪魔だ。
彼は塵ひとつ残っていれば再生してしまう。
「結界に閉じ込めて潰してもだめ、蒸発させてもだめ。火力が足りなかったーー、なら、」
ラルジュナが大天使の盾を3つだし、ハオルの魔法を防ぐ。
「アリョーシャ、粉々にした後に浄化しよう。ルートを連れてきて」
「……」
「アリョーシャ?ーーまさか……」
ラルジュナが目を見開いた。アレクセイがだんまりを決めていることから状況を悟る。
「ーー閉じ込めてるのか」
「水鏡の間だ」
「あー、時空竜の女神様が守ってくれるんだね。それって、ルートのお腹に神竜がいるから、君なんかどうでもいいって判断されたんだ」
親友の言葉にアレクセイは俯いた。
「ーー私も同意した……」
「あっそうーー、また、悪魔をだしてきたな。どんだけいるんだかーー」
このままでは、負けるーー。だが、ハオルがいなくなれば悪魔達は帰るだろう。
アレクセイが魔力を練る。
静かに、彼は目を閉じた。
「太陽炎を使うーー」
手の中に異常な熱量の塊が現れる。
「ーーこっちが逃げなきゃだめじゃん。それやりたきゃ、別次元に飛んでからやって」
目を眇めてラルジュナが言った。
「君も無事じゃすまないだろうけど、覚悟してるんだ?」
「ーーああ」
決意に揺らぎはない。
ーーちゃんと別れも言ってないだろ。向こうが一生引きずるよ……。
ラルジュナはため息をついた。
「ハオルと心中か。あいつは本望だね」
「?」
「ちょっとでる!防御はまかせたよ!!!」
「!」
ラルジュナの手から黒槍が現れる。神々しくも猛々しい槍をかまえ、ハオルに突っ込んでいく。
『雑魚が!立派なものをーー』
「おまえこそ、ちゃんと告白してフラれたらどう?」
ハオルの腕をふっ飛ばし、ラルジュナはさらに鋭い突きを食らわせる。
『ーーなんだ、それはっ!だ、誰が!』
「可哀想にねー、そこまでなっても見向きもされないなんてーー。わかる?アリョーシャ、聖女のこと隠してるよー。すっごく大事なんだねー」
アレクセイに聞こえないようにラルジュナは囁いた。
ハオルの顔がこれ以上ないぐらい歪んだ。
『わ、私だってーー』
「ーー付き合いたかったんだよねー。隣りを歩いて、ダンジョンだって一緒に攻略したりしてー」
近づき過ぎると皮膚が燃えてくる。ラルジュナはそれを気にせずに話し続けた。
『ふっ!』
悔しそうな息を吐き、ハオルが触手をぶつけてきた。動揺のためか、攻撃が雑になっている。
「アレクセイのすべては聖女のものだよー。毎日キスして、セックスしてーー、どれだけやってるんだろうねーー。あいつはどういうふうに聖女を抱くんだろうーーーー」
『うるさい!!!』
悪魔より悪魔らしくラルジュナは笑った。
「ーーねえー、聖女をどうするんだったー?」
『殺す!殺してやる!!!』
ハオルの身体が黒く光りだした。苛烈な光りは方方に散らばり、王都の結界をも破壊していく。
「うわぁ!すごい威力!聖女は神殿だよー」
『ぐっ!』
ハオルが凄まじいスピードで王都に飛ぶ。
「ーーラルジュナ?」
悪魔の行動にアレクセイは驚愕した。
「ごめん!逃がしたっ!」
嘘だーー。
目を見張り、ハオルの後を追いかける。
「なぜだ!ラルジュナ!」
顔色を変えてアレクセイは怒鳴った。
「君がバカだからだよ!」
ラルジュナが追いついて怒鳴り返してくる。
「私は、ルートには生きていてもらいたい!」
別次元でハオルを仕留めるーー、それは自分の死を意味することだとしても、愛しいひとが無事でいるならそれでいいーー。
ガンッ!
「勝手に決めんな!ばかっ!」
親友の端正な顔に拳をいれて、ラルジュナは叫んだ。
「それしか方法がないわけじゃないだろ!楽な方に逃げるな!ルートは囮にする!決めてただろ!!!」
「ーーラルジュナ……」
傷ついた目でアレクセイが見てくる。ラルジュナは吐き捨てるように言った。
「ったく!この甘ったれ!!!」
戦闘がはじまってから、東堂はずっと剣を振り続けている。とまる事をしらない、狂戦士のように。
「悪魔が磁場を展開したーー!」
その範囲は魔法が使えない。ますます東堂の出番が増える。
「トードォ!保護がない状態だぞ!無理に突っ込むな!」
トルイストの声も耳に入らない。東堂はただ、聖剣を振るう。最後はハオルのところへ行くために、前へ進むのだ。
「磁場解除しました~!」
町子が叫ぶ。悪魔が磁場を張る度に、磁場解析をして解除しているため、攻撃に転じる事ができない。
「ーーハオルをぶん殴りたいのに~~!」
皆、気持ちは同じだ。
「おうっ!行くぜ、町子!」
「は~い~!」
戦いは続くーー。
早く起きないとーー。
琉生斗は焦る。
こうしている間にも皆が危険な目にあっているかもしれない。自分の力が少しでも役に立つなら行きたい。
なのに、身体が動かない。
水鏡の間じゃ、神農じいちゃんも出てこれねえよなーー。魔蝕もだめだーー、女神様の気にビビってるーー。
このままじゃーー。
『ーールート、知ってる?金縛りになったときはね、焦って体を無理に動かしちゃだめなんだってーー。 まずは深呼吸をして呼吸を整えて、ゆっくりと身体の一部を動かしてみるんだ。 一部を動かすことによって、その行動を脳が察知し金縛りが解けるんだってーー』
琉生斗は深呼吸を繰り返した。
一部、身体の一部分。
頼むから動いてくれーー!
美花が荒く呼吸を繰り返す。
日が変わろうとしている。
よくもったほうだ、とラルジュナは思う。
悪魔の力が活発になる夜が、まだ続く。魔法騎士達の顔からも疲労と緊張感が漂っていた。
「ーー破壊すればするほど強くなるみたいだね」
ハオルはまた強さの段階があがっている。にやにやと微笑む顔も、ハオルの原型はない。ただの悪魔だ。
彼は塵ひとつ残っていれば再生してしまう。
「結界に閉じ込めて潰してもだめ、蒸発させてもだめ。火力が足りなかったーー、なら、」
ラルジュナが大天使の盾を3つだし、ハオルの魔法を防ぐ。
「アリョーシャ、粉々にした後に浄化しよう。ルートを連れてきて」
「……」
「アリョーシャ?ーーまさか……」
ラルジュナが目を見開いた。アレクセイがだんまりを決めていることから状況を悟る。
「ーー閉じ込めてるのか」
「水鏡の間だ」
「あー、時空竜の女神様が守ってくれるんだね。それって、ルートのお腹に神竜がいるから、君なんかどうでもいいって判断されたんだ」
親友の言葉にアレクセイは俯いた。
「ーー私も同意した……」
「あっそうーー、また、悪魔をだしてきたな。どんだけいるんだかーー」
このままでは、負けるーー。だが、ハオルがいなくなれば悪魔達は帰るだろう。
アレクセイが魔力を練る。
静かに、彼は目を閉じた。
「太陽炎を使うーー」
手の中に異常な熱量の塊が現れる。
「ーーこっちが逃げなきゃだめじゃん。それやりたきゃ、別次元に飛んでからやって」
目を眇めてラルジュナが言った。
「君も無事じゃすまないだろうけど、覚悟してるんだ?」
「ーーああ」
決意に揺らぎはない。
ーーちゃんと別れも言ってないだろ。向こうが一生引きずるよ……。
ラルジュナはため息をついた。
「ハオルと心中か。あいつは本望だね」
「?」
「ちょっとでる!防御はまかせたよ!!!」
「!」
ラルジュナの手から黒槍が現れる。神々しくも猛々しい槍をかまえ、ハオルに突っ込んでいく。
『雑魚が!立派なものをーー』
「おまえこそ、ちゃんと告白してフラれたらどう?」
ハオルの腕をふっ飛ばし、ラルジュナはさらに鋭い突きを食らわせる。
『ーーなんだ、それはっ!だ、誰が!』
「可哀想にねー、そこまでなっても見向きもされないなんてーー。わかる?アリョーシャ、聖女のこと隠してるよー。すっごく大事なんだねー」
アレクセイに聞こえないようにラルジュナは囁いた。
ハオルの顔がこれ以上ないぐらい歪んだ。
『わ、私だってーー』
「ーー付き合いたかったんだよねー。隣りを歩いて、ダンジョンだって一緒に攻略したりしてー」
近づき過ぎると皮膚が燃えてくる。ラルジュナはそれを気にせずに話し続けた。
『ふっ!』
悔しそうな息を吐き、ハオルが触手をぶつけてきた。動揺のためか、攻撃が雑になっている。
「アレクセイのすべては聖女のものだよー。毎日キスして、セックスしてーー、どれだけやってるんだろうねーー。あいつはどういうふうに聖女を抱くんだろうーーーー」
『うるさい!!!』
悪魔より悪魔らしくラルジュナは笑った。
「ーーねえー、聖女をどうするんだったー?」
『殺す!殺してやる!!!』
ハオルの身体が黒く光りだした。苛烈な光りは方方に散らばり、王都の結界をも破壊していく。
「うわぁ!すごい威力!聖女は神殿だよー」
『ぐっ!』
ハオルが凄まじいスピードで王都に飛ぶ。
「ーーラルジュナ?」
悪魔の行動にアレクセイは驚愕した。
「ごめん!逃がしたっ!」
嘘だーー。
目を見張り、ハオルの後を追いかける。
「なぜだ!ラルジュナ!」
顔色を変えてアレクセイは怒鳴った。
「君がバカだからだよ!」
ラルジュナが追いついて怒鳴り返してくる。
「私は、ルートには生きていてもらいたい!」
別次元でハオルを仕留めるーー、それは自分の死を意味することだとしても、愛しいひとが無事でいるならそれでいいーー。
ガンッ!
「勝手に決めんな!ばかっ!」
親友の端正な顔に拳をいれて、ラルジュナは叫んだ。
「それしか方法がないわけじゃないだろ!楽な方に逃げるな!ルートは囮にする!決めてただろ!!!」
「ーーラルジュナ……」
傷ついた目でアレクセイが見てくる。ラルジュナは吐き捨てるように言った。
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