ロクイチ聖女 6分の1の確率で聖女になりました。第三部 第四部

濃子

文字の大きさ
上 下
151 / 236
悪魔が来たりて嘘をつく編

第141話 ヤツが来た!

しおりを挟む
 
 悪魔達はいつ来るのかーー。5月に入ると皆が緊張した顔で毎日を過ごす。ヒリヒリするようなプレッシャーに押しつぶされないように、必死だ。

 早々とロードリンゲンから避難を決めた国民を、アジャハン国や強国バルドが受け入れた。


 そして、その日は来たーー。



「アリョーシャ!来たよ!」
 ラルジュナの怒号が響き、アレクセイは間髪いれずに国の上空に転移した。

 上から黒い塊が落ちてくる。
隕石メテオか!アリョーシャ!結界はまかせて!」
「ああ」
 宙を睨みアレクセイは一瞬で魔力を練った。

超新星スーパーノヴァ

 凄まじい勢いの熱量がぶつかる。
 魔法の威力はアレクセイのほうが上だった。
神の息吹ゴッドブレス
 間髪いれずに魔法を放つ。

 隕石も悪魔達も神の吹かす風に飛ばされていく。アレクセイの領地であるクリシュナ領に飛ばし、そこで戦闘になる。
 すでにアジャハン、バルドの魔法騎士団が待機しているはずだ。
 

「ハオルは!」
「いなかった」
「アスラーン!牢屋を確認して!」
 ラルジュナが精神でアスラーンと通信する。

(ーーわかった)

「ーー牢屋?」
  アレクセイが眉をしかめた。
「あの子に悪魔の印がついてた。そこから出入り可能なんだよ。行くよ!」
「ーーああ」













 ガタンッ!

「ううっ!」
 牢屋にいた金髪の女性が胸を押さえ苦しみだした。
「ーーおい。どうした!」
 兵士が中を覗いて、目を見張る。女性がのたうちまわり、苦しんでいた。

「ーー逃げ、て……」
 息も絶え絶えに女性が言ったときだった。女性の胸あたりからローブ姿の男がでてくる。
 男はにやりと笑いながら手を前に突き出す。

『死ねーー』
 灰色の顔、蛇のような目をした男だ。

『ーー魔神雷』




 結界ーーーー!


 兵士の前に分厚い結界が出現した。
『なにっーー?』
 忌々しそうにハオルが舌打ちをする。何重にも結界が重ねられている。
 そのほとんどが壊されてしまったが、ここまでやれば防げるのだ。

「負けないわよ!ハオル!!!」
 美花が大声で叫んだ。吹き飛んだ牢屋を囲むように神聖ロードリンゲン国の魔法騎士団が立っている。


『ふんっ!悪魔達よ!出てこい!』

  ハオルの足元が暗く光る。不気味な音をたてて悪魔達が飛び出してきた。

「殲滅せよ!」
 ヤヘルが激を飛ばす。

  掛け声とともに魔法騎士達は悪魔達に向かっていく。
 
『魔神嵐』
 ハオルから凄まじい嵐が起こる。


大天使ミカエルの盾!」
 美花が叫ぶ。
 何回使えるかわからないが、最高強度の盾だ。血反吐を吐きながら使えるようになった魔法。


 ただし、発動が遅いーー。
 他の魔法騎士が結界を重ねて助けてくれるのだがーー。

 破られていく。

 あまりの疾さに美花の顔が歪む。



 だが、ーー。

「ハオル、いい面になったねー」
 ラルジュナが美花の前に立ち、魔法陣を無限に出現させていく。

「ーーちょっとは魔封じが効けばいいけど。ミハナ、悪魔は他の騎士にまかせて、アレクセイの防御に専念して」

「はい!」
 打ち合わせ通りに、ここからは美花はアレクセイの補助に入る。その間にも光の槍がハオルめがけて光速で突っ込んでいく。

『ちっ、忌々しいーー!』
 光の槍は黒い霧に変わる。

『魔神槍』

 魔法騎士達の足元に強烈な威力の黒い槍が突き刺さっていく。防ごうにもあまりの数だ。

「よくまあ、それだけ強くなったよね」
 ラルジュナの問いにハオルが答える。

『天才様に褒められるとはなぁ。私の事など見下していたくせに……』

 黒い波が空を切った。魔法を放った瞬間の無防備さに、アレクセイは動いた。

「ぶっ放せ!」
「ああーー」
 ラルジュナの魔法に隠れていたアレクセイは、ハオルの目の前に姿を現し、一閃を振りあげる。

『ぐっ!』
 ハオルがふっ飛んでいく。アレクセイは勢いを殺さずに、剣の攻撃を続ける。


「追いかけるよ!」
「はいっ!」
 美花が気合いをいれるために顔を叩いた。

「ミハナ!どうか、無事で!」 
 斬り合いながらファウラが美花に言葉をかける。
「はいっ!」

「ラルジュナ様!」
 悪魔を斬ったファウラがこちらに飛んできた。

「言わなくても無理なら離脱させる」
「いえ!どうかミハナに、ハオルを殴る機会を与えてやってください!」
 真摯に頭を下げられ、ラルジュナが肩をすくめる。
「ーー予約がいっぱいだけど、ミハナは優先するよ」
「はいっ!がんばりますっ!」



 見ててね、兵馬ーー。


 お姉ちゃん、やるわよ!!!




しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)

【完結】ここで会ったが、十年目。

N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化) 我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。 (追記5/14 : お互いぶん回してますね。) Special thanks illustration by おのつく 様 X(旧Twitter) @__oc_t ※ご都合主義です。あしからず。 ※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。 ※◎は視点が変わります。

不遇聖女様(男)は、国を捨てて闇落ちする覚悟を決めました!

ミクリ21
BL
聖女様(男)は、理不尽な不遇を受けていました。 その不遇は、聖女になった7歳から始まり、現在の15歳まで続きました。 しかし、聖女ラウロはとうとう国を捨てるようです。 何故なら、この世界の成人年齢は15歳だから。 聖女ラウロは、これからは闇落ちをして自由に生きるのだ!!(闇落ちは自称)

実はαだった俺、逃げることにした。

るるらら
BL
 俺はアルディウス。とある貴族の生まれだが今は冒険者として悠々自適に暮らす26歳!  実は俺には秘密があって、前世の記憶があるんだ。日本という島国で暮らす一般人(サラリーマン)だったよな。事故で死んでしまったけど、今は転生して自由気ままに生きている。  一人で生きるようになって数十年。過去の人間達とはすっかり縁も切れてこのまま独身を貫いて生きていくんだろうなと思っていた矢先、事件が起きたんだ!  前世持ち特級Sランク冒険者(α)とヤンデレストーカー化した幼馴染(α→Ω)の追いかけっ子ラブ?ストーリー。 !注意! 初のオメガバース作品。 ゆるゆる設定です。運命の番はおとぎ話のようなもので主人公が暮らす時代には存在しないとされています。 バースが突然変異した設定ですので、無理だと思われたらスッとページを閉じましょう。 !ごめんなさい! 幼馴染だった王子様の嘆き3 の前に 復活した俺に不穏な影1 を更新してしまいました!申し訳ありません。新たに更新しましたので確認してみてください!

繋がれた絆はどこまでも

mahiro
BL
生存率の低いベイリー家。 そんな家に生まれたライトは、次期当主はお前であるのだと父親である国王は言った。 ただし、それは公表せず表では双子の弟であるメイソンが次期当主であるのだと公表するのだという。 当主交代となるそのとき、正式にライトが当主であるのだと公表するのだとか。 それまでは国を離れ、当主となるべく教育を受けてくるようにと指示をされ、国を出ることになったライト。 次期当主が発表される数週間前、ライトはお忍びで国を訪れ、屋敷を訪れた。 そこは昔と大きく異なり、明るく温かな空気が流れていた。 その事に疑問を抱きつつも中へ中へと突き進めば、メイソンと従者であるイザヤが突然抱き合ったのだ。 それを見たライトは、ある決意をし……?

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

処理中です...