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ゴッドスレイヤー編
第112話 やっぱり仲良し
しおりを挟む「他断ればいいんだよー」
「そんなの、お姫様押しつけられるって、だいたい子供ができたって秘密だからな」
「ーーまあ、いまさらの話だけどねー。それに、よそのお姫様を押しつけられても、」
陽気な表情を引っ込めてラルジュナが言う。
「うん?」
「もらってから下賜するしー」
「下賜?」
「そうー。臣下にあげるのー」
「ひどいなぁ」
「なんでー?自分が信頼する部下に譲るんだよー。そのほうがいいときもあるでしょー?ルート、来来国の後宮とか知ってるー?」
「あー、奥さん千人いる皇帝でしょ?」
「ほぼ、人質だよー。臣下が裏切らないようにー。逆ももちろんあるだろうけどー」
「あっ、なるほど……」
皇帝の位になってもそんな心配をしなければならないのかーー。
「一生、寵のない側室で終わるぐらいなら、ボクなら、臣下に下賜されるほうがいいなー」
「それは、そうだよな」
そっちのほうが自由が多そうだし、なんで一人の男のために千人もいなきゃいけないんだかーー、琉生斗の感覚では理解できない。
「それに、身分の低い令嬢が下賜狙いで側室になるなんて、よくある話だよー。パパも公爵の息子が平民の女の子とできちゃったって相談されてー、その女の子と結婚して、身分をあげてから公爵の息子に下賜してたもんー」
「へぇー。そんな方法もあるんだ」
琉生斗は目を見開いた。
「それはいいことを聞いた。葛城をクリスの嫁にしてから、ファウラに下賜すれば、ハーベスター公爵は文句を言えなくなるぞ!」
「ーーややこしくなるからやめよう」
明るい顔をした琉生斗を兵馬がとめる。
「ラルさん、来来国に詳しいの?」
「ジュナの3番目のお姉さんが、貴妃なんだって」
「え?トップじゃないんだ!」
ラルジュナは頷いた。
「まだ、皇后は決まらないみたいー、今年姉さん出産したらしいけど女の子だったそうだしー。他の妃も男の子がいないんだってー」
「厳しい世界だ」
琉生斗は首を振った。
「意外に男って生まれないんだよな」
「う~ん。向こうでは、確率は51%で男のほうがやや多かったけどね」
「何で知ってんだ?」
「保健体育の授業で習ったよ」
「ああ、おれ副教科捨ててたからな」
「音楽なら満点とれるのにね」
琉生斗は皮肉げに笑みを浮かべた。
「ーー五線譜もみたくなかったからさ……」
兵馬が俯く。
「きれいなひとだったね」
「うん……」
深刻な雰囲気のふたりから離れ、ラルジュナはアレクセイに寄る。
「誰か亡くなったの?」
「ーールートの姉だ。ピアニストだったそうだ」
「あー、そうなんだ……」
いろいろ抱えてるんだねー、とラルジュナはため息をついた。
「それより、アレクセイー」
ラルジュナがアレクセイの肩を叩いた。
「何だ?」
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「…………」
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「……うるさい……」
「えー、いいじゃないー♡聞きたいなー♡」
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「ーーアレクにあんな事言えるなんてな」
「親友なんだね」
「おまえ、あのままだと側室にされてたんだな」
「ーーそうだね」
「拒否しないのか!」
「しなかったね」
兵馬がきっぱりと言った。琉生斗は眉をしかめて親友の顔を見据えた。
「なんだよ、おれよりあっちをとるのかよ!」
「とるよ」
「えーーー!」
「いつ死ぬかわからないんだから、やることはやる、ルートが言ったんじゃない」
「いや、そうだけどさ……」
いじけながら琉生斗は歩く。
「兵馬がおれをとらないなんて……」
「君だって、殿下と別れて、って頼んでも別れないだろ?」
「それはまあ、そうだけどーー。老後は一緒に住もうな」
「はいはい。生きてたらね」
「相手にされてない!」
「ヒョウマー!ペース落とすー?」
かなり前まで歩いていたラルジュナが声をかけた。
「追いかけまーす!」
「ほんと、ラルさんのどこがいいんだか……」
「ーー僕もわからないね。殿下って何がいいの?」
「えっ?カッコいいし、優しいじゃん。強いし、お金もちだしー」
「うんうん。それで?それって、小学生が思いつく好きな人ランキングみたいだね」
痛いところをさされる。
「…………じゃあ、兵馬はラルさんの何が好きなんだ!」
兵馬が眼鏡の縁をあげた。
「ーーメンタルだね」
「メンタル……」
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「…………」
全部聞こえているふたりは、琉生斗達の言い争いを黙認することにした。
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