ロクイチ聖女 6分の1の確率で聖女になりました。第三部 第四部

濃子

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魔法騎士大演習とそれぞれの思惑編(長編)

第105話 夢に届く

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 威圧に身がすくむ。

 本当にこれを、自分と同じ歳のヤツがつくったのかーー、東堂は聖剣を構えて呼吸を整えた。
 
 モチーフはドラゴンだろう。巨体にドラゴンの首と、鳥の羽根、尾には鎖のような尻尾がついている。腕からは剣が生えていて、先が黒い。毒でも塗られているのかーー。

「詰め込み過ぎだろ」

「東堂。あたしは魔法封じと、ひたすら攻撃魔法の連射をするから」
「おう、適当に逃げて、いいところでデカいの一発頼むぜ」
「ええ」
 
「後、俺の足元に足場魔法かけといてくれ」
「ーーわかった」
 美花が首を傾げたが、自分と東堂に結界をかけ、足場をつくり、さらに光の矢を出現させた。

「ーーすげぇー!」


 東堂は疾走る。
 走りながらラルジュナの走り方を思い出した。彼は闘技場の足場は一切使っていなかった。魔法の足場を利用して疾走り、飛んでいた。
 それならば足元を気にせずに、いつも同じ条件で戦えるというわけだ。

「賢いよな!ヒョウマの旦那!」
 小石や砂も関係ない。東堂は驚くほどの疾さでデスビーストを斬りつけにいく。

 カキーン!

 腕の剣に塞がれる。反対の腕を気にしながら、滞空時間内に何度か斬りつけ、飛んで下がる。
魔弾マジックバレット!」
 鋭い光がデスビーストを貫く。

「すげー!殿下みてぇー!」

 魔法が終わる前に突っ込み、弱点をさがす。町子の事だ。絶対にわかりにくいに違いない。

「うわぁ!皮膚かてー」
「凍らせてみる!」
 なるほど。
深淵なる氷結ディープフリージング!」
 凍った腕を斬る。

 ガッ!

 硬すぎて弾かれる。深入りせずに離れ、もう一度別の角度から斬りつけた。

「破ぁ!」
 気合斬りじゃ!

 弾かれれば、斬れるまでやる。聖剣の輝きが強くなっていく。
聖なる矢ホーリーアロー!」
 美花の魔法が途切れずにくる。

「おい!無理すんなよ!」
「大丈夫!あたし、魔力だけはあるからぁ!」
 大雷波!

「そりゃうらやましい話だな!」
 魔法を避けて、飛び退る。

「ん?」
 左脇腹をデスビーストが押さえた。

「美花!左側脇腹に猛攻撃!」
「はい!」
 美花が連続で最高位の魔法を撃ち続けた。

 とにかく撃つ。とまってはだめだーー。

 デスビーストの腕が吹っ飛ぶ。脇腹をかばうものがなくなる。
「わっ!」
 東堂の足に鎖が絡んだ。
 聖剣で素早く斬り、すぐに左脇腹を狙って突っ込んでいく。
魔弾マジックバレット!」
 光が走る。デスビーストの左脇腹に穴が開いた。

「おりゃぁ!」
 東堂の剣が完全にデスビーストをとらえた。

 左脇腹から真っ二つに胴体が分かれる。

 ごあああああぁぁぁーーーー。

 不気味な断末魔が響き、デスビーストハードが討伐された。


「やっ、」
「やー」

「「やったぁぁぁ!!!」」

 美花がその場にくずれ、泣きだした。
「おっしゃぁぁ!」
 東堂は大きなパライバトルマリンを拾う。
「おい!泣いてねえで、陣営まで行けるか!」
「ーーうん!」









「ーーそうはさせませんよ!」
「えっーー!」
 東堂は背後からの声に驚愕した。

 竜騎士達が戦闘態勢に入っている。剣をかまえてマルテスが言葉を放つ。

「いただきますよ、その宝石!」

「ーー美花、俺が時間を稼ぐ!」
「でも!陣営前にもいるかもしれない!」
「ありゃー!それもそうか……」

「もちろん、いますよ~」
 タルティンが明るく言う。

「えっ、詰んでんの?これ?」

「あっ、そうだわ!」
 美花が魔法を唱えた。

「はい。東堂、これ飲んで」
「えっ?」
「後で、取り出すから」
「なんで俺がーー」
「保護魔法はかけたけど、くれぐれも下からださないでね」
「ーーはいはい」
 東堂は小さくなった宝石を飲んだ。

「おえっ~。もう少し小さくしてくれよ」
「それより小さくは難しいのよ、段階があるから」
 
 ふたりの行動に、竜騎士達は手も足も出なかった。

「うそー!」
「えっ?」
「どうします?」
「いや、だってーー」

「ふふふっ!殺しはナシだよな?」
 東堂がニカッと笑った。


「俺達、デスビーストハードもう一体いくけど、あんたらどうすんの?」
「え?あれをもう一体?ふたりで?」
 マルテスが呆然と目を開いた。

「まさかーー」


「トードォ!無事かぁ!」
 トルイストが飛んできた。
「ミハナ!怪我はありませんか!」
 ファウラも駆けつけた。
「遅いっすよ!何してたんですか!」

「いや、アジャハンの魔法騎士達を叩いていた」
「もう、彼ら以外いませんよ」

「えっー!」

「さすがっす!」
「すご~い!」
 東堂と美花が喜びの声をあげた。

「「いやいや」」
 トルイストとファウラが頭をかく。
「マリアとエリヤフが見張ってくれていますので」

「じゃあ、心おきなく次いけますね!」
「ああ!」
「行きましょう!最低でも後、三体!」
 ファウラの言葉に東堂は顔を引きつらせた。

「まじっすかぁ!」
「あたしもがんばります!」

 討伐に向かうロードリンゲンの魔法騎士達を見て、竜騎士達は皆顔を赤らめる。

「カッコいい……」
 皆の心を代表して、マルテスがつぶやいた。






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