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魔法騎士大演習とそれぞれの思惑編(長編)
第96話 辿り着いたのは
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少し時間は遡り、夕暮れ前ーー。
ーー精神が乱れると魔法も安定しない。
「あれ?どこだろ、ここ」
兵馬はあたりを見回したが、見覚えがない場所にでてしまった。森の中のようだが、魔物がいたらどうしよう。
転移魔法は最終目的地点がわかっているのなら使えるが、問題は魔力だ。そこにいくまでに魔力がもたないと、魔物の森に落ちたり高い場所に着地してしまったり事故も多い。
「うーん。方角はあってたはずなんだけど……」
ザッ。
落ち葉を踏む音が小さく聞こえた。
警戒されているのが、気配からわかる。
ーーどうしよう。アジャハンの兵士なら大丈夫だろうか。
兵馬は両手をあげた。
気配が近寄ってくる。兵馬はその兵士を見て目を丸くした。
「ーーヒョウマ殿!」
緊張した声の主は、ラルジュナの幼馴染みの近衛兵ジュドーだ。いつも陽気な顔しか見たことがなかったのだが、いまは驚愕に血走った目をしている。
「なんでバッカイアに!?」
「え!バッカイア?」
「とりあえず、他の兵士が来る前に魔力を切ってください!」
「あ~、あ、え~と、ーーわかった!」
「森の中に魔力反応があったんで様子を見に来たんですが、私でよかったですよ」
身を隠すために使っていない小屋に入ると、ジュドーが息をはいた。
「ーーーあっ。ご、ごめん。なんでここにきたのかーー」
「でも、伝える機会ができてよかったです。ヒョウマ殿、王妃様から網を張られてます」
「えっ!」
「バッカイア周辺で転移するときは、本当に気をつけてください。こちらに引き寄せるよう、帰着という魔法を使っています」
「な、なんで?」
「いまヒョウマ殿が大学で書いたレポートを活用してるんです。利益還元の噂を聞いて鉄道の出資者が凄くて、王妃様も大変潤ってるそうですし、他の事業にも結構噛んでたでしょう?」
「ーーあ……」
「手元に置きたいし、ヒョウマ殿を押さえればラルジュナ様を押さえたも同然ですからね」
「いや、それはだいじょうぶ、だと」
「大丈夫じゃないですよ。あなた、やばいぐらいあの方に愛されてますから。くれぐれも逃げないようにお願いします」
「ーーあんなすごいひとがそんなわけない」
ジュドーの力説に戸惑いながら兵馬は首を振る。
「寝室に入ったでしょ?」
「もとカノとかだって、はいってるだろうしーー」
「ラルジュナ様の寝室に入る人なんて、陛下か私か、王妃様が送った暗殺者ぐらいのもんですよ」
「あんさつ、しゃーー」
「あの方、反応速度が異常でしょ。いろんな事にもすぐに気づくし」
「……」
「長年、暗殺者を返り討ちにしてますからね。毒入りの食べ物で味覚もおかしくなってるーー、ああ、すみません」
ジュドーが兵馬の顔色を見て謝罪を口にした。
「ーー愚痴になりそうなんでこのへんで。私も転移魔法は使えますが、使用目的を追及されると厄介だな……」
首を捻ってジュドーが思案する。
「少し歩けばアジャハンの国境の砦があるんですがーー、アスラーン様でも来ないかな?」
「ジュナをよぶとまずいの?」
「バッカイア付近ではやめたほうがいいかと」
「アレクセイでんかは?」
「理由がなければ、ミント王女が責められます。ちなみに魔蝕発生は、魔蝕感知機がある国なら、浄化後でもわかりますよ」
言い訳には使えません。
「ありがとう、ジュドーさん。あるいてこっきょうまでいくから、ばしょをおしえてくれる?」
「夜になってから動きましょう。マントを持ってきます。私の見回りの時間があるので、警備のバディに一服盛って寝かせます。国境石があるところまで同行しますよ」
兵馬は安堵した。
「ーー申し訳ありません。アスラーン王太子殿下」
「いや、帰着に気づかなかった我々も悪い」
マルセイン砦の長官は頭を下げたまま、いつまでもあげようとしなかった。
「ーーやはり、国境付近に帰着魔法を張っているな。本来は子供に使う魔法だが」
親が子供を心配し、必ず家に帰ってくるようにかける魔法、それが帰着だ。有効範囲は狭いが、条件が合えば望む場所に引き寄せられる。
ジュリアムは近場で転移魔法を使った場合を想定したのだろうか。
「国境石からは、少し距離がある。おまえは魔法を使うな。向こうにばれる」
「ーーわかってるよー」
マルセイン砦を出てバッカイア帝国の方へ歩きだす。すぐに細い山道になる。
兵士達が追ってくるが、アスラーンは手で追い返した。
「派手に存在をアピールしたのがまずかったな」
「やれっていったのアスラーンじゃないかー!」
「適当にやればよかっただろう」
ラルジュナが黙った。
「ーーいいところを見せたかったのだろう?反応は薄かったがな」
「うるさい!」
暗闇の中、二人は進むーー。
ーー精神が乱れると魔法も安定しない。
「あれ?どこだろ、ここ」
兵馬はあたりを見回したが、見覚えがない場所にでてしまった。森の中のようだが、魔物がいたらどうしよう。
転移魔法は最終目的地点がわかっているのなら使えるが、問題は魔力だ。そこにいくまでに魔力がもたないと、魔物の森に落ちたり高い場所に着地してしまったり事故も多い。
「うーん。方角はあってたはずなんだけど……」
ザッ。
落ち葉を踏む音が小さく聞こえた。
警戒されているのが、気配からわかる。
ーーどうしよう。アジャハンの兵士なら大丈夫だろうか。
兵馬は両手をあげた。
気配が近寄ってくる。兵馬はその兵士を見て目を丸くした。
「ーーヒョウマ殿!」
緊張した声の主は、ラルジュナの幼馴染みの近衛兵ジュドーだ。いつも陽気な顔しか見たことがなかったのだが、いまは驚愕に血走った目をしている。
「なんでバッカイアに!?」
「え!バッカイア?」
「とりあえず、他の兵士が来る前に魔力を切ってください!」
「あ~、あ、え~と、ーーわかった!」
「森の中に魔力反応があったんで様子を見に来たんですが、私でよかったですよ」
身を隠すために使っていない小屋に入ると、ジュドーが息をはいた。
「ーーーあっ。ご、ごめん。なんでここにきたのかーー」
「でも、伝える機会ができてよかったです。ヒョウマ殿、王妃様から網を張られてます」
「えっ!」
「バッカイア周辺で転移するときは、本当に気をつけてください。こちらに引き寄せるよう、帰着という魔法を使っています」
「な、なんで?」
「いまヒョウマ殿が大学で書いたレポートを活用してるんです。利益還元の噂を聞いて鉄道の出資者が凄くて、王妃様も大変潤ってるそうですし、他の事業にも結構噛んでたでしょう?」
「ーーあ……」
「手元に置きたいし、ヒョウマ殿を押さえればラルジュナ様を押さえたも同然ですからね」
「いや、それはだいじょうぶ、だと」
「大丈夫じゃないですよ。あなた、やばいぐらいあの方に愛されてますから。くれぐれも逃げないようにお願いします」
「ーーあんなすごいひとがそんなわけない」
ジュドーの力説に戸惑いながら兵馬は首を振る。
「寝室に入ったでしょ?」
「もとカノとかだって、はいってるだろうしーー」
「ラルジュナ様の寝室に入る人なんて、陛下か私か、王妃様が送った暗殺者ぐらいのもんですよ」
「あんさつ、しゃーー」
「あの方、反応速度が異常でしょ。いろんな事にもすぐに気づくし」
「……」
「長年、暗殺者を返り討ちにしてますからね。毒入りの食べ物で味覚もおかしくなってるーー、ああ、すみません」
ジュドーが兵馬の顔色を見て謝罪を口にした。
「ーー愚痴になりそうなんでこのへんで。私も転移魔法は使えますが、使用目的を追及されると厄介だな……」
首を捻ってジュドーが思案する。
「少し歩けばアジャハンの国境の砦があるんですがーー、アスラーン様でも来ないかな?」
「ジュナをよぶとまずいの?」
「バッカイア付近ではやめたほうがいいかと」
「アレクセイでんかは?」
「理由がなければ、ミント王女が責められます。ちなみに魔蝕発生は、魔蝕感知機がある国なら、浄化後でもわかりますよ」
言い訳には使えません。
「ありがとう、ジュドーさん。あるいてこっきょうまでいくから、ばしょをおしえてくれる?」
「夜になってから動きましょう。マントを持ってきます。私の見回りの時間があるので、警備のバディに一服盛って寝かせます。国境石があるところまで同行しますよ」
兵馬は安堵した。
「ーー申し訳ありません。アスラーン王太子殿下」
「いや、帰着に気づかなかった我々も悪い」
マルセイン砦の長官は頭を下げたまま、いつまでもあげようとしなかった。
「ーーやはり、国境付近に帰着魔法を張っているな。本来は子供に使う魔法だが」
親が子供を心配し、必ず家に帰ってくるようにかける魔法、それが帰着だ。有効範囲は狭いが、条件が合えば望む場所に引き寄せられる。
ジュリアムは近場で転移魔法を使った場合を想定したのだろうか。
「国境石からは、少し距離がある。おまえは魔法を使うな。向こうにばれる」
「ーーわかってるよー」
マルセイン砦を出てバッカイア帝国の方へ歩きだす。すぐに細い山道になる。
兵士達が追ってくるが、アスラーンは手で追い返した。
「派手に存在をアピールしたのがまずかったな」
「やれっていったのアスラーンじゃないかー!」
「適当にやればよかっただろう」
ラルジュナが黙った。
「ーーいいところを見せたかったのだろう?反応は薄かったがな」
「うるさい!」
暗闇の中、二人は進むーー。
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