ロクイチ聖女 6分の1の確率で聖女になりました。第三部 第四部

濃子

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魔法騎士大演習とそれぞれの思惑編(長編)

第93話 魔法騎士達は戦う

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 琉生斗は魔法騎士達の戦いを集中して見ていた。
「ーーごめん、遅くなって……」
 コーヒーをアレクセイに渡しながら兵馬が言う。
「悪い!アレクの分まで!」
「全然だよ。東堂は?」
「気合入ってんよ。デスビーストソフトなら余裕だな」
「大丈夫かな。町子も最後は詰め込むだけ魔法を詰めてたからね」

「とめなかったのか?」
「あれね、魔物避けに置いてみようと思うんだ。警備隊がなかなかいけない村とか」
「なるほど。ひとは襲わないのか?」
「命令以外の事はしない。でも、魔法陣を書き換えられると厄介だね」
「ーーそんな事ある?」

「町子やティンさんより強ければね。乗っ取られるとシステムダウンする魔法陣が、うまく作れないんだよ」

「魔導師でティンさんより上って……」
「何にせよ、見た目が悪いから無理かな。町子はあれがいいってゆずらないし」
 デスビースト、見た目は腐った獣だ。
「もふもふにすりゃいいのにな」
「ビジュアルは大事だよね」

「こら、ヒョウマ。ビジネスの仕事は私としろ」
「ビジネスじゃありません~。慈善事業の話です」
「ようは用心棒だろ?貴族でも欲しい奴はいるぞ」
「う~ん。そうなってくると、戦にもつかっちゃうよね」
 兵馬が難しそうに頭をかいた。
「表裏一体ってやつだな」
「だね」
 
















「どけどけぇ!」
 デスビーストソフトを斬りつけ、東堂は飛んだ。

「よっしゃぁ!」
 弾けた獣から宝石が出る。
「ゲームみたいだ」
「トードォ!絶好調だな!」
 ジップが東堂の肩を叩いた。

「ああ!まかせとけ!三日間、寝ずに戦うぞ!」

「おう!」
 若い騎士達が勇ましく声をあげるのを、トルイストは目を細めて見ていた。

 何と、頼もしい奴らだーー。


 今回の大演習の舞台は、アジャハン国の中央より南に広がるダッカマ領にあるスープラ大平原だ。途方もなく広い。
 地平線が見えるぐらいだが、南に見える大山脈を越えるとバッカイア帝国の領土になる。

 木は少ないが、岩や小高い丘などは多く、死角にデスビーストが隠れている。巨大な体躯、想像を越える異形の生き物。獅子が腐ったようなその姿、まさにデスビースト。


 獅子の爪が魔法騎士を払おうと動く。
「おりゃ!」
 東堂が受けとめ、ジップは魔法を唱えた。
 デスビーストが雄叫びをあげて弾け飛ぶ。

「亡霊城より、楽勝だな!」

 東堂は吠える。


 そして、最後には涙することになるのだーー。















光剣ライトソード!」
 美花は魔法、光剣を撃ちまくっていた。

 やはり、どれだけやろうと魔法陣を重ねることはできない。同じ魔法と認識されない。光剣は光剣でも別物と魔法が判断するのだろう。


「ーーすごいことやってるのね、あのひと……」


 弟の恋人ーー。


 大国の王子様。


 琉生斗といい弟といい、男のくせにスパダリゲットとはーー。
 


「ミハナ!ボォーとしない!」
 モロフに怒られ、美花はハッとした。


「はいはい!今回のあたしはひと味違うわよ!ファウラ様がいなくてもがんばるんだから!」
 雷鳥サンダーバードを放ち、美花はやる気に燃える。


「ーーハーベスター家からも応援されてるしね……」


 それが問題なのだがーー。


 魔法騎士を続けるのならばそれなりの結果をだすように、とファウラの父、リーフから言われた。

『ミハナはいつ魔法騎士をやめるのだ?』

 ファウラがいないときに尋ねられる。

『えっとーー』
『まさか、子供ができるまでか?』

『いえ、できても産休制度を利用して、マリア大隊長のように復帰したいです』

 リーフが大笑いをした。

『マリアのように才があるならともかく、それなりの結果がだせないのならば、結婚までにやめろ』



 ーーそれなり、ってなんだろう。



 ファウラのように大隊長にならないといけないのだろうか。誰に聞いていいかわからず、とりあえず弟に相談してしまったのだが……。

 兵馬も困った顔をしていた。

 そりゃそうよね。昔から、何かあればあの子に相談してーー。どっちが姉だかーー。





 弱虫だけどしっかり者の弟に恋人ができた、と報告をされた。もじもじしているところは、見ていておかしかったっけーー。






 …………。
『姉さん。僕いま付き合ってるひとがいるんだ』

『ーー、噂になってるひと?』
『うん。ラルジュナ元王太子』
「真剣なの?」

『ーーうん』
『そう。早く会いたいわー、あんたの彼氏にーー』



 マグナス大神殿ではじめて会ったが、優しい目をしたひとだった。
 このひとなら大丈夫、と瞬間的に感じた。



「がんばらなきゃ」
 とにかく、自分は自分の事に集中しないと。

 
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