103 / 236
魔法騎士大演習とそれぞれの思惑編(長編)
第93話 魔法騎士達は戦う
しおりを挟む
琉生斗は魔法騎士達の戦いを集中して見ていた。
「ーーごめん、遅くなって……」
コーヒーをアレクセイに渡しながら兵馬が言う。
「悪い!アレクの分まで!」
「全然だよ。東堂は?」
「気合入ってんよ。デスビーストソフトなら余裕だな」
「大丈夫かな。町子も最後は詰め込むだけ魔法を詰めてたからね」
「とめなかったのか?」
「あれね、魔物避けに置いてみようと思うんだ。警備隊がなかなかいけない村とか」
「なるほど。ひとは襲わないのか?」
「命令以外の事はしない。でも、魔法陣を書き換えられると厄介だね」
「ーーそんな事ある?」
「町子やティンさんより強ければね。乗っ取られるとシステムダウンする魔法陣が、うまく作れないんだよ」
「魔導師でティンさんより上って……」
「何にせよ、見た目が悪いから無理かな。町子はあれがいいってゆずらないし」
デスビースト、見た目は腐った獣だ。
「もふもふにすりゃいいのにな」
「ビジュアルは大事だよね」
「こら、ヒョウマ。ビジネスの仕事は私としろ」
「ビジネスじゃありません~。慈善事業の話です」
「ようは用心棒だろ?貴族でも欲しい奴はいるぞ」
「う~ん。そうなってくると、戦にもつかっちゃうよね」
兵馬が難しそうに頭をかいた。
「表裏一体ってやつだな」
「だね」
「どけどけぇ!」
デスビーストソフトを斬りつけ、東堂は飛んだ。
「よっしゃぁ!」
弾けた獣から宝石が出る。
「ゲームみたいだ」
「トードォ!絶好調だな!」
ジップが東堂の肩を叩いた。
「ああ!まかせとけ!三日間、寝ずに戦うぞ!」
「おう!」
若い騎士達が勇ましく声をあげるのを、トルイストは目を細めて見ていた。
何と、頼もしい奴らだーー。
今回の大演習の舞台は、アジャハン国の中央より南に広がるダッカマ領にあるスープラ大平原だ。途方もなく広い。
地平線が見えるぐらいだが、南に見える大山脈を越えるとバッカイア帝国の領土になる。
木は少ないが、岩や小高い丘などは多く、死角にデスビーストが隠れている。巨大な体躯、想像を越える異形の生き物。獅子が腐ったようなその姿、まさにデスビースト。
獅子の爪が魔法騎士を払おうと動く。
「おりゃ!」
東堂が受けとめ、ジップは魔法を唱えた。
デスビーストが雄叫びをあげて弾け飛ぶ。
「亡霊城より、楽勝だな!」
東堂は吠える。
そして、最後には涙することになるのだーー。
「光剣!」
美花は魔法、光剣を撃ちまくっていた。
やはり、どれだけやろうと魔法陣を重ねることはできない。同じ魔法と認識されない。光剣は光剣でも別物と魔法が判断するのだろう。
「ーーすごいことやってるのね、あのひと……」
弟の恋人ーー。
大国の王子様。
琉生斗といい弟といい、男のくせにスパダリゲットとはーー。
「ミハナ!ボォーとしない!」
モロフに怒られ、美花はハッとした。
「はいはい!今回のあたしはひと味違うわよ!ファウラ様がいなくてもがんばるんだから!」
雷鳥を放ち、美花はやる気に燃える。
「ーーハーベスター家からも応援されてるしね……」
それが問題なのだがーー。
魔法騎士を続けるのならばそれなりの結果をだすように、とファウラの父、リーフから言われた。
『ミハナはいつ魔法騎士をやめるのだ?』
ファウラがいないときに尋ねられる。
『えっとーー』
『まさか、子供ができるまでか?』
『いえ、できても産休制度を利用して、マリア大隊長のように復帰したいです』
リーフが大笑いをした。
『マリアのように才があるならともかく、それなりの結果がだせないのならば、結婚までにやめろ』
ーーそれなり、ってなんだろう。
ファウラのように大隊長にならないといけないのだろうか。誰に聞いていいかわからず、とりあえず弟に相談してしまったのだが……。
兵馬も困った顔をしていた。
そりゃそうよね。昔から、何かあればあの子に相談してーー。どっちが姉だかーー。
弱虫だけどしっかり者の弟に恋人ができた、と報告をされた。もじもじしているところは、見ていておかしかったっけーー。
…………。
『姉さん。僕いま付き合ってるひとがいるんだ』
『ーー、噂になってるひと?』
『うん。ラルジュナ元王太子』
「真剣なの?」
『ーーうん』
『そう。早く会いたいわー、あんたの彼氏にーー』
マグナス大神殿ではじめて会ったが、優しい目をしたひとだった。
このひとなら大丈夫、と瞬間的に感じた。
「がんばらなきゃ」
とにかく、自分は自分の事に集中しないと。
「ーーごめん、遅くなって……」
コーヒーをアレクセイに渡しながら兵馬が言う。
「悪い!アレクの分まで!」
「全然だよ。東堂は?」
「気合入ってんよ。デスビーストソフトなら余裕だな」
「大丈夫かな。町子も最後は詰め込むだけ魔法を詰めてたからね」
「とめなかったのか?」
「あれね、魔物避けに置いてみようと思うんだ。警備隊がなかなかいけない村とか」
「なるほど。ひとは襲わないのか?」
「命令以外の事はしない。でも、魔法陣を書き換えられると厄介だね」
「ーーそんな事ある?」
「町子やティンさんより強ければね。乗っ取られるとシステムダウンする魔法陣が、うまく作れないんだよ」
「魔導師でティンさんより上って……」
「何にせよ、見た目が悪いから無理かな。町子はあれがいいってゆずらないし」
デスビースト、見た目は腐った獣だ。
「もふもふにすりゃいいのにな」
「ビジュアルは大事だよね」
「こら、ヒョウマ。ビジネスの仕事は私としろ」
「ビジネスじゃありません~。慈善事業の話です」
「ようは用心棒だろ?貴族でも欲しい奴はいるぞ」
「う~ん。そうなってくると、戦にもつかっちゃうよね」
兵馬が難しそうに頭をかいた。
「表裏一体ってやつだな」
「だね」
「どけどけぇ!」
デスビーストソフトを斬りつけ、東堂は飛んだ。
「よっしゃぁ!」
弾けた獣から宝石が出る。
「ゲームみたいだ」
「トードォ!絶好調だな!」
ジップが東堂の肩を叩いた。
「ああ!まかせとけ!三日間、寝ずに戦うぞ!」
「おう!」
若い騎士達が勇ましく声をあげるのを、トルイストは目を細めて見ていた。
何と、頼もしい奴らだーー。
今回の大演習の舞台は、アジャハン国の中央より南に広がるダッカマ領にあるスープラ大平原だ。途方もなく広い。
地平線が見えるぐらいだが、南に見える大山脈を越えるとバッカイア帝国の領土になる。
木は少ないが、岩や小高い丘などは多く、死角にデスビーストが隠れている。巨大な体躯、想像を越える異形の生き物。獅子が腐ったようなその姿、まさにデスビースト。
獅子の爪が魔法騎士を払おうと動く。
「おりゃ!」
東堂が受けとめ、ジップは魔法を唱えた。
デスビーストが雄叫びをあげて弾け飛ぶ。
「亡霊城より、楽勝だな!」
東堂は吠える。
そして、最後には涙することになるのだーー。
「光剣!」
美花は魔法、光剣を撃ちまくっていた。
やはり、どれだけやろうと魔法陣を重ねることはできない。同じ魔法と認識されない。光剣は光剣でも別物と魔法が判断するのだろう。
「ーーすごいことやってるのね、あのひと……」
弟の恋人ーー。
大国の王子様。
琉生斗といい弟といい、男のくせにスパダリゲットとはーー。
「ミハナ!ボォーとしない!」
モロフに怒られ、美花はハッとした。
「はいはい!今回のあたしはひと味違うわよ!ファウラ様がいなくてもがんばるんだから!」
雷鳥を放ち、美花はやる気に燃える。
「ーーハーベスター家からも応援されてるしね……」
それが問題なのだがーー。
魔法騎士を続けるのならばそれなりの結果をだすように、とファウラの父、リーフから言われた。
『ミハナはいつ魔法騎士をやめるのだ?』
ファウラがいないときに尋ねられる。
『えっとーー』
『まさか、子供ができるまでか?』
『いえ、できても産休制度を利用して、マリア大隊長のように復帰したいです』
リーフが大笑いをした。
『マリアのように才があるならともかく、それなりの結果がだせないのならば、結婚までにやめろ』
ーーそれなり、ってなんだろう。
ファウラのように大隊長にならないといけないのだろうか。誰に聞いていいかわからず、とりあえず弟に相談してしまったのだが……。
兵馬も困った顔をしていた。
そりゃそうよね。昔から、何かあればあの子に相談してーー。どっちが姉だかーー。
弱虫だけどしっかり者の弟に恋人ができた、と報告をされた。もじもじしているところは、見ていておかしかったっけーー。
…………。
『姉さん。僕いま付き合ってるひとがいるんだ』
『ーー、噂になってるひと?』
『うん。ラルジュナ元王太子』
「真剣なの?」
『ーーうん』
『そう。早く会いたいわー、あんたの彼氏にーー』
マグナス大神殿ではじめて会ったが、優しい目をしたひとだった。
このひとなら大丈夫、と瞬間的に感じた。
「がんばらなきゃ」
とにかく、自分は自分の事に集中しないと。
74
お気に入りに追加
76
あなたにおすすめの小説
悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
*
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
【完結】ここで会ったが、十年目。
N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化)
我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。
(追記5/14 : お互いぶん回してますね。)
Special thanks
illustration by おのつく 様
X(旧Twitter) @__oc_t
※ご都合主義です。あしからず。
※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。
※◎は視点が変わります。

不遇聖女様(男)は、国を捨てて闇落ちする覚悟を決めました!
ミクリ21
BL
聖女様(男)は、理不尽な不遇を受けていました。
その不遇は、聖女になった7歳から始まり、現在の15歳まで続きました。
しかし、聖女ラウロはとうとう国を捨てるようです。
何故なら、この世界の成人年齢は15歳だから。
聖女ラウロは、これからは闇落ちをして自由に生きるのだ!!(闇落ちは自称)

実はαだった俺、逃げることにした。
るるらら
BL
俺はアルディウス。とある貴族の生まれだが今は冒険者として悠々自適に暮らす26歳!
実は俺には秘密があって、前世の記憶があるんだ。日本という島国で暮らす一般人(サラリーマン)だったよな。事故で死んでしまったけど、今は転生して自由気ままに生きている。
一人で生きるようになって数十年。過去の人間達とはすっかり縁も切れてこのまま独身を貫いて生きていくんだろうなと思っていた矢先、事件が起きたんだ!
前世持ち特級Sランク冒険者(α)とヤンデレストーカー化した幼馴染(α→Ω)の追いかけっ子ラブ?ストーリー。
!注意!
初のオメガバース作品。
ゆるゆる設定です。運命の番はおとぎ話のようなもので主人公が暮らす時代には存在しないとされています。
バースが突然変異した設定ですので、無理だと思われたらスッとページを閉じましょう。
!ごめんなさい!
幼馴染だった王子様の嘆き3 の前に
復活した俺に不穏な影1 を更新してしまいました!申し訳ありません。新たに更新しましたので確認してみてください!

繋がれた絆はどこまでも
mahiro
BL
生存率の低いベイリー家。
そんな家に生まれたライトは、次期当主はお前であるのだと父親である国王は言った。
ただし、それは公表せず表では双子の弟であるメイソンが次期当主であるのだと公表するのだという。
当主交代となるそのとき、正式にライトが当主であるのだと公表するのだとか。
それまでは国を離れ、当主となるべく教育を受けてくるようにと指示をされ、国を出ることになったライト。
次期当主が発表される数週間前、ライトはお忍びで国を訪れ、屋敷を訪れた。
そこは昔と大きく異なり、明るく温かな空気が流れていた。
その事に疑問を抱きつつも中へ中へと突き進めば、メイソンと従者であるイザヤが突然抱き合ったのだ。
それを見たライトは、ある決意をし……?

我が家に子犬がやって来た!
もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。
アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。
だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。
この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。
※全102話で完結済。
★『小説家になろう』でも読めます★
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる