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魔法騎士大演習とそれぞれの思惑編(長編)
第92話 兵馬は言葉をなくす
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「お疲れさま。ジュナ、何か飲みたい?」
水とタオルを渡すとラルジュナが笑う。
「にっがいアイスコーヒーがいいなー」
「作ってくる」
「ありがとうー」
ラルジュナが兵馬の頬にキスをした。
「ちょっと待て。おれの前でいちゃつくな」
殺人鬼のような顔を琉生斗はしている。
「君に言われてもね。ーー殿下は?」
「ーー砂糖を多めにいれてくれ」
「了解」
兵馬がテントの奥に行くと、琉生斗はまじまじとラルジュナを見た。
「何ー?」
あっつ~、とラルジュナが叫ぶ。
「すごい強いんだね」
「でしょー?」
「アレクが追い込まれてるのはじめて見たよ」
琉生斗の言葉にアレクセイが嫌そうな表情を浮かべた。
「ふふーんー。ボクは優しいから、アレクセイの嫌がる事はしないよー」
魔法を封じるのは嫌なことにならないらしい。
「嫌がること?」
「アスラーンなんかひどいよー。闘技場内にマグマを発生させるからー」
「えっ?悪魔なの?」
琉生斗は目を丸くした。
元王妃ルチアによって、火山口に投げられた事がアレクセイにはあった。そこで負った火傷の跡は、魔法でも消すことはできずに腹に残っている。
マグマなど一生見たくはないだろうー。
「卑怯でしょー。あいつ負けるの大嫌いなんだよー」
「悪口を言うな」
「事実だよー」
「相手の弱点をつく戦法だ」
「親友のトラウマをつくなんて、ひとのすることじゃないねー」
ラルジュナがとてもまともな発言をする。
「ラルさんが、一番まともなんだな」
「そうだな。見た目だと反対に見えるが」
「見た目だけまともでもねー」
軽くアレクセイを小突き、ラルジュナがアスラーンを見た。
「はははっ、誰の事だ?」
ーーあんただよ。
しらけた視線が大大国の王太子に向けられた。
「皆様、演習中ですよ」
離れて見ていたアンダーソニーが声をかけた。アンダーソニー、ヤヘル、ルッタマイヤは演習に参加せず、魔法騎士が全滅したときに動くようになっている。
もっとも、ヤヘルはアジャハンの魔法騎士団の将軍達と酒盛りの最中で、いざとなっても役に立つかわからない。
「あっ!そうだった!」
琉生斗は慌てて千里眼鏡を見る。
「東堂、まだ大丈夫だろうな!」
スタートして、すぐにリタイアは格好が悪すぎだ。
「トードゥは精神力が強い。聖剣もある、最後まで持つだろう」
アレクセイの言葉にアスラーンが頷いた。
「さすがは私のトードォだ」
いつおまえのものになったーー。
琉生斗達の目を気にせずに、アスラーンが千里眼鏡に映る東堂に歓喜する。
「おお!デスビーストと遭遇したぞ!」
「ファンみたいだねー」
「いや、恋人候補だ」
真剣な表情にラルジュナも笑いをおさめた。
「本気なんだ……」
「おかしいか?」
「想像ができないーー」
琉生斗も首を捻るしかない。
あいつが男と恋愛かーー。
ーー可哀想だけど。うん、無理だな。
「すみません。コーヒーもらいます」
テントの奥に作られた休息所で、待機するメイドに兵馬は声をかけた。
「はい……。どうぞ」
くすっ……。
あきらかに兵馬の顔を見て笑った。良い笑い方ではない、侮蔑を含んだ笑い方だ。
気にせずに厨房を借りて、コーヒーを淹れる準備をする。
「あなた、行きなさいよ」
「えー、あなたが聞いてよ」
背後でメイドがこそこそと話をしていた。
みんなで行きましょうよー、と誰かの声が聞こえる。
「あのー、ヒョウマさんー」
「はい?」
振り向くと容姿の優れたメイドが並んで、にこにこしていた。
「失礼ですけど、聞いていいですか?」
「ヒョウマさんて、ラルジュナ様と付き合ってるんですよね?」
「え?」
突然の話に兵馬は目を瞠る。
「指輪、素敵ですよね」
メイドの笑う顔に圧を感じた。
「あ、そうですね……」
目線をさげながら兵馬は答える。
「でも、ヒョウマさんて、ラルジュナ様のお金目当てなんですよね?」
はい?
「わたし達、愛人希望なんですー、いいですか?」
「な、何を?」
「告白しますので」
「許してもらえますよね?」
「お金や、地位を利用したいだけですよね?」
皆、美しい女性達だった。派手すぎず控えめにした化粧も映え、女性らしさの色香が漂う。
自分なんかより、彼の隣りがよほど似合っている。
「……」
兵馬は何も返すことができなかった。
水とタオルを渡すとラルジュナが笑う。
「にっがいアイスコーヒーがいいなー」
「作ってくる」
「ありがとうー」
ラルジュナが兵馬の頬にキスをした。
「ちょっと待て。おれの前でいちゃつくな」
殺人鬼のような顔を琉生斗はしている。
「君に言われてもね。ーー殿下は?」
「ーー砂糖を多めにいれてくれ」
「了解」
兵馬がテントの奥に行くと、琉生斗はまじまじとラルジュナを見た。
「何ー?」
あっつ~、とラルジュナが叫ぶ。
「すごい強いんだね」
「でしょー?」
「アレクが追い込まれてるのはじめて見たよ」
琉生斗の言葉にアレクセイが嫌そうな表情を浮かべた。
「ふふーんー。ボクは優しいから、アレクセイの嫌がる事はしないよー」
魔法を封じるのは嫌なことにならないらしい。
「嫌がること?」
「アスラーンなんかひどいよー。闘技場内にマグマを発生させるからー」
「えっ?悪魔なの?」
琉生斗は目を丸くした。
元王妃ルチアによって、火山口に投げられた事がアレクセイにはあった。そこで負った火傷の跡は、魔法でも消すことはできずに腹に残っている。
マグマなど一生見たくはないだろうー。
「卑怯でしょー。あいつ負けるの大嫌いなんだよー」
「悪口を言うな」
「事実だよー」
「相手の弱点をつく戦法だ」
「親友のトラウマをつくなんて、ひとのすることじゃないねー」
ラルジュナがとてもまともな発言をする。
「ラルさんが、一番まともなんだな」
「そうだな。見た目だと反対に見えるが」
「見た目だけまともでもねー」
軽くアレクセイを小突き、ラルジュナがアスラーンを見た。
「はははっ、誰の事だ?」
ーーあんただよ。
しらけた視線が大大国の王太子に向けられた。
「皆様、演習中ですよ」
離れて見ていたアンダーソニーが声をかけた。アンダーソニー、ヤヘル、ルッタマイヤは演習に参加せず、魔法騎士が全滅したときに動くようになっている。
もっとも、ヤヘルはアジャハンの魔法騎士団の将軍達と酒盛りの最中で、いざとなっても役に立つかわからない。
「あっ!そうだった!」
琉生斗は慌てて千里眼鏡を見る。
「東堂、まだ大丈夫だろうな!」
スタートして、すぐにリタイアは格好が悪すぎだ。
「トードゥは精神力が強い。聖剣もある、最後まで持つだろう」
アレクセイの言葉にアスラーンが頷いた。
「さすがは私のトードォだ」
いつおまえのものになったーー。
琉生斗達の目を気にせずに、アスラーンが千里眼鏡に映る東堂に歓喜する。
「おお!デスビーストと遭遇したぞ!」
「ファンみたいだねー」
「いや、恋人候補だ」
真剣な表情にラルジュナも笑いをおさめた。
「本気なんだ……」
「おかしいか?」
「想像ができないーー」
琉生斗も首を捻るしかない。
あいつが男と恋愛かーー。
ーー可哀想だけど。うん、無理だな。
「すみません。コーヒーもらいます」
テントの奥に作られた休息所で、待機するメイドに兵馬は声をかけた。
「はい……。どうぞ」
くすっ……。
あきらかに兵馬の顔を見て笑った。良い笑い方ではない、侮蔑を含んだ笑い方だ。
気にせずに厨房を借りて、コーヒーを淹れる準備をする。
「あなた、行きなさいよ」
「えー、あなたが聞いてよ」
背後でメイドがこそこそと話をしていた。
みんなで行きましょうよー、と誰かの声が聞こえる。
「あのー、ヒョウマさんー」
「はい?」
振り向くと容姿の優れたメイドが並んで、にこにこしていた。
「失礼ですけど、聞いていいですか?」
「ヒョウマさんて、ラルジュナ様と付き合ってるんですよね?」
「え?」
突然の話に兵馬は目を瞠る。
「指輪、素敵ですよね」
メイドの笑う顔に圧を感じた。
「あ、そうですね……」
目線をさげながら兵馬は答える。
「でも、ヒョウマさんて、ラルジュナ様のお金目当てなんですよね?」
はい?
「わたし達、愛人希望なんですー、いいですか?」
「な、何を?」
「告白しますので」
「許してもらえますよね?」
「お金や、地位を利用したいだけですよね?」
皆、美しい女性達だった。派手すぎず控えめにした化粧も映え、女性らしさの色香が漂う。
自分なんかより、彼の隣りがよほど似合っている。
「……」
兵馬は何も返すことができなかった。
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