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魔法騎士大演習とそれぞれの思惑編(長編)

第87話 竜騎士達は悩む ☆

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「困った事になった」
 主なき円卓において、リーダーのマルテスが口を開いた。

「大丈夫じゃないですか?」
 一番年下のフェリカが頭をかく。

「いやいや、あんなアスラーン様ははじめて見ます」
 オルシカも首を振った。イスラや、タルティン、サヘラはどうしたものかと眉を寄せている。

「アスラーン様が本気でトードォ殿に惚れていようが、あのひとならサクッと跡継ぎぐらい作ってくれますよ」
 フェリカの言葉にサヘラが頷いた。

「ーーだが、もし無理だとしたら?」

「我々の中の誰かが、アスラーン様の妹君と結婚して王子を授からなければならない」

「王家の男児を絶やさないための、大公領主ですからね」

「けど、アスラーン様は無理って言えるのに私達が言えないのはおかしくないですか?」

「それは仕方ない。我々の家はそういう立場だからこそ、独立した統治を任されている」

「これは、もう。アスラーン様とトードォの仲をつぶしましょう!」
「我々の、のんびり大公領主ライフのために!」
「ーーそれしかないな」

 六人の気持ちが、固まった。


「はあー、次は仲を裂く作戦ですか」
「心が痛みますね」

 そうはいっても、誰もアスラーンに代わって王になる!なんていう気概はない。
 あくまでも自分の領内でのんびり生きたいのだ。

「ーーどうやって仲を悪くするのかーー。ヒョウマ殿ならなんとかしてくれないでしょうか?」
 タルティンの言葉に全員が頷いた。

「それは名案!」
「よし!私が頼みに行こう」

「リーダー、お願いします!」

 ひとまかせが大好きな竜騎士達は、問題をひとに押し付けるのが大好きなのだ。















 
 そんな事を押し付けられるとは思っていない兵馬は、ラルジュナとの行為の真っ最中だった。

「……っもう!」
 汗が邪魔だ。
 手で顔の汗を拭う。

「だめー、まだ我慢ーー」

 まだ我慢しろとー?

 ナカを彼のモノが激しく動いている。奥にあたる快感に、イキたくてしょうがない。だが、最後のきつさがこない。
 絶頂の手前で待て、だ。

 エサを前にヨダレを垂らす犬の気持ちが、いまなら理解できる。

「……は、はやくっーー!」

 目でも限界を訴えるのに、余裕の彼は舌で唇を舐める。その舌が欲しい、もっとキスしたい。

 苦しいーー。

 快楽を急かすなんて、兵馬自身も信じられない気持ちだ。知らなければ、一生知らなくてすんだはずなのにーー。
「ーーほしいー?」
「……」
 懇願するように頷くが、笑って流される。

「大事な事は口で言わないとー」 
 身体が重なり、挿入の角度が変わった。彼の汗や匂いに包まれると、よけいに身体が敏感になってしまう。足をめいいっぱい広げられ、彼との接地面が増える。その熱が気持ち良くて、兵馬の身体はビクビクと反応した。

 ーー好きーー。

「あんっ!」
 腰を引こうとしたが、がっしりと押さえつけられる。そこまで力が強そうに見えないのに、動かそうと思ってもちっとも動かせそうにない。

「はいー、ヒョウマー、なんて言うのー?」

「~~~~~うっ~~」
 兵馬はラルジュナの首につかまり、耳に口を寄せた。



「………………………………………い、い、いっぱい、だ、だしてぇ………」

 超絶、恥ずかしいーー。
 これじゃ、変な動画のお姉さんだよ~~~~~。



「は~い~♡」
 赤面して泣きそうな兵馬を抱いてキスをし、よしきた、とばかりに動きが変わる。

「いっぱい、イこうねー♡」
「うっ!あんっ!あんっ!あんッ!ああッ!!あっーーー!!!」

 ナカを突き破りそうな屹立に、兵馬はうっとりとした表情を浮かべる。欲しかった刺激に内壁がキュウキュウと締まっていく。


 イクと同時に兵馬の身体が快楽に震える。

 気持ちの良さに何度も痙攣する兵馬を見て、ラルジュナが満足したように目を細めた。






「ーーねぇー、もう一回ー」

 後ろから兵馬を抱きしめてうなじにキスをする。
「だめ!決めたでしょ?」
 壁に貼ったルーティン表を指さし、兵馬が叫ぶ。
「ボクの意見が入ってないから却下だよー」
「無茶苦茶すぎるからだよ!」

 今日はもう残業でやりたい事があるの!


 兵馬はラルジュナから離れた。

「もっと責めないとだめかー。意識飛ばしちゃってからのほうがー」 
 
 物騒な事をとなりで言うな。

「だいたい、毎日なんて無理なの!」
「えー、ボク、そういうお年頃だからー、ヒョウマもわかって欲しいなー」

 一歳しか違わない。

「二十歳過ぎたら落ちつくんでしょ!」

「君の知識は間違ってるねー。だいたいやりたい盛りのときにそこまでヤれるひとっているー?」
 そう言われて、兵馬は考えた。


 そりゃそうかー。男女なら子供ができる事をしてるわけなんだから、軽々しくはできないよね。

 でもーー。


「王子なんだから、若い頃からそういうひとがいるんじゃないの?」
 まわりがサポートしてくれるだろう。父親からは跡継ぎを望まれていたのだし。

「あのねー」
 溜め息をついて、ラルジュナが話しをやめた。呆れたように枕元の本を取る。

「ーーどうぞー、残業がんばってねー」
「う、うん……」
 彼が寝転がりながら本を読みはじめる。


 なぜか恋人は拗ねてしまったーー。

「ご、ごめん……」

 気にさわる事を言ったのだろう、兵馬は彼の様子を見ながら顔を曇らせた。絨毯に落ちている白いシャツを拾って着る。ボタンをとめるのに、手がうまく動かなかった。


 はじめの頃は、天蓋付きベッドの灯りでさえ嫌だった。裸を見られるなんて肉親でも無理な事だ(ルートは勝手に風呂に入ってくるからどうしようもなかったけど)。
 

 ラルジュナの前では平気になったーー。向こうがどう思っているかはわからないけど、灯りの中でも肌を隠さなくなって、着替えもできるようになってーー。

 このひとの前なら平気と思える事が増えていく。それが、恋人同士という証拠なのか。


 ーー少しぐらい自惚れてもいいのかな……。



    
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