ロクイチ聖女 6分の1の確率で聖女になりました。第三部 第四部

濃子

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アジャハン国の王太子とラッキースケベについて。編

番外編 ブラジャー革命 最終話

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「おかえりー。ヒョウマー」
 ラルジュナが抱きしめてくれる。兵馬は全身から力が抜けるのを感じた。

「ん?どうしたの?」

「ーージュナぁ!怖かったよぉぉぉぉーー!」
「えー?」
 抱きついてわんわん泣く自分を、ラルジュナがよしよしと頭を撫でる。
 優しく包んでくれる恋人に、兵馬は事情を話しはじめる。



 そして、話し終わると、お説教がはじまったーー。




「信じられないー!何考えてんのー!」
「調子に乗っちゃったんだよ!」
「乗りすぎだよー!悪魔の正体なんか暴いて、普通は殺されてるよー!」
「だって!ついっ!」

 今更ながらに生きててよかった、と感動する。頭に血がのぼった状態で、交渉の場に行くもんじゃない。


「しばらく、ロードリンゲンにはいっちゃだめー!行っても大神殿まで!」
「怖くて行けない。でも、姉さんがぁ……」
「ふぅ、また頭を冷やして考えようー。あっ、ヒョウマそのひとにさわったねー!」
「ーー偶然なんだけど……」

 目が泳いだ。 


 本当は体温を確かめたかったのだ。
 悪魔には体温がないと聞いていたから。

 フェレスの手は生きているのが不思議なぐらい冷たかった。冷え性なんてものじゃない、白手の上からでもそれがわかった。
 

「嘘だー、目印を付けられてるよー」
 ラルジュナが兵馬の手を見て苦い表情をした。
「え?」
「ホントにヒョウマはー」
 ラルジュナが兵馬の手にキスをした。ほわん、と光る。

「相手の意向がわからないから解除はしないけど、害をなさないようにはしとくよー」

 もちろんラルジュナはフェレスの動向がわかるように、逆探知の魔法をかけた。向こうには気づかれないようにだーー。


「ーーボクもアレクセイと一緒に悪神斬ろうかなー」
 溜め息をつくラルジュナに、兵馬は首を振った。

「な、なに言ってんの!呪いにかかるよ!」
「ヒョウマが悪魔にケンカ売るからでしょう!もう、なんで悪魔ってわかったのー?」

 ラルジュナが眉根を寄せた。その仕草だけでも男前だな、と兵馬は照れる。

「あー、あたるとは思わなかったんだけど。フェレス、って聞いて、向こうの世界で有名な悪魔、メフィストフェレスを思い出したんだ」
「向こうの悪魔?悪魔がいるのー?」
「う~ん。いるかいないかの存在かな……。で、ルートも向こうで有名な神様を召喚できるんだけどね」

 有名な神様、って不思議な話だけどーー。

「へぇー。さすが聖女だねー」
「なんか、向こうの世界とこっちの世界は、連動してる部分がたくさんあるから、それって、行き来できて文明に関わる存在があるのかなー、って思ってたの」

「なるほど。聖女を召喚するぐらいだし、そっちの世界の認知度は高いかー」

「もしかして、悪魔や神様は、気楽にあちこちの世界を行き来してるんじゃないかな?こちらの神様はだめでも、よその世界の神様はいける、みたいな」

「はあー、推測の域はでないけど向こうの反応があったのならそうかもねー。しばらくはおとなしくしなさいー、ボクの側を絶対に離れないようにー」
「う、うん……」
 兵馬はラルジュナの身体にしっかりと抱きついた。

「はっ、は、……、ーー離さないでね……」
 ラルジュナの目が大きく開かれ、ゆっくりと笑顔になる。



「ああ、誓うよ」





 ひゃあーーーーー!
 
 兵馬は気を失いかけた。
 
 なんでこんなにカッコいいんだろ、このひと。この状況、何か間違ってない?
 自分なんか、ただの眼鏡だよーー。

 抱きしめ返され、彼の胸の中でドキドキしながら、ふと、それが心に湧いた。











 ーーコノ人ノ子供ガホシイーー、僕ガ産ミタイーー。









 願いだ。


 自分は琉生斗じゃない。願いなど、時空竜の女神様に聞こえるわけがないのにーー。



 いつかは、そんな日がくるのだろうかーー。本当に彼も同じ気持ちになってくれるのだろうかーー。





 いやーー。

 多くを望んではいけない。

 たとえその日が来なくても、いま、一緒にいることができるならそれでいいーー。


 










 ーーイイヨーーーー。











 それは、とても残念な事だがーー。
 ラルジュナにキスをされて脳内が沸騰している兵馬には、その声は聞こえなかったそうだーー。


 













「ねえ、ルート」
「なんだよ」
「エッチのとき、殿下に何かしてあげるの?」
 琉生斗が吹きだした。

「本気で聞いてる?」
「本気ですよ」


「そりゃするよ」

 兵馬の耳元で琉生斗は内容を小声で語る。

「ーー聖女様がんばるね」
「だろ?こっちが主導権握れば、その間は休めるからな」
「主導権……」
「でないと、ずっとイカされるじゃん。何とか挿れられる時間を減らさないと」
「君も苦労してるんだね」

 ほろり。

「そうなんだよ。やる気なさそうだと不機嫌だしさ」
「あー、わりと子供なんだよね」
「マジ、それ!」
「なんか、いい攻め方ある?」
「素股ははずせないな」
 
「まあ、楽しそうなお話ですわね」
「ベルさん」
「こんにちは」

「ほほほっ、ヒョウマさん。キャミソールをありがとうございます。アジャハンのはとてもデザインがいいですのね」
 ベルガモットが上機嫌で笑いかけてくる。
「ベルガモットさんの宣伝のおかげでよく売れます」

「ーーおまえは何に手をつけてんだ」
「やっぱり、動くよ。エロ産業はばかにできないね」
 親友の真剣な顔に、琉生斗は何と言ったらいいのかわからなかった。

「ベルさん。トルさんを再起不能にしたらしいね」
「ほほほっ。まあ、どうでしょうかー」

「なんか、初心者でもできそうな、男のひとが喜ぶ手ないですか?」
 兵馬に尋ねられ、ベルガモットは綺麗な目をしばたいた。

「あら、可愛がられているだけでは物足りないのですか?」
「あんまり、イカされるのもしんどいです」
「あらぁ、お若いのに」
「枯れてるんです」


「そうですわねー。一番は、このぐらいでお願い、とはっきり言う事です」
「は、はっきり!」

「ええ。体調がよくない、仕事がある。理由は様々でしょうが、それで言う事が聞けないようでは自分の事を大切にしているとは言えませんわ」

「それはわかるんだけどさ」
「聖女様は殿下に甘すぎですわ」
「う~ん」

「なるほど、ある意味ルーティンだね」
 兵馬は悟った。
「さっそくデータにしてみよう」
「何を?」
「一週間の内容だよ」

 考え込む顔をした兵馬を、琉生斗は遠い目をして見つめた。



 あいつも毎日かーー。



「うまくいけばいいなーー」







ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 いつも読んでくださってありがとうございます。長い間つきあっていただき、本当にうれしいです!寒くなってきましたので、体調は大丈夫でしょうか?

 ここから兵馬の未来が変わっていく話だったのでここに載せました。良い未来になるといいな、と思っていますがーー。
 次回からは本編に戻ります。では、またよろしくお願いいたします。

        濃子
 
 
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