ロクイチ聖女 6分の1の確率で聖女になりました。第三部 第四部

濃子

文字の大きさ
上 下
93 / 236
アジャハン国の王太子とラッキースケベについて。編

番外編 ブラジャー革命 2

しおりを挟む
 サンプルは手に入れた。
 兵馬はそれをサイズ、cm、生地、質感を細かくデータにしていく。町子がすべてのサイズの数値を覚えていてくれたので、大変助かった。

「えー、適当にあわせてたし~」
 姉など、ざっくりしすぎている。

 パターンはひけるだろうが、やはり縫製はプロにお願いするよりない。材料にもこだわりたいーー。



 問題がひとつある。

 近頃、兵馬が神聖ロードリンゲン国で何かをしようとすると、貴族達の横やりがひどいのだ。

 他の国ではそういったことがないため、ハーベスター公爵が貴族達に、邪魔をしろ、とでも言っているのだろうか。

 ハーベスター公爵家の資産を抜くのは、他国でなら簡単な話だが、このままでは自国では難しい。安定した収入は鉄道からだが、それでも追いつけるかわからない。
 アジャハンと並行してロードリンゲンにも線路の敷設したいのだがーー。
 必ず土地の権利で揉める。

 アレクセイの名前で行っている、言わば国鉄だ。
 なのに、渋られる。

 しばらくは、ロードリンゲンは後まわしにして、国民の反応を見るしかない。

 アジャハンに行けば、鉄道以外の事で王太子から頼まれる事が多いしーー。兵馬としては、もっとロードリンゲンの事業に食い込んでいきたいのだが、貴族達の嫌がらせがあるしーー。


 だが、これならば、ご婦人方の支持が得られるはず。この誰もが放置しているブラジャー業界に革命をもたらせばーー、と兵馬は考えたわけだ。


 セクシーパンツの方はベルガモットから、是非売ってください、と頼まれた。
 あの後、トルイストがしばらく出勤できなかったらしく、効果は抜群のようだ。

 アジャハンのセクシーランジェリー店でも、スケスケのキャミソールはたくさんあったが、現代のブラジャーはなかった。東堂が言うには、娼婦もスケスケのキャミソールらしい(なんで知ってんの?)。



 軽くて、きつくなくて、しっかり支えてくれる、魔法のブラジャー。
 肌に直接触れるものだから、生地もオーガニックコットンを使ってーー。

「何してるのー?」

 その声に、自分には同居人がいることを思い出す。

「あっ。なんでもないよ」
 ブラジャー片手になんでもないわけないだろう。

「ヒョウマのー?」
 笑いながら尋ねられる。

「何でなの」
 兵馬は頬を膨らませた。

「すごい、しっかりした縫製だねー?向こうのー?」
 ブラジャーを手に取り、ラルジュナがじっくりと観察する。

 ーーこのひとなら、これにおさまる本物の胸を知ってるんだろうな。

 考えるとモヤモヤする。

「そう。姉さんに作れないか聞かれてね。僕じゃ無理だなー」
「パーツが多いー」
「多い?」

「そうだねー。ここのカップは表布と裏布とレースを挟んで縫うんだろうけど、こののびのびした生地はミシンじゃズレるよー」
「のひのびした生地。そうか、ストレッチがきいてるんだ」
「ああー。こういう生地なんだー。動きやすそうー」
 誰のことを考えているんだろうねーー。

「ジュナのシャツも動きやすいよね」

「身体に合わせて手縫いで作ってるからねー。下着なんか、手縫いに自信がある職人がちゃんと作らないと、違和感がでるよー」

「そうだよねー」

 姉さんー。こりゃ、僕には無理だー!

「う~ん。こういうの、うちの姉が好きだから聞いてみるー?」
 ラルジュナに聞かれ、兵馬は首を縦に振った。

「いいの?」
「うんー。来いってうるさいからー」
「ちなみに、どのお姉様?」
「パッシャー国、王太子妃のリリアム姉さんー」
 バッカイア国とも隣接している、農国ナルディアの下にある国だ。

「ーーもう少し位の低い方いないの?」
 兵馬の言葉にラルジュナが吹きだした。

「来来国に行った三女のメリアム姉さんは、貴妃だよー」
「それでも四夫人じゃない」
「メリアム姉さんが里帰りすると、皇帝が付いてきて面倒くさかったなー」

「それって、奥さんからしたら名誉なんでしょ?」
「寵愛が深いってやつー?こっちからしたら手間が増えるだけだけどねー。パパより偉そうにしてたしー」


「う~ん」
 兵馬は考え込んだ。

 来来国ではコルセットはないはずだ。なら、乳当てなはずーー。

「お風呂入ろうー」
「ーーうん」
 甘えるように言われたが、兵馬はぼんやりと返事をした。

「ーーあのパンツ履いてくれるー?」
「ーーうん……、ーーうん?」

「やったー!もう、早くしようー♡」
「ちょっと待って!間違えたぁーーー!」
「言い訳は聞きませんー」

 泣いてすがる兵馬をすっぱりと拒絶して、ラルジュナが用意をし始めた。



 ーー僕のばかぁぁぁぁぁぁぁーーー!!!

しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)

【完結】ここで会ったが、十年目。

N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化) 我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。 (追記5/14 : お互いぶん回してますね。) Special thanks illustration by おのつく 様 X(旧Twitter) @__oc_t ※ご都合主義です。あしからず。 ※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。 ※◎は視点が変わります。

不遇聖女様(男)は、国を捨てて闇落ちする覚悟を決めました!

ミクリ21
BL
聖女様(男)は、理不尽な不遇を受けていました。 その不遇は、聖女になった7歳から始まり、現在の15歳まで続きました。 しかし、聖女ラウロはとうとう国を捨てるようです。 何故なら、この世界の成人年齢は15歳だから。 聖女ラウロは、これからは闇落ちをして自由に生きるのだ!!(闇落ちは自称)

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

実はαだった俺、逃げることにした。

るるらら
BL
 俺はアルディウス。とある貴族の生まれだが今は冒険者として悠々自適に暮らす26歳!  実は俺には秘密があって、前世の記憶があるんだ。日本という島国で暮らす一般人(サラリーマン)だったよな。事故で死んでしまったけど、今は転生して自由気ままに生きている。  一人で生きるようになって数十年。過去の人間達とはすっかり縁も切れてこのまま独身を貫いて生きていくんだろうなと思っていた矢先、事件が起きたんだ!  前世持ち特級Sランク冒険者(α)とヤンデレストーカー化した幼馴染(α→Ω)の追いかけっ子ラブ?ストーリー。 !注意! 初のオメガバース作品。 ゆるゆる設定です。運命の番はおとぎ話のようなもので主人公が暮らす時代には存在しないとされています。 バースが突然変異した設定ですので、無理だと思われたらスッとページを閉じましょう。 !ごめんなさい! 幼馴染だった王子様の嘆き3 の前に 復活した俺に不穏な影1 を更新してしまいました!申し訳ありません。新たに更新しましたので確認してみてください!

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

繋がれた絆はどこまでも

mahiro
BL
生存率の低いベイリー家。 そんな家に生まれたライトは、次期当主はお前であるのだと父親である国王は言った。 ただし、それは公表せず表では双子の弟であるメイソンが次期当主であるのだと公表するのだという。 当主交代となるそのとき、正式にライトが当主であるのだと公表するのだとか。 それまでは国を離れ、当主となるべく教育を受けてくるようにと指示をされ、国を出ることになったライト。 次期当主が発表される数週間前、ライトはお忍びで国を訪れ、屋敷を訪れた。 そこは昔と大きく異なり、明るく温かな空気が流れていた。 その事に疑問を抱きつつも中へ中へと突き進めば、メイソンと従者であるイザヤが突然抱き合ったのだ。 それを見たライトは、ある決意をし……?

推しの為なら悪役令息になるのは大歓迎です!

こうらい ゆあ
BL
「モブレッド・アテウーマ、貴様との婚約を破棄する!」王太子の宣言で始まった待ちに待った断罪イベント!悪役令息であるモブレッドはこの日を心待ちにしていた。すべては推しである主人公ユレイユの幸せのため!推しの幸せを願い、日夜フラグを必死に回収していくモブレッド。ところが、予想外の展開が待っていて…?

処理中です...