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アジャハン国の王太子とラッキースケベについて。編

第86話 アスラーンの純情

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 夜も深くなった頃ーー。
 アレクセイ達が部屋に戻り、風呂を済ませたアスラーンは寝室に入った。

 ふんわりと花の匂いがする。
「おや、女神様か」

 自分に好意を寄せる者を送りこむのはするのに、自分が好意を抱いた者を送りこんでは来ない、厄介な女神様達だ。

「さてさて、誰を寄越したのか……」

 ベッドですやすやと寝ている人物を見て、アスラーンは仰天した。
「と、と、と、トードォ!」

 東堂がシースルーのローブを着て、ぐーすか寝ている。まわりには誰もいない。

 ーー女神様にしては私に甘いような。


 ベッドに乗り、アスラーンはその硬そうな胸に触れる。

「硬い……」
 肩や腕、寝ているのをいい事に、触りまくる。

「いい……」
 うっとりとしながら、アスラーンはふと手をとめた。

 東堂の顔をじっと見た後、唇に指でふれる。



 その指を自分の唇にあてた。



 
 
 アスラーンは無言で立ちあがる。

 寝室から出ていく。

「私ともあろうものが、小娘のようだな」
 大大国の王太子は、顔を赤くしてポツリとつぶやいた。


















 アスラーンや竜騎士達、ザルク少年に見送られ、修学旅行は終わりを迎えた。

「三日じゃ足りないな」

 琉生斗はそう言ったがーー。

「早くお母さんに会いたい」
「オレもだ」
「わたしも、お土産いっぱい渡すんだぁ」
 子供達が口々に言うのを見て納得した。

「この年頃の子供なのに、三日も親から離れられるなんてすごいよ」
 兵馬が笑う。

「君には物足りないだろうから、魔蝕が落ち着いたら、旅行に行こうか」
「え?」

「もちろん、二人でね」

「ーー兵馬ぁ!絶対に行こうな!二人でぇ!」


「ーー父上が許可されない」
 憮然とした表情でアレクセイが口を開いた。

「殿下ー。残念だけど、僕、陛下の秘密たくさん知ってるから。ちょっと脅せば言う事きくよ」
「国王を脅すとはーー」 

「何ぃ?殿下ぁ、みんなの前で嫁の紐パンに興奮した事バラされたいの?まあ、みんな笑ってくれると思うよ~」

 アレクセイが顔を押さえてしゃがみ込む。

「ーーあんまりいじめるなよ」
 東堂が同情した。

「ーー東堂、無事だったんだな」
「何がだ?」
 首を傾げるのを見て、琉生斗達は訝しげな顔をする。


「ーーアスラーンさん、気が変わったのか?」
「どうだろね」
「なあ、兵馬ぁー、どこ行く~?のんびりしたいな~」

「そうだね。変態のいない国、探しとくよ。あっ、殿下、購入した、没収します」

 超がつくぐらい不満顔のアレクセイを尻目に、琉生斗達は国へと帰る。不思議な事に、この三日間は魔蝕が起こらなかった。

















 椅子に座り黄昏ている友を見て、ラルジュナは首を傾げた。
「アスラーンー。どうしたのー?」

「ーーおまえこそどうした?ヒョウマは一緒じゃないのか?」

「ロードリンゲンに用があるんだってー。ぶー、せっかく買ってきたのにさー」
「何をだ?」
「ふーんだー、絶対また履いてもらうんだからー」

 ラルジュナは悔しそうに頬を膨らませた。

「ーーいや、相手の気持ちが第一だろう。無理やりとは。やはり、おまえもアリョーシャも、嫁より自分が一番の最低男だな」

「ーー何言ってんのー?」

「恋は、いい……」

 真面目な顔のアスラーンに、ラルジュナは盛大に吹いた。
 

















「ベルさぁん!」
「まあ、聖女様。ヒョウマさんも、お疲れでしょうに」

「いえいえ、僕が無理言いまして。ベルガモットさん、これを見てください」

 兵馬が箱から取り出したのは、ラルジュナとアレクセイが購入してきた、セクシーランジェリーの数々だ。

「ま、まあ!何て事でしょう!」
「どうです?試しに使ってみて感想と、自国で売れるかご意見をいただきたい」

 ベルガモットが恥じらいながらも、薄い下着をしっかり見ている。

「ーー試して、みたいですわ。他の方にさしあげても……」
「ぜひ、お願い致します」

 何やってんだよー、という目で琉生斗は親友を見ている。

「姉さんに、ブラジャーを頼まれてるんだけど、誰に相談すればいいかな?」
「おれではないな」
「わかってるよ」
「タレ目のキープしてる女性で、誰か紹介してもらえば?」
 意地悪く琉生斗は言った。

「そうだねー。頼んでみようかな」
「ーー嘘だよ」

「カリーナさんや、ナジュさんなら、いけるかも」
「見た目で判断するなよ」

「ほんと、たくましいやつだよ」

 琉生斗は呆れたように笑った。


















 その夜、琉生斗はアレクセイに言った。

「ああいう一方的なのは好きじゃない」
「ルート……、あれは、本当にすまなかった」

「そういうふうに抱きたいなら、おれはお役ごめんだな」
「ルート!本当に、心から謝る。あれは本当に、ルートの美しさに、身体の制御がきかなくなったーー」
「え?おれは下着に負けたの?もう、パンツ握って寝たら?」
「ルート!本当に、本当にすまなかった!この通りだ!」

 アレクセイが頭を深々と下げるのを見て、ふぅー、と琉生斗は息をついた。

「いいよ。じゃあ、おやすみ……」

「ーールート?」
「…………」
「ルート!キスは!?」
「…………ぐーー」

 疲れたのか、琉生斗はすぐに寝入ってしまった。呆然とアレクセイが目を瞠る。

「ルート……」

 ーー絶対許してくれていない。

「ルート!愛している!ルートぉぉぉ!」
「うるさいわ!静かにしろ!」
 
 あまりのアレクセイのうるささに根負けした琉生斗は、ちゃんとキスをしてから眠りについたそうだーー。


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